Hitachi Dynamic Link Manager ユーザーズガイド(Linux®用)

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3.7.4 ブートディスク環境でのHDLMのアップグレードインストール

HDLMデバイスを使ったマルチパス構成のブートディスクの環境に,HDLMをアップグレードインストールして環境を設定する方法について説明します。

設定を誤ると,OSが起動できなくなることがあるので,注意してください。HDLMデバイスからのOSの起動に失敗した場合の対処については,「3.7.5 HDLMデバイスからのOSの起動に失敗した場合の対処」を参照してください。

この手順で使用するブートローダの設定ファイル名は,ブートローダまたはOSによって異なります。ブートローダの設定ファイル名を次の表に示します。

表3-75 ブートローダの設定ファイル名

ブートローダ 設定ファイル名
GRUB BIOS Red Hat Enterprise Linuxの場合
Oracle Unbreakable Enterprise Kernel 6の場合
/boot/grub/grub.conf
SUSE LINUX Enterprise Server 11の場合 /boot/grub/menu.lst
UEFI Red Hat Enterprise Linux 6の場合 /boot/efi/EFI/redhat/grub.conf
GRUB2 BIOS Red Hat Enterprise Linux 7の場合
Red Hat Enterprise Linux 8の場合
SUSE LINUX Enterprise Server 12の場合
SUSE LINUX Enterprise Server 15の場合
/boot/grub2/grub.cfg
UEFI Red Hat Enterprise Linux 7の場合
Red Hat Enterprise Linux 8の場合
/boot/efi/EFI/redhat/grub.cfg

  1. Linuxに,root権限を持つユーザでログインします。
  2. HDLMのブートディスク環境であることを確認します。
    次に示すコマンドを実行して,ルート(/)の情報を確認します。
     
    # /bin/mount | /bin/grep -w /
     
    HDLMデバイスが出力された場合は,HDLMのブートディスク環境です。
    HDLMデバイスが出力されなかった場合は,次のコマンドを実行してください。
     
    # /sbin/dmsetup deps {出力されたデバイス}
     
    コマンドが異常終了した場合は,HDLMのブートディスク環境ではありません。
    コマンドが正常終了した場合は,(majorminor)から成るリストが出力されます。
    majorを引数に/bin/cat /proc/devices | /bin/grep -w {major} コマンドを実行します。
    出力内容にsddlmfdrvが含まれていればHDLMのLVMのブートディスク環境です。
    含まれていなければHDLMのブートディスク環境ではありません。
  3. HDLMのLVMのブートディスク環境の場合は,/etc/lvm/lvm.confファイルを確認します。
    次の項目の値を確認し,異なる場合は記述を修正してください。
    HDLMをアンインストールするときに使用するため,変更前の値は控えてください。
    • Red Hat Enterprise Linux 8,Oracle Linux 8またはSUSE LINUX Enterprise Server 15 SP2以降の場合
      • global_filter = [ "a|sddlm[a-p][a-p].*|", "r|/dev/sd|" ]
      • types = [ "sddlmfdrv", 16 ]
      • md_component_detection = 0
      • allow_changes_with_duplicate_pvs = 1
    • SUSE LINUX Enterprise Server 12,SUSE LINUX Enterprise Server 15 SP1以前,Red Hat Enterprise Linux 7およびOracle Linux 7の場合
      allow_changes_with_duplicate_pvsの値を1に設定してください。詳細は,「3.10.1 LVM2を使用する場合の注意事項」を参照してください。
      use_lvmetad=0で運用する場合は,global_filterではなくfilterで指定してください。
      • filter = [ "a|sddlm[a-p][a-p].*|", "r|/dev/sd|" ]
      • write_cache_state = 0
      • types = [ "sddlmfdrv", 16 ]
      • md_component_detection = 0
    • 上記以外のOSの場合
      global_filterが使用できるLVM2のバージョンで,use_lvmetad=1で運用する場合は,filterではなくglobal_filterで指定してください。
      • global_filter = [ "a|sddlm[a-p][a-p].*|", "r|/dev/sd|" ]
      • write_cache_state = 0
      • types = [ "sddlmfdrv", 16 ]
      • md_component_detection = 0
  4. LVMを使用している環境の場合は,LVMキャッシュを無効にしてください。詳細は,「3.10.1 LVM2を使用する場合の注意事項」を参照してください。
  5. /etc/fstabファイルの定義にHDLMデバイスまたはHDLMデバイス上に作成された論理ボリュームが指定されていることを確認します。
    HDLM管理対象デバイスのマウントポイントが,HDLMデバイスまたはHDLMデバイス上に作成された論理ボリュームをマウントする定義になっていることを確認します。
    /etc/fstabファイルの例を次に示します。
     
                                :
                                :
    /dev/sddlmaa2   /     ext2    defaults       1 1
                                :
                                :
    /dev/sddlmaa4   /tmp  ext2    defaults       1 2
                                :
                                :
     
    なお,HDLMのブートディスク環境では,OSごとにルートパーティション「/」のマウントポイントに設定できるデバイス名の書式は次の制限があるので,書式が異なる場合は修正してください。

