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JP1 Version 12 JP1/Performance Management 設計・構築ガイド


3.2.3 パフォーマンスデータの管理機能と設定手順

Performance Managementでは,収集したレコードの中でシステムの分析に必要な稼働監視データだけを,必要な間隔でデータベースに格納できます。また,データベースに記録するデータの上限値を設定したり,保存期間を設定したりできるため,一定のリソース内で稼働監視ができます。さらに,監視レコードによっては,稼働監視データを期間ごとの平均値や最大値などの意味のあるデータに要約して,データベースに格納できます。このため,システム管理者はシステムの分析に必要なデータだけを効率良く管理できます。

図3‒12 監視エージェントから収集したパフォーマンスデータの管理の概要

[図データ]

Performance Managementでは,Storeデータベースへのパフォーマンスデータの記録方法を設定できます。PFM - Web Consoleで設定できる項目を次に示します。

データの記録方法は,各レコードで異なります。各レコードの記録方法については,各PFM - AgentまたはPFM - RMマニュアルの,レコードについて説明している章(各レコードのデフォルト値と変更できる値)を参照してください。

ヒント

アラームに設定する監視レコードは,必ずしもStoreデータベースに保存する必要はありません。ただし,アラームイベントが発生したときに,その監視レコードの履歴を確認することで,システムの状況を確認できるため,Storeデータベースに保存することをお勧めします。

〈この項の構成〉

(1) リアルタイムデータの場合

リアルタイムデータの場合,収集されたパフォーマンスデータはStoreデータベースに格納されません。

(a) リアルタイムデータの収集開始時刻

リアルタイムデータの場合,収集されたパフォーマンスデータはStoreデータベースに格納されません。この場合,パフォーマンスデータの収集開始時刻は,PFM - AgentまたはPFM - RMを起動させた時刻によって決まります。

例を次に示します。

リアルタイムデータの収集開始時刻の例

PFM - Agent for Platform(Windows)のContent Index Detail(PD_CIND)レコードで,パフォーマンスデータの収集間隔を180秒(3分)と設定し,18:31:00にPFM - Agent for Platformを起動させた場合,最初のデータ収集は,18:31:00に開始されます。次のデータ収集は,データの収集間隔である3分後の18:34:00に開始されます。

図3‒13 リアルタイムデータの収集開始時刻の例

[図データ]

(b) リアルタイムデータの格納方法

リアルタイムデータはStoreデータベースに格納されません。

(2) 履歴データの場合

履歴データの場合,収集されたパフォーマンスデータはAgent StoreまたはRemote Monitor StoreサービスによってStoreデータベースに格納されます。

図3‒14 パフォーマンスデータがStoreデータベースに格納されるまでの流れ

[図データ]

処理の流れを次に示します。

  1. パフォーマンスデータの収集

    パフォーマンスデータは,監視対象プログラムからAgent CollectorまたはRemote Monitor Collectorサービスによって収集され,レコードの形式で管理されます。

  2. パフォーマンスデータの格納

    収集されたパフォーマンスデータは,Agent StoreまたはRemote Monitor StoreサービスによってStoreデータベースに格納されます。PIレコードタイプの場合は,収集データを要約したデータが格納されます。PDレコードタイプおよびPLレコードタイプの場合は,収集データがそのまま格納されます。

パフォーマンスデータの収集間隔のデフォルト値は,レコードによって異なります。詳細については,各PFM - AgentまたはPFM - RMマニュアルの,レコードについて説明している章を参照してください。

(a) 履歴データの収集開始時刻

履歴データの場合,パフォーマンスデータの収集開始時刻は,グリニッジ標準時の午前0時0分0秒を基準に,パフォーマンスデータの収集間隔(Collection Interval)と収集開始のオフセット(Collection Offset)の設定値によって決まります。

収集開始時刻の設定手順を次に示します。

  1. PFM - AgentまたはPFM - RMの起動時刻をグリニッジ標準時間に変更する。

  2. グリニッジ標準時間の00:00にCollection Intervalの値を足していき,手順1で求めた時刻を最初に超える時刻を求める。

  3. 手順2の時刻を日本時間に変更する。

    変更した時刻が収集開始時刻となります。

    設定した時刻以降,Collection Intervalの値の間隔で収集されます。

注 Collection Offsetを指定している場合は,手順3で求めた時刻にCollection Offsetの値を足した時刻が収集開始時刻になります。

収集開始時刻の設定例1

次の条件で設定する場合の例について説明します。

  • Collection Interval=28,800秒(8時間)

