17.4.4 HA用にNNMiを設定する(UNIXの場合)
ここでは,UNIX環境でHA用にNNMiを設定する手順を説明します。
NNMiのHA設定では,新規にNNMi用のリソースグループを作成します。このため,対象のリソースグループがない状態から設定作業を行ってください。
NNMiのHA設定を行うスクリプト(nnmhaconfigure.ovpl)は,内部的にクラスタソフトに対してリソースグループや各リソースを作成する処理を行います。設定作業が完了すると,次のリソースグループが設定されます。
項目 |
ファイル名 |
---|---|
パッケージ構成ファイル |
/etc/cmcluster/<resource_group>/<resource_group>.conf |
パッケージ制御スクリプト |
/etc/cmcluster/<resource_group>/<resource_group>.cntl |
監視スクリプト |
/etc/cmcluster/<resource_group>/<resource_group>.mon |
リソース名 |
リソースタイプ |
説明 |
---|---|---|
<resource_group>-ip |
IP |
仮想IP アドレスを制御する |
<resource_group>-dg |
DiskGroup |
ディスクグループを制御する |
<resource_group>-volume |
Volume |
ボリュームを制御する |
<resource_group>-mount |
Mount |
共有ファイルシステムを制御する |
<resource_group>-app |
Application |
NNMiの起動/停止/監視を制御する |
各リソースの設定内容の例を次に示します。
- (例)VCSまたはSCSの設定ファイルmain.cfの定義例
-
<>で囲んだ部分は,nnmhaconfigure.ovplで指定した設定項目の値になります。
group <resource_group> ( SystemList = { <node1> = 1 , <node2> = 1} UserStrGlobal = "NNM_INTERFACE=<virtual_host>;HA_LOCALE=<LOCALE>;HA_MOUNT_POINT=<mountpoint>" ) Application <resource_group>-app ( StartProgram = "/opt/OV/misc/nnm/ha/nnmharg.ovpl NNM -start <resource_group>" StopProgram = "/opt/OV/misc/nnm/ha/nnmharg.ovpl NNM -stop <resource_group>" CleanProgram = "/opt/OV/misc/nnm/ha/nnmharg.ovpl NNM -clean <resource_group>" MonitorProgram = "/opt/OV/misc/nnm/ha/nnmharg.ovpl NNM -monitor <resource_group> -return 1 0" OnlineTimeout = 1800 ) DiskGroup <resource_group>-dg ( DiskGroup = <disk_group> ) IP <resource_group>-ip ( Device = <network_interface_of_virtual_host> Address = "10.208.228.159" NetMask = "255.255.255.0" ) Mount <resource_group>-mount ( MountPoint = "<mountpoint>" BlockDevice = "/dev/vx/dsk/<disk_group>/<volume_group>" FSType = <type_of_shared_file_systems> FsckOpt = "-y" ) Volume <resource_group>-volume ( Volume = <volume_group> DiskGroup = <disk_group> ) <resource_group>-app requires <resource_group>-ip <resource_group>-app requires <resource_group>-mount <resource_group>-mount requires <resource_group>-volume <resource_group>-volume requires <resource_group>-dg <resource_group>-volume requires <resource_group>-ip
設定項目 |
設定内容(Cm2 制御スクリプト) |
---|---|
name (起動) |
/var/opt/OV/hacluster/<resource_group>/cm2_start.sh |
termcommand (停止) |
/var/opt/OV/hacluster/<resource_group>/cm2_stop.sh |
patolcommand (監視) |
/var/opt/OV/hacluster/<resource_group>/cm2_monitor.sh |
- 注意事項
-
HAモニタの場合は,nnmhaconfigure.ovplを使わずに設定作業を行います。設定方法については,リリースノートを参照してください。
