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JP1 Version 11 JP1/Service Level Management


6.1.1 クラスタシステムでの運用の前提条件

JP1/SLMは,クラスタシステムの論理ホスト環境で動作し,フェールオーバーに対応します。論理ホスト環境で実行する場合のJP1/SLMの前提条件は,共有ディスクや論理IPアドレスの割り当て・削除・動作監視がクラスタソフトによって正常に制御されていることです。

JP1/SLMの運用で使用できるクラスタソフトは,Windows Server Failover Clusterです。

重要

JP1/SLMがサポートしているクラスタソフトであっても,システム構成や環境設定によっては,ここで説明する前提条件を満たさない場合があります。前提条件を満たすよう,システム構成や環境設定を検討してください。

〈この項の構成〉

(1) 論理ホスト環境の前提条件

JP1/SLMを論理ホスト環境で実行する場合,共有ディスクと論理IPアドレスについて,次に示す前提条件があります。

表6‒1 論理ホスト環境の前提条件

論理ホストの構成要素

前提条件

共有ディスク

  • 実行系サーバから待機系サーバへ引き継ぎ可能な共有ディスクが使用できること。

  • JP1/SLMを起動する前に,共有ディスクが割り当てられること。

  • JP1/SLMを実行中に,共有ディスクの割り当てが解除されないこと。

  • JP1/SLMを停止したあとで,共有ディスクの割り当てが解除されること。

  • 共有ディスクが,不当に複数のノードから使用されないよう制御されていること。

  • システムダウンなどでファイルが消えないよう,ジャーナル機能を持つファイルシステムなどでファイルが保護されていること。

  • フェールオーバーしてもファイルに書き込んだ内容が保証されて引き継がれること。

  • フェールオーバー時に共有ディスクを使用中のプロセスがあっても,強制的にフェールオーバーができること。

  • 共有ディスクの障害を検知した場合の回復処置はクラスタソフトなどが制御し,回復処置をJP1/SLMが意識する必要がないこと。回復処置の延長でJP1/SLMの起動や停止が必要な場合は,クラスタソフトからJP1/SLMに起動や停止の実行要求がされること。

論理IPアドレス

  • 引き継ぎ可能な論理IPアドレスを使って通信できること。

  • 論理ホスト名から論理IPアドレスが一意に求められること。

  • JP1/SLMを起動する前に,論理IPアドレスが割り当てられること。

  • JP1/SLMを実行中に,論理IPアドレスが削除されないこと。

  • JP1/SLMを実行中に,論理ホスト名と論理IPアドレスの対応が変更されないこと。

  • JP1/SLMを停止したあとに,論理IPアドレスが削除されること。

  • ネットワーク障害を検知した場合の回復処置はクラスタソフトなどが制御し,JP1/SLMが回復処理を意識する必要がないこと。また,回復処置の延長でJP1/SLMの起動や停止が必要な場合は,クラスタソフトからJP1/SLMに起動や停止の実行要求がされること。

(2) 物理ホスト環境の前提条件

JP1/SLMを論理ホストで運用するクラスタシステムでは,各サーバの物理ホスト環境が次に示す前提条件を満たしている必要があります。

表6‒2 物理ホスト環境の前提条件

物理ホストの構成要素

前提条件

サーバ本体

  • 2台のサーバ機によるクラスタ構成になっていること。

  • 実行する処理に応じたCPU性能があること(例えば,論理ホストを多重起動する場合などに,対応できるCPU性能があること)。

  • 実行する処理に応じた実メモリ容量があること(例えば,論理ホストを多重起動する場合などに,対応できる実メモリ容量があること)。

ディスク

  • システムダウンなどでファイルが消えないよう,ジャーナル機能を持つファイルシステムなどでファイルが保護されていること。

ネットワーク

  • 物理ホスト名(hostnameコマンドの結果)に対応するIPアドレスで通信できること(クラスタソフトなどによって通信ができない状態に変更されないこと)。

  • JP1/SLMの動作中に,ホスト名とIPアドレスの対応が変更されないこと(クラスタソフトやネームサーバなどによって変更されないこと)。

  • ホスト名に対応したLANボードがネットワークのバインド設定で最優先になっていること(ハートビート用などほかのLANボードが優先になっていないこと)。

OS,クラスタソフト

  • JP1/SLMがサポートするクラスタソフトおよびバージョンであること。

  • JP1/SLMおよびクラスタソフトが前提とするパッチやサービスパックが適用済みであること。

  • フェールオーバーしても同じ処理ができるよう,各サーバの環境が適切に設定されていること。

(3) JP1/SLMがサポートする範囲

クラスタシステムで論理ホストのJP1/SLMを運用する場合,JP1/SLMが制御する範囲は,JP1/SLM自身の動作だけです。論理ホスト環境の制御(共有ディスク割り当ておよび論理IPアドレスの引き継ぎの制御など)については,クラスタソフトの制御に依存します。

また,論理ホスト環境および物理ホスト環境の前提条件が満たされていない場合,または論理ホスト環境の制御に問題がある場合は,JP1/SLMの動作によって発生した問題も,サポートの対象外となります。この場合は,論理ホスト環境を制御しているクラスタソフトやOSのドキュメントなどを参照して,問題に対処してください。