  • Collection Offset=0

  • サービス開始時刻:13:00

設定例を次に示します。

  1. PFM - AgentまたはPFM - RMの起動時刻をグリニッジ標準時間に変更する。

    日本時刻で13:00に起動するので,グリニッジ標準時では4:00起動です。

  2. グリニッジ標準時間の00:00にCollection Intervalの値を足していき,手順1で求めた時刻を最初に超える時刻を求める。

    Collection Intervalが8時間なので,最初に4:00を超える時刻はグリニッジ標準時08:00です。

  3. 手順2の時刻を日本時間に変更する。

    グリニッジ標準時08:00は,日本時刻で17:00です。これが収集開始時刻となり,この時刻以降8時間間隔(翌日01:00,09:00,17:00・・・)でパフォーマンスデータが収集されます。

収集開始時刻の設定例2

次の条件で設定する場合の例について説明します。

  • Collection Interval=28,800秒(8時間)

  • Collection Offset=60秒(1分)

  • サービス開始時刻:13:00

設定例を次に示します。

  1. PFM - AgentまたはPFM - RMの起動時刻をグリニッジ標準時間に変更する。

    日本時刻で13:00に起動するので,グリニッジ標準時では4:00起動です。

  2. グリニッジ標準時間の00:00にCollection Intervalの値を足していき,手順1で求めた時刻を最初に超える時刻を求める。

    Collection Intervalが8時間なので,最初に4:00を超える時刻はグリニッジ標準時08:00です。

  3. 手順2の時刻を日本時間に変更する。

    グリニッジ標準時08:00は,日本時刻で17:00です。

    Collection Offsetを指定しているので,17:00にCollection Offsetの値1分を足した17:01が収集開始時刻になります。

    この時刻以降8時間間隔(翌日01:01,09:01,17:01・・・)でパフォーマンスデータが収集されます。

履歴データの収集開始時刻の例

PFM - Agent for Platform(Windows)のSystem Overview(PI)レコードで,Collection Intervalの値を43,200秒(12時間),Collection Offsetの値を10秒に設定したとします。

日本時間の8月2日6時27分15秒(グリニッジ標準時の8月1日21時27分15秒)にPFM - AgentまたはPFM - RMを起動させた場合,最初のデータは日本時間の8月2日9時0分10秒(グリニッジ標準時の8月2日0時0分10秒)から収集されます。次のデータは,収集間隔に従って,12時間後の日本時間21時0分10秒(グリニッジ標準時の12時0分10秒)から収集されます。

図3‒15 履歴データの収集開始時刻の例

[図データ]

(b) 履歴データの格納方法

PIレコードタイプ,PDレコードタイプ,およびPLレコードタイプのレコードのパフォーマンスデータは,それぞれ次のように格納されます。

  • PIレコードタイプの場合

    PFM - Web Consoleの画面で設定した収集間隔ごとにパフォーマンスデータが収集されます。ただし,パフォーマンスデータは,PFM - AgentまたはPFM - RMを起動させてから2回目の収集時以降にStoreデータベースに格納されます。1回目の収集時にはStoreデータベースに格納されません。

  • PDレコードタイプおよびPLレコードタイプの場合

    PFM - Web Consoleの画面で設定した収集間隔ごとにパフォーマンスデータが収集されます。パフォーマンスデータは,PFM - AgentまたはPFM - RMを起動させてから1回目の収集時からStoreデータベースに格納されます。

デフォルトの設定では,一部のレコードのパフォーマンスデータしかStoreデータベースに格納されません。Storeデータベースにパフォーマンスデータを格納したい場合,レコードごとにPFM - Web Consoleの画面で設定します。設定方法については,マニュアル「JP1/Performance Management 運用ガイド」の,稼働監視データの管理について説明している章を参照してください。

(3) 差分データの保存について

PIレコードタイプ,PDレコードタイプ,およびPLレコードタイプのレコードの各フィールドには,格納される値が前回の収集データからの差分であるものがあります。この差分データを「デルタ」と呼びます。例を次に示します。

差分データを格納する例

システム起動時からの累計I/O回数を測定するフィールドの「デルタ」欄が「Yes」の場合,前回の収集時刻から今回の収集時刻の間に発生したI/Oの回数が格納されます。パフォーマンスデータの収集間隔(Collection Interval)を3,600秒(1時間)に設定したとします。

8月2日6時27分15秒(グリニッジ標準時の8月1日21時27分15秒)にPFM - AgentまたはPFM - RMを起動した場合,最初のデータは,日本時間の8月2日7時0分0秒(グリニッジ標準時の8月1日22時0分0秒)から収集されます。次のデータは,日本時間8時0分0秒(グリニッジ標準時の8月1日23時0分0秒)から収集されます。そのあと,日本時間7時0分0秒と8時0分0秒に収集されたデータを基に差分データが作成され,Storeデータベースに格納されます。

図3‒16 差分データを格納する例

[図データ]

各フィールドの値がデルタ値であるかどうかについては,各PFM - AgentまたはPFM - RMマニュアルのレコードについて説明している章(各レコードのフィールドの表)を参照してください。各レコードのフィールドの表で,「デルタ」欄が「Yes」のフィールドには,前回測定した値との差分が格納されます。