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JP1 Version 12 JP1/Automatic Job Management System 3 運用ガイド


13.1.11 Web GUIやユーザーアプリケーションでできる操作を制限したい

複数のユーザーが,Web GUIやユーザーアプリケーションを使用して運用を監視している場合,各ユーザーがユニットやマネージャーホストに対して不正な操作を実行しないよう,操作を制限したいことがあります。ここでは,Web GUIやユーザーアプリケーションから実行できる操作を制限する方法について説明します。

〈この項の構成〉

(1) 運用

この企業では,部門ごとに異なるマネージャーホストを運用しています。一部の部門では,複数の担当者がWeb GUIを使用して運用を監視しています。部門ごとに異なるマネージャーホストを使用し,複数の担当者がWeb GUIを使用して運用を監視している例を,次の図に示します。

図13‒23 複数のユーザーがWeb GUIを使用して運用を監視している例

[図データ]

それぞれのマネージャーホストは,次のように運用・管理していると想定します。

項番

ホスト名

説明

1

HostA

営業部門で運用・管理しているマネージャーホストです。Web GUIを使用して運用を監視しています。

2

HostB

総務部門で運用・管理しているマネージャーホストです。Web GUIを使用して運用を監視しています。

3

HostC

その他の部門で運用・管理しているマネージャーホストです。JP1/AJS3 - Viewを使用して運用を監視しています。

(2) 課題

Web GUIやユーザーアプリケーションを使用して,不正な操作が実行されるおそれがあります。

具体的には,次のような課題を解決する必要があります。

  1. Web GUIを使用するユーザーが,ユニットに対して不正な操作を実行してしまう。

    複数のユーザーがWeb GUIを使用している場合,デフォルトの設定だと,Web GUIで監視しているユニットに対して,すべてのユーザーがすべての操作を実行できます。このため,再実行だけを担当するユーザーが誤ってユニットを実行登録するなど,不正な操作が実行されるおそれがあります。

    [図データ]

  2. 各部門の担当者が,ほかの部門のマネージャーホストで誤って操作を実行してしまう。

    各部門で異なるマネージャーホストを運用している場合,デフォルトの設定では,すべてのマネージャーホストに対して,Web GUIからログインしたりユーザーアプリケーションからAPIを実行したりできます。また,各マネージャーホストに対して,すべてのJP1ユーザーがすべての操作を実行できます。このため,ほかの部門のマネージャーホストに誤ってログインしたユーザーが,不正な操作を実行するおそれがあります。

    [図データ]

  3. Web GUIを使用するユーザーの数が多く,システム管理者だけで操作制限を管理することが難しい。

    複数の部門でWeb GUIを使用している場合,各部門に所属するユーザーの操作制限をすべてシステム管理者だけで管理しようとすると,システム管理者の負担が増大してしまいます。

    [図データ]

  4. 不正なAPIが実行されてしまう。

    ユーザーアプリケーションを使用しないでWeb GUIだけで運用したい場合,デフォルトの設定ではAPIの実行が制限されていないため,不正なユーザーアプリケーションからAPIが実行されるおそれがあります。

    [図データ]

(3) 解決方法

(2) 課題」の各項目に対しての解決方法を説明します。次に示す設定をすることで,ユーザーがWeb GUIやユーザーアプリケーションでできる操作を制限できます。

  1. JP1ユーザーごとにWeb GUIで実行できる操作を制限し,不正な操作を実行できないようにする。

    Web GUIの操作制限機能を有効にすることで,ログインするJP1ユーザーごとに操作制限を設定できるようになります。操作を制限されたユーザーがログインすると,制限された操作を実行するためのボタンやメニューなどが表示されなくなります。

    なお,Web Consoleサーバで操作制限機能を有効にすると,有効にしたWeb Consoleサーバから接続できるすべてのマネージャーホストで,操作制限機能が有効になります。

    [図データ]

  2. 各部門のユーザーが,ほかの部門のマネージャーホストで,不正な操作を実行できないようにする。

    次の二つの機能を使用することで,不正な操作を防止できます。

    Web Consoleサーバの接続先ホスト制限機能

    Web Consoleサーバからの接続を許可するマネージャーホストを指定できます。接続を許可するマネージャーホスト以外は,Web GUIからログインしたり,ユーザーアプリケーションからAPIを実行したりできなくなります。Web GUIで監視したいマネージャーホストだけ接続を許可することで,その他のマネージャーホストに不正にログインされることを防止できます。

    Web GUIの操作制限機能

    JP1ユーザーの操作制限は,マネージャーホストごとに指定できます。操作制限が個別に設定されていないJP1ユーザーには,デフォルトの設定(参照だけを許可する)が適用されます。その部門の担当者が使用するJP1ユーザーだけ操作を許可することで,ほかの部門の担当者が誤ってユニットを操作することを防止できます。

