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JP1 Version 12 JP1/Performance Management - Agent Option for Platform(UNIX(R)用)


2.3.20 WPARを使用した仮想化システムで収集できるデータ

〈この項の構成〉

(1) WPARの機能

AIXに実装されているWPAR機能は,1つのLPAR内に,ソフトウェア的に仮想化された複数のAIXインスタンスを稼働する機能を提供します。WPARには,System WPARとApplication WPARの2種類の環境があり,WPARを構築するためのグローバル環境も備えています。それぞれの環境について次に説明します。

プロセスをすべて包括するビュー,IPC,ファイルシステム,デバイス,およびその他のユーザー・レベル・オブジェクトとシステム・レベル・オブジェクトを持つ環境です。

独自のファイルシステム,ユーザーとグループ,リソース制御,ログイン,およびネットワークを持つ仮想システム環境です。

アプリケーションとそのリソースを分離するための環境です。

(2) WPARの構造

WPARは,SolarisのZoneと同じような構造(アプリケーション用のワークスペースを提供)をしています。

グローバル環境では,システム上で稼働中のWPARに割り当てられたプロセス,ファイルシステム,およびその他のシステム・コンポーネントを表示したり,それらと対話したりできます。WPARを新規に作成できるのは,グローバル環境だけです。WPAR環境で,さらに別のWPARを新規に作成することはできません。管理用タスクの多くは,グローバル環境だけで実行できます。また,コマンドの多くは,グローバル環境で実行されたときと,WPAR環境で実行されたときで動作が異なります。

PFM - Agent for Platformでは,次の場合にパフォーマンスデータが収集できます。

メモ

PFM - Agent for Platformをグローバル環境にインストールした場合,Application WPAR環境も含めたすべてのWPAR環境のパフォーマンスを監視できます。

(3) グローバル環境でのプロセス監視

PFM - Agent for Platformがグローバル環境上で動作する場合,ALL WPAR Collection for Processプロパティの設定によって,プロセス情報を収集する環境が選択できます。ALL WPAR Collection for Processプロパティの設定値を次に示します。

Yes

グローバル環境およびすべてのWPAR環境のプロセス情報を収集する。

No

グローバル環境のプロセス情報を収集する。

ALL WPAR Collection for Processプロパティのデフォルト値は「Yes」です。

グローバル環境上でPFM - Agent for Platformが動作する場合に収集するプロセス情報を次の図に示します。

図2‒14 グローバル環境上で収集するプロセス情報

[図データ]

(4) System WPAR環境でのプロセス監視

PFM - Agent for PlatformがSystem WPAR環境上で動作する場合,ALL WPAR Collection for Processプロパティの設定に関係なくPFM - Agent for Platformが動作しているSystem WPAR環境のプロセス情報だけが収集されます。System WPAR環境上でPFM - Agent for Platformが動作する場合に収集するプロセス情報を次の図に示します。

図2‒15 System WPAR環境上で収集するプロセス情報

[図データ]

(5) WPAR上でのPFM - Agent for Platformの利用

WPAR上でPFM - Agent for Platformを利用する場合,プロセッサおよびメモリーの情報が動的に変更されることに注意してください。

PFM - Agent for Platformのインストール

グローバル環境またはSystem WPAR環境にインストールできます。ただし,System WPAR環境にインストールして使用する場合,WPARの特性上,分離したアプリケーション環境を提供するため,次に示す情報を取得できません。

  • PFM - Agent for PlatformをインストールしたSystem WPAR以外のWPAR環境の情報

  • 一部のデバイス情報(/dev/memや/dev/kmemなど)

  • 一部のネットワーク情報(NFS Serverに関する情報)

グローバル環境にPFM - Agent for PlatformをインストールしたあとにSystem WPAR環境を構築すると,System WPAR環境にPFM - Agent for Platformに関するファイルがコピーされますが,グローバル環境のPFM - Agent for Platformに影響はありません。なお,System WPAR環境にコピーされたPFM - Agent for Platformはそのまま使用できません。System WPAR環境上でPFM - Agent for Platformを使用する場合は,System WPAR環境上のPFM - Agent for Platformに関するファイル(/opt/jp1pcディレクトリ配下のすべてファイル)を手動で削除して,PFM - Agent for Platformを新規にインストールしてから使用してください。

プロセッサ情報

WPARは,プロセッサの割り当て率に従って動作する仮想システムなので,PFM - Agent for Platformの動作中にプロセッサ数が変更されることはありません。ただし,システム起動中にプロセッサの割り当て率を動的に変更できるため,各アプリケーションのプロセッサ使用率などに影響がでる場合があります。

メモリー

動的に変更されるリソースとして,アラームの設定には注意してください。使用しているメモリーが一定であっても,割り当てているメモリーリソースを減少させるとメモリー使用率は増加するため,意図しないアラームが通知されることがあります。

デバイス

WPAR上から監視する場合,WPAR上の論理パーティション群だけ収集できます。物理パーティション郡を収集する場合は,PFM - Agent for Platformをグローバル環境にインストールして,グローバル環境上から監視してください。