6.3.4 統計情報ファイルの運用
統計情報ファイルは,TP1/EEシステムの稼働中に発生する事象の発生状況や頻度を,統計情報として取得します。統計情報ファイルでは,処理キューの滞留数や通信遅延時間などを確認できるため,システムの処理遅延や内部の動作を解析できます。また,統計情報ファイルを編集,出力すると,システム稼働状況の把握や,システム構築時の指針の作成に役立ちます。
統計情報ファイルが取得する情報について説明します。
- 基本統計情報
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TP1/EEシステムの起動時またはeetrbstcseコマンドの実行時から,トラブルシュート関連定義のtrb_stc_interval_timeオペランドまたはeetrbstcseコマンドで指定した時間間隔で取得される統計情報です。基本統計情報の種類を次に示します。
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システム統計情報(sys)
TP1/EEシステム全体の稼働状況を数値化した情報
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処理キュー統計情報(pci)
処理キューに関する統計情報を処理キュー単位にまとめた情報
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- 拡張統計情報
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TP1/EEシステムの起動時またはeetrbstceseコマンドの実行時から,イベントが発生したときに取得される統計情報です。拡張統計情報の種類を次に示します。
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レスポンス統計情報(ersp)
RPCを実行したときの実行時間に関する情報
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通信遅延時間統計情報(edly)
RPCを実行したときの通信遅延時間に関する情報
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DBキュー統計情報(edbq)
DBキュー機能に関する統計情報をDBキュー単位にまとめた情報
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オンラインバッチ統計情報(eobs)
オンラインバッチ機能に関する統計情報をDBキュー単位およびロット単位にまとめた情報
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統計情報を取得する場合は,プロセス関連定義のtrb_stc_useオペランドにYを指定してください。また,統計情報ファイルの最大容量をトラブルシュート関連定義のtrb_stc_file_sizeオペランドで,統計情報ファイルの最大ファイル数をトラブルシュート関連定義のtrb_stc_file_noオペランドで指定してください。
統計情報の取得を開始,終了するタイミングを次に示します。
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統計情報の取得の開始
TP1/EEシステムの起動時に開始します。TP1/EEシステムの再開始時に統計情報を取得したい場合は,トラブルシュート関連定義のtrb_stc_basic_kindオペランド(基本統計情報)またはtrb_stc_ext_kindオペランド(拡張統計情報)を指定するか,eetrbstcseコマンド(基本統計情報)またはeetrbstceseコマンド(拡張統計情報)を実行してください。
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統計情報の取得の終了
TP1/EEシステムの終了時,またはeetrbstcseコマンド(基本統計情報)またはeetrbstceseコマンド(拡張統計情報)で-rオプションを指定して実行したときに終了します。
統計情報ファイルを利用して稼働状況を調査する場合は,出力対象になっている統計情報ファイルを,eetrbstcfputコマンドを実行してスワップしたあと,eetrbstcedコマンドを実行して編集し,標準出力,またはCSV形式のファイルとして出力します。
統計情報ファイルの作成には,未使用のファイルがある場合はファイル通番の昇順に,未使用のファイルがない場合は更新日時の最も古いファイルから順にラウンドロビン方式でファイルを使用します。
TP1/EEシステムの稼働状況をリアルタイムに標準出力に出力したい場合は,eetrbreportコマンドを実行してください。
- 〈この項の構成〉
(1) 統計情報ファイルの容量設定
統計情報ファイルは,トラブルシュート関連定義のtrb_stc_file_sizeオペランドに指定したサイズで,TP1/EEのプロセスごとにUNIXファイルとして作成されます。プロセスごとに,トラブルシュート関連定義のtrb_stc_file_noオペランドで指定した数の統計情報ファイルが作成され,ラウンドロビン方式で使用されます。統計情報ファイルのサイズおよびファイル数は,ノードで稼働するTP1/EEのプロセス数やノードのリソース容量などを考慮して,指定してください。
(a) 見積もりに必要な情報
統計情報ファイルのサイズおよびファイル数を見積もるために必要になる情報を次に示します。
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インタバル取得当たりのシステム統計情報のバイト数:4096
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インタバル取得当たりの処理キュー統計情報のバイト数:20×(サービス数)
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RPC実行1回当たりのレスポンス統計情報のバイト数:128
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DBキューのI/O1回当たりのDBキュー統計情報のバイト数:64
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1ブロック単位に付加する情報のバイト数:96
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1ファイル単位に付加する情報のバイト数:128+34×(サービス数+DBキュー機能で使用するDBキュー数+オンラインバッチ機能で使用するDBキュー数+オンラインバッチ機能で使用するロット数)
システム統計情報のインタバル取得回数をx,RPC実行回数をy,DBキューのI/O回数をz,サービス数をs,DBキュー機能で使用するDBキュー数をd1,オンラインバッチ機能で使用するDBキュー数をd2,オンラインバッチ機能で使用するロット数をl,trb_stc_buffer_size定義で指定する値をb,TP1/FSPでOBM統計情報を取得する場合に加算する値をh(使用しない場合は0),同時に実行するOBM数をo1,最下位ロットの最大数をo2,OBM統計情報のインタバル取得回数をo3とすると全体の統計情報サイズは次の式となります。