    表3-76 /etc/fstabファイルでルートパーティション「/」に設定できるデバイスの書式

    OS名 HDLMのブートディスク環境
    LVMなし LVMあり
    Red Hat Enterprise Linux 6
    Red Hat Enterprise Linux 7
    Red Hat Enterprise Linux 8
    Oracle Linux 6
    Oracle Linux 7
    Oracle Linux 8
    /dev/{HDLMデバイス} /dev/mapper/{VG名}-{LV名}
    SUSE LINUX Enterprise Server 11 /dev/{VG名}/{LV名}
    SUSE LINUX Enterprise Server 12
    SUSE LINUX Enterprise Server 15
    UUID={UUID 値} または,/dev/{VG名}/{LV名}
  6. ブートローダの設定ファイル(grub.conf)を確認します。
    SUSE LINUX Enterprise Server 12,SUSE LINUX Enterprise Server 15,Red Hat Enterprise Linux 7,Red Hat Enterprise Linux 8,Oracle Linux 7およびOracle Linux 8の場合はこの手順は不要なため,手順7に進んでください。
    そのほかの場合は,デフォルト値がHDLMのブートディスク環境になっていることを確認してください。
    次のように「default=1」の場合は2番目のtitleの下線部分を確認します。
    default=1
    timeout=5
    splashimage=(hd0,0)/grub/splash.xpm.gz
    hiddenmenu
    
    title Red Hat Enterprise Linux 6 (2.6.32-754.el6.x86_64) # Backed up by HDLM
        root (hd0,0)
        kernel /vmlinuz-2.6.32-754.el6.x86_64 ro root=UUID=0d5f28ce-f4ac-44f4-bf10-2d1ac785fbac ...
        initrd /initramfs-2.6.32-754.el6.x86_64.img
    
    title HDLM  Red Hat Enterprise Linux 6 (2.6.32-754.el6.x86_64) # Setting from HDLM
        root (hd0,0)
        kernel /vmlinuz-2.6.32-754.el6.x86_64 ro root=UUID=0d5f28ce-f4ac-44f4-bf10-2d1ac785fbac ...
        initrd /initramfs-hdlm-2.6.32-754.el6.x86_64.img
                      :
    
    HDLMのブートディスク環境の場合は,次の書式を確認して,記述が異なる場合は修正してください。
    • カーネルパラメータのroot記述を確認する。

      表3-77 カーネルパラメタで「root=」に記述できる書式

      OS名 HDLMのブートディスク環境
      LVMなし LVMあり
      Red Hat Enterprise Linux 6
      Red Hat Enterprise Linux 7
      Red Hat Enterprise Linux 8
      Oracle Linux 6
      Oracle Linux 7
      Oracle Linux 8
      root=UUID={UUID値} root=UUID={UUID値}または, root=/dev/mapper/{VG名}-{LV名}
      SUSE LINUX Enterprise Server 11 root=/dev/{HDLMデバイス} root=/dev/{VG名}/{LV名}
      SUSE LINUX Enterprise Server 12
      SUSE LINUX Enterprise Server 15
      root=UUID={UUID値} root=UUID={UUID値}または, root=/dev/{VG名}/{LV名}
    • initrdに記述されたファイル名を確認する。

      表3-78 initrd のファイル名(HDLM用の初期RAMディスクイメージファイル名)

      OS名 ファイル名
      Red Hat Enterprise Linux 6
      Oracle Linux 6
      initramfs-hdlm-{kernel-version}.img
      SUSE LINUX Enterprise Server 11 initrd-hdlm-{kernel-version}.img
      Red Hat Enterprise Linux 7
      Red Hat Enterprise Linux 8
      Oracle Linux 7
      Oracle Linux 8
      initramfs-{kernel-version}.img
      SUSE LINUX Enterprise Server 12
      SUSE LINUX Enterprise Server 15
      initrd-{kernel-version}
      注※
      kernel-versionはuname -rコマンドの出力結果です。
  7. swapoffコマンドを使って,swapを無効にします。
    すべてのswapを無効にする場合のコマンドの実行例を次に示します。
     
    # /sbin/swapoff -a
    
    
    次の条件をすべて満たす環境で,swapを有効にしたまま手順を実施すると,ホストの停止に時間が掛かる場合があります。
    必ずswapを無効にしてから手順を実施してください。
    • 次に示すどれかのOSである。
      • Red Hat Enterprise Linux 7
      • Red Hat Enterprise Linux 8
      • Oracle Linux 7
      • Oracle Linux 8
      • SUSE LINUX Enterprise Server 12
      • SUSE LINUX Enterprise Server 15
    • HDLM8.6.2-01より前のバージョンのHDLMからのアップグレードインストールである。
    • HDLMデバイスが,swapとして有効になっている。
  8. HDLMをアップグレードインストールします。
    HDLMのDVD-ROMに格納されているinstallux.shまたはinstallhdlmユティリティを指定して,アップグレードインストールを実行します。 DVD-ROMのマウントポイントが,/media/cdromの場合のインストール実行例を次に示します。

    1. installux.shを実行する場合
      # /media/cdrom/installux.sh -update
    2. installhdlmユティリティを実行する場合
      # /media/cdrom/HDLM_Linux/installhdlm -update
  9. サーバ起動時に使用される初期RAMディスクイメージファイルを確認する。
    SUSE LINUX Enterprise Server 12,SUSE LINUX Enterprise Server 15,Red Hat Enterprise Linux 7,Red Hat Enterprise Linux 8,Oracle Linux 7およびOracle Linux 8の場合はこの手順は不要なため,手順10に進んでください。
    手順8が正常終了すると次のメッセージが出力されます。
     
    KAPL09300-I An initial RAM disk image was created. (file name = /boot/initramfs-hdlm-2.6.32-754.el6.x86_64.img)
     
    出力された初期RAMディスクイメージファイル名と手順6でinitrdに記述されたファイル名が同じであることを確認してください。異なる場合は,出力された初期RAMディスクイメージファイル名を変更するか,ブートローダの設定ファイル(grub.confまたはmenu.lst)の記述を,出力された初期RAMディスクイメージファイル名に修正してください。
  10. ホストを再起動します。
    次に示すコマンドを実行して,ホストを再起動してください。
     
    # /sbin/shutdown -r now
     
  11. HDLMのブートディスク環境であることを確認します。
    3.7.3 マルチパス構成のブートディスク環境の設定」の手順8で確認してください。