2.2.3 クラスタシステムでの構成
クラスタシステムとは,複数のサーバシステムを連携して1つのシステムとして運用するシステムです。同じ環境のサーバを2つ構築し,業務を実行しているサーバ(実行系)で障害が発生した場合に待機していた別のサーバ(待機系)に処理を引き継ぐことで業務を継続できます。
- 〈この項の構成〉
(1) クラスタシステムの前提条件
JP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsをクラスタシステムで使用する場合,次に示す前提条件があります。
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クラスタソフトは,次に示す2.〜4.を制御できるプログラムであること。
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実行系から待機系へ引き継ぎができる共有ディスクを使用できること。
詳細には次に示す条件を満たすこと。
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JP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsを起動する前に,共有ディスクが割り当てられること。
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JP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsを実行中に,共有ディスクの割り当てが解除されないこと。
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JP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsを停止したあとに,共有ディスクの割り当てが解除されること。
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実行系ノードからだけ共有ディスクをアクセスできるように,排他制御されていること。
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システムダウンなどでファイルが消えないよう,ジャーナル機能を持つファイルシステムなどでファイルを保護すること。
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フェールオーバーしてもファイルに書き込んだ内容が保証されて引き継がれること。
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フェールオーバー時に共有ディスクを使用中のプロセスがあっても,強制的にフェールオーバーができること。
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共有ディスクの障害を検知した場合の回復処置はクラスタソフトなどが制御し,JP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsが回復処置を意識する必要がないこと。また,回復処置の延長でJP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsの起動や停止が必要な場合は,クラスタソフトからJP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsに起動や停止の実行要求をすること。
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クラスタ運用で使用するIPアドレスとして次に示す条件を満たすこと。
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引き継ぎができる,クラスタ運用で使用するIPアドレスを使って通信できること。
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クラスタ運用で使用するホスト名から,クラスタ運用で使用するIPアドレスが一意に求まること。
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JP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsを起動する前に,クラスタ運用で使用するIPアドレスが割り当てられること。
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JP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsを実行中に,クラスタ運用で使用するIPアドレスが削除されないこと。
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JP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsを実行中に,クラスタ運用で使用するホスト名とクラスタ運用で使用するIPアドレスの対応が変更されないこと。
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JP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsを停止したあとに,クラスタ運用で使用するIPアドレスが削除されること。
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ネットワーク障害を検知した場合の回復処置はクラスタソフトなどが制御し,JP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsが回復処置を意識する必要がないこと。また,回復処置の延長でJP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsの起動や停止が必要な場合は,クラスタソフトからJP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsに起動や停止の実行要求をすること。
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クラスタ運用で使用するホスト名が,hostsファイルやネームサーバに設定され,TCP/IP通信ができること。
上記の条件が満たされていない場合は,JP1/AJS3 for CSAの動作に問題が起きることがあります。例えば,次のような問題が発生します。
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実行系で書き込んだデータが,フェールオーバーしたときに壊れてしまう場合
JP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsでエラー・データ消失・起動失敗などの問題が発生し,正常に動作できない。
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NIC障害が発生しても回復処置がされない場合
クラスタソフトなどの制御によってNICが切り替えられるか,または他サーバへフェールオーバーするまで,通信エラーが発生しJP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsは正常に動作できない。
(2) サポートするシステム構成
JP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsをクラスタ運用するシステム構成の例を次の図に示します。
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- (凡例)
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JP1/AJS3 for CSA:JP1/AJS3 for Cloud Service Applications
なお,クラウドサービスが対応している場合,クラウド上に構築するJP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsをクラスタ構成とすることもできます。
- 重要
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JP1/AJS3 for Cloud Service ApplicationsとJP1/AJS3 - ManagerおよびJP1/AJS3 - Agentそれぞれで論理ホスト環境を構築することで,障害発生時には相互に影響を与えることなくフェールオーバーします。そのため,異なる論理ホスト上にJP1/AJS3 for Cloud Service ApplicationsとJP1/AJS3 - ManagerおよびJP1/AJS3 - Agentを構築することを推奨します。
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クラスタ運用時のシステム構成を検討する場合,論理ホスト名にはFQDN形式のホスト名を使用できません。
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JP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsは1台の物理ホスト上に1つの論理ホストだけセットアップできます。このため,1台の物理ホスト上に論理ホスト名の異なる複数のJP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsはセットアップできません。
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JP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsはアクティブ・スタンバイ構成のクラスタ構成に対応しています。アクティブ・アクティブ構成のクラスタ構成には対応していません。
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JP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsをクラウド上にクラスタ構成で構築する場合,JP1/AJS3 for Cloud Service Applicationsサーバのホスト名としてIPアドレスは使用できません。
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JP1/AJS3 - ManagerおよびJP1/AJS3 - Agentをクラスタシステムで構築する場合の詳細は,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(システム構築編)」のクラスタシステムでの構成例の説明を参照してください。