Hitachi

JP1 Version 12 JP1/Performance Management 運用ガイド


5.8.4 複合レポートの応用的な使い方

〈この項の構成〉

(1) 同一レコードの異なるフィールドのレポートを表示する

同一レコード上の異なるフィールドのレポートを1つのグラフに表示する場合,フィールド同士でデータの単位やスケールに大きな差異がないか注意する必要があります。

フィールド同士でデータの単位やスケールに大きな差異がある場合,通常のレポートと複合レポートとでは表示結果が次のように異なります。

複合レポートで作成したグラフの例を次の図に示します。この図では,フィールド「プロセッサ使用率(最大値:100%)」とフィールド「物理メモリー未使用サイズ(最大値:3,000メガバイト)」を1つのグラフに表示させています。

図5‒12 同一レコードで異なるフィールドのレポートを表示する場合

[図データ]

この複合レポートの登録手順は次のとおりです。

  1. 複数のレポートを複合ブックマークに登録する。

    なお,ここで登録するレポート同士は,次の条件を満たしているものとします。

    • 同一スケールのデータフィールド(複数も可)だけを表示する

    • 同一の収集間隔でデータ表示する

  2. 複合ブックマークを次のように編集する。

    • 各レポートを別々の系列グループに設定する

    • 各系列グループに適したY軸の最大値を設定する

    • 系列グループのY軸の表示位置を左右別々に設定する

(2) 異なるエージェント種別の同系レコードをレポート表示する

異なるエージェント種別の同系レコードを1つのグラフに表示させると,レコード値を比較できます。しかし,通常のレポートの場合,異なるエージェントの情報は同じグラフ上に表示できません。

複合レポートの場合,複合ブックマークの編集で,該当するレポートを同じ系列グループに設定することで,これらのレコードを同じグラフ上に表示できます。また,グラフ種類に「積み上げ棒」などを設定することで,積み上げて合計されたデータ規模を視覚的に確認することもできます。

複合レポートで作成したグラフの例を次の図に示します。この図では,フィールド「Windows1」と「UNIX1」のCPU(単位:%)を1つのグラフに表示させています。

図5‒13 異なるエージェント種別の同系レコードをレポート表示する場合

[図データ]

この複合レポートの登録手順は次のとおりです。

  1. 複数のレポートを複合ブックマークに登録する。

    なお,ここで登録する複数のレポートは,それぞれスケールおよび内容が類似するデータフィールドを持っているものとします。

  2. 複合ブックマークを編集し,各レポートを同一の系列グループとして作成する。

(3) 異なるエージェント種別の異なるレコードをレポート表示する

複合レポートでは,異なるエージェントの異なるレコード同士も,同じグラフ上に表示できます。例えば,複数レコード間の変動値に相関性がある場合などに,視覚的に確認できて便利です。

複合レポートによるグラフの作成結果の例を次の図に示します。この例では,変動値に相関性がある次の2つのフィールドを同じグラフ上に表示させています。

この複合レポートの登録手順は次のとおりです。

  1. 複数のレポートを複合ブックマークに登録する。

    なお,ここで登録する複数のレポートは,スケールやエージェント種別は異なるが,関連性を持つものとします。

  2. 複合ブックマークを次のように編集する。

    • 各レポートを別々の系列グループとして設定する

    • それぞれの系列グループで,スケールやデータに合わせて,グラフ種類やY軸の値を設定する

    • 系列グループのY軸の表示位置を左右別々に設定する

(4) ベースラインと同時にレポート表示する

複合レポートではベースラインとして,周期性を持つ過去のレポートデータや,安定稼働時のレポートデータをあわせて表示できます。これによって,現在のレポートと比較し,異常発生の有無や傾向を把握しやすくなります。

グラフの作成結果の例を次の図に示します。この図では,過去のレポートをベースラインとし,それぞれの24時間のトランザクション数(最大値:3,000件)を同じグラフ上に表示させています。

図5‒15 ベースラインと同時にレポート表示する場合

[図データ]

この複合レポートの登録手順は次のとおりです。

  1. 比較元のレポートを複合ブックマークとして登録する。

    ここで登録するレポートは,周期的なデータ収集が設定されているレポートとします。

  2. 複合ブックマークにベースラインを追加する。

    ベースラインとして登録するレポートは,比較元と同じ期間または収集間隔を持つレポートとします。

  3. 複合ブックマークを編集する。

    登録レポートとベースラインを同じ系列グループに設定します。

(5) さまざまな複合レポートを組み合わせて利用する

(1)〜(4)の手法を応用することで,システム全体を総合的に判断するためのグラフが作成できます。また,複合レポートとして表示した情報データに着目して,個別登録レポートへドリルダウンすることで,より詳細なデータ監視へ視点を切り替えることができます。

次に示す図では,Web3階層システム(Webサーバ/アプリケーションサーバ/データベースサーバ)に対して,システム運用監視の例を示します。この例では次の視点で監視します。

これらをデータごとに系列グループにまとめ,複合レポートとして1つのグラフに表示します。縦軸のスケールは系列グループごとに設定できるため,システム全体の稼働性能の推移を相対的に比較できます。

グラフの作成結果の例を次の図に示します。

図5‒16 さまざまなレポートを組み合わせたときの例

[図データ]

この複合レポートの登録手順は次のとおりです。

  1. 次に示すレポートを作成する。

    • HTTPサービスの応答速度

    • WebサーバのCPU使用率

    • Webサーバのメモリー使用量

    • アプリケーションサーバのCPU使用率

    • アプリケーションサーバのメモリー使用量

    • データベースサーバのCPU使用率

    • データベースサーバのメモリー使用量

    Webサーバ,アプリケーションサーバ,データベースサーバについては,あらかじめレポートのドリルダウンを設定しておきます。

  2. 複合ブックマークにこれらのレポートを登録する。

    系列グループは次のように設定します。

    • HTTPサービスの応答速度:面グラフ,最大3,000ms

    • CPU使用率:線グラフ,最大100

    • メモリー使用量:棒グラフ,2,048メガバイト