3.2.3 パフォーマンスデータの管理機能と設定手順
Performance Managementでは,収集したレコードの中でシステムの分析に必要な稼働監視データだけを,必要な間隔でデータベースに格納できます。また,データベースに記録するデータの上限値を設定したり,保存期間を設定したりできるため,一定のリソース内で稼働監視ができます。さらに,監視レコードによっては,稼働監視データを期間ごとの平均値や最大値などの意味のあるデータに要約して,データベースに格納できます。このため,システム管理者はシステムの分析に必要なデータだけを効率良く管理できます。
Performance Managementでは,Storeデータベースへのパフォーマンスデータの記録方法を設定できます。PFM - Web Consoleで設定できる項目を次に示します。
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収集したパフォーマンスデータをStoreデータベースに記録するかどうか
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パフォーマンスデータの収集間隔
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パフォーマンスデータの収集負荷を分散させるためのオフセットの値
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パフォーマンスデータをStoreデータベースに記録するかしないかの判断条件
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パフォーマンスデータの保存期間
データの記録方法は,各レコードで異なります。各レコードの記録方法については,各PFM - AgentまたはPFM - RMマニュアルの,レコードについて説明している章(各レコードのデフォルト値と変更できる値)を参照してください。
- ヒント
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アラームに設定する監視レコードは,必ずしもStoreデータベースに保存する必要はありません。ただし,アラームイベントが発生したときに,その監視レコードの履歴を確認することで,システムの状況を確認できるため,Storeデータベースに保存することをお勧めします。
- 〈この項の構成〉
(1) リアルタイムデータの場合
リアルタイムデータの場合,収集されたパフォーマンスデータはStoreデータベースに格納されません。
(a) リアルタイムデータの収集開始時刻
リアルタイムデータの場合,収集されたパフォーマンスデータはStoreデータベースに格納されません。この場合,パフォーマンスデータの収集開始時刻は,PFM - AgentまたはPFM - RMを起動させた時刻によって決まります。
例を次に示します。
- リアルタイムデータの収集開始時刻の例
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PFM - Agent for Platform(Windows)のContent Index Detail(PD_CIND)レコードで,パフォーマンスデータの収集間隔を180秒(3分)と設定し,18:31:00にPFM - Agent for Platformを起動させた場合,最初のデータ収集は,18:31:00に開始されます。次のデータ収集は,データの収集間隔である3分後の18:34:00に開始されます。
図3‒13 リアルタイムデータの収集開始時刻の例
(b) リアルタイムデータの格納方法
リアルタイムデータはStoreデータベースに格納されません。
(2) 履歴データの場合
履歴データの場合,収集されたパフォーマンスデータはAgent StoreまたはRemote Monitor StoreサービスによってStoreデータベースに格納されます。
処理の流れを次に示します。
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パフォーマンスデータの収集
パフォーマンスデータは,監視対象プログラムからAgent CollectorまたはRemote Monitor Collectorサービスによって収集され,レコードの形式で管理されます。
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パフォーマンスデータの格納
収集されたパフォーマンスデータは,Agent StoreまたはRemote Monitor StoreサービスによってStoreデータベースに格納されます。PIレコードタイプの場合は,収集データを要約したデータが格納されます。PDレコードタイプおよびPLレコードタイプの場合は,収集データがそのまま格納されます。
パフォーマンスデータの収集間隔のデフォルト値は,レコードによって異なります。詳細については,各PFM - AgentまたはPFM - RMマニュアルの,レコードについて説明している章を参照してください。
(a) 履歴データの収集開始時刻
履歴データの場合,パフォーマンスデータの収集開始時刻は,グリニッジ標準時の午前0時0分0秒を基準に,パフォーマンスデータの収集間隔(Collection Interval)と収集開始のオフセット(Collection Offset)の設定値によって決まります。
収集開始時刻の設定手順を次に示します。
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PFM - AgentまたはPFM - RMの起動時刻をグリニッジ標準時間に変更する。
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グリニッジ標準時間の00:00にCollection Intervalの値を足していき,手順1で求めた時刻を最初に超える時刻を求める。
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手順2の時刻を日本時間に変更する。
変更した時刻が収集開始時刻となります。
設定した時刻以降,Collection Intervalの値の間隔で収集されます。
注 Collection Offsetを指定している場合は,手順3で求めた時刻にCollection Offsetの値を足した時刻が収集開始時刻になります。
- 収集開始時刻の設定例1
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次の条件で設定する場合の例について説明します。
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Collection Interval=28,800秒(8時間)
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Collection Offset=0
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サービス開始時刻:13:00
設定例を次に示します。
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PFM - AgentまたはPFM - RMの起動時刻をグリニッジ標準時間に変更する。
