Replication Manager Software Application Agent CLI ユーザーズガイド
DAG構成は,Exchange Server 2010またはExchange Server 2013の高可用性機能の一つです。DAG構成で使用するメールボックスデータベースをメールボックスデータベースコピーといいます。レプリケーション元のメールボックスデータベースコピーをアクティブメールボックスデータベースコピー,レプリケーション先のメールボックスデータベースコピーをパッシブメールボックスデータベースコピーといいます。DAG構成では,複数のExchangeデータベースをグループ化でき,そのグループ内でメールボックスデータベースをバックアップします。アクティブメールボックスデータベースコピーに障害が発生した場合,パッシブメールボックスデータベースコピーのデータを使用して,運用を継続できます。
Application Agentでは,メールの誤送信やウイルスによる影響など,論理的な障害が起こる場合に備え,メールボックスデータベースコピーのバックアップ機能とそのバックアップデータのリストア機能を提供しています。リストア機能では,リストアしたアクティブメールボックスデータベースコピーにパッシブメールボックスデータベースコピーをコピーしてデータを再同期するシード処理を実行します。
DAG構成はメールボックスストアだけを管理していますが,Application Agentを使用することで,メールボックスストアとパブリックフォルダストアの両方をバックアップおよびリストア対象に同時に指定できます。これは,Application Agentがレプリケーションの停止,シード機能といったDAG構成に関連する処理からパブリックフォルダストアを除くためです。
Application Agentを使用したDAG構成には,次の4種類があります。
- アクティブメールボックスデータベースコピーをバックアップおよびリストアする構成
- パッシブメールボックスデータベースコピーをバックアップおよびリストアする構成
- アクティブメールボックスデータベースコピーとパッシブメールボックスデータベースコピーで異なるバックアップサーバを使用した構成
- アクティブメールボックスデータベースコピーとパッシブメールボックスデータベースコピーで同じバックアップサーバを使用した構成
- この項の構成
- (1) アクティブメールボックスデータベースコピーをバックアップおよびリストアする構成
- (2) パッシブメールボックスデータベースコピーをバックアップおよびリストアする構成
- (3) アクティブメールボックスデータベースコピーとパッシブメールボックスデータベースコピーで異なるバックアップサーバを使用した構成
- (4) アクティブメールボックスデータベースコピーとパッシブメールボックスデータベースコピーで同じバックアップサーバを使用した構成
- (5) DAG構成の比較
(1) アクティブメールボックスデータベースコピーをバックアップおよびリストアする構成
アクティブメールボックスデータベースコピーをバックアップおよびリストアする場合のDAG構成例を次に示します。
図2-26 アクティブメールボックスデータベースコピーをバックアップおよびリストアする構成
アクティブメールボックスデータベースコピーとして正ボリューム1,パッシブメールボックスデータベースコピーとして正ボリューム2,そしてバックアップサーバが管理する副ボリュームがあります。アクティブ側で業務,バックアップ,リストアのすべてを担当し,パッシブ側はアクティブ側の業務を一時的に代行します。アクティブ側とパッシブ側のデータの同期は,ログシップで実現されます。アクティブ側で正ボリューム1から副ボリュームにバックアップし,副ボリュームからテープ装置にデータを格納します。
アクティブ側で障害が発生した場合,パッシブ側が業務を代行します。アクティブ側が障害から回復するまで,バックアップおよびリストアできません。アクティブ側の回復後にパッシブ側からシード処理が実行され,代行中の更新データがアクティブ側に反映されます。
パッシブ側で障害が発生した場合,アクティブ側からシード処理が実行され,パッシブ側のデータを回復させます。
アクティブ側,パッシブ側の両方にウイルスなどで論理的な障害が発生した場合,テープ装置から副ボリュームにリストアし,副ボリュームから正ボリューム1にリストアします。リストアされたデータは,シード処理によって正ボリューム2に反映されます。
(2) パッシブメールボックスデータベースコピーをバックアップおよびリストアする構成
パッシブメールボックスデータベースコピーをバックアップおよびリストアする場合のDAG構成例を次に示します。
図2-27 パッシブメールボックスデータベースコピーをバックアップおよびリストアする構成
アクティブメールボックスデータベースコピーとして正ボリューム1,パッシブメールボックスデータベースコピーとして正ボリューム2,そしてバックアップサーバが管理する副ボリュームがあります。アクティブ側は業務,パッシブ側はアクティブ側の代行とバックアップおよびリストアを担当します。アクティブ側とパッシブ側のデータの同期は,ログシップで実現されます。パッシブ側で正ボリューム2から副ボリュームにバックアップし,副ボリュームからテープ装置にデータを格納します。
アクティブ側で障害が発生した場合,パッシブ側が業務を代行します。アクティブ側の回復後にパッシブ側からシード処理が実行され,代行中の更新データがアクティブ側に反映されます。
パッシブ側で障害が発生した場合,アクティブ側からシード処理が実行され,パッシブ側のデータを回復させます。パッシブ側が障害から回復するまで,バックアップおよびリストアできません。
