3.1.1　ジョブのスループット

(a)　TCP/IPパラメーター

ジョブを大量に実行するような運用の場合，JP1/AJS3内のプロセス間通信およびマネージャー・エージェント間通信で利用するソケットポート数がOSの上限を超え，ジョブ実行遅延，ジョブ異常終了，スケジューラーサービス異常終了，およびコマンド異常終了が発生することがあります。

このため，業務のピーク時にソケットポート数不足が発生しないように，OSのTCP/IPパラメーターを調整する必要があります。調整するパラメーターを次に示します。

• ソケットポートの個数

• ソケットポートのTIME_WAIT間隔

各OSのTCP/IPパラメーターのデフォルト値を次の表に示します。

表3‒2　TCP/IPパラメーターのデフォルト値

OS	利用できる ソケットポート数	TIME_WAIT間隔 （単位：秒）
Windows	16,383	120
HP-UX(IPF)	16,383	60
Solaris	32,768	60
AIX	32,768	15
Linux	28,233	60

利用できるソケットポート数やTIME_WAIT間隔の値は，OSのバージョンやサービスパックによって異なることがあるため，最新のOSのマニュアルなどで確認してください。

Windowsの場合，次に示すレジストリーの設定を変更してOSを再起動することでTCP/IPパラメーターを変更できます。設定の変更方法およびその他のOSでの変更方法については，各OSのマニュアルを参照してください。

• レジストリーキー

  \\HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\Tcpip\Parameters

• パラメーター

  • MaxUserPort

  • TcpTimedWaitDelay

次に示す方法で，TIME_WAIT間隔単位時間当たりで実行できる最大ジョブ数を見積もり，必要に応じてTCP/IPパラメーターを調整してください。

なお，OSのTCP/IPパラメーターを調整することによって，OSリソースが消費されることがあります。詳細については，各OSのマニュアルなどを確認してください。

見積もり方法

次の計算式で見積もります。

TIME_WAIT間隔※1単位時間当たりで実行できる最大ジョブ数
 = 利用できるソケットポート数※1，※2，※3 / JP1/AJS3使用ポート数※4

注※1

具体的な値は，OSのTCP/IPパラメーター値を確認してください

注※2

OSのTCP/IPパラメーター値は，システムで利用できる総数です。このため，OSのサービスやJP1/AJS3以外の製品が利用するソケットポート数を除いた値としてください。

注※3

ジョブ配信遅延の軽減機能を有効にした状態で障害エージェントを検知した場合，通信状態確認中または通信状態回復確認中は，最大で1,024個分のソケットポートを使用します。

注※4

JP1/AJS3での1ジョブ実行時にTIME_WAITとなるポート数です。

なお，JP1/AJS3での1ジョブ実行時にTIME_WAITとなるポート数は，使用するポート数を削減する設定と，通信暗号化機能の設定によって異なります。

使用するポート数の削減は，環境設定パラメーターREDUCEUSEPORTで設定できます。環境設定パラメーターREDUCEUSEPORTの詳細については，マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド　20.8.2(5) REDUCEUSEPORT」を参照してください。

JP1/AJS3での1ジョブ実行時にTIME_WAITとなるポート数を，次の表に示します。

表3‒3　JP1/AJS3での1ジョブ実行時にTIME_WAITとなるポート数

使用するポートを削減する設定※1	通信暗号化機能
	無効	有効
有効	最大4個※2	最大1個※2
無効	最大11個※2	最大5個※2

注※1

次のジョブ種別を使用する場合は，使用するポート数を削減する設定は常に無効として見積もってください。

• QUEUEジョブ

• サブミットジョブ

• フレキシブルジョブ

• イベントジョブ

注※2

エージェント監視インターバル（デフォルト5分）がTIME_WAIT間隔より短い場合は，使用するポート数の値に1を加えて見積もってください。

また，最大ジョブ数を見積もるときは，実行エージェントの操作によってTIME_WAITとなるポート数も含めて検討する必要があります。実行エージェントの操作で使用するポート数については，「3.2.6 ポート使用量を見積もる」を参照してください。

見積もり例

Windows Server 2019の場合（OSのデフォルト設定の場合）を例にして説明します。

• OSで利用できるソケットポート数

  16,383個^※

• TIME_WAIT間隔

  120秒

• 使用するポート数を削減する設定が有効で，かつ通信暗号化機能が無効のときにTIME_WAITとなるポート数

  最大4個

• TIME_WAIT間隔単位時間当たりで実行できる最大ジョブ数

  16,383 / 4 ≒ 4,095

注※

JP1/AJS3以外の製品でソケットポートを利用しない場合の個数です。実際に見積もりをする際には，OSのサービスやJP1/AJS3以外の製品で利用するソケットポート数を除いた値にする必要があります。

この例の場合，120秒間に4,095以上のジョブを実行するとソケットポートが枯渇してジョブ実行遅延などが発生するおそれがあります。そのため，120秒間に4,095以上のジョブを実行するような状況が考えられる場合，OSのTCP/IPパラメーターの設定を変更して最大ジョブ実行数を調整する必要があります。