JP1/Base 運用ガイド
JP1は,クラスタシステムでは論理ホスト環境で動作し,フェールオーバーに対応します。論理ホスト環境で実行する場合のJP1の前提条件は,共有ディスクや論理IPアドレスの割り当て・削除・動作監視がクラスタソフトによって正常に制御されていることです。
- 注意事項
- JP1がサポートしているクラスタソフトであっても,システム構成や環境設定によってはここで説明する前提条件を満たさない場合があります。前提条件を満たすよう,システム構成や環境設定を検討してください。
- <この節の構成>
- (1) 論理ホスト環境の前提条件
- (2) 物理ホスト環境の前提条件
- (3) JP1がサポートする範囲
- (4) 論理ホストの指定方法
- (5) 論理ホスト名の条件
JP1を論理ホスト環境で実行する場合,論理IPアドレスと共有ディスクについて,次に示す前提条件があります。
表10-2 論理ホスト環境の前提条件
論理ホストの
構成要素前提条件 共有ディスク
- 実行系から待機系へ引き継ぎ可能な共有ディスクが使用できること。
- JP1を起動する前に,共有ディスクが割り当てられること。
- JP1を実行中に,共有ディスクの割り当てが解除されないこと。
- JP1を停止した後に,共有ディスクの割り当てが解除されること。
- 共有ディスクが,不当に複数サーバから使用されないよう排他制御されていること。
- システムダウンなどでファイルが消えないよう,ジャーナル機能を持つファイルシステムなどでファイルを保護すること。
- フェールオーバーしてもファイルに書き込んだ内容が保証されて引き継がれること。
- フェールオーバー時に共有ディスクを使用中のプロセスがあっても,強制的にフェールオーバーができること。
- 共有ディスクの障害を検知した場合の回復処置はクラスタソフトなどが制御し,回復処置をJP1が意識する必要がないこと。回復処置の延長でJP1の起動や停止が必要な場合は,クラスタソフトからJP1に起動や停止の実行要求をすること。
論理IPアドレス
- 引き継ぎ可能な論理IPアドレスを使って通信できること。
- 論理ホスト名から論理IPアドレスが一意に求まること。
- JP1を起動する前に,論理IPアドレスが割り当てられること。
- JP1を実行中に,論理IPアドレスが削除されないこと。
- JP1を実行中に,論理ホスト名と論理IPアドレスの対応が変更されないこと。
- JP1を停止した後に,論理IPアドレスが削除されること。
- ネットワーク障害を検知した場合の回復処置はクラスタソフトなどが制御し,JP1が回復処理を意識する必要がないこと。また,回復処置の延長でJP1の起動や停止が必要な場合は,クラスタソフトからJP1に起動や停止の実行要求をすること。
上記の条件が満たされていない場合は,JP1の動作に問題が起きることがあります。例えば,次のような問題が発生します。
- 実行系で書き込んだデータが,フェールオーバーした時に壊れてしまう場合
JP1でエラー・データ消失・起動失敗などの問題が発生し,正常に動作できません。
- LANボード障害が発生しても回復処理がされない場合
クラスタソフトなどの制御によってLANボードが切り替えられるか,または他サーバへフェールオーバーするまで,通信エラーが発生しJP1は正常に動作できません。
物理ホスト環境でJP1を実行する場合,次に示す前提条件があります。また,論理ホスト環境のJP1だけを実行する場合でも,システム環境として次に示す前提条件を満たしている必要があります。
表10-3 物理ホスト環境の前提条件
物理ホストの
構成要素前提条件 サーバ本体
- 2台以上のサーバ機によるクラスタ構成になっていること。
- 実行する処理に応じたCPU性能があること。
(例えば,論理ホストを多重起動する場合などに,対応できるCPU性能があること)
- 実行する処理に応じた実メモリー容量があること。
(例えば,論理ホストを多重起動する場合などに,対応できる実メモリー容量があること)
ディスク
- システムダウンなどでファイルが消えないよう,ジャーナル機能を持つファイルシステムなどでファイルを保護すること。
ネットワーク
- ホスト名(hostnameコマンドの結果)に対応するIPアドレスで通信が可能なこと。
(クラスタソフトなどによって通信ができない状態に変更されないこと)
- JP1の動作中に,ホスト名とIPアドレスの対応が変更されないこと。
(クラスタソフトやネームサーバなどによって変更がされないこと)
- Windowsの場合,ホスト名に対応したLANボードがネットワークのバインド設定で最優先になっていること。
(ハートビート用などほかのLANボードが優先になっていないこと)
OS,クラスタソフト
- JP1がサポートするクラスタソフトおよびバージョンであること。
- JP1およびクラスタソフトが前提とするパッチやサービスパックが適用済みであること。
- フェールオーバーしても同じ処理ができるよう,各サーバの環境が同じになっていること。
(3) JP1がサポートする範囲
クラスタシステムでJP1を運用する場合,JP1がサポートする範囲は,JP1自体の動作だけです。論理ホスト環境(共有ディスクおよび論理IPアドレス)の制御はクラスタソフトの制御に依存します。
また,前述の論理ホスト環境および物理ホスト環境の前提条件が満たされていない,または論理ホスト環境の制御に問題がある場合は,JP1の動作に発生した問題もサポートの対象外となります。この場合は,論理ホスト環境を制御しているクラスタソフトやOSで問題に対処してください。
(4) 論理ホストの指定方法
コマンドを実行する場合,論理ホストでコマンドを実行させるために,論理ホスト名を指定する必要があります。論理ホスト名を指定しないと,物理ホストでコマンドが実行されます。論理ホストの指定方法には,論理ホスト名をJP1_HOSTNAME環境変数に設定する方法と,コマンドオプションで指定する方法があります。それぞれについて次の表で説明します。
