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Cosminexus V11 アプリケーションサーバ 機能解説 基本・開発編(Webコンテナ)


8.2.1 サーブレットおよびJSP実装時共通の注意事項

アプリケーションサーバ上で動作するアプリケーションのプログラムとして,サーブレットおよびJSPを実装するときの共通の注意事項を示します。

〈この項の構成〉

(1) Webアプリケーションの動作の前提となるJ2EEアプリケーションのバージョン

Webアプリケーションの動作の前提となるJ2EEアプリケーションが準拠するJ2EE仕様のバージョンについて,Webアプリケーションのバージョンごとに次の表に示します。

表8‒5 J2EEアプリケーションが準拠するJ2EE仕様のバージョン

J2EEアプリケーションが準拠するJ2EE仕様のバージョン

Webアプリケーションに対応するServlet仕様

4.0

3.1

3.0

2.5

2.4

2.3

2.2

Java EE 8

Java EE 7

×

Java EE 6

×

×

Java EE 5

×

×

×

J2EE1.4

×

×

×

×

J2EE1.3

×

×

×

×

J2EE1.2

×

×

×

×

(凡例)

○:使用できる

△:使用できる(J2EEアプリケーションのインポート時にJ2EE仕様のバージョンが1.4に更新されるため)

×:使用できない

(2) Webアプリケーションのサポート範囲

Webアプリケーションのバージョンは,web.xmlに記述するServlet仕様のバージョン情報で識別されます。上位のバージョンのWebアプリケーションは下位のバージョンの機能を使用できます。下位のバージョンのWebアプリケーションは上位のバージョンの機能を使用できません。

Webアプリケーションのバージョンごとに,使用できる機能範囲を次の表に示します。

表8‒6 Webアプリケーションのサポート範囲

Webアプリケーションのバージョン

Servlet

JSP

タグライブラリ

4.0

3.1

3.0

2.5

2.4

2.3

2.2

2.3

2.2

2.1

2.0

1.2

1.1

2.1

2.0

1.2

1.1

4.0

3.1

×

3.0

×

×

×

2.5

×

×

×

×

×

2.4

×

×

×

×

×

×

×

×

2.3

×

×

×

×

×

×

×

×

×

×

×

2.2

×

×

×

×

×

×

×

×

×

×

×

×

×

×

(凡例)○:使用できる ×:使用できない

注※

タグライブラリのバージョンとは,タブライブラリ・ディスクリプタ(TLDファイル)のバージョンを表します。

なお,下位のバージョンのWebアプリケーションから上位のバージョンの機能を使用した場合,エラーが発生することがあります。発生するエラーについてバージョンごとに次に示します。

表8‒7 Servlet 2.2,2.3,2.4または2.5仕様に対応するWebアプリケーションからServlet 3.0/3.1の機能を使用した場合のエラー

仕様

使用する機能

エラー時の処理

Servlet 3.0/3.1

新規APIの呼び出し

Servlet 3.0/3.1仕様で追加されたAPIを使用したかどうかはチェックされません。呼び出した場合の動作は保証されないため呼び出さないよう注意してください。

新規アノテーションの使用

アノテーションを使用してエラーとなった場合の処理については,マニュアル「アプリケーションサーバ 機能解説 基本・開発編(コンテナ共通機能)」の「17. アノテーションの使用」を参照してください。

Servlet 2.2仕様,Servlet 2.3仕様,Servlet 2.4仕様およびServlet 2.5仕様から,Servlet 3.0仕様にWebアプリケーションのバージョンアップする場合の作業,および注意事項については,「8.2.11 既存のWebアプリケーションをServlet 3.0仕様にバージョンアップする場合の留意点」を参照してください。