(1) プライマリクラスタノードでのNNMiの設定
プライマリクラスタノードで次の手順を実行します。
(a) 前準備
-
「17.2 HA用NNMiを設定するための前提条件の検証」の作業が完了していることを確認する。
-
NNMiがインストールされていない場合は,インストールします。そして,NNMiが正しく動作することを確認する。
-
次のコマンドを使って,NNMi設定をバックアップする。
(例)
/opt/OV/bin/nnmbackup.ovpl -scope all -target <directory>
このコマンドの詳細については,「18. NNMiのバックアップおよびリストアツール」を参照してください。
NNMiのクラスタ環境構成において初期状態では,プライマリクラスタノードのデータと,セカンダリクラスタノードのデータが完全に一致している必要があります。このため,ここで取得したバックアップデータを,セカンダリクラスタノードの設定手順でリストアし,データを一致させます。
(b) データの共有ディスクへのコピー
-
共有ディスクのマウントポイントになるディレクトリを作成する。
共有ディスクのマウントポイントディレクトリが,ユーザーはroot,グループはsysで作成され,パーミッションには555が設定されていることを確認します。
(例)
ls -l
-
NNMi HAリソースグループ用に,共有ディスクを用意する。
- 注意事項
-
用意した共有ディスクが,次の条件を満たすことを確認してください。
-
フォーマット済みである
-
十分な空き容量がある
-
ほかのリソースグループで使用されていない
-
-
共有ディスクをアクティブ化して,マウントする。
(例)
-
Solaris VCSまたはSCSでディスク管理にVxVM/VxFSを使う構成の場合
vxdg import <disk_group> vxvol -g <disk_group> startall mount -F vxfs /dev/vx/dsk/<disk_group>/<volume_group> <HA_mount_point>
-
Linux VCSまたはSCSでディスク管理にVxVM/VxFSを使う構成の場合
vxdg import <disk_group> vxvol -g <disk_group> startall mount -t vxfs /dev/vx/dsk/<disk_group>/<volume_group> <HA_mount_point>
-
HP-UX HP SGの場合
vgchange -c n <volume_group> vgchange -a y <volume_group> mount /dev/<volume_group>/<logical_volume> <HA_mount_point>
-
-
NNMiを停止する。
/opt/OV/bin/ovstop -c
-
NNMiファイルを共有ディスクにコピーする。
/opt/OV/misc/nnm/ha/nnmhadisk.ovpl NNM -to <HA_mount_point>
- 注意事項
-
指定したマウントポイント直下に,ディレクトリ「NNM」が作成されます(<HA_mount_point>/NNM)。
格納先ディレクトリ名を変更することはできません。
-
共有ディスクをマウント解除し,非アクティブ化する。
(例)
-
VCSまたはSCSかつVxVM/VxFS使用構成の場合
umount <HA_mount_point>
vxvol -g <disk_group> stopall
vxdg deport <disk_group>
-
HP-UX HP SGの場合
umount <HA_mount_point>
vgchange -a n <volume_group>
vgchange -c y <volume_group>
操作時にHP SGが動作している必要があります。
-
(c) NNMiのHA設定
-
NNMi HAリソースグループを新規に作成する。
/opt/OV/misc/nnm/ha/nnmhaconfigure.ovpl NNM
このコマンドの設定項目については,「17.9.2 NNMiに付属しているHA設定スクリプト」を参照してください。
共有ディスクタイプはnoneではなく,必ずdiskを指定してください。
- (設定例)
-
HA設定項目は,nnmhaconfigure.ovplに対話形式で入力する項目を表示順に並べています。「17.4.2 HA用にNNMiを設定する」の表17-3の説明によって検討した内容を入力してください。
HA設定項目
設定例
HAリソースグループの名前
jp1ha1
仮想ホストの名前
jp1ha1
仮想ホストのネットワークインタフェース
lan0
共有ファイルシステムのタイプ
disk(必ずdiskを指定)
ディスクタイプ
vxfs
ディスクグループ(VCSまたはSCSだけ)
shdg3
ボリュームグループ
vg03
論理ボリューム(HP SGだけ)
lvol1
マウントするディレクトリ
/shdsk1
- 注意事項
-
設定コマンドを実行する前に,次の注意事項を確認してください。
-
HA構成のNNMiはnnmhaconfigure.ovpl実行時のロケールを使用して起動します。nnmhaconfigure.ovpl実行時に操作する画面に適切なロケール(LANG環境変数)が設定されていることを確認してください。
HP-UX HPSGの場合:ja_JP.SJISまたはja_JP.eucJP