指定方法 説明 JP1_HOSTNAME環境変数 JP1_HOSTNAME環境変数で,論理ホスト名を指定します。論理ホスト名をコマンドオプションと環境変数の両方で指定した場合は,コマンドオプションの設定が優先されます。 コマンドオプション 「コマンド -h 論理ホスト名」の形式でコマンドのオプションに指定します。詳細は各コマンドの説明を参照してください。
- 注意事項
- Windowsの場合,JP1_HOSTNAME環境変数をシステム環境変数,ユーザー環境変数として設定しないでください。サービスの起動などができなくなるおそれがあります。JP1_HOSTNAME環境変数の設定は,コマンドプロンプト,またはバッチファイルで行ってください。
(5) 論理ホスト名の条件
論理ホスト名は次に示す条件で指定してください。
- 指定できる文字数:Windowsの場合1〜196バイト(推奨:63バイト以内)※1,UNIXの場合1〜255バイト(推奨:63バイト以内)※1※2
- 使用できる文字:英数字,-(ハイフン)
- 注※1 JP1/Baseで指定できる文字数は上記のとおりですが,クラスタソフトで上記文字数に対応していない場合があります。論理ホスト名を指定する場合は,クラスタソフトの制限文字数を超えないよう注意してください。実際の運用では,63バイト以内を推奨します。
- 注※2 UNIX限定の強制終了コマンド(jbs_killall.cluster)で指定できる論理ホスト名は,15バイトまでです。名称が16バイト以上の論理ホスト名は指定できません。
- 注意事項
- 論理ホスト名と物理ホスト名(hostnameコマンドの実行結果)を同じ名称にしてJP1を運用する場合,以下にご注意ください。なお,クラスタシステムで指定する論理ホスト名は,物理ホスト名とは異なる名称を使用することを強く推奨します。
- 論理ホストのJP1だけを起動する。
論理ホストのJP1だけを起動し,物理ホストのJP1は起動しないでください。
- イベントサービス環境の設定を変更する。
イベントサーバインデックスファイルにデフォルトで設定されている「server * default」の行をコメントにしてください。この行が残っている場合,論理ホストのイベントサービスのデータベースがローカルディスクに作成され,フェールオーバーで引き継ぎができません。実行系と待機系それぞれで設定を変更してください。
- 環境設定ディレクトリの設定を変更する。
物理ホストの環境設定ディレクトリを共有ディレクトリにするために,次の手順で設定を変更してください。実行系と待機系それぞれで設定を変更してください。
Windowsの場合
1. 次の内容の定義ファイルを作成する。
ファイル名は任意です。
[JP1_DEFAULT\JP1BASE\]
"JP1BASE_CONFDIR"="共有フォルダ\jp1base\conf\"
2. 次のコマンドを実行し,作成した定義ファイルの内容を共通定義情報に反映する。
jbssetcnf 定義ファイル名
UNIXの場合
1. 次の内容の定義ファイルを作成する。
ファイル名は任意です。
[JP1_DEFAULT\JP1BASE\]
"JP1BASE_CONFDIR"="/共有ディレクトリ/jp1base/conf"
2. 次のコマンドを実行し,作成した定義ファイルの内容を共通定義情報に反映する。
/opt/jp1base/bin/jbssetcnf 定義ファイル名
- 統合トレース(HNTRLib2)を再起動する。
システムの動作中にホスト名を変更する場合は,統合トレース(HNTRLib2)の再起動が必要です。次の手順で再起動してください。
Windowsの場合
1. コントロールパネルの[サービス]ダイアログボックスで手動停止する。
2. ホスト名を変更する。
3. コントロールパネルの[サービス]ダイアログボックスで手動起動する。
UNIXの場合
1. hntr2killコマンドを使って統合トレース(HNTRLib2)を停止する。
2. ホスト名を変更する。
3. 次のコマンドを実行し,統合トレース(HNTRLib2)を起動する。
hntr2mon -d &
統合トレース(HNTRLib2)を再起動するまでの間は,トレース情報が記録されません。統合トレースを使用しているすべてのアプリケーションを停止させてから統合トレースを停止し,起動する場合は,ほかのアプリケーションより先に起動させてください。なお,hntr2killコマンドの詳細については,「13. コマンド」の「hntr2kill(UNIX限定)」を参照してください。
- DNS運用の場合は,論理ホスト名にFQDN形式ではないホスト名を使用してください。例えば,「jp1v7.soft.hitachi.co.jp」の場合は,論理ホスト名を「jp1v7」と指定します。このホスト名で名前解決されるように設定してください。
- Windowsの場合,JP1_HOSTNAME環境変数をシステム環境変数,ユーザー環境変数として設定しないでください。サービスの起動などができなくなることがあります。JP1_HOSTNAMEの設定は,コマンドプロンプト,またはバッチファイルで行ってください。
- UNIXで強制終了コマンド(jbs_killall.cluster)を使用する場合は,論理ホスト名の先頭から15バイトまでで一意になるような名称を指定してください。このコマンドは,論理ホスト名を先頭から15バイトまでで判定して,対応するプロセスを強制終了します。名称が16バイト以上の論理ホストのプロセスは強制終了できません。
All Rights Reserved. Copyright (C) 2006, 2008, Hitachi, Ltd.