Dynamic Link Manager Software ユーザーズガイド(Solaris®用)

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3.5.1 HDLMを新規インストールする前の準備

Solarisのパッチのインストール,HDLMの管理対象デバイスのバックアップ,ハードウェアの設定,ボリューム管理ソフトウェアの設定などを行います。

この項の構成
(1) HDLM管理対象予定のデバイスへの操作
(2) Solarisのパッチのインストール
(3) ハードウェアの設定
(4) /kernel/drv/sd.confファイルの設定
(5) カーネルモードの切り替え
(6) /etc/systemファイルの設定
(7) /etc/syslog.confファイルまたは/etc/rsyslog.confファイルの設定
(8) VxVMの設定
(9) SDSまたはSVMの設定
(10) Sun Clusterの設定
(11) Solaris11環境での設定

(1) HDLM管理対象予定のデバイスへの操作

この手順は,HDLM管理対象予定のデバイスをすでに運用している場合に行ってください。

  1. HDLM管理対象予定のデバイスにアクセスするすべてのアプリケーションのプロセスを終了してください。
  2. 必要に応じてHDLM管理対象予定のデバイスの内容をテープなどにバックアップしてください。
  3. HDLM管理対象予定のデバイスの論理デバイスファイル名およびストレージシステムの内部LU番号の対応情報を控えてください。これは,HDLMをインストールしたあとの論理デバイスファイル名との対応が付けられるようにするためです。
  4. HDLMドライバ構成定義ファイル作成ユティリティ(dlmsetconf)を実行したあと,再構成オプションを指定してホストを再起動すると,HDLM管理対象予定のsdまたはssdデバイスの論理デバイスファイルが削除されます。/dev/dsk/dev/rdskのディレクトリ下の論理デバイスファイルを別のディレクトリにバックアップしてください。
    コマンドの実行例を次に示します。
     
    # mkdir /var/tmp/bkfile1
    # ls -l /dev/dsk > /var/tmp/bkfile1/devices1
    # ls -l /dev/rdsk > /var/tmp/bkfile1/devices2
     
  5. HDLM管理対象予定のデバイスの登録を解除します。
    クラスタソフトウェアを含むプログラム(ボリュームマネージャ以外)にHDLM管理対象予定のデバイスを登録している場合,登録を解除してください。HDLMデバイスにアクセスするときはHDLMデバイスの論理デバイスファイル名を使用するため,これまでの設定名ではアクセスできません。
  6. マウントを解除します。
    HDLM管理対象予定のデバイスをマウントしている場合は,マウントを解除してください。また,ホストの起動時に自動でマウントする設定をしている場合は,/etc/vfstabファイルを編集してその設定を削除してください。コマンドの実行例を次に示します。
    • マウントの解除
      はじめに,現在の設定を確認します。
      # mount -p
      現在の設定が次に示すように出力されます。

      図3-2 mount -pコマンドの実行結果

      [図]

      この例では,網掛けの部分がHDLM管理対象予定のデバイスです。ZFSファイルシステムの場合は,次のコマンドを実行してエクスポートします。
      # zpool export zpool1
      その他のファイルシステムの場合は,次のコマンドを実行してマウントを解除します。
      # umount /mntpt
    • 自動マウントの解除
      /etc/vfstabファイルの編集例を次に示します。

      図3-3 /etc/vfstabファイルの編集例

      [図]

      網掛け部分の行の先頭に「#」を付けてコメントアウトするか,または行を削除してください。
  7. ボリューム管理ソフトウェアからHDLM管理対象予定のデバイスの登録を解除します。
    VxVM,SDS,SVMなどで,HDLM管理対象予定のデバイスを登録している場合,その登録を解除してください。

(2) Solarisのパッチのインストール

3.1.1 HDLMがサポートするホストとOS」を参照して,Solarisのパッチをインストールしてください。

(3) ハードウェアの設定

Fibre Channel接続の場合は,接続方式(Fabric,ALなど)を確認し,接続方式に合わせて設定してください。

  1. ストレージシステムを設定します。
    設定内容については,HDLMのソフトウェア添付資料とストレージシステムの保守マニュアルを参照してください。
    日立製のRAID Managerで使用するコマンドデバイスは,HDLMの管理対象外です。
    日立製のRAID Managerで使用するコマンドデバイスを冗長化するときは,日立製のRAID Managerの機能を利用してください。
  2. スイッチを設定します。
    設定方法については,スイッチのマニュアルを参照してください。スイッチを使用しない場合,この操作は不要です。
  3. HBAを設定します。
    設定方法については,HDLMのソフトウェア添付資料,およびHBAのマニュアルを参照してください。

(4) /kernel/drv/sd.confファイルの設定

sdドライバを使用する場合,使用するHBAドライバによっては,ディスクを認識するために/kernel/drv/sd.confファイルを編集する必要があります。ファイルを編集する方法については,HBAのマニュアルを参照してください。

ssdドライバを使用する場合は,接続されたディスクは自動的に認識されるため,ファイルの編集は不要です。

/kernel/drv/sd.confファイルを編集したあと,再構成オプションを指定してホストを再起動してください。次に示すコマンドのうち,どちらかを実行してください。