    [図データ]

  3. 各部門のユーザーの操作制限を,各部門の責任者が管理できるようにする。

    Web GUIの操作制限機能では,操作制限を管理するユーザー(設定ユーザー)を,マネージャーホストごとに指定できます。

    部門ごとに,その部門の責任者が使用するJP1ユーザーだけを設定ユーザーに指定することで,部門ごとのユーザーの操作制限をその部門の責任者が管理できるようになります。また,ほかの部門の責任者が誤って操作制限の設定を変更することを防止できます。

    [図データ]

  4. ユーザーアプリケーションからのAPIの実行を制限する。

    APIの実行制限機能を有効にすることで,APIの実行を制限できます。ユーザーアプリケーションを使用しないでWeb GUIだけで運用したい場合,APIの実行を制限することで,ユーザーアプリケーションからの不正な操作の実行を防止できます。

    [図データ]

(4) 設定手順

各機能を設定するために,システム管理者と設定ユーザーがそれぞれ実施する手順について説明します。

システム管理者の作業

Web GUIの操作制限機能およびAPIの実行制限機能を有効にします。また,接続を許可するマネージャーホスト名と,マネージャーホストごとの設定ユーザーを指定します。

設定ユーザーの作業

Web GUIから,マネージャーホストごとに,ユーザーの操作制限を設定します。

ここでは,次のようなJP1ユーザーを想定します。

表13‒9 JP1ユーザーの例

項番

JP1ユーザー名

ユーザーの役割

担当する業務

1

jp1admin

システム管理者

JP1/AJS3 システム全体を管理する。

2

admin1

営業部門の責任者

Web GUIを使用した監視と運用を実施し,設定ユーザーとしてユーザーの操作制限を管理する。

3

admin2

総務部門の責任者

Web GUIを使用した監視と運用を実施し,設定ユーザーとしてユーザーの操作制限を管理する。

4

user1

営業部門の担当者

Web GUIを使用して運用状況を監視し,ユニットの再実行だけを実行する。

次に,それぞれのユーザーが実施する手順について説明します。

(a) システム管理者の作業

システム管理者がJP1/AJS3 - Web Consoleの環境設定ファイル(ajs3web.conf)を編集することで,Web GUIの操作制限機能およびAPIの実行制限機能を有効にします。また,接続を許可するマネージャーホスト名と,マネージャーホストごとの設定ユーザーを指定します。

システム管理者が実施する作業の手順を,次に示します。

  1. JP1/AJS3 HTTP Serverサービス,およびJP1/AJS3 Web Application Serverサービスを停止する。

  2. ajs3web.confを任意のフォルダにバックアップする。

  3. モデルファイルajs3web.conf.modelをコピーして,ajs3web.confにリネームする。

  4. ajs3web.confをテキストエディターで開く。

  5. パラメーターGUI_OPERATION_RESTRICTIONの冒頭の「;」(セミコロン)を削除し,値に「yes」を指定する。

  6. パラメーターPERMITTED_AJS_MANAGER_HOSTの冒頭の「;」(セミコロン)を削除し,接続を許可したいマネージャーホスト名を指定する。

    マネージャーホスト名とは,次の方法で確認できる名前です。

    物理ホストの場合

    マネージャーホスト上でhostnameコマンドを実行すると出力されるホスト名。

    論理ホストの場合

    論理ホスト環境をセットアップしたときの論理ホスト名。

    この例では,営業部門と総務部門で使用するマネージャーホストのホスト名だけを指定します。

    PERMITTED_AJS_MANAGER_HOST=HostA,HostB

  7. パラメーターAPI_EXECUTION_RESTRICTION冒頭の「;」(セミコロン)を削除し,値に「yes」を指定する。

  8. 設定ユーザーにしたいJP1ユーザーを指定する。

    次に示すように,接続するマネージャーホストごとに,システム管理者が使用するjp1adminと各部門の責任者が使用するJP1ユーザーを設定ユーザーに指定します。

    営業部門用マネージャーホスト

    [HostA]

    WEB_CONSOLE_SETTING_USER=jp1admin,admin1

    総務部門用マネージャーホスト

    [HostB]