表8‒8 Servlet 2.2,2.3,または2.4仕様に対応するWebアプリケーションからServlet 2.5の機能を使用した場合のエラー

仕様

使用する機能

エラー時の処理

Servlet 2.5

新規APIの呼び出し

Servlet 2.5仕様で追加されたAPIを使用したかどうかはチェックされません。呼び出した場合の動作は保証されないため呼び出さないよう注意してください。

新規アノテーションの使用

アノテーションを使用してエラーとなった場合の処理については,マニュアル「アプリケーションサーバ 機能解説 基本・開発編(コンテナ共通機能)」の「17. アノテーションの使用」を参照してください。

JSP 2.1

新規ディレクティブの属性※1

サーブレットログにKDJE39145-Eのメッセージ,メッセージログにKDJE39186-Eのメッセージがそれぞれ出力され※2,トランスレーションエラーとなります。

TLD 2.1

Webアプリケーション開始時に次に示すTLDファイルが存在した場合,メッセージログにKDJE39293-Wのメッセージが出力され,処理されません。

  • web.xmlの<taglib>要素内の<tablib-location>要素に指定されたTLDファイル

  • /WEB-INF/libディレクトリ以下のJarファイル内の/META-INFディレクトリ以下に配置されたTLDファイル

Webアプリケーション開始時にこれら以外のTLDファイルが存在した場合は,JSPコンパイル時にメッセージログにKDJE39293-Wのメッセージが出力され,処理されません。

アプリケーションへの初回アクセス時などにJSPコンパイルが発生した場合は,サーブレットログにKDJE39145-Eのメッセージ,メッセージログにKDJE39186-Eのメッセージがそれぞれ出力され※2,トランスレーションエラーとなります。

ELの追加機能

  • JSP 2.1で追加されたEnum型については,専用の処理は実施されないで,一般のクラスと同様に処理されます。

    ただし,JSP 2.1仕様で非推奨となったJSP 2.0仕様のELのAPIを使用した場合,Webアプリケーションのバージョンに関係なく,JSP 2.0仕様のELの機能範囲で処理されます。

  • #{}の書式のELは文字列として表示されます。

  • "\#"はエスケープシーケンスとして扱われません。「"\#"」という文字列として表示されます。

注※1

JSPページで<jsp:directive.XXX />形式でXXXにJSP仕様で未定義のディレクティブを指定した場合,または<jsp:XXX>形式でXXXにJSP仕様で未定義のスタンダードアクションを指定した場合,定義内容はそのまま出力されます。

注※2

KDJE39145-EにはJSPのコンパイルエラーの詳細,KDJE39186-Eにはトランスレーションエラーの発生通知が出力されます。

Servlet 2.2仕様,Servlet 2.3仕様およびServlet 2.4仕様から,Servlet 2.5仕様にWebアプリケーションのバージョンアップする場合の作業,および注意事項については,「8.2.12 既存のWebアプリケーションをServlet 2.5仕様にバージョンアップする場合の留意点」を参照してください。

表8‒9 Servlet 2.2または2.3仕様に対応するWebアプリケーションからServlet 2.4仕様の機能を使用した場合のエラー

仕様

使用する機能

エラー時の処理

Servlet 2.4

新規APIの呼び出し

Servlet 2.4仕様で追加されたAPIを使用したかどうかはチェックされません。呼び出した場合の動作は保証されないため呼び出さないよう注意してください。

新規リスナ登録

Webアプリケーションの開始時にKDJE39297-Wのメッセージがメッセージログに出力され,そのリスナ定義は無視されます。

JSP 2.0

新規ディレクティブ新規スタンダードアクション※1

サーブレットログにKDJE39145-Eのメッセージ,メッセージログにKDJE39186-Eのメッセージがそれぞれ出力され※2,トランスレーションエラーとなります。

タグファイル

TLDを使用しない場合

taglibディレクティブで新規属性となるtagdir属性が不正として,サーブレットログにKDJE39145-Eのメッセージ,メッセージログにKDJE39186-Eのメッセージがそれぞれ出力され※2,トランスレーションエラーとなります。

