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JP1 Version 12 JP1/Performance Management 設計・構築ガイド


1.2.3 稼働監視システムの構築・運用が容易にできます

企業システムが大規模化,複雑化することに伴い,システム管理者の負荷は増加します。そのため,システムの稼働状況を監視する場合,更なる人員確保やスキル向上のための施策を検討する必要があります。Performance Managementは稼働監視システムの構築,運用をサポートするさまざまな機能を提供します。これによって,システム管理者は少ない負荷で稼働監視できます。

〈この項の構成〉

(1) テンプレートを用いて監視項目を容易に設定できます

稼働監視システムで,どの項目をどのように監視するかを検討するためには,高いスキルが求められます。

Performance Managementは,よく利用される監視項目をあらかじめ定義した「監視テンプレート」と呼ばれる,ひな形を提供しています。

この監視テンプレートを使用すると,監視する準備が容易にできます。

図1‒16 監視項目の検討のためのシステム管理者のタスクと監視テンプレート

[図データ]

例えば,Windowsサーバの場合,次に示す監視項目が危険域に達したとき,警告する設定が,あらかじめテンプレートに定義されています。

監視テンプレートは,カスタマイズすることもできます。

監視テンプレートについては,各PFM - AgentまたはPFM - RMマニュアルの,監視テンプレートについて説明している章を参照してください。

(2) システム管理者の作業負荷を低減する便利なツールを提供します

Performance Managementでは,稼働監視するための監視コンソールや運用コマンドを提供しています。監視対象ごとに異なる複数の監視ソフトウェアを導入したり,習得したりする必要がありません。

システム管理者は,これらの操作性の高い管理ツールを目的に応じて使うことで,稼働監視の作業負荷を軽減できます。

(a) Webブラウザで企業システムを監視できます

システム管理者は,監視コンソールサーバにWebブラウザでアクセスすることで,企業システムで発生している問題をリアルタイムで把握したり,監視対象のシステムの構成を管理したりできます。例えば,システム管理者は,システムで問題が起こったときに,自宅から稼働監視システムの状況を確認して,業務に支障が出る前に,素早く問題に対処できます。

図1‒17 遠隔地からWebブラウザで稼働監視システムの状況を確認する例

[図データ]

(b) パフォーマンスデータを分析しやすい形式で出力できます

Performance Managementで収集したパフォーマンスデータは,「レポート」と呼ばれるグラフィカルな形式に加工してWebブラウザで表示できます。監視対象システムの稼働情報をわかりやすいグラフや表で表示することでシステムの問題点をすばやく分析できます。

図1‒18 レポートの表示例

[図データ]

レポートの詳細については,マニュアル「JP1/Performance Management 運用ガイド」の,稼働分析のためのレポートの作成について説明している章を参照してください。

(c) 複数のレポートのグラフを並べて表示できます

ブックマークで管理している複数の履歴レポートのグラフを並べて表示できます。これによって,障害要因の分析,ネットワークやOSのリソースの管理などを容易にできます。複数のレポートのグラフを並べて表示したものをタイリング表示と呼びます。

図1‒19 タイリング表示の例

[図データ]

タイリング表示の詳細については,マニュアル「JP1/Performance Management 運用ガイド」の,稼働分析のためのレポートの作成について説明している章を参照してください。

(d) 複数のレポートを重ね合わせて表示できます

複数のレポートを同じグラフ上に重ね合わせて表示できます。また,過去の周期性のあるデータや安定稼働時のデータを同じグラフ上に基準値(ベースライン)として表示することで,システム全体の稼働状況を総合的に判断できます。複数の履歴レポートやベースラインを同じグラフ上に表示したものを複合レポートと呼びます。

図1‒20 複合レポートの表示例

[図データ]

同じグラフ上に表示できるレポートは,通常のレポートの場合と複合レポートの場合とで異なります。

  • 通常のレポートの場合

    履歴レポートで同一レコードの場合に限り,複数のエージェントのレポートを同じグラフ上に表示できます。

  • 複合レポートの場合

    エージェントのプロダクトやレポートのレコード種別に関係なく,複数のレポートを1つのグラフに表示できます。ただし,複合レポートとして表示できるのは,履歴レポートだけです。複合レポートを利用すると,次のようなことができます。

    • 同一レコードで異なるフィールドのレポートを表示する。

    • 異なるエージェント種別の同系レコードをレポート表示する。

    • 異なるエージェント種別の異なるレコードをレポート表示する。

    • ベースラインと同時にレポート表示する。

    複合レポートの表示方法については,マニュアル「JP1/Performance Management 運用ガイド」の,稼働分析のためのレポートの作成について説明している章を参照してください。

(e) 過去のパフォーマンスデータを参照できます

Storeデータベースのバージョン2.0(Storeバージョン2.0)では,一度バックアップした稼働監視データをインポートすることで,過去のパフォーマンスデータを参照できます。インポートしたデータは,あらかじめ設定した保存期間を超えて保持されるため,どの時点でも過去のデータを参照できます。

図1‒21 過去のデータの参照例

[図データ]

バックアップデータのインポートについては,「3.2.6(2) 過去の稼働監視データの参照」を参照してください。

(f) 実運用に根ざした管理コマンドを提供します

大規模システムで複数のサーバを一元管理するために,管理コマンドで,バッチ処理や自動処理を実行できます。

パフォーマンスデータの管理やサービスの管理などは,運用コマンドを使ってバッチ処理や自動処理ができ,効率的にシステムを運用できます。Performance Managementが提供する運用コマンドの例を,次に示します。

  • 警告アラームの一括設定コマンド

  • 稼働監視レポートの出力コマンド

  • 収集した稼働監視データのバックアップやリストアコマンド

  • Performance Managementの起動や停止のコマンドなど

システム管理者が,稼働レポートをPerformance Managementが提供する稼働レポートの出力コマンドで作成したものを,ほかのジョブ管理システムなどと連携して週次で出力してEメールで確認する例を次の図に示します。

図1‒22 システム管理者の稼働確認作業の例

[図データ]

コマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Performance Management リファレンス」のコマンドについて説明している章を参照してください。

(3) JP1/AOと連携して監視対象を自動で追加・削除できます

JP1/AOが提供する「監視設定追加」および「監視設定削除」のサービステンプレートを使用すると,監視対象を自動で追加または削除できるようになります。監視対象を自動で追加または削除する設定をしておけば,仮想サーバをスケールアウトまたはスケールインする際に便利です。サービステンプレートの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Operation サービステンプレートリファレンス」を参照してください。

なお,「監視設定追加」および「監視設定削除」のサービステンプレートは,Performance Management用にカスタマイズする必要があります。サービステンプレートの編集方法については,マニュアル「JP1/Automatic Operation サービステンプレート開発ガイド」を参照してください。

図1‒23 JP1/AOと連携した監視対象の自動追加・削除

[図データ]