Solaris VCSまたはSolaris SCSの場合:ja_JP.PCKまたはja_JP.eucJP
Linux VCSまたはLinux SCSの場合:ja_JP.UTF-8
HA構成の設定後にロケールを変更する場合は,「17.6 HA設定のメンテナンス」を参照してください。
-
すでにほかのリソースグループやリソースで使われている値をnnmhaconfigure.ovplに指定すると,リソースの作成が失敗するなどエラーが発生します。ほかで使われていないことを確認してから,nnmhaconfigure.ovplを実行してください。
-
すでに使われているリソースグループ名,IP アドレスやディスクを指定した場合,リソースを作成するために実行したクラスタソフトのコマンドがエラーとなります。エラー発生時点でnnmhaconfigure.ovplは異常終了し,それまでに作成されたリソースグループやリソースは残ったままとなります。エラーを対処してnnmhaconfigure.ovplを再実行する前に,クラスタソフトの操作で残っているリソースを削除してください。
-
nnmhaconfigure.ovpl実行時に,次のメッセージが出力される場合がありますが,内部処理でのメッセージであり問題ありません。
「ディスク グループが見つかりません。インポートを試みます。」
「Unable to perform the security token exchange with cmclconfd on node xxxxx
Cannot connect to configuration daemon (cmclconfd) on node xxxxx」
-
- (実行例)
-
設定例の値を指定した場合の画面表示例です。" ? "の後ろが入力する項目です。
-
HPSG (HP-UX)の場合の実行例
────────────────────────────────── # /opt/OV/misc/nnm/ha/nnmhaconfigure.ovpl NNM 質問: HA リソース グループの名前を入力してください: ? jp1ha1 プライマリ ノードの設定が検出されました。 質問: 有効な仮想ホストの名前を入力してください: ? jp1ha1 使用可能なネットワーク インタフェース: ネットワーク サブネット マスク ネットワーク インタフェース none lan3* 192.168.69.0 lan2 10.208.69.0 lan0 選択可能な値: 1: lan3* 2: lan2 3: lan0 質問: 仮想ホストのネットワーク インタフェースを入力してください: ? 3 選択可能な値: 1: disk 2: none 質問: 共有ファイル システムのタイプを入力してください (disk,none): ? 1 選択可能な値: 1: vxfs 質問: ディスク タイプの名前を入力してください: ? 1 質問: ボリューム グループの名前を入力してください: ? vg03 選択可能な値: 1: group 2: lvol1 3: rlvol1 質問: 論理ボリュームの名前を入力してください: ? 2 質問: ディスクをマウントするディレクトリを入力してください: ? /shdsk1 リソース グループを作成しています。 Completed the cluster update HA 値の /var/opt/OV/shared/nnm/conf/ov.conf を設定しています。 ブート スクリプトを削除しています。 # ──────────────────────────────────
-
VCSまたはSCS (Linux)の場合の実行例
────────────────────────────────── # /opt/OV/misc/nnm/ha/nnmhaconfigure.ovpl NNM 質問: HA リソース グループの名前を入力してください: ? jp1ha1 プライマリ ノードの設定が検出されました。 質問: 有効な仮想ホストの名前を入力してください: ? jp1ha1 情報: ネットワーク インタフェース情報の使用: ネットワーク インタフェース: bond0 ネットワーク サブネット マスク: 255.255.255.0 選択可能な値: 1: disk 2: none 質問: 共有ファイル システムのタイプを入力してください (disk,none): ? 1 選択可能な値: 1: vxfs 2: ext2 3: ext3 質問: ディスク タイプの名前を入力してください: ? 1 質問: ディスク グループの名前を入力してください: ? shdg3 ディスク グループが見つかりません。インポートを試みます。 質問: ボリューム グループの名前を入力してください: ? shvol3 質問: ディスクをマウントするディレクトリを入力してください: ? /shdsk1 リソース グループを作成しています。 VCS NOTICE V-16-1-10136 Group added; populating SystemList and setting the Parallel attribute recommended before adding resources HA 値の /var/opt/OV/shared/nnm/conf/ov.conf を設定しています。 ブート スクリプトを削除しています。 注: 指定されている仮想ホスト名に一致するようにNNMi FQDNを更新しています。fqdn を jp1ha1 に設定しています。 ドメインを xxx.xxx に設定しています。 新しい SSL 証明書を生成しています。 jp1ha1.selfsigned のキーストアの証明書を生成しています。 [成功] 生成された証明書をトラストストアにエクスポートしています。 証明書がファイル<temporary.cert>に保存されました。 証明書がキーストアに追加されました。 # ──────────────────────────────────
