2.10.1 ジョブの一斉実行についての補足事項
- 〈この項の構成〉
(1) 構成要素について
一斉実行を使用するには,マネージャーホスト,中継エージェント,一斉配信エージェント,および宛先エージェントが必要です。
それぞれの構成要素について,次に説明します。
(a) マネージャーホスト
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配置先
オンプレミス環境とクラウドのオートスケールしない環境に配置できます。
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クラスタ構成
クラスタ構成に対応しています。
(b) 中継エージェント
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配置先
オンプレミス環境とクラウドのオートスケールしない環境に配置できます。
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クラスタ構成
クラスタ構成に対応しています。
マネージャーホストのOSがWindowsまたはLinuxの場合は,マネージャーホストでajsatsetup -mコマンドを実行することで,マネージャーホストが中継エージェントを兼ねることもできます。
次の場合は,マネージャーホストや宛先エージェントとは別のホストに中継エージェントが必要です。
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マネージャーホストのOSがWindowsでもLinuxでもない場合
フレキシブルジョブが実行ホストとして指定できるマネージャーホストおよびエージェントホストのOSは,WindowsとLinuxだけです。
このため,マネージャーホストがWindowsおよびLinux以外のOSの場合,中継エージェントが必要です。
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マネージャーホストと宛先エージェントとの間で直接通信できない場合
図2-67のように,マネージャーホストと宛先エージェントの間に中継エージェントを配置して,通信を仲介する必要があります。
(c) 一斉配信エージェント
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配置先
オンプレミス環境とクラウドのオートスケールしない環境に配置できます。
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クラスタ構成
クラスタ構成に対応していません。そのため,障害発生時にフレキシブルジョブの一斉実行を使用する場合は,代替のマシンをあらかじめ用意することを検討してください。手動で代替のマシンに切り替えたあと,必要に応じてジョブを再実行することで,フレキシブルジョブの一斉実行を使用できます。
代替のマシンを用意する段階では,ホスト名とIPアドレスは,切り替え前のマシンと異なっていても問題ありません。ただし,宛先エージェントのセットアップ時に実行したajsatsetupコマンドの-pオプションにDNS名以外を指定している場合は,代替のマシンに切り替えるときに,代替のマシンのホスト名またはIPアドレスを切り替え前のマシンと同じにする必要があります。
代替のマシンをあらかじめ用意する手段として,仮想マシンを新規に作成する方法と複製する方法があります。
仮想マシンを新規に作成する方法については,仮想化ソフトウェアのドキュメントを参照して,仮想マシンを用意してください。また,一斉配信エージェントの設定手順については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 21.3.2(3)(a) 一斉配信エージェントの設定手順」を参照してください。
仮想マシンの複製では,一斉配信エージェントをクラウド環境などに配置し,クラウドの機能を使用して,一斉配信エージェントの環境を仮想マシンとして複製できます。JP1/AJS3 - Agentをインストールし,一斉配信エージェントをセットアップした直後に,その仮想マシンを複製します。これによって,JP1/AJS3 - Agentのインストールおよびセットアップの作業を短縮できます。仮想マシンの複製の詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 22.4 JP1/AJS3 - Agentのセットアップ後の仮想マシンの複製」を参照してください。
障害発生時に代替のマシンに切り替える手順を,次に示します。
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切り替え前のマシンが起動している場合は,マシンを停止する。
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代替のマシンを起動する。
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宛先エージェントと代替のマシンにある一斉配信エージェントとの通信を可能にする。
宛先エージェントのセットアップ時に実行したajsatsetupコマンドの-pオプションの値によって,次の設定をする。
・-pオプションに指定した値がホスト名の場合
代替のマシンのホスト名を,切り替え前のマシンと同じホスト名に変更して,代替のマシンのIPアドレスが求まるようにしてください。
・-pオプションに指定した値がIPアドレスの場合
代替のマシンのIPアドレスを,切り替え前のマシンと同じIPアドレスに変更して,代替のマシンのIPアドレスが求まるようにしてください。
・-pオプションに指定した値がDNS名の場合
クラウド環境のルーティングなどを設定し,DNS名から代替のマシンのIPアドレスが求まるようにしてください。
補足事項
・宛先エージェントのセットアップ時に実行したajsatsetupコマンドの-pオプションは,一斉配信エージェントを宛先エージェントに登録するものであり,一つしか登録できません。そのため,一斉配信先の宛先エージェントとしての情報を代替のマシンでもそのまま使用する場合は,-pオプションで指定した値と同じにする必要があります。
・JP1/AJS3サービスを使用する場合は,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 運用ガイド 7.9.1 JP1/AJS3が動作しているホストの名称を変更する」およびマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 運用ガイド 7.9.2 JP1/AJS3が動作しているホストのIPアドレスを変更する」の設定を実施する必要があります。ただし,代替のマシンを一斉配信エージェントとしてだけ運用する場合は,設定の必要はありません。
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代替のマシンで,次のサービスを起動する。
・JP1/AJS3 Autonomous Agentサービス
・JP1/AJS3 Autonomous Agent Messengerサービス
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ジョブを再実行する。
ジョブ実行中に一斉配信エージェントで障害が発生すると,フレキシブルジョブは異常終了します。そのため,代替のマシンに切り替えたあと,必要に応じてジョブを再実行してください。
また,必要に応じて,リモートサイト側に代替の一斉配信エージェント環境を用意することも検討してください。
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(d) 宛先エージェント
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配置先
ロードバランサー配下でオートスケールする環境に配置してください。
なお,一斉配信エージェントと宛先エージェント間の通信は,ロードバランサーを経由しないで,TCP/IP通信とUDP通信を使用して直接通信します。TCP/IP通信とUDP通信が可能であれば,宛先エージェントをロードバランサー配下に配置する場合,ロードバランサーの種類は問いません。
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クラスタ構成
クラスタ構成に対応していません。そのため,クラウドのオートスケール環境に宛先エージェントを配置することで,オートスケールで可用性が確保されます。また,必要に応じて,リモートサイト側にオートスケール環境を用意することも検討してください。
- 注意事項
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クラウドのオートスケール環境でのスケールインおよびスケールアウトの動作はクラウド側で管理しているため,オートスケール環境でのスケールアウトによる宛先エージェントの起動完了前や,スケールインによる宛先エージェントの削除はJP1/AJS3では検知できず,そのタイミングでフレキシブルジョブを実行すると失敗することがあります。そのため,フレキシブルジョブの実行は,再実行すればよいジョブとすることを推奨します。
(2) 通信環境について
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ファイアウォールの透過については,「2.3.2 ファイアウォールと通信に関する基礎知識」を参照してください。
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中継エージェントとクラウド環境間の通信には,通信の安全性と通信回線の安定性が確保された通信環境を使用してください。詳細については,「2.3.7 WAN環境で使用する場合の通信」を参照してください。
(3) その他
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一斉実行を設定したフレキシブルジョブは,バージョン11-10以降のJP1/AJS3 - Manager,JP1/AJS3 - Agent,およびJP1/AJS3 - Viewで使用できます。
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フレキシブルジョブの一斉実行使用時の注意事項については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(業務設計編) 7.8 フレキシブルジョブ使用時の注意事項」を参照してください。