TLDを使用する場合

TLD 2.0を使用したエラーになります。

TLD 2.0

次に示すTLDファイルは,Webアプリケーション開始時にチェックされます。該当する場合,メッセージログにKDJE39293-Wのメッセージが出力され,無視されます。

  • web.xmlの<taglib><tablib-location>に指定されたTLDファイル

  • /WEB-INF/lib下のJarファイル内の/META-INF以下に配置されたTLDファイル

これら以外のTLDファイルは,JSPコンパイル時にチェックされます。初回アクセス時など,JSPファイルのコンパイル時は,サーブレットログにKDJE 39145-Eのメッセージ,メッセージログにKDJE39186-Eのメッセージがそれぞれ出力され※2,トランスレーションエラーとなります。

シンプル・タグ・ハンドラ

サーブレットログにKDJE39145-Eのメッセージを,メッセージログにKDJE39186-Eのメッセージがそれぞれ出力され※2,トランスレーションエラーとなります。

注※1

JSPページで<jsp:directive.XXX />形式でXXXにJSP仕様で未定義のディレクティブを指定した場合,または<jsp:XXX>形式でXXXにJSP仕様で未定義のスタンダードアクションを指定した場合,定義内容はそのまま出力されます。

注※2

KDJE39145-EにはJSPのコンパイルエラーの詳細,KDJE39186-Eにはトランスレーションエラーの発生通知が出力されます。

Servlet 2.2仕様およびServlet 2.3仕様から,Servlet 2.4仕様にWebアプリケーションのバージョンアップする場合の作業,および注意事項については,「8.2.14 既存のWebアプリケーションをServlet 2.4仕様にバージョンアップする場合の留意点」を参照してください。

なお,Servlet 2.2仕様に対応するWebアプリケーションからServlet 2.3の機能を使用しても,アプリケーションのインポート時にServlet 2.3仕様に準拠したWebアプリケーションに書き換えられるため,正常に処理され,エラーは通知されません。

(3) トランザクションとJDBCコネクション利用時の注意

サーブレット,JSPでトランザクションを利用する場合,該当するサービスメソッドでJDBCコネクションを取得し,該当するサービスメソッドが終了する前に解放してください。トランザクションが開始しているサーブレットおよびJSPでは,次に示すJDBCコネクションの使用はサポートされません。

(4) パッケージ名の指定に関する注意

不正なパッケージ名が指定されたクラスをサーブレットおよびJSPで使用した場合,ブラウザからアクセスしたときにステータスコード500のエラーになります。例えば,作成したクラスファイルを正しく配置して,ブラウザからアクセスしても,パッケージ名の宣言に不正があった場合は,該当クラスが見つかりません。この場合,ステータスコード500のエラーが返されます。

(5) Cookie利用時の注意

(6) 特別な意味を持つ入力値の表示に関する注意

フォームなどで「<」や「>」などの特別な意味を持つ文字の入力値をそのまま表示した場合,悪意のあるユーザが<SCRIPT>,<OBJECT>,<APPLET>,<EMBED>のスクリプトなどを実行できるタグを使用して,重大なセキュリティ上の問題を引き起こすおそれがあります。アプリケーション開発者は,ユーザから入力されたデータに対して必ず検査をする処理を追加して,特別な意味を持つ文字を排除する必要があります。

(7) コミット後のエラーページの表示に関する注意

サーブレットまたはJSPでレスポンスがコミットされたあとは,例外などのエラーが発生したとしても,次に示すエラーページはブラウザに表示されません。

レスポンスのコミットは,ユーザがServletResponseクラスのflushBufferメソッドなどを明示的に呼び出してコミットする場合以外にも,レスポンスのバッファが満杯になって自動的にWebコンテナがコミットすることがあります。

サーブレットまたはJSPでコミットされているかどうかを調べるには,ServletResponseクラスのisCommittedメソッドを使用します。また,バッファサイズの変更は,サーブレットの場合はServletResponseクラスのsetBufferSizeメソッドで,JSPの場合はpageディレクティブのbuffer属性の指定で実施できます。

