2.8.1 自動パス切り替え
自動的にパスを切り替える機能である,自動フェイルオーバと自動フェイルバックについて説明します。
(1) 自動フェイルオーバ
使用中のパスで障害を検知した場合,そのパスを閉塞状態にして,ほかの稼働状態のパスを使用してシステムの運用を続けることができます。これを,自動フェイルオーバと呼びます。自動フェイルオーバの対象となる障害は,パスに発生した次のレベルの障害です。
- Critical
致命的で,システム停止の危険がある障害
- Error
危険度は高いが,フェイルオーバなどで回避できる障害
障害レベルについては,「2.12.2 障害情報のフィルタリング」を参照してください。
切り替え先のパスは,同じLUにアクセスするオーナパス,ノンオーナパスの順で選択されます。
HDLMがサポートするストレージシステムは,通常すべてのパスがオーナパスになるため,同じLUにアクセスするすべてのパスが同時に切り替え先の候補になります。例えば,「図2‒8 パスの切り替え」で(A)のパスだけでLUにアクセスしている場合,使用中のパスが閉塞状態になったあとは,(B),(C),(D)のパスのどれかが切り替え先になります。
ノンオーナパスがある場合,切り替え先のパスは同じLUにアクセスするオーナパス,ノンオーナパスの順で選択されます。例えば,「図2‒8 パスの切り替え」でLUのオーナコントローラがCHA0であるとします。(A)のパスだけでLUにアクセスしている場合,使用中のパスが閉塞状態になったあとは,(B)のパスが第1候補,(C)または(D)のパスが第2候補の切り替え先になります。
- 注
ノンオーナパスがあるのは,次の場合です。
HUS100シリーズを使用している場合で,ダイナミックI/Oパスコントロール機能を有効にしているとき
global-active deviceを使用している場合で,non-preferred path optionを設定しているとき
同じLUにアクセスするパスの間での,切り替え先のパスの優先順位については,「(2) 切り替え先のパスの優先順位」を参照してください。
(2) 切り替え先のパスの優先順位
パスの優先順位は,ホストのマシンのアーキテクチャによって異なります。
マシンのアーキテクチャがCHRPの場合は,同じLUにアクセスするパスの間では,スロット番号を第1キー,CHAポートを第2キー,パス管理PATH_IDを第3キーにして,値が小さい順に切り替え先のパスが選択されます。
マシンのアーキテクチャがCHRP以外の場合は,第1キーをCHAポート番号,第2キーをパス管理PATH_IDにして,値が小さい順に切り替え先のパスが選択されます。
キーとなる各項目について説明します。
- スロット番号
HBAが搭載されているスロットの位置を示す値です。
スロット番号の大小は,物理ロケーション・コードで比較できます。
物理ロケーション・コードを取得する方法を次に示します。
次のコマンドを実行して,パス管理PATH_IDからhdiskを求めます。
# /usr/DynamicLinkManager/bin/dlnkmgr view -drv PathID HDevName Device LDEV 000000 dlmfdrv0 hdisk4 VSP_5000.10610.000009
次のコマンドを実行して,hdiskの親デバイス(HBAデバイスインスタンス)を求めます。
# lsdev -C -l hdisk4 -F 'parent' fscsi0
次のコマンドを実行して,HBAデバイスインスタンスから物理ロケーション・コードを求めます。
# lscfg -vp -l fscsi0
物理ロケーション・コードが「Uaa.bb-Pcc-Idd」の形式で取得されます。先頭のUaa.bbは使用しているホストの機種に依存します。aabbccddの小さい順でパスが選択されます。物理ロケーション・コードがほかのフォーマットの場合にはパスの優先順位は「不定」となります。ただし,同一環境では再起動などで最優先のパスが変わることはありません。
- 注意事項
ご使用のHBAによっては,手順2,手順3を繰り返す必要があります。
スロットの具体的な位置については,ホストのマニュアルを参照してください。
- CHAポート番号
CHAポート番号です。
HDLMコマンドのviewオペレーションで確認できます。viewオペレーションについては「6.7 view 情報を表示する」を参照してください。
- パス管理PATH_ID
パスに付けられたIDです。ホスト,またはHDLMマネージャが起動するたびに割り当て直されます。
HDLMコマンドのviewオペレーションについては「6.7 view 情報を表示する」を参照してください。
(3) 自動フェイルバック
使用中のパスが障害で閉塞状態になった場合,障害回復後に自動的に稼働状態にできます。これを,自動フェイルバックと呼びます。この機能を使用した場合,HDLMは定期的に障害回復を監視します。
ノンオーナパスがある場合,使用するパスは,稼働状態のオーナパス,ノンオーナパスの順で選択されます。すべてのオーナパスが閉塞状態でノンオーナパスを使用しているときに,オーナパスの障害が回復して,自動的に稼働状態になると,使用するパスがオーナパスに切り替わります。
なお,パスに間欠障害※が発生している場合,自動フェイルバックの設定をしていると,閉塞状態と稼働状態を繰り返すため,I/Oの性能が低下することがあります。その場合は,間欠障害監視を設定して,間欠障害と見なされたパスを自動フェイルバックの対象外にすることをお勧めします。
自動フェイルバック機能,および間欠障害監視は,HDLMコマンドのsetオペレーションで指定します。setオペレーションについては,「6.6 set 動作環境を設定する」を参照してください。
- 注
ノンオーナパスがあるのは,次の場合です。
HUS100シリーズを使用している場合で,ダイナミックI/Oパスコントロール機能を有効にしているとき
global-active deviceを使用している場合で,non-preferred path optionを設定しているとき
- 注※
間欠障害とは,ケーブルの接触不良などが原因で,断続的に発生する障害です。