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JP1 Version 12 JP1/Service Support 構築・運用ガイド


10.1.1 クラスタシステムの概要

クラスタシステムは,高可用性(HA:High Availability)の実現を目的としたシステムです。処理を実行する実行系サーバと,障害が発生したときに処理を引き継げるように待機している待機系サーバで構成します。障害発生時は,実行系から待機系に処理を引き継いで業務の停止を防ぎ,可用性を向上させることができます。この障害時に処理を引き継ぐことを「フェールオーバー」といいます。

クラスタシステム全体を制御するソフトウェアを「クラスタソフト」といいます。クラスタソフトは,システムが正常に動作しているかを監視し,異常を検知した場合にはフェールオーバーを行って業務が停止することを防ぎます。

備考:負荷分散などを目的としたクラスタシステムもありますが,ここでは説明していません。

図10‒1 正常時,フェールオーバー後のアクセス

[図データ]

JP1/Service Supportのようなアプリケーションは「論理ホスト」で運用します。論理ホストは,クラスタソフトに制御された,論理的なサーバのことです。フェールオーバーする際は,論理ホストの単位で実行されます。論理ホストは,ホスト名として「論理ホスト名」を使い,実行系から待機系に引き継げる「共有ディスク」と「論理IPアドレス」を持ちます。論理ホストで実行するアプリケーションは,共有ディスクにデータを格納し,論理IPアドレスで通信することによって,物理的なサーバに依存しないで,フェールオーバーして実行できます。

JP1/Service Supportを,クラスタシステムの論理ホスト環境で運用することを「クラスタ運用」といいます。

メモ

「論理ホスト」という用語

このマニュアルではフェールオーバーの単位を意味する用語として「論理ホスト」を使いますが,クラスタソフトやアプリケーションによっては「グループ」や「パッケージ」などの用語が使われています。クラスタソフトのマニュアルなどを参照し,対応する用語を確認してください。

なお,フェールオーバーの単位となる論理的なサーバを論理ホストというのに対して,物理的なサーバを「物理ホスト」といいます。物理ホストが使うホスト名(hostnameコマンドを実行したときに表示されるホスト名)を「物理ホスト名」,物理ホスト名に対応したIPアドレスを「物理IPアドレス」といいます。また,ディスクは「ローカルディスク」を使います。これらはサーバ固有のものであり,ほかのサーバに引き継ぐことはできません。

メモ

「〜系」という用語

このマニュアルでは,業務を処理しているサーバを実行系,障害に備えて待機しているサーバを待機系と呼びます。実行系と待機系は,フェールオーバーが発生するたびに入れ替わります。

また,システム構築時や環境設定時に二つの系を区別するため,最初に実行系として起動する系を現用系,待機系として起動する系を予備系と呼びます。運用開始後,障害発生などによって実行系,待機系は交代を繰り返しますが,現用系と予備系の関係は変わりません。