JP1/Base 運用ガイド

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10.2 クラスタ運用の前提条件とサポート範囲

JP1は,クラスタシステムでは論理ホスト環境で動作し,フェールオーバーに対応します。論理ホスト環境で実行する場合のJP1の前提条件は,共有ディスクや論理IPアドレスの割り当て・削除・動作監視がクラスタソフトによって正常に制御されていることです。

注意事項
JP1がサポートしているクラスタソフトであっても,システム構成や環境設定によってはここで説明する前提条件を満たさない場合があります。前提条件を満たすよう,システム構成や環境設定を検討してください。
<この節の構成>
(1) 論理ホスト環境の前提条件
(2) 物理ホスト環境の前提条件
(3) JP1がサポートする範囲
(4) 論理ホストの指定方法
(5) 論理ホスト名の条件

(1) 論理ホスト環境の前提条件

JP1を論理ホスト環境で実行する場合,論理IPアドレスと共有ディスクについて,次に示す前提条件があります。

表10-2 論理ホスト環境の前提条件

論理ホストの
構成要素
前提条件
共有ディスク
  • 実行系から待機系へ引き継ぎ可能な共有ディスクが使用できること。
  • JP1を起動する前に,共有ディスクが割り当てられること。
  • JP1を実行中に,共有ディスクの割り当てが解除されないこと。
  • JP1を停止した後に,共有ディスクの割り当てが解除されること。
  • 共有ディスクが,不当に複数サーバから使用されないよう排他制御されていること。
  • システムダウンなどでファイルが消えないよう,ジャーナル機能を持つファイルシステムなどでファイルを保護すること。
  • フェールオーバーしてもファイルに書き込んだ内容が保証されて引き継がれること。
  • フェールオーバー時に共有ディスクを使用中のプロセスがあっても,強制的にフェールオーバーができること。
  • 共有ディスクの障害を検知した場合の回復処置はクラスタソフトなどが制御し,回復処置をJP1が意識する必要がないこと。回復処置の延長でJP1の起動や停止が必要な場合は,クラスタソフトからJP1に起動や停止の実行要求をすること。
論理IPアドレス
  • 引き継ぎ可能な論理IPアドレスを使って通信できること。
  • 論理ホスト名から論理IPアドレスが一意に求まること。
  • JP1を起動する前に,論理IPアドレスが割り当てられること。
  • JP1を実行中に,論理IPアドレスが削除されないこと。
  • JP1を実行中に,論理ホスト名と論理IPアドレスの対応が変更されないこと。
  • JP1を停止した後に,論理IPアドレスが削除されること。
  • ネットワーク障害を検知した場合の回復処置はクラスタソフトなどが制御し,JP1が回復処理を意識する必要がないこと。また,回復処置の延長でJP1の起動や停止が必要な場合は,クラスタソフトからJP1に起動や停止の実行要求をすること。

上記の条件が満たされていない場合は,JP1の動作に問題が起きることがあります。例えば,次のような問題が発生します。

(2) 物理ホスト環境の前提条件

物理ホスト環境でJP1を実行する場合,次に示す前提条件があります。また,論理ホスト環境のJP1だけを実行する場合でも,システム環境として次に示す前提条件を満たしている必要があります。

表10-3 物理ホスト環境の前提条件

物理ホストの
構成要素
前提条件
サーバ本体
  • 2台以上のサーバ機によるクラスタ構成になっていること。
  • 実行する処理に応じたCPU性能があること。
    (例えば,論理ホストを多重起動する場合などに,対応できるCPU性能があること)
  • 実行する処理に応じた実メモリー容量があること。
    (例えば,論理ホストを多重起動する場合などに,対応できる実メモリー容量があること)
ディスク
  • システムダウンなどでファイルが消えないよう,ジャーナル機能を持つファイルシステムなどでファイルを保護すること。
ネットワーク
  • ホスト名(hostnameコマンドの結果)に対応するIPアドレスで通信が可能なこと。
    (クラスタソフトなどによって通信ができない状態に変更されないこと)
  • JP1の動作中に,ホスト名とIPアドレスの対応が変更されないこと。
    (クラスタソフトやネームサーバなどによって変更がされないこと)
  • Windowsの場合,ホスト名に対応したLANボードがネットワークのバインド設定で最優先になっていること。
    (ハートビート用などほかのLANボードが優先になっていないこと)
OS,クラスタソフト
  • JP1がサポートするクラスタソフトおよびバージョンであること。
  • JP1およびクラスタソフトが前提とするパッチやサービスパックが適用済みであること。
  • フェールオーバーしても同じ処理ができるよう,各サーバの環境が同じになっていること。

(3) JP1がサポートする範囲

クラスタシステムでJP1を運用する場合,JP1がサポートする範囲は,JP1自体の動作だけです。論理ホスト環境(共有ディスクおよび論理IPアドレス)の制御はクラスタソフトの制御に依存します。

また,前述の論理ホスト環境および物理ホスト環境の前提条件が満たされていない,または論理ホスト環境の制御に問題がある場合は,JP1の動作に発生した問題もサポートの対象外となります。この場合は,論理ホスト環境を制御しているクラスタソフトやOSで問題に対処してください。

(4) 論理ホストの指定方法

コマンドを実行する場合,論理ホストでコマンドを実行させるために,論理ホスト名を指定する必要があります。論理ホスト名を指定しないと,物理ホストでコマンドが実行されます。論理ホストの指定方法には,論理ホスト名をJP1_HOSTNAME環境変数に設定する方法と,コマンドオプションで指定する方法があります。それぞれについて次の表で説明します。

指定方法 説明
JP1_HOSTNAME環境変数 JP1_HOSTNAME環境変数で,論理ホスト名を指定します。論理ホスト名をコマンドオプションと環境変数の両方で指定した場合は,コマンドオプションの設定が優先されます。
コマンドオプション コマンド -h 論理ホスト名」の形式でコマンドのオプションに指定します。詳細は各コマンドの説明を参照してください。

注意事項
Windowsの場合,JP1_HOSTNAME環境変数をシステム環境変数,ユーザー環境変数として設定しないでください。サービスの起動などができなくなるおそれがあります。JP1_HOSTNAME環境変数の設定は,コマンドプロンプト,またはバッチファイルで行ってください。

(5) 論理ホスト名の条件

論理ホスト名は次に示す条件で指定してください。

注意事項

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