-
VCSまたはSCSの場合,作成したリソースを有効化(Enabledを1に設定)する。
- 例
-
hares -modify <resource_group>-app Enabled 1
hares -modify <resource_group>-dg Enabled 1
hares -modify <resource_group>-ip Enabled 1
hares -modify <resource_group>-mount Enabled 1
hares -modify <resource_group>-volume Enabled 1
その後,VCSまたはSCSの設定を読み取り専用にして,VCSまたはSCSの設定ファイルmain.cf を出力させます。
haconf -dump -makero
VCSまたはSCSがネットワークインタフェースを監視するリソース(VCSまたはSCSのNIC,MultiNICA,MultiNICBなど)は設定されていませんので,必要に応じて追加設定をしてください。
- 注意事項
-
HTTPS通信を使用してNNMiサーバーにアクセスする場合,証明書を使用するように設定します。詳細については,「8.5 自己署名証明書またはCA証明書を使用するように高可用性クラスタを設定する」を参照してください。
(d) 起動の確認
-
NNMi HAリソースグループを起動する。
/opt/OV/misc/nnm/ha/nnmhastartrg.ovpl NNM <resource_group>
このコマンドは,HAリソースグループの起動を待たずに,プロンプトが返ってくるため,HAクラスタソフトのコマンドを使用してリソースグループの起動を確認してください。
NNMiを正常に起動できなかった場合は,「17.8 HA設定のトラブルシューティング」を参照してください。
これで,NNMiがHA下で動作するようになりました。
- 注意事項
-
HA構成のNNMiの通常のオペレーションでは,ovstartコマンドやovstopコマンドは使わないでください。これらのコマンドは,メンテナンスを目的として操作手順に明示されている場合だけ使用します。HA構成のNNMiの起動や停止は,クラスタソフトの操作によってHAリソースグループを起動または停止するようにしてください。
(2) セカンダリクラスタノードでのNNMiの設定
セカンダリクラスタノードでは1つのノードごとに順番に次の手順を実行します。
(a) 前準備
-
「17.2 HA用NNMiを設定するための前提条件の検証」の作業が完了していることを確認する。
-
NNMiがインストールされていない場合は,NNMiをインストールし,正しく動作することを確認する。
-
リストアをする。
「17.4.4(1) プライマリクラスタノードでのNNMiの設定」の(a)の手順3.で取得したバックアップデータをセカンダリクラスタノードにリストアします。
/opt/OV/bin/nnmrestore.ovpl -force -partial -source <backup_data>
このコマンドの詳細については,「18. NNMiのバックアップおよびリストアツール」を参照してください。
(b) NNMiのHA設定
-
共有ディスクのマウントポイントを作成する。
このマウントポイントでは,「17.4.4(1) プライマリクラスタノードでのNNMiの設定」の(b)の手順1.で作成したマウントポイントと同じ名前を使う必要があります。
-
NNMiを停止する。
/opt/OV/bin/ovstop -c
-
NNMi HAリソースグループを設定する。
/opt/OV/misc/nnm/ha/nnmhaconfigure.ovpl NNM
コマンドの要求に応じて,HAリソースグループ名を指定します。
(実行例)
────────────────────────────────── # /opt/OV/misc/nnm/ha/nnmhaconfigure.ovpl NNM 質問: HA リソース グループの名前を入力してください: ? jp1ha1 セカンダリ ノードの設定が検出されました。 Completed the cluster update ブート スクリプトを削除しています。 注: 指定されている仮想ホスト名に一致するようにNNMi FQDNを更新しています。fqdn を jp1ha1.xxx.xxx に設定しています。 ドメインを .xxx.xxx に設定しています。 新しい SSL 証明書を生成しています。 # ──────────────────────────────────
-
VCSまたはSCSの場合,HAクラスタに設定変更を反映させる。
haconf -dump -makero
-
設定が正常に行われたことを確認する。
/opt/OV/misc/nnm/ha/nnmhaclusterinfo.ovpl -group <resource_group> -nodes
このコマンドの出力には,指定したHAリソースグループに設定されたすべてのノードがリストされます。
-
任意で,プライマリクラスタノードのリソースグループをオフラインにし,セカンダリクラスタノードのリソースグループをオンラインにすることで,設定をテストする。