(8) PrintWriter,JSPWriterクラス利用時の性能向上について

PrintWriterクラスおよびJSPWriterクラスのprintメソッドとprintlnメソッドの呼び出し回数を少なくすることで,アクセス回数を減らし,性能を向上できます。例えば,StringBufferクラスを使用し,最後にprintlnメソッドを呼び出すようにして,printおよびprintlnメソッドの呼び出し回数を削減します。

(9) javax.servlet.error.XXXXXによるエラー情報参照時の注意

Servlet 2.3仕様で定義されているjavax.servlet.error.XXXXX属性は,web.xmlの<error-page>タグに指定されたサーブレットまたはJSP内でそのエラーページを実行する要因となったエラー情報を参照するためのものです。web.xmlの<error-page>タグに指定されたサーブレットまたはJSP以外からは,これらの属性を参照しないでください。

(10) ファイルアクセス時の注意

ファイルにアクセスする場合は,必ず絶対パスを指定してください。相対パスを指定すると,J2EEサーバはWebコンテナサーバの実行ディレクトリからの相対パスによって目的のパスを検索しようとします。ServletContextクラスのgetRealPathメソッドで相対パスを指定すると,WARファイルを展開したディレクトリでの相対パスが取得されます。

また,ファイルにアクセスする場合は,必ずファイルをクローズしてください。WARファイル展開ディレクトリでファイルにアクセスしてクローズしないと,J2EEサーバで正常にアンデプロイできなくなります。WARファイルの展開ディレクトリ下のパスを指定していない場合でもファイルをクローズしていないと,J2EEサーバの起動中にファイルを削除できないなどの現象が発生します。

(11) 例外発生時のエラーページの設定について

JSP,サーブレットへのアクセスで例外が発生した場合,Webコンテナのデフォルトの処理では例外のステータスコードをブラウザに返します。このデフォルトの処理を変える場合はJSPのerrorPageの指定やweb.xmlでエラーページを設定してください。

(12) クラスローダの取得に関する注意

J2EEアプリケーション内のコードからComponent Containerのクラスローダを取得して,次に示すメソッドを使用する場合に,java.net.JarURLConnectionクラスが使用されます。

これらのメソッドが呼び出される過程でjava.net.JarURLConnectionクラスのopenConnectionメソッドが呼び出され,該当するURLに指定されたJARファイルがオープンされます。このJARファイルはcloseメソッドを明示的に呼ばないかぎり,オープンされたままになり削除できません。これらのメソッドはJ2EEアプリケーション内で使用しないでください。また,JARファイルに対する操作が必要でjava.net.JarURLConnectionクラスのopenConnectionメソッドを使用する場合には,java.net.JarURLConnectionのgetJarFileメソッドが返すJarFileインスタンスのcloseメソッドを必ず呼び出すようにしてください。

(13) URLConnectionクラス使用時の注意

java.net.URLConnectionクラスはsetUseCaches(boolean)メソッドを使用して,指定されたURLに対してコネクションを取得するときにキャッシュの情報を利用するかどうかを指定できます。URLConnectionクラスに対してsetUseCaches(false)メソッドを指定した場合に,コネクションごとに対象のオブジェクトが生成されます。J2EEアプリケーション内のコードから使用する場合には,J2EEサーバのJavaVMがメモリ不足となるおそれがあります。

(14) ネイティブライブラリのロードに関する注意

System.loadLibraryメソッドを使用して,サーブレットおよびJSPからネイティブライブラリをロードしないでください。サーブレットおよびJSPでネイティブライブラリをロードすると,JNI仕様の制約によって,java.lang.UnsatisfiedLinkErrorが発生することがあります。ネイティブライブラリのロードが必要な場合は,System.loadLibraryメソッドを呼び出すコンテナ拡張ライブラリを作成し,サーブレットおよびJSPからコンテナ拡張ライブラリを参照するように実装してください。コンテナ拡張ライブラリの作成については,マニュアル「アプリケーションサーバ 機能解説 基本・開発編(コンテナ共通機能)」の「19. コンテナ拡張ライブラリ」を参照してください。