日本時刻で13:00に起動するので,グリニッジ標準時では4:00起動です。
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グリニッジ標準時間の00:00にCollection Intervalの値を足していき,手順1で求めた時刻を最初に超える時刻を求める。
Collection Intervalが8時間なので,最初に4:00を超える時刻はグリニッジ標準時08:00です。
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手順2の時刻を日本時間に変更する。
グリニッジ標準時08:00は,日本時刻で17:00です。これが収集開始時刻となり,この時刻以降8時間間隔(翌日01:00,09:00,17:00・・・)でパフォーマンスデータが収集されます。
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- 収集開始時刻の設定例2
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次の条件で設定する場合の例について説明します。
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Collection Interval=28,800秒(8時間)
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Collection Offset=60秒(1分)
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サービス開始時刻:13:00
設定例を次に示します。
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PFM - AgentまたはPFM - RMの起動時刻をグリニッジ標準時間に変更する。
日本時刻で13:00に起動するので,グリニッジ標準時では4:00起動です。
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グリニッジ標準時間の00:00にCollection Intervalの値を足していき,手順1で求めた時刻を最初に超える時刻を求める。
Collection Intervalが8時間なので,最初に4:00を超える時刻はグリニッジ標準時08:00です。
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手順2の時刻を日本時間に変更する。
グリニッジ標準時08:00は,日本時刻で17:00です。
Collection Offsetを指定しているので,17:00にCollection Offsetの値1分を足した17:01が収集開始時刻になります。
この時刻以降8時間間隔(翌日01:01,09:01,17:01・・・)でパフォーマンスデータが収集されます。
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- 履歴データの収集開始時刻の例
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PFM - Agent for Platform(Windows)のSystem Overview(PI)レコードで,Collection Intervalの値を43,200秒(12時間),Collection Offsetの値を10秒に設定したとします。
日本時間の8月2日6時27分15秒(グリニッジ標準時の8月1日21時27分15秒)にPFM - AgentまたはPFM - RMを起動させた場合,最初のデータは日本時間の8月2日9時0分10秒(グリニッジ標準時の8月2日0時0分10秒)から収集されます。次のデータは,収集間隔に従って,12時間後の日本時間21時0分10秒(グリニッジ標準時の12時0分10秒)から収集されます。
図3‒15 履歴データの収集開始時刻の例
(b) 履歴データの格納方法
PIレコードタイプ,PDレコードタイプ,およびPLレコードタイプのレコードのパフォーマンスデータは,それぞれ次のように格納されます。
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PIレコードタイプの場合
PFM - Web Consoleの画面で設定した収集間隔ごとにパフォーマンスデータが収集されます。ただし,パフォーマンスデータは,PFM - AgentまたはPFM - RMを起動させてから2回目の収集時以降にStoreデータベースに格納されます。1回目の収集時にはStoreデータベースに格納されません。
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PDレコードタイプおよびPLレコードタイプの場合
PFM - Web Consoleの画面で設定した収集間隔ごとにパフォーマンスデータが収集されます。パフォーマンスデータは,PFM - AgentまたはPFM - RMを起動させてから1回目の収集時からStoreデータベースに格納されます。
デフォルトの設定では,一部のレコードのパフォーマンスデータしかStoreデータベースに格納されません。Storeデータベースにパフォーマンスデータを格納したい場合,レコードごとにPFM - Web Consoleの画面で設定します。設定方法については,マニュアル「JP1/Performance Management 運用ガイド」の,稼働監視データの管理について説明している章を参照してください。
(3) 差分データの保存について
PIレコードタイプ,PDレコードタイプ,およびPLレコードタイプのレコードの各フィールドには,格納される値が前回の収集データからの差分であるものがあります。この差分データを「デルタ」と呼びます。例を次に示します。
- 差分データを格納する例
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システム起動時からの累計I/O回数を測定するフィールドの「デルタ」欄が「Yes」の場合,前回の収集時刻から今回の収集時刻の間に発生したI/Oの回数が格納されます。パフォーマンスデータの収集間隔(Collection Interval)を3,600秒(1時間)に設定したとします。
8月2日6時27分15秒(グリニッジ標準時の8月1日21時27分15秒)にPFM - AgentまたはPFM - RMを起動した場合,最初のデータは,日本時間の8月2日7時0分0秒(グリニッジ標準時の8月1日22時0分0秒)から収集されます。次のデータは,日本時間8時0分0秒(グリニッジ標準時の8月1日23時0分0秒)から収集されます。そのあと,日本時間7時0分0秒と8時0分0秒に収集されたデータを基に差分データが作成され,Storeデータベースに格納されます。
図3‒16 差分データを格納する例
各フィールドの値がデルタ値であるかどうかについては,各PFM - AgentまたはPFM - RMマニュアルのレコードについて説明している章(各レコードのフィールドの表)を参照してください。各レコードのフィールドの表で,「デルタ」欄が「Yes」のフィールドには,前回測定した値との差分が格納されます。