ホストを再起動したあと,HDLMの管理対象予定のsdまたはssdデバイスが,formatコマンドで表示されていることを確認してください。

 
# format
 

設定方法の詳細については,HBAのマニュアルまたはSolarisのマニュアルを参照してください。

(5) カーネルモードの切り替え

32ビットカーネルを使用しているときにHDLMをインストールすると32ビット版のHDLMだけがインストールされます。64ビットカーネルを使用しているときにHDLMをインストールすると,32ビット版と64ビット版の両方のHDLMがインストールされます。HDLMをインストールする前に,32ビットカーネルと64ビットカーネルのどちらでSolarisを運用するかを決め,必要な場合はカーネルモードを切り替えておいてください。32ビット版のHDLMだけがインストールされているときに,カーネルモードを32ビットから64ビットに切り替えた場合,カーネルモードの切り替え後にHDLMを再インストールする必要があります。

現在使用しているカーネルモードを切り替える方法を次に示します。

  1. 現在使用しているカーネルモードを確認します。
    次にコマンドの実行例を示します。
     
    # isainfo -b
     
    32ビットカーネルを使用している場合は「32」と表示され,64ビットカーネルを使用している場合は「64」と表示されます。
  2. カーネルモードを切り替えます。
    次のコマンドを実行して,カーネルモードを32ビットまたは64ビットに切り替えてください。
    • 32ビットカーネルに切り替える場合
      Solarisが起動されている場合は,次に示すコマンドを実行してください。
      # reboot -- "ブートデバイス kernel/unix そのほかのブートオプション"
      okプロンプトが表示されている状態から起動する場合は,次に示すコマンドを実行してください。
      boot ブートデバイス kernel/unix そのほかのブートオプション
    • 64ビットカーネルに切り替える場合
      Solarisが起動されている場合は,次に示すコマンドを実行してください。
      # reboot -- "ブートデバイス kernel/sparcv9/unix そのほかのブートオプション"
      okプロンプトが表示されている状態から起動する場合は,次に示すコマンドを実行してください。
      boot ブートデバイス kernel/sparcv9/unix そのほかのブートオプション

(6) /etc/systemファイルの設定

HDLMはカーネルスレッドのスタックを最大8KB使用します。HDLMの使用量を加えたサイズをカーネルスレッドのスタックサイズに設定してしてください。Solaris 10またはSolaris 11はdefault_stksizelwp_default_stksizeより優先します。したがって,/etc/systemdefault_stksizeが設定されている場合は,default_stksizeに8KB追加してください。また,HDLMデバイスを使用するボリュームマネージャやファイルシステムの説明書で,カーネルスレッドのスタックサイズを拡大するように指示している場合は,その値もカーネルスレッドのスタックサイズに加える必要があります。

カーネルモードが64bitのシステムで,カーネルスレッドのスタックサイズをデフォルトのサイズから増やす手順を次に示します。

Solaris 8またはSolaris 9の場合
/etc/systemに「set lwp_default_stksize=0x6000」を追加してから,ホストを再起動してください。

Solaris 10またはSolaris 11の場合
/etc/systemに次に示すどちらかのパラメタの記述を追加してから,ホストを再起動してください。
  • set lwp_default_stksize=0x8000
  • set default_stksize=0x8000
    両方を記述した場合は,default_stksizeパラメタが優先されます。

(7) /etc/syslog.confファイルまたは/etc/rsyslog.confファイルの設定

dlmsetconfユティリティとHDLM障害情報収集ユティリティ(DLMgetras)は,syslogにメッセージを出力します。/etc/syslog.confまたは/etc/rsyslog.conf(システムログの構成定義ファイル)を参照して,Errorレベル以上のメッセージが出力される設定になっていることを確認します。

/etc/syslog.confまたは/etc/rsyslog.confに次に示す記述があることを確認してください。/etc/syslog.confファイルまたは/etc/rsyslog.confファイルの「*.err」の出力先は,デフォルトの/var/adm/messagesに指定することを推奨します。

 
*.err;kern.debug;daemon.notice;mail.crit;       /var/adm/messages
 

監査ログを採取する場合は,拡張用のFacility(local0~7)に監査ログ専用の出力先を指定することを推奨します。また,拡張用のFacilityの重要度は「info」を指定することを推奨します。/etc/syslog.confまたは/etc/rsyslog.confの設定例を次に示します。