(15) ユーザスレッドの使用方法

アプリケーションを構成するサーブレットおよびJSPからスレッドを生成して,使用できます。ユーザがプログラムの中で明示して生成するスレッドのことを,ユーザスレッドといいます。

ユーザスレッドは,生成後の動作のしかた(ライフサイクル)によって,次の二つに分けられます。

ユーザスレッドの使用条件
  • ユーザスレッドは,Enterprise Beanでは使用できません(EJB仕様で,Enterprise Beanからのスレッドの生成が禁止されているため)。

ユーザスレッドを使用する場合のライフサイクルについて説明します。

(a) サービスメソッドやinitメソッドの範囲内で動作させる場合

サービスメソッドやinitメソッドでユーザスレッドの処理を完了させるモデルです。このモデルの処理の流れを次の図に示します。

図8‒1 サービスメソッドやinitメソッドの範囲内で動作させる場合の処理

[図データ]

サービスメソッドやinitメソッドの呼び出しの範囲内で,ユーザスレッドを生成します。サービスメソッドやinitメソッドでは,joinメソッドによってユーザスレッドの処理が完了するのを待ってから,リターンします。

(b) サービスメソッドやinitメソッドのバックグラウンドで動作させる場合

サービスメソッドやinitメソッドでユーザスレッドを生成し,その後ユーザスレッドをバックグラウンドで動作させるモデルです。このモデルの処理の流れを次の図に示します。

図8‒2 サービスメソッドやinitメソッドのバックグラウンドで動作させる場合の処理

[図データ]

ユーザスレッドを生成したサービスメソッドやinitメソッドは,ユーザスレッドを生成したあと,処理の完了を待たないでリターンします。ただし,アプリケーションを停止したあとは,ユーザスレッドからJ2EEサービスを利用できなくなります。したがって,アプリケーションの停止によってjavax.servlet.ServletContextListenerのcontextDestroyedメソッドか,JSPまたはServletのdestroyメソッドでユーザスレッドを停止すれば問題ありません。

(16) セッション情報の永続化について

Webコンテナではセッション情報の永続化はサポートされません。Webコンテナではセッション情報は,正常,異常に関係なくWebコンテナが終了すると失われます。セッション情報を保持したい場合は,セッションフェイルオーバ機能を使用してください。

また,web.xmlで<distributable>タグを指定した場合,およびSerializableでないオブジェクトをセッション情報として登録した場合もIllegalArgumentExceptionは発生しません。

(17) initメソッドおよびdestroyメソッドをオーバーライドしていない場合に出力されるメッセージ

initメソッドおよびdestroyメソッドをオーバーライドしていないサーブレットを初期化または終了すると,次の形式のログがサーブレットログに出力されます。

また,JSPの場合は,pageディレクティブのextends属性で指定するJSPの基底クラスでinitメソッドおよびdestroyメソッドをオーバーライドしなかった場合,同様のメッセージが出力されます。その場合,サーブレット名は"com.hitachi.software.web.servlet-name.jsp"となります。JSPでpageディレクティブのextends属性を指定しなかった場合は,initメソッドのログだけが出力され,destroyメソッドのログは出力されません。

ただし,サーブレットの場合もJSPの場合も,initメソッドおよびdestroyメソッドをオーバーライドしてスーパークラスのinitメソッドおよびdestroyメソッドを呼ぶときは,このメッセージを出力します。

(18) javax.servlet.ServletRequestオブジェクトのjavax.servlet.error.exception属性について

javax.servlet.ServletRequestオブジェクトのjavax.servlet.error.exception属性について,Servletで例外をスローした場合とJSPファイルで例外をスローした場合の二つに分けて説明します。

