分散トランザクション処理機能 OpenTP1 解説

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4.1.1 ファイルシステム

OSが入出力するディスクは連続領域ごとに分割され,それぞれの領域をパーティションと呼びます。それぞれのパーティションを,OSが提供するファイルシステムまたはOpenTP1ファイルシステムに使用できます。

<この項の構成>
(1) OpenTP1ファイルシステムとOpenTP1ファイル
(2) 通常ファイル

(1) OpenTP1ファイルシステムとOpenTP1ファイル

OpenTP1ファイルシステムは,OSが提供するファイルシステムとは独立した,OpenTP1専用のファイルシステムです。キャラクタ型スペシャルファイル,または通常ファイル上にOpenTP1ファイルシステムを作成します。ユーザデータやOpenTP1の回復に必要なジャーナルなど,システムの信頼性に関係する重要な情報を格納するファイルは,OpenTP1ファイルシステム上に作成します。OpenTP1ファイルシステム上に作成するファイルを,OpenTP1ファイルといいます。

OpenTP1ファイルを次の表に示します。

表4-1 OpenTP1ファイルの一覧

ファイル名 ファイルの使用方法
ステータスファイル システムサービスの稼働状態やシステム構成情報を格納して,障害が起こった場合にOpenTP1を回復するときに使います。
システムジャーナルファイル トランザクション処理の履歴を格納して,障害が起こった場合にOpenTP1を回復するときに使います。また,UAPの履歴(ユーザジャーナル)も格納します。
チェックポイントダンプファイル 回復対象のテーブル情報を格納して,障害が起こった場合にOpenTP1を回復するときに使います。
アーカイブジャーナルファイル TP1/Multiを使ったクラスタ/並列システムで,各ノードのジャーナルを集積するために使います。
メッセージキューファイル メッセージ送受信機能(TP1/Message Control)を使ってメッセージをやり取りするときの,待ち行列となるファイルです。TP1/Message Controlをシステムに組み込んでいることが前提です。
ノードリストファイル ノード自動追加機能を使用する場合,ノードリスト情報を引き継ぐときに,ノードリスト情報を格納し,次回のOpenTP1起動時に使います。
MQAキューファイル メッセージキューイング機能(TP1/Message Queue)を使うUAPがメッセージを登録したり受け取ったりするときに使用します。TP1/Message Queueをシステムに組み込んでいることが前提です。
DAMファイル ユーザファイルとして使います。TP1/FS/Direct Accessをシステムに組み込んでいることが前提となります。
TAMファイル ユーザファイルとして使います。TP1/FS/Table Accessをシステムに組み込んでいることが前提となります。
OpenTP1ファイルの運用を支援するため,次に示すファイルも作成できます。
  • トランザクションリカバリジャーナルファイル(TRF)
    処理が長くなるトランザクションのジャーナルを,少なくするために使います。
  • サーバリカバリジャーナルファイル(SRF)
    再開始(リラン)時の回復処理を短縮するために使います。

OpenTP1ファイルシステムとOSが提供するファイルシステムの関係を図4-1に示します。また,OpenTP1ファイルシステムとOSが提供するファイルシステムとの違いを表4-2に,OpenTP1ファイルシステムを作成するファイルの選択方法を図4-2に示します。

図4-1 OpenTP1ファイルシステムとOSが提供するファイルシステムの関係

[図データ]

表4-2 OpenTP1ファイルシステムとOSが提供するファイルシステムとの違い

比較項目 OpenTP1ファイルシステム OSが提供するファイルシステム
キャラクタ型スペシャルファイル上 通常ファイル上
信頼性 OpenTP1が異常終了したとき直前に正常終了した書き込み要求で指定したデータ 同期I/Oのため,書き込み要求が正常終了したデータは保証される データは保証されない
プロセスが異常終了したとき直前に正常終了した書き込み要求で指定したデータ
電源断などでシステムダウンしたときのディスクファイル ディスク上の別領域に管理情報を持たないのでファイルの整合性の面で安全性が高い ディスク上の別領域に管理情報を持つので安全性はキャラクタ型スペシャルファイルよりも低い ディスク上の別領域に管理情報を持つのでファイルの整合性の面で安全性が低い
ファイル領域の確保 ファイルシステム作成時に領域を事前に確保するのでオンライン中に容量不足となることはない ファイル増加時にブロックを確保するので,書き込みの延長で容量不足となることがある
性能 ディスク領域の使用効率 OpenTP1ファイル中のレコードが書き込まれていない領域も,そのファイルのために確保済みのため,ほかのファイルに割り当てることはできない ファイルのサイズが大きくなるときにブロック単位で動的に確保されるので,OpenTP1ファイルと比べて使用効率が良い
読み込みの実行時間(関数がリターンするまでの時間) バッファキャッシュを経由しないので,それによる効果は得られない 対象データがバッファキャッシュ上でヒットするとディスクから読まないので一般的には速い。ただし,上位でバッファを持って制御するプロセスにとっては二重にバッファリングが行われることになり,逆にオーバヘッドとなるおそれがある 対象データがバッファキャッシュ上でヒットするとディスクから読まないので,一般的には速い
書き込みの実行時間(関数がリターンするまでの時間) 同期I/Oのため,一般的にはOSが提供するファイルシステムより遅いが,バッファキャッシュを経由しない分,書き込み処理のオーバヘッドは小さい 同期I/Oのため,一般的にはOSが提供するファイルシステムより遅い 非同期I/Oのため,一般的には速い
アクセス時間のばらつき 連続領域が確保されるので,ばらつきは小さい 必ずしも連続領域とはならないので,ばらつきがある ばらつきがある
運用 ファイル容量の見積もり ファイルの作成時に容量を指定する必要がある ファイルの容量を指定する必要はない
ファイル容量の動的増分 増分できない 増分できる
ディレクトリによるファイルの分類 できない できる

