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JP1 Version 11 JP1/Advanced Shell 


1.4 クラスタシステムでの運用の概要

クラスタシステムとは,複数のサーバシステムを用いて1つのシステムとして運用するシステムで,1つのサーバで障害が発生しても,別のサーバで業務を継続できるように構成するシステムです。クラスタシステムでは,ホストを次のように分類します。

業務を実行している実行系サーバに障害が発生した場合は,待機系サーバに業務を引き継ぐことができます。この障害時に業務を引き継ぐ機能のことを系切り替えと呼びます。また,系切り替え時にフェールオーバーの単位となる論理的なサーバのことを論理ホストと呼びます。

クラスタシステムで実行されるアプリケーションは,系切り替え後も業務を継続するために,論理ホスト環境で動作させる必要があります。論理ホストで動作するアプリケーションは,物理的なサーバに依存しないで,任意のサーバで動作できます。

論理ホストは次の要素で構成されています。デーモン・サービスとして動作するアプリケーションは,共有ディスクにデータを格納し,論理IPアドレスで通信します。

表1‒2 論理ホストの構成要素

論理ホストの構成要素

構成要素の説明

デーモン・サービス

クラスタシステムで実行するJP1/AJSやJP1/Advanced Shellなどのアプリケーションです。

実行系サーバの論理ホストで障害が発生すると,待機系サーバの論理ホストで同じ名称のデーモン・サービスを起動します。

共有ディスク

実行系サーバと待機系サーバの両方に接続されたディスク装置です。

系切り替え時に引き継ぐ情報(定義情報,実行状況など)を保存すると,実行系サーバの論理ホストで障害が発生した場合,待機系サーバが共有ディスクへの接続を引き継ぎます。

論理IPアドレス

論理ホストの動作中に割り当てられるIPアドレスです。

実行系サーバで障害が発生したときは,同じ論理IPアドレスの割り当てを待機系サーバが引き継ぎます。そのため,クライアントからは同じIPアドレスでアクセスでき,1つのサーバが常に動作しているように見えます。

重要

このマニュアルでは,系切り替え時にフェールオーバーの単位となる論理的なサーバのことを「論理ホスト」という用語を使いますが,クラスタソフトやアプリケーションによっては「グループ」や「パッケージ」などの用語が使われています。クラスタソフトのマニュアルなどを参照し,対応する用語を確認してください。

また,系切り替え時にフェールオーバーの単位となる論理的なサーバを論理ホストと呼ぶのに対して,物理的なサーバを「物理ホスト」と呼びます。

正常時および系切り替え後のアクセスを次の図に示します。

図1‒9 正常時および系切り替え後のアクセス

[図データ]

図の内容について次に示します。

JP1/Advanced Shellを論理ホスト環境で動作させるためには,系切り替え時に引き継ぎが必要なデータを格納するための共有ディスク,および論理IPアドレスが必要となります。また,ユーザー応答機能を使用する場合は,クラスタソフトがユーザー応答機能管理デーモン・サービスの,起動・動作監視・停止を制御できるように,クラスタソフトで設定する必要があります。

論理ホスト環境で実行されるJP1/Advanced Shellは,共有ディスクに格納したデータを使用し,系切り替え時に実行系サーバから待機系サーバにジョブを実行する環境を引き継ぐことができます。そのためにJP1/Advanced Shellはスプールを共有ディスクに格納する必要があります。ただし,系切り替え時に実行中のジョブを継続して実行することはできません。

JP1/Advanced Shellでクラスタ運用に対応するための設定については,「2.9 クラスタ構成で運用する」を参照してください。