(a) Servletで例外をスローした場合

Servletでスローした例外クラスがjava.lang.Error,またはその派生クラスの場合

javax.servlet.ServletExceptionクラスの例外がjavax.servlet.ServletRequestオブジェクトのjavax.servlet.error.exception属性に設定されます。Servletでスローした例外は,javax.servlet.ServletExceptionクラスのgetRootCauseメソッドで取得できます。

Servletでスローした例外クラスがjava.lang.Error,またはその派生クラス以外のクラスの場合

Servletでスローした例外がjavax.servlet.ServletRequestオブジェクトのjavax.servlet.error.exception属性に設定されます。

(b) JSPファイルで例外をスローした場合

  • エラーページがJSPファイルの場合

    web.xmlの<error-page>タグでエラーページを指定した場合

    web.xmlの<error-page>タグでエラーページを指定した場合について,JSP 2.0以降とJSP 1.2に分けて示します。

    JSP 2.0以降

    JSPファイルでスローした例外がjavax.servlet.ServletRequestオブジェクトのjavax.servlet.error.exception属性に設定されます。

    JSP 1.2

    JSPファイルでスローした例外クラスが次のクラスのどれかであれば,JSPファイルでスローした例外がjavax.servlet.ServletRequestオブジェクトのjavax.servlet.error.exception属性に設定されます。

    ・java.io.IOException,またはその派生クラス

    ・java.lang.RuntimeException,またはその派生クラス

    ・javax.servlet.ServletException,またはその派生クラス

    JSPファイルでスローした例外クラスがこれら以外の場合,javax.servlet.ServletExceptionクラスの例外がjavax.servlet.ServletRequestオブジェクトのjavax.servlet.error.exception属性に設定されます。JSPファイルでスローした例外は,javax.servlet.ServletExceptionクラスのgetRootCauseメソッドで取得できます。

    pageディレクティブのerrorPage属性でエラーページを指定した場合

    pageディレクティブのerrorPage属性でエラーページを指定した場合について,エラーページでpageディレクティブのisErrorPage属性にtrueを指定した場合とfalseを指定した場合に分けて示します。

    エラーページでpageディレクティブのisErrorPage属性にtrueを指定した場合

    JSPファイルでスローした例外がjavax.servlet.ServletRequestオブジェクトのjavax.servlet.error.exception属性に設定されます。

    エラーページでpageディレクティブのisErrorPage属性にfalseを指定した場合

    javax.servlet.ServletRequestオブジェクトのjavax.servlet.error.exception属性に値は設定されません。

  • エラーページがServletの場合

    web.xmlの<error-page>タグでエラーページを指定した場合

    エラーページがJSPファイルの場合の,web.xmlの<error-page>タグでエラーページを指定した場合と同様です。

    pageディレクティブのerrorPage属性でエラーページを指定した場合

    javax.servlet.ServletRequestオブジェクトのjavax.servlet.error.exception属性に値は設定されません。

(19) バイナリデータを含むWebアプリケーションの操作について

バイナリデータを含むWebアプリケーションでは,次のことに注意してください。

(20) レスポンスの文字エンコーディングに関する注意

JSPまたはサーブレットのレスポンスボディの文字エンコーディングが,UTF-16(16ビットUCS変換形式)の場合,ブラウザによって正しく表示できない場合があります。その場合は,JSPまたはサーブレットの文字エンコーディングに,UTF-16BE(16ビットUCS変換形式のビッグエンディアンバイト順),またはUTF-16LE(16ビットUCS変換形式のリトルエンディアンバイト順)を使用してください。

(21) javax.servlet.ServletRequestインタフェースのgetServerNameメソッドおよびgetServerPortメソッドの戻り値について

getServerNameメソッド,およびgetServerPortメソッドの戻り値について説明します。

Servlet 2.4仕様以降では,Hostヘッダの有無によって,getServerNameメソッド,およびgetServerPortメソッドの戻り値が異なります。Servlet 2.4仕様以降でのgetServerNameメソッド,およびgetServerPortメソッドの戻り値を次の表に示します。