図4-2 OpenTP1ファイルシステムを作成するファイルの選択方法

[図データ]

(2) 通常ファイル

通常ファイルは,柔軟性があり使用効率がよいという特長があります。このため,OpenTP1の定義ファイルなどに使用します。

OpenTP1で使用する通常ファイルを次の表に示します。

表4-3 OpenTP1で使用する通常ファイル

ファイル名 ファイルの用途 備考
ユーザプログラムファイル UAPの実行形式プログラムを格納するファイルです。 ユーザが作成します。
各種定義ファイル OpenTP1の各種システム定義を格納します。OSのテキストエディタを使用して,テキストファイルとして作成します。
マップファイル マッピングサービスを利用する場合に使用します。物理マップとプレロードマップを格納します。
OpenTP1プログラムファイル OpenTP1のプログラムを格納します。OpenTP1の実行形式ファイルとUAPの作成に使うファイルがあります。 インストール時に自動的に作成されます。
定義解析用ファイル OpenTP1の内部で,定義解析用に使用します。
メッセージオブジェクトファイル メッセージテキストを格納します。
コマンドログファイル OpenTP1のコマンドログを格納します。
メッセージログファイル OpenTP1が出力したシステムメッセージを格納します。 OpenTP1実行時に作成されます。
MCFトレースファイル MCFのトレース情報を格納します。
スケジュールキュー情報ファイル OpenTP1の内部で,スケジュールキュー情報を格納します。
RPCトレースファイル RPCトレースを格納します。
トレース情報ダンプファイル OpenTP1内部のトレース情報を格納するファイルです。
共用メモリダンプファイル OpenTP1が出力した共用メモリの内容を格納します。
退避コアファイル 異常終了したプロセスのコアファイルを退避します。
デッドロック,タイムアウト情報ファイル デッドロック情報,タイムアウト情報を格納します。
MCFダンプファイル MCFのダンプを格納します。
MCF共用メモリダンプファイル 障害発生時,OpenTP1の共用メモリのうちMCFで確保している領域のダンプ情報を格納します。
未決着トランザクション情報ファイル 障害発生時,未決着のトランザクション情報を格納します。
不正ジャーナル情報ファイル ジャーナル読み込み時に検知した不正なジャーナル情報を格納します。
入出力キューの内容複写ファイル 入出力キューの内容複写コマンドを実行したときに入出力キューの内容を格納します。
性能検証用トレース情報ファイル 性能検証用のトレース情報を格納するファイルです。
XAR性能検証用トレース情報ファイル XAリソースサービスを使用したトランザクション連携の各種イベントのトレース情報を格納するファイルです。
JNL性能検証用トレース情報ファイル ジャーナルサービスのトレース情報を格納するファイルです。
LCK性能検証用トレース情報ファイル ロックサービスを使用した排他制御の各種イベントのトレース情報を格納するファイルです。
MCF性能検証用トレース情報ファイル MCFを使用したメッセージ送受信の各種イベントのトレース情報を格納するファイルです。
TRNイベントトレース情報ファイル トランザクションブランチで呼び出されるXA関数や,トランザクションサービスの各種イベントのトレース情報を格納するファイルです。
NAMイベントトレース情報ファイル ネームサービスで実行される通信処理,キャッシュへのサービス情報の登録,削除などの各種イベントのトレース情報を格納するファイルです。
プロセスサービスイベントトレース情報ファイル プロセスサービスのトレース情報を格納するファイルです。
FILイベントトレース情報ファイル OpenTP1ファイルへのアクセス要求に対して,システム共通定義のfil_prf_trace_delay_timeオペランドの指定値以上の処理時間が掛かった場合に,イベント情報を格納するファイルです。
RTSログファイル リアルタイム統計情報を格納するファイルです。
UAPトレース編集出力ファイル UAPが異常終了した場合に,UAPトレースを自動的に編集出力して格納したファイルです。
OpenTP1デバッグ情報ファイル UAPが異常終了した場合に,OpenTP1の情報を格納するファイルです。