分散トランザクション処理機能 OpenTP1 解説

[目次][用語][索引][前へ][次へ]

6.1.4 系切り替え機能を使う場合の運用方法

系切り替え機能を使う場合の運用方法について説明します。

<この項の構成>
(1) OpenTP1の開始と終了
(2) コマンド実行の制限

(1) OpenTP1の開始と終了

(a) OpenTP1の開始

系切り替え機能を使用するOpenTP1は,両方の系をそれぞれOpenTP1の開始コマンド(dcstartコマンド)で開始します。自動起動モードの場合は,コマンドを実行しなくても開始します。

系切り替え後に,待機系に実行系の後処理だけを行わせる方法
系切り替え後に,待機系に実行系の後処理だけを行わせるには,dcstart -Uで待機系を開始します。
dcstart -Uで待機系を開始すると,系切り替えが発生したときにユーザサーバが起動されません。これによって,実行系で障害が発生したときに,実行系の未決着トランザクションの決着や,DBの整合性の確保などの後処理を行うだけのものとして,待機系を使用できます。つまり,待機系のマシンに実行系と同等のリソースを必要としなくて済みます。
待機系の開始にはdcstartコマンドを実行する必要があります。したがって,待機系を後処理用として使用する場合,手動起動の状態である必要があります。
次に,一つのノードを複数のOpenTP1の待機系にした場合で,系切り替え後に,待機系に実行系の後処理だけを行わせるときの運用について説明します。
なお,一つのノードを複数のOpenTP1の待機系にする場合は,それぞれの実行系に対応する待機系のOpenTP1をそれぞれセットアップする必要があります。

図6-3 系切り替え後に待機系に実行系の後処理だけを行わせるときの運用

[図データ]
説明
  1. 実行系のOpenTP1 Dに,障害が起こる。
  2. 待機系のOpenTP1 D'が起動する。
    OpenTP1 D'は未決着トランザクションの決着やDBの整合性の確保を行います。オンライン処理は,OpenTP1 A,OpenTP1 BおよびOpenTP1 Cが行うため,25%ダウンの縮退運転となります。
次の場合は,待機系は実行系の後処理だけ行うためには開始されません。
  • システム環境定義のシステム開始方法(mode_confの指定)にAUTOを指定した場合で,OpenTP1が異常終了したとき,または前回の終了モードが異常終了以外でOSが起動したとき。
  • システム環境定義のシステム開始方法(mode_confの指定)にMANUAL1を指定した場合でOpenTP1が異常終了したとき。
系切り替え後に,待機系に実行系の後処理だけを行わせる運用をしていたとしても,上記の指定内容と前回終了状態の条件を満たしていた場合,dcstartコマンドが自動的に実行され,OpenTP1が自動起動されます。これによって,待機系は実行系の代替用として待機状態になります。
待機系を再び後処理用のOpenTP1として待機させたいときには,いったんOpenTP1を停止したあと,再度dcstart -Uで開始してください。
(b) OpenTP1の終了

系切り替え機能を使用しているOpenTP1システムの終了方法を以降の表に示します。

表6-1 実行系のOpenTP1に対する終了コマンド

実行する終了コマンド コマンドの実行結果
dcstopコマンドを実行 オプション指定なし 正常終了します。待機系のOpenTP1も終了します。
-n オプションを指定 強制正常終了します。待機系のOpenTP1も終了します。
-a オプションを指定 計画停止Aで終了します。待機系のOpenTP1も終了します。
-b オプションを指定 計画停止Bで終了します。待機系のOpenTP1も終了します。
-f オプションを指定 強制停止します。待機系のOpenTP1も終了します。
HAモニタの計画系切り替えコマンド(monswapコマンド)を実行 実行サーバが終了してから,系切り替えをします。
HAモニタの待機サーバの停止コマンド(monsbystpコマンド)を実行 実行できません。

表6-2 待機系のOpenTP1に対する終了コマンド

実行する終了コマンド コマンドの実行結果
dcstopコマンドを実行 オプション指定なし 実行できません。
-n オプションを指定
-a オプションを指定
-b オプションを指定
-f オプションを指定 強制停止します。
HAモニタの計画系切り替えコマンド(monswapコマンド)を実行 実行できません。
HAモニタの待機サーバの停止コマンド(monsbystpコマンド)を実行 待機系のOpenTP1は終了します。OpenTP1は再起動しません。

(2) コマンド実行の制限

(a) オフライン環境で実行するコマンドの注意

オフライン環境で実行するコマンドは,系切り替え形態を構成する両方のOpenTP1システムを停止してから実行します。

dcstartコマンドは,もう一方の系が停止しているかどうかに関係なく,その系のOpenTP1システムが停止していれば実行できます。ただし,待機系のOpenTP1では,dcstart -nコマンドを実行しても-nオプションは無視されます。

(b) オンライン環境で実行するコマンドの注意

オンライン環境で実行するコマンドは,実行系のOpenTP1でだけ実行できます。待機系のOpenTP1には,オンライン環境で実行するコマンドは実行できません。ただし,OpenTP1の強制停止コマンド(dcstop -f)に限り,待機系のOpenTP1でも実行できます。また,実行系のアンロードの負担を軽くするため,待機系のシステムジャーナルファイルをアンロードすることもできます。ただし,アンロードするコマンド(jnlunlfgコマンド)の実行には各種の留意点があります。待機系のアンロードについては,マニュアル「OpenTP1 運用と操作」のjnlunlfgコマンドの説明を参照してください。

(c) 共有ディスク装置へのアクセス

待機系のOpenTP1に,共有ディスク装置上の共有ファイルを操作するコマンドを実行しても,ファイル書き込みはできません。そのため,共有ファイルは破壊されません。ただし,予備系を開始させないで現用系だけで運用している場合は,予備系のOpenTP1からファイル書き込みができるので,コマンドを実行するとファイルが破壊されることがあります。コマンドでOpenTP1ファイル(キャラクタ型スペシャルファイル)を操作するときは,共有する両方の系のOpenTP1を停止させてからにしてください。