表8‒10 getServerNameメソッド,およびgetServerPortメソッドの戻り値(Servlet 2.4仕様以降の場合)

Hostヘッダの有無

getServerNameメソッドの戻り値

getServerPortメソッドの戻り値

あり

Hostヘッダの「:」より前の部分

Hostヘッダの「:」よりあとの部分

なし

解決されたサーバ名またはIPアドレス

クライアントとの接続を受け付けたサーバのポート番号

アプリケーションサーバでは,getServerNameメソッド,およびgetServerPortメソッドの戻り値は,HTTPリクエストと,使用する機能の組み合わせによって得られます。なお,HTTP 1.1のリクエストにHostヘッダが含まれない場合,HTTP 1.1仕様に従って,400エラーとなります。また,HTTP 1.1仕様では,リクエストラインのリクエストURIが絶対URIの場合,ホストにはリクエストURIのホストを使用して,Hostヘッダの内容は無視するように定義されています。なお,Servlet仕様では明記されていませんが,HTTP仕様に従って,リクエストラインのURIに含まれるホスト名を優先するようになっています。

HTTPリクエストと,使用する機能の組み合わせによって得られる,getServerNameメソッド,およびgetServerPortメソッドの戻り値を次の表に示します。なお,ゲートウェイ指定機能を使用している場合の,getServerNameメソッド,およびgetServerPortメソッドの戻り値については,表8-10を参照してください。

表8‒11 getServerNameメソッド,およびgetServerPortメソッドの戻り値(アプリケーションサーバの場合)

HTTPリクエスト

getServerNameメソッドの戻り値

getServerPortメソッドの戻り値

Hostヘッダの有無

リクエストラインのURIの種類

あり

絶対URI

リクエストラインのホスト名

リクエストラインのポート番号

相対URI

Hostヘッダのホスト名

Hostヘッダのポート番号

なし

絶対URI

リクエストラインのホスト名

リクエストラインのポート番号

相対URI

J2EEサーバのホスト名またはIPアドレス

NIO HTTPサーバのポート番号

注※ java.net.InetAddress.getLocalHostメソッド,またはgetHostNameメソッドの戻り値となります。

(22) javax.servlet.ServletExceptionクラスのコンストラクタで指定した根本原因の例外の取得について

アプリケーションサーバでは,コンストラクタServletException(String, Throwable)またはServletException(Throwable)で指定した根本原因の例外をgetCauseメソッドで取得できます。なお,getRootCauseメソッドでも取得できます。

javax.servlet.ServletExceptionクラスのコンストラクタで指定した根本原因の例外の取得について,互換用のパラメタおよび注意事項について説明します。

(23) javax.servlet.ServletOutputStreamオブジェクトに対するflushメソッドの実行についての注意

アプリケーションサーバでは,javax.servlet.ServletResponseオブジェクトから取得するjavax.servlet.ServletOutputStreamオブジェクトに対して,closeメソッドを実行したあとでflushメソッドを実行しても,java.io.IOException例外をスローしません。

(24) リクエストURIの正規化

アプリケーションサーバでは,リクエストURIに含まれる文字列は,正規化されたあと,次に示すマッチング処理で使用されます。

(25) javax.servlet.http.HttpServletRequestインタフェースのgetRequestURIメソッドおよびgetRequestURLメソッドの戻り値について

javax.servlet.http.HttpServletRequestインタフェースのgetRequestURIメソッドおよびgetRequestURLメソッドでは,正規化されたURLが戻り値となります。

(26) welcomeファイルにURLマッピングされたServletまたはJSPの指定

リクエストURLがURLマッピングされたServletまたはJSPと一致しないで,welcomeファイルに転送される必要がある場合,Webコンテナでは次のように転送先のwelcomeファイルが選択されます。

