Hitachi

高信頼化システム監視機能 HAモニタ Linux(R)(x86)編


3.2.9 実行サーバレスモードでの系切り替え

実行サーバレスモードとは,他系に実行サーバがない状態で,事前に待機サーバだけを起動・待機させることができる機能です。この機能を使用すると,ディザスタリカバリ構成のシステム(正サイトと副サイトで構成されているシステム)で,副サイトの実行サーバの起動時間が短縮されます。

注意事項
  • モニタモードのサーバでは,実行サーバレスモードを使用しても,副サイトの実行サーバの起動時間を短縮できません。ただし,系切り替え時に次の運用ができます。

    ・サーバモードのサーバとグループ化する。

    ・サーバモードのサーバと合わせて,サーバの切り替え順序を制御する。

  • 複数の待機系を配置するマルチスタンバイ機能を使用している場合は,実行サーバレスモードを使用できません。

実行サーバレスモードは,次の状態でサイトの系切り替えをする場合に有効です。

この状態で実行サーバレスモードを使用すると,サイトを切り替える前に,副サイトの待機サーバを起動・待機させることができます。

〈この項の構成〉

(1) 実行サーバレスモードでの系切り替えの流れ

実行サーバレスモードを使用してサイトの計画系切り替えをする流れを,次の3つの段階に分けて説明します。

実行サーバレスモードの設定

実行サーバレスモードの設定の流れを次の図に示します。

図3‒12 実行サーバレスモードの設定の流れ

[図データ]

実行サーバレスモードの設定の流れを説明します。番号は,図中の番号と対応しています。

  1. 副サイトにHAモニタの起動コマンド(monstartコマンド)を実行します。

  2. 副サイトのHAモニタが起動します。

  3. 副サイトにHAモニタ・サーバ稼働中の設定・動作の変更コマンド(monchangeコマンド)を実行します。

  4. HAモニタが実行サーバレスモードになります。

  5. 副サイトにサーバ起動コマンドを実行します。

  6. 副サイトの待機サーバが起動します。

注※1

サーバモードかモニタモードかどうかに関係なく,すべてのサーバが実行サーバレスモードで動作します。

注※2

実行サーバレスモードであれば,サーバ対応の環境設定のinitialオペランドの設定に関係なく,各系で待機サーバを起動できます。待機サーバの起動が完了すると,サーバの状態は+SBY+(実行サーバレスモードで待機サーバとして起動完了)となります。

実行サーバレスモードでの系切り替え

実行サーバレスモードでの系切り替えの流れを次の図に示します。

図3‒13 実行サーバレスモードでの系切り替えの流れ

[図データ]

実行サーバレスモードでの系切り替えの流れを説明します。番号は,図中の番号と対応しています。

  1. 共有ディスクの同期を停止してから,必要に応じて正サイトの実行サーバと待機サーバを停止します。

  2. 副サイトに待ち状態のサーバ起動コマンド(monactコマンド)を実行します。

  3. 副サイトの現用系で実行サーバが起動します。

  4. 副サイト内で,系切り替えができる状態になり,サイト切り替えが完了します。

注※1

+SBY+(実行サーバレスモードで待機サーバとして起動完了)状態から,実行サーバを起動するには,待ち状態のサーバ起動コマンド(monactコマンド)を実行します。+SBY+の状態から,待機サーバを正常停止するには,待機サーバ停止コマンド(monsbystpコマンド)を実行します。

注※2

+SBY+状態から,待ち状態のサーバ起動コマンド(monactコマンド)で実行サーバを起動する場合,系切り替えの動作となります。次のオペランドは,実行サーバ起動時ではなく,系切り替え時と同様の動作になります。

・HAモニタの環境設定のusrcommandオペランド

・HAモニタの環境設定のtermcmd_at_abortオペランド

・HAモニタの環境設定のservcomplete_msgオペランド

・サーバ対応の環境設定のparentオペランド

・サーバ対応の環境設定のuoc_pairdownオペランド

・サーバ対応の環境設定のdev_timelimitオペランド

・サーバ対応の環境設定のdev_onlimitオペランド

注※3

実行サーバレスモードでは,各系で待機サーバを起動できるので,副サイトの現用系と予備系の両方に待機サーバがある構成にできます。現用系で実行サーバとして稼働した際,サイト内で系切り替え可能な状態にできます。

実行サーバレスモードの解除

実行サーバレスモードの解除の流れを次の図に示します。

図3‒14 実行サーバレスモードの解除の流れ

[図データ]

実行サーバレスモードの解除の流れを説明します。番号は,図中の番号と対応しています。

  1. 副サイトにHAモニタ・サーバ稼働中の設定・動作の変更コマンド(monchangeコマンド)を実行します。

  2. 実行サーバレスモードが解除されます。

なお,実行サーバレスモード時の待機サーバの状態遷移については,「4.1.3 サーバの状態遷移」の「(3) 実行サーバレスモード時の待機サーバの状態遷移」を参照してください。

(2) 実行サーバレスモードの運用

実行サーバレスモードの運用について説明します。

重要

サーバモードで実行サーバレスモードを使用する場合は,次の運用をしてください。

実行サーバレスモードで待機しているサーバを,実行サーバとして起動するとき,系切り替え時と同様にサーバを再開始できる状態にします。ディザスタリカバリ構成のシステムで,実行サーバレスモードが有効となっている副サイトに切り替えるとき,次のどちらかを実施してください。

  • 正サイトから副サイトへの共有ディスクの同期を停止したあとに,サイトを切り替える。

  • 正サイトのサーバを強制停止したあとに,サイトを切り替える。

上記のどちらかを実施しないと,待ち状態のサーバ起動コマンド(monactコマンド)の実行に失敗します。monactコマンドの実行に失敗すると,切り替え先のサイトでサーバの再開始に失敗し,サーバが系切り替えできません。

実行サーバレスモードの解除

系切り替えが完了したら,HAモニタ・サーバ稼働中の設定・動作の変更コマンド(monchangeコマンド)で実行サーバレスモードを解除します。

実行サーバレスモードで起動したすべてのサーバが,次のどちらかの状態になっても実行サーバレスモードが解除されない場合,1時間ごとにメッセージKAMN549-Wが出力されます。

  • 実行サーバとして起動完了した状態

  • 実行サーバレスモードのサーバが停止した状態

実行サーバレスモードで実行サーバの起動に失敗した場合の運用

実行サーバの起動に失敗した要因を取り除いたあと,次のどちらかを実施します。

  • 障害が発生した系で,再度,実行サーバの起動を試みる。

    再度,待機サーバを起動し,待ち状態のサーバ起動コマンド(monactコマンド)で実行サーバを起動します。

  • 障害が発生した系とは別の系で,実行サーバを起動する。

    障害が発生した系のサーバをすべて停止し,実行サーバレスモードを解除します。そのあと,実行サーバレスモードで待機サーバが起動している別の系で,待ち状態のサーバ起動コマンド(monactコマンド)を実行し,実行サーバを起動します。

(3) 必要な環境設定

実行サーバレスモードを使用するためには,HAモニタの稼働中にHAモニタ・サーバ稼働中の設定・動作の変更コマンド(monchangeコマンド)を実行する必要があります。monchangeコマンドの詳細については,「9.6 monchange(HAモニタ・サーバ稼働中の設定・動作の変更)」を参照してください。