全体の統計情報サイズ(T)
=(4096×x)+(s×20×x)+(128×y)+(64×z)+h
+(↑(((4096×x)+(s×20×x)+(128×y)+(64×z)+h)
÷b)↑×96)+(128+34×(s+d1+d2+1)+256)
h=((36+(96×o2))×o1×o3)- (凡例)
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↑↑:小数点以下を切り上げます。
全体の統計情報サイズ(T)から,統計情報ファイルのサイズおよびファイル数を見積もってください。6時間(21600秒)で指定したファイル数を使い切り,ラウンドロビン方式で最初に作成したファイルの上書きが開始されるように,統計情報ファイルのサイズおよびファイル数を指定することをお勧めします。
(b) 見積もり例
統計情報ファイルの見積もり例を次に示します。
- 前提条件
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システム統計情報を取得するインタバルを10分として,6時間で36回取得
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トランザクションの頻度を基に,RPCを実行する回数は1秒に50回と仮定して,6時間で1080000回
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トランザクションの頻度を基に,DBキューのI/O回数は1秒に50回と仮定して,6時間で1080000回
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サービス数は5000
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DBキュー機能で使用するDBキューの数は50
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オンラインバッチ機能で使用するDBキューの数は0
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オンラインバッチ機能で使用するロットの数は0
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trb_stc_buffer_size定義で指定する値は200
T=(4096×36)+(5000×20×36)+(128×1080000)+(64×1080000) +0 +(↑(((4096×36)+(5000×20×36) +(128×1080000)+(64×1080000)+0) ÷200000)↑×96) +(128+34×(5000+50+0+0)+256) =211378516(約202MB) -
- (凡例)
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↑↑:小数点以下を切り上げます。
ファイル数を3ファイルに固定すると,1ファイルに格納する情報は,次のようになります。
ファイルサイズ=1ファイルに格納する情報=211378516÷3=70459506(約68MB)
したがって,ファイルサイズを100メガバイトとします。
TP1/FSPでOBM統計情報を取得する場合,上記の計算式にhを加味してファイルサイズを見積もる必要があります。
TP1/FSPでOBM統計情報を取得する場合に追加する前提条件を次に示します。
- 前提条件
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インタバル時間を1分として,6時間で360回取得
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同時に実行するOBM数は100
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最下位ロットの最大数は100
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OBM統計情報のインタバル取得回数は360回
h=((40+112×100)×100×360)=404640000 T=211291060(約220MB) ファイルサイズ=615931060÷3=205310354(約196MB)
したがって,ファイルサイズを200メガバイトとします。
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(2) 統計情報ファイルの作成
統計情報ファイルは,TP1/EEの起動時,$DCDIR/spool/dceeinf/stcディレクトリ下にトラブルシュート関連定義のtrb_stc_file_noオペランドで指定したファイル数分,TP1/EEが作成します。したがって,OpenTP1管理者は統計情報ファイルを作成する必要はありません。TP1/EEが作成するファイル名は,次に示す規則で付けられます。
サービスグループ名stcXXX(XXXは,3けたのファイル通番)
(3) 統計情報ファイルの削除
TP1/EEの起動時に,前回のTP1/EE稼働時の統計情報ファイルが存在する場合,最も古い統計情報ファイルに統計情報を上書きします。したがって,OpenTP1管理者は統計情報ファイルを削除する必要はありません。
(4) 統計情報ファイルの保存
出力中の統計情報ファイルのサイズが,トラブルシュート関連定義のtrb_stc_file_sizeオペランドの指定値を超えた場合,出力先が新しい統計情報ファイルに切り替わります。この場合,出力先が新しい統計情報ファイルに切り替わることを通知するKFSB85400-Iメッセージが出力されます。このメッセージが出力されるタイミングで,統計情報ファイルのバックアップを取得(cpコマンド)することをお勧めします。
統計情報ファイル数が,トラブルシュート関連定義のtrb_stc_file_noオペランドの指定値を超えた場合,最も古い統計情報ファイルに統計情報を上書きします。古い統計情報ファイルの統計情報を保存したい場合はTP1/EEが上書きする前に,OpenTP1管理者がバックアップしてください。
使用中の統計情報ファイルをバックアップした場合,編集結果が正しく表示できないことがあります。そのため,統計情報ファイルを切り替えることを通知するメッセージが出力されてから,バックアップを取得してください。また,使用中の統計情報ファイルは,移動または削除しないでください。
(5) 統計情報ファイルに関するシステム定義の関連
統計情報ファイルに関するシステム定義には,ファイルサイズの指定(trb_stc_file_sizeオペランド)とバッファサイズの指定(trb_stc_buffer_sizeオペランド)があります。
それぞれのオペランドについて,次に示す式を満たすように指定してください。
a>b
- (凡例)
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a:trb_stc_file_sizeオペランドの指定値
b:ファイル単位に付加する情報のバイト数+trb_stc_buffer_sizeオペランドの指定値