まず,指定されたwelcomeファイル名から静的コンテンツやJSPファイルの候補が優先して選択されます。該当するものがない場合,URLマッピングされたServletまたはJSPの候補が選択されます。

welcomeファイルに関する注意事項について説明します。

(27) サーブレット,フィルタ,リスナの開始・終了順序

Webアプリケーションを開始すると,リクエストの受付を開始する前に次の順序で初期化処理をすることがServlet 2.4仕様で明確化されました。アプリケーションサーバでは,Servlet2.3以前のWebアプリケーションでも同じ順序で初期化処理をします。Webアプリケーション開始時のサーブレット,フィルタ,およびリスナは次の順序で開始されます。

  1. リスナの開始(インスタンスの生成※1,@PostConstructアノテーションのメソッドおよびServletContextListenerのcontextInitializedメソッドの呼び出し※2

  2. フィルタの開始(インスタンスの生成※1,@PostConstructアノテーションのメソッドおよびinitメソッドの呼び出し)

  3. load-on-startupタグで指定されたServlet/JSPの開始(インスタンスの生成※1,@PostConstructアノテーションのメソッドおよびinitメソッドの呼び出し)

注※1 Servlet 3.0以降では,API呼び出しによって動的にサーブレット,フィルタ,リスナを追加できますが,インスタンスを指定するAPI呼び出しによって定義を追加したサーブレット,フィルタ,リスナについては,インスタンス生成済みのため,Webコンテナではインスタンスを生成しません。

注※2 リスナのcontextInitialized()メソッドの呼び出しで例外が発生しても,KDJE39103-Eのメッセージを出力してWebアプリケーションの開始処理を継続します。

なお,web.xmlの<load-on-startup>要素によってWebアプリケーション開始時の初期化処理実行を指定しなかったサーブレットについては,初回リクエスト実行時にサーブレットのインスタンスの生成およびinit()メソッドを呼び出します。

このとき,サーブレットのインスタンスの生成およびinit()メソッドはフィルタより前に呼び出します。

Webアプリケーション終了時のサーブレット,フィルタ,およびリスナは次の順序で終了します。

  1. 開始済みのServlet/JSPの終了(destroyメソッド,@PreDestroyアノテーションのメソッド呼び出し)

  2. フィルタの終了(destroyメソッド,@PreDestroyアノテーションのメソッド呼び出し)

  3. リスナの終了(@PreDestroyアノテーションのメソッド呼び出し)

(28) Webアプリケーション内の静的コンテンツへのアクセス

Webアプリケーション内の静的コンテンツへのアクセス時に使用できるメソッドは,GET,HEAD,POST,TRACE,OPTIONSのどれかです。

POSTメソッドを使用した場合,GETメソッド使用時と同様,静的コンテンツの内容を応答します。

(29) 文字エンコーディングに関する注意

同じWebアプリケーション内では,web.xmlで指定したエラーページと,HTTPレスポンスに文字エンコーディングを使用するサーブレットおよびJSPに,同じ文字エンコーディングを使用してください。

(30) クエリ文字列にイコール("=")以降だけ指定した場合の戻り値について

リクエストのクエリ文字列にイコール("=")以降しか指定していない場合(例えば,http://localhost/application/getparam.jsp?=paramのような場合)の,javax.servlet.ServletRequestインタフェースのリクエストパラメタを取得するServlet APIの戻り値を次に示します。

(31) javax.servlet.http.HttpServletResponseインタフェースのcontainsHeaderメソッドについて

以下のレスポンスヘッダはWebコンテナにより自動的にレスポンスにセットされる場合があります。このようなレスポンスヘッダは,javax.servlet.http.HttpServletResponseインタフェースのcontainsHeaderメソッドで,レスポンスにセットされているかどうかを確認できません。

(32) アプリケーションサーバのライブラリに関する注意

アプリケーションサーバのライブラリをJ2EEアプリケーションに含めると,ライブラリのバージョン不整合などが原因で,アプリケーションのインポートや開始,実行で不正な動作になることがあります。そのため,製品が使用方法として明示している場合を除いて,アプリケーションサーバのライブラリはJ2EEアプリケーションに含めないようにしてください。