アクティブ側,パッシブ側の両方にウイルスなどで論理的な障害が発生した場合,テープ装置から副ボリュームにリストアし,副ボリュームから正ボリューム2にリストアします。リストアされたデータは,シード処理によって正ボリューム1に反映されます。
(3) アクティブメールボックスデータベースコピーとパッシブメールボックスデータベースコピーで異なるバックアップサーバを使用した構成
アクティブメールボックスデータベースコピーとパッシブメールボックスデータベースコピーを異なるバックアップサーバを使用してバックアップおよびリストアする場合のDAG構成例を次に示します。
図2-28 アクティブメールボックスデータベースコピーとパッシブメールボックスデータベースコピーで異なるバックアップサーバを使用した構成
アクティブメールボックスデータベースコピーとして正ボリューム1,パッシブメールボックスデータベースコピーとして正ボリューム2があります。そして,バックアップサーバ1が管理する副ボリューム1,バックアップサーバ2が管理する副ボリューム2があります。アクティブ側とパッシブ側のデータの同期は,ログシップで実現されます。アクティブ側とパッシブ側の両方でバックアップし,それぞれの副ボリュームからテープ装置にデータを格納します。
アクティブ側で障害が発生した場合,パッシブ側が業務を代行し,バックアップおよびリストアします。代行中にパッシブ側で論理的な障害が発生した場合,テープ装置から副ボリューム2にリストア,さらに副ボリューム2から正ボリューム2にリストアします。アクティブ側の回復後に,正ボリューム2からシード処理が実行され,代行中の更新データが正ボリューム1に反映されます。
パッシブ側で障害が発生した場合,アクティブ側からシード処理が実行され,パッシブ側のデータを回復させます。
アクティブ側,パッシブ側の両方にウイルスなどで論理的な障害が発生した場合,テープ装置から副ボリューム1にリストアし,副ボリューム1から正ボリューム1にリストアします。リストアされたデータは,シード処理によって正ボリューム2に反映されます。
(4) アクティブメールボックスデータベースコピーとパッシブメールボックスデータベースコピーで同じバックアップサーバを使用した構成
アクティブメールボックスデータベースコピーとパッシブメールボックスデータベースコピーを同じバックアップサーバを使用してバックアップおよびリストアする場合のDAG構成例を次に示します。
図2-29 アクティブメールボックスデータベースコピーとパッシブメールボックスデータベースコピーで同じバックアップサーバを使用した構成
アクティブメールボックスデータベースコピーとして正ボリューム1,パッシブメールボックスデータベースコピーとして正ボリューム2があります。そして,バックアップサーバが管理する副ボリューム1と副ボリューム2があります。アクティブ側とパッシブ側のデータの同期は,ログシップで実現されます。アクティブ側とパッシブ側の両方でバックアップし,それぞれの副ボリュームからテープ装置にデータを格納します。
アクティブ側で障害が発生した場合,パッシブ側が業務を代行します。アクティブ側の回復後にパッシブ側からシード処理が実行され,代行中の更新データがアクティブ側に反映されます。
パッシブ側で障害が発生した場合,アクティブ側からシード処理が実行され,パッシブ側のデータを回復させます。
アクティブ側,パッシブ側の両方にウイルスなどで論理的な障害が発生した場合,テープ装置から副ボリューム1にリストアし,副ボリューム1から正ボリューム1にリストアします。リストアされたデータは,シード処理によって副ボリューム2に反映されます。
Application Agentを使用した4種類のDAG構成の比較表を次に示します。システムを構成する際に参考にしてください。
項目 構成1 構成2 構成3 構成4 対障害性 バックアップサーバまたはバックアップボリュームに障害が発生した場合,バックアップおよびリストアできない。 1つのバックアップサーバまたはバックアップボリュームに障害が発生した場合でも,バックアップおよびリストアできる。 1つのバックアップボリュームに障害が発生した場合でも,バックアップおよびリストアできる。バックアップサーバに障害が発生した場合,バックアップおよびリストアできない。 コスト バックアップサーバ数とバックアップボリューム数が構成3と構成4に比べて少なく済む。 バックアップサーバ数とバックアップボリューム数が構成1と構成2に比べて多い。 ベリファイに掛かる時間 バックアップボリュームは1つのため,ベリファイに掛かる時間は構成4に比べて短い。 バックアップボリュームは2つだが,それぞれに対してバックアップサーバがあるため,ベリファイに掛かる時間は構成4に比べて短い。 バックアップボリュームが2つに対し,バックアップサーバは1つしかないため,ベリファイ処理に掛かる時間が,ほかの構成の2倍になる。VERIFY_PARALLEL_COUNTパラメーターを設定すれば,ベリファイ処理を並列に実行して時間を短縮できる。
- (凡例)
- 構成1:アクティブメールボックスデータベースコピーをバックアップおよびリストアする構成
- 構成2:パッシブメールボックスデータベースコピーをバックアップおよびリストアする構成
- 構成3:アクティブメールボックスデータベースコピーとパッシブメールボックスデータベースコピーを異なるバックアップサーバを使用してバックアップおよびリストアする構成
- 構成4:アクティブメールボックスデータベースコピーとパッシブメールボックスデータベースコピーを同じバックアップサーバを使用してバックアップおよびリストアする構成
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