    WEB_CONSOLE_SETTING_USER=jp1admin,admin2

  9. ファイルを保存する。

  10. JP1/AJS3 HTTP Serverサービス,およびJP1/AJS3 Web Application Serverサービスを起動する。

(b) 設定ユーザーの作業

設定ユーザーがWeb GUIから操作許可設定ファイルを適用することで,ユーザーの操作制限を設定します。設定ユーザーが実施する作業の手順を,次に示します。

  1. 操作制限を設定したいマネージャーホストを指定して,Web GUIでログインする。

  2. 画面上部の[管理]メニューから,[操作許可設定]−[モデルファイルの取得]を選択する。

    操作許可設定ファイルのモデルファイル(operationpermission_model.csv)がダウンロードされます。

  3. ダウンロードしたモデルファイルをコピーして,任意のファイル名にリネームする。

  4. リネームした操作許可設定ファイルを,操作許可設定ファイルのマスターファイルとして,任意のフォルダに格納する。

  5. 操作許可設定ファイルのマスターファイルを,表計算ソフトなどを使用して,CSV形式で開く。

  6. 定義内容を変更する。

    次の表に示す操作制限を設定したい場合の,操作許可設定ファイルの記述例について説明します。

    表13‒10 操作許可設定ファイルで設定する内容

    氏名

    JP1ユーザー名

    所属部門

    役職

    操作制限の設定内容

    日立 太郎

    jp1admin

    運用部門

    運用責任者

    すべて許可

    日立 花子

    jp1user1

    運用部門

    運用担当者

    定義編集以外を許可

    日立 次郎

    jp1user2

    開発部門

    開発担当者

    参照と定義編集を許可

    そのほかのユーザー

    参照だけを許可

    記述例

    FileVersion=1.0,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,
    #,任意1,任意2,任意3,任意4,任意5,任意6,任意7,任意8,任意9,任意10,JP1ユーザー名,区分,実行登録,登録解除,追加,計画一時変更(日時変更),計画一時変更(即時実行),計画一時変更(実行中止),計画一時変更(変更解除),遅延監視変更,再実行,中断,強制終了,ジョブ状態変更,定義編集,保留設定,保留解除
    #,Option 1,Option 2,Option 3,Option 4,Option 5,Option 6,Option 7,Option 8,Option 9,Option 10,JP1 User Name,Classification,Register for Execution,Cancel Registration,Add,Change Plan (Change Time),Change Plan (Execute Immediately),Change Plan (Execution Prohibited),Change Plan (Release Change),Delay monitoring changed,Rerun,Interrupted,Kill,Change Status,Edit Definition,Hold,Hold Release
    ,日立製作所,運用部門,運用責任者,日立 太郎,,,,,,,jp1admin,A,,,,,,,,,,,,,,,
    ,日立製作所,運用部門,運用担当者,日立 花子,,,,,,,jp1user1,C,1,1,1,1,1,1,1,1,1,1,1,1,0,1,1
    ,日立製作所,開発部門,開発担当者,日立 次郎,,,,,,,jp1user2,C,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,1,0,0
    ,Default setting,,,,,,,,,,*,R,,,,,,,,,,,,,,,
  7. 操作許可設定ファイルをCSV形式で保存する。

  8. Web GUIの画面上部の[管理]メニューから,[操作許可設定]−[適用]を選択する。

    [操作許可設定の適用]ダイアログボックスが開きます。

  9. [選択]から編集した操作許可設定ファイルを選択し,[OK]ボタンをクリックする。

    メモ

    操作許可設定ファイルを選択したあとに,ファイルの内容を変更して適用した場合,変更した内容が反映されなかったり,リクエストを送信できずに通信タイムアウトが発生したりする場合があります。操作許可設定ファイルを選択したあとにファイルの内容を変更した場合は,ファイルを再度,選択し直してください。

  10. Web GUIを利用する各ユーザーに,ログインし直すよう連絡する。

    メモ

    設定または変更した操作許可設定は,Web GUIを利用している各ユーザーが再ログインするまで反映されません。必要に応じて,JP1/AJS3 HTTP ServerサービスおよびJP1/AJS3 Web Application Serverサービスの再起動を検討してください。

(5) マニュアル記載箇所

項目

詳細項目

参照箇所

概要

Web GUIの操作制限機能

マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 操作ガイド 14.2 Web GUIを使用するユーザーの操作制限の設定」

設定手順

環境設定ファイル(ajs3web.conf

  • マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 3.4.3 環境設定ファイル(ajs3web.conf)の設定項目の詳細」(Windowsの場合)

  • マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 13.3.3 環境設定ファイル(ajs3web.conf)の設定項目の詳細」(Linuxの場合)

操作許可設定ファイル

マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 操作ガイド 17.2.2 ユーザーごとの操作制限のカスタマイズ」

画面

[操作許可設定の適用]ダイアログボックス

マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 操作ガイド 16.27 [操作許可設定の適用]ダイアログボックス」

(6) 注意事項