クラスタソフトウェアと連携した相互系切り替えシステムの構成例を次の図に示します。系切り替え時,クライアントやデータベースなどサーバの外からは,同じ論理アドレスでアプリケーションサーバが再起動したようにみえます。
図22-8 相互系切り替えシステムの構成例
図に示す,相互系切り替えシステムについて説明します。
- 実行系1(待機系2)および待機系1(実行系2)の各アプリケーションサーバは,異なる運用管理ドメインで管理されています。
- それぞれの運用管理ドメイン内に,現用系および予備系の二つの仮想ホストを定義しています。現用系および予備系の仮想ホストは,それぞれ実行系アプリケーションサーバ,待機系アプリケーションサーバとして使用します。
- 障害発生時は,相互の運用管理ドメイン内の仮想ホストが切り替えられます。例えば,図中のサーバ1の現用系仮想ホストで障害が発生した場合,サーバ2の予備系仮想ホストに系が切り替えられます。
- 各サーバの運用に使用するIPアドレスは,クラスタソフトウェアによって動的に割り当てられるIPアドレス(エイリアスIPアドレス)を使用します。図中の相互系切り替えシステムの場合,「xxx.xxx.1.111」および「xxx.xxx.2.222」がエイリアスIPアドレスとなります。なお,クラスタソフトウェアはIPアドレス単位にLANを切り替えるため,サーバ1およびサーバ2のクラスタIPアドレスには一意となる値が割り当てられます。系切り替え時は,現用系仮想ホストでエイリアスIPアドレスが削除され,予備系仮想ホストでエイリアスIPアドレスが追加されることで処理が引き継がれます。
- Management Serverから運用管理エージェントに対するリクエストの送信には,系切り替えによって他系へ移動しないIPアドレス(ステーショナリIPアドレス)を使用します。図中の相互系切り替えシステムの場合,現用系1の「xxx.xxx.0.11」,および予備系1の「xxx.xxx.0.22」がステーショナリIPアドレスとなります。
- 参考
- 仮想ホストとは,一つのマシンに複数の異なるIPアドレスを割り当てて,複数の物理ホストとして使用できる構成です。同一運用管理ドメイン内の仮想ホストは,一つの運用管理エージェントによってアプリケーションサーバの起動や停止などの運用操作を制御できますが,運用に使用するIPアドレスは異なるため,見かけ上は異なる物理ホストとして扱われます。
なお,相互系切り替えシステムでは次のような運用ができます。
- 共用ディスク装置の使用
- 共用ディスク装置の使用については,ローカルトランザクションの場合とグローバルトランザクションの場合とで異なります。
- ローカルトランザクションの場合
共用ディスク装置は不要です。ローカルトランザクションでは,実行系と待機系との間で引き継ぐセッション情報がないため,共用ディスク装置を使用しません。
- グローバルトランザクションの場合
共用ディスク装置が必要になります。共用ディスク装置は,系切り替え時に,OTSのステータスなどのトランザクション情報を引き継ぐために使用します。
- JP1との連携
- クラスタソフトウェアを使用した構成では,JP1とも連携できます。
- JP1と連携する場合,アプリケーションサーバには,JP1/Baseなども必要になります。クラスタソフトウェアでのJP1の管理は,Cosminexusとは別に行う必要があります。
- データベースサーバでのクラスタソフトウェアとの連携
- データベースサーバでもクラスタソフトウェアを使用した構成にすることもできます。この場合,アプリケーションサーバ側では,仮想アドレス(論理アドレス)だけを認識していれば,特にデータベースサーバがクラスタソフトウェアを使用していることを意識する必要はありません。
- 負荷分散機の適用
- このシステム構成例では示していませんが,同一構成のWebサーバを複数用意して,負荷分散機を適用することもできます。これによって,Webサーバの信頼性・稼働率を上げることができます。
相互系切り替えシステムのシステム構成の詳細については,マニュアル「Cosminexus システム設計ガイド」を参照してください。
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