 
local0.info /usr/local/audlog
 

(8) VxVMの設定

HDLMとVxVMを同じホストで使用する場合,次の手順でVxVMを設定してください。

  1. /dev/dsk/dev/rdskのディレクトリ下の論理デバイスファイルがバックアップされているか確認してください。
    バックアップされていない場合は,「3.5.1 HDLMを新規インストールする前の準備」の「(1) HDLM管理対象予定のデバイスへの操作」に記載されている,手順4を実行して,バックアップしてください。
  2. すでに作成されているディスクグループにHDLM管理対象予定のデバイスがある場合,該当するディスクグループをデポートします。
    詳細は,VxVMのマニュアルを参照してください。HDLMインストール後,デポートしたディスクグループをインポートすることによって,HDLM管理対象デバイスでディスクグループを使用することができます。
  3. SANRISE9500Vシリーズ,SANRISE9900Vシリーズ,Hitachi USPシリーズ,Hitachi AMS2000/AMS/TMS/WMS/SMSシリーズ,XP512,XP48,Universal Storage Platform V/VMシリーズまたはVirtual Storage Platformシリーズを使用する場合は,HDLMのインストール前にVxVMのArray Support Libraryをインストールしてください。
    詳細は,ストレージシステムのマニュアルを参照してください。
  4. VxVMをインストールしたあと,HDLMが管理対象とするsdまたはssdデバイスで構成されたディスクグループがbootdgとして登録されていないことを確認してください。
    HDLMが管理対象とするsdまたはssdデバイスで構成されているディスクグループがbootdgとして登録されている場合は,次のどちらかを実施してください。
    • VxVMのコマンドで,ディスクグループからHDLMが管理対象とするsdまたはssdデバイスを削除する
    • ディスクグループをbootdgの登録から解除する
    詳細は,VxVMのマニュアルを参照してください。
  5. HDLMが管理対象とするsdまたはssdデバイスを,VxVMの管理対象から除外してください。
    該当するsdまたはssdデバイスをVxVMの管理対象から除外する手順は,VxVMのマニュアルを参照してください。HDLMをインストールしている場合は,「3.14.3 VxVMでのデバイスの無効化」に従い,該当するsdまたはssdデバイスをVxVMの管理対象から除外してください。

(9) SDSまたはSVMの設定

HDLM管理対象予定のsdまたはssdデバイスをSDSまたはSVMで使用している場合,デバイスの設定を解除してください。詳細は,SDSまたはSVMのマニュアルを参照してください。

SDSまたはSVMの共有ディスクセットを使用する場合,各ホストのハード構成(ホストの種類,HBAの種類・数・搭載スロット,パス数と各パスが経由するHUBやスイッチ,各LUで使用するストレージポートとLUN)が同一であることを確認してください。

(10) Sun Clusterの設定

Sun Clusterを使用している場合,HDLMをインストールする前に次に示す操作をしてディスクデバイスグループおよびQuorumデバイスの設定を解除します。

(11) Solaris11環境での設定

パッケージの発行元の確認
Solaris11の環境で,現在設定されているパッケージの発行元にアクセスできない場合,HDLMのインストールに失敗するため,パッケージの発行元を無効にする必要があります。次の手順を行ってください。正常にアクセスできる場合は,この手順は必要ありません。

  1. pkg publisherコマンドを実行します。
    # pkg publisher
    PUBLISHER TYPE STATUS URI
    solaris origin online http://pkg.oracle.com/solaris/release/
    
  2. 設定されているパッケージの発行元を無効にします。
    # pkg set-publisher --disable solaris
  3. HDLMをインストールします。
  4. パッケージの発行元を再度有効にします。
    # pkg set-publisher --enable solaris
    

signature-policyの確認
HDLMはsignatureには対応していません。このため,システムのsignature-policyがverifyに設定されていることを確認してください。

  1. pkg property signature-policyを実行します。
    # pkg property signature-policy
    PROPERTY         VALUE
    signature-policy verify
    
  2. signature-policyがverifyでない場合は次のコマンドを実行し,verifyに設定してください。
    # pkg set-property signature-policy verify
    
  3. HDLMをインストールします。
  4. signature-policyの値を手順1で出力された値に戻します。
    # pkg set-property signature-policy 手順1で出力された値
    

注意事項
Solaris11の環境で,HDLMのインストールまたはアンインストール実行中に[Ctrl]+[C]で中断しないでください。

non-global zoneの確認
Solaris11 の環境で,現在設定されているパッケージの発行元にアクセスできない,かつnon-global zoneを構築済みの環境にインストールする場合,構築済みのnon-global zoneをデタッチする必要があります。設定されているパッケージの発行元に正常にアクセスできる場合は,この手順は必要ありません。

  1. zoneadmコマンドを実行します。
    # zoneadm list -cv
      ID NAME             STATUS     PATH                           BRAND    IP
       0 global           running    /                              solaris  shared
       1 non-globalzone   running    /zones/non-globalzone          solaris  excl
    
  2. ステータスがrunningの場合,non-global zoneをシャットダウンしステータスをinstalledにします。
    # zoneadm -z non-globalzone shutdown
    # zoneadm list -cv
      ID NAME             STATUS     PATH                           BRAND    IP
       0 global           running    /                              solaris  shared
       1 non-globalzone   installed  /zones/non-globalzone          solaris  excl
    
  3. non-global zoneをデタッチします。
    # zoneadm -z non-globalzone detach
    
  4. HDLM をインストールします。
  5. 必要に応じてnon-global zoneのアタッチや起動を行います。
    # zoneadm -z non-globalzone attach
    # zoneadm -z non-globalzone boot
    

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