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JP1 Version 12 JP1/Integrated Management 2 - Manager 導入・設計ガイド


3.7.2 業務インパクトの判断支援

インテリジェント統合管理基盤は,JP1/AJS - Managerがインストールされているホスト名やJP1/AJS - Manager配下のJP1/AJS - Agentがインストールされているホスト名の情報などを取得し,複数のJP1/AJS - Managerで構成されたルートジョブネットの関連性を可視化します。可視化により,障害によって影響を与える業務の開始までの猶予時間や,関連するインフラ要素を把握できます。システム管理者は,異常を検知したルートジョブネットの後続ジョブの開始予定時刻や後続ジョブへの影響の有無など,ジョブ運用へ与える影響をいち早く確認し,適切な優先順位で障害へ対処できるようになります。

なお,後続ジョブへの影響有無は,ジョブネットの定義内容を元に自動で判定されます。また,ユーザーがルートジョブネットの関連を追加することもできます。

図3‒18 業務インパクトの判断支援の概要

[図データ]

例えば,ジョブの運用中に障害が発生した場合は,発生元のルートジョブネットが赤色で表示されます。それをクリックするだけで,そのほかのルートジョブネットとの関係性が[業務フロー]タブに表示されます。

アイコン(業務影響アイコン)をクリックすると[連携ユニット]ダイアログが表示されます。先行業務の障害時にどの後続業務に影響があるかを確認したり,ジョブごとの予定時刻で対策までの緊急性を把握したりできます。また,ユニットのリンクまたはプロパティで連携製品リンクの値をクリックすると,JP1/AJS3 - Web Consoleの画面が起動し,該当のジョブネットの詳細を確認できます。

ルートジョブネットA,ルートジョブネットB,ルートジョブネットAの順番に実行されるようなルートジョブネットの定義の場合,ルートジョブネットの関係性が繰り返し[業務フロー]タブに表示されることがあります。繰り返し表示されるノードに業務影響アイコンが表示されている場合,同じルートジョブネット名のノードに表示された業務影響アイコンから表示される[連携ユニット]ダイアログには,同じ情報が表示されます。このため,繰り返し表示されるノードに表示されるすべての業務影響アイコンから[連携ユニット]ダイアログを確認する必要はありません。

なお,プロパティでJP1/AJS3 - Web Consoleのリンクをクリックした場合,選択したJP1/AJSのIM管理ノードの種類によって,[ダッシュボード]画面,[リスト]画面または[実行エージェント]画面が表示されます。

表3‒7 JP1/AJS3 - Web Consoleの画面の種類と表示されるIM管理ノード

JP1/AJS3 - Web Consoleの画面の種類

IM管理ノード

[ダッシュボード]画面

AJSマネージャーのホスト配下のJP1/AJS3 - Manager

[リスト]画面

AJSマネージャーのホスト−JP1/AJS3 - Manager配下のスケジューラーサービス

AJSマネージャーのホスト−JP1/AJS3 - Manager−スケジューラーサービス配下のジョブグループ

AJSマネージャーのホスト−JP1/AJS3 - Manager−スケジューラーサービス−ジョブグループ配下のルートジョブネット

[実行エージェント]画面

AJSマネージャーのホスト−Management Applications−JP1/AJS3 - Manager

AJSマネージャーのホスト−Management Applications−JP1/AJS3 - Agent

障害が発生したルートジョブネットで発生しているイベントを確認できるため,スピーディーに障害の原因を予測し,システムの重要度に応じて先回りした障害対策が可能となります。ジョブの定義や内容を変更した場合も,変更予定のルートジョブネットと先行・後続のルートジョブネットの状況を確認し,影響範囲を把握してから,変更作業に着手できます。

重要

ルートジョブネットの関連を参照するためには,システム内のJP1/AJS - Managerのホスト名に重複がないようにします。

〈この項の構成〉

(1) ルートジョブネットの関連付け

ルートジョブネットの関連付けは,構成情報を取得して蓄積した定義情報から,各ルートジョブネットとそのルートジョブネットの後続ジョブの組み合わせを検出し,JSON形式にして返却します。

なお,関連付けができなかった組み合わせはunknownと検出されます。この場合は,jddcreatetreeコマンドで出力したIM管理ノード関連ファイルを,テキストエディターで訂正します。形式については,IM管理ノードリンク定義ファイル(imdd_nodeLink_def.conf)を参照してください。jddcreatetreeコマンドおよびIM管理ノードリンク定義ファイルの詳細については,マニュアル「JP1/Integrated Management 2 - Manager コマンド・定義ファイル・APIリファレンス」の「jddcreatetree」(1. コマンド)および「IM管理ノードリンク定義ファイル(imdd_nodeLink_def.conf)」(2. 定義ファイル)を参照してください。

重要

実行エージェントにマクロ変数が指定されているJP1イベント受信監視ジョブおよびJP1イベント送信ジョブは,ジョブ実行時にならないと実際に使用する実行エージェントが確定しないため,関連情報を表示できません。

ルートジョブネットの関連付けは,JP1/AJS3プラグイン設定ファイル(settings.conf)の設定に依存します。詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 連携ガイド」の「JP1/IM連携時のセットアップ」の説明を参照してください。

(a) JP1イベント連携

ルートジョブネット内の「JP1イベント受信監視ジョブ」に定義された条件に一致した「JP1イベント送信ジョブ」を,ルートジョブネット単位で関連付けします。

JP1イベント受信監視ジョブに定義された関連付け条件のうち,対象となるパラメーターを次の表に示します。表に示すパラメーター以外は関連付けの判定対象外となります。

表3‒8 ルートジョブネットの関連付け条件

項番

JP1イベント受信監視ジョブ

JP1イベント送信ジョブ

関連付けの判定条件

定義したパラメーター

定義の有無

比較判定するパラメーター

定義の有無

1

evhst="イベント発行元ホスト名"※3※4

ex="実行エージェント名"※1

どれかと一致すれば関連付けする

2

ex="実行エージェント名"※1

evhst="イベント送信先ホスト名"※4

evhstの判定を優先する

ex="実行エージェント名"※1

evhstがない場合

どちらかに一致すれば関連付けする

3

evwid=イベントID

evsid=イベントID

×

不一致の場合は関連付けしない

完全に一致した場合は関連付けする

4

evwms="メッセージ"※3

evsms="メッセージ"※4

×

不一致の場合は関連付けしない

完全に一致した場合は関連付けする

5

evwsv=重大度(複数可)

evssv=重大度

×

どれとも一致しなければ関連付けしない

どれかと一致すれば関連付けする

6

evwfr=拡張属性(複数可)※3※4

evsfr=拡張属性※4

×

どれとも一致しなければ関連付けしない

どれかと一致すれば関連付けする

7

evipa="イベント発行元IPアドレス"※2

ex="実行エージェント名"※1

×

パラメーターが1つでも存在すれば関連付けしない

ex="実行エージェントグループ名"※1

どれかと一致すれば関連付けする

(凡例)

△:定義があれば比較

◎:常にあり(定義の有無に関係なく必ず設定される)

○:あり

×:なし

注※1

実行エージェント(実行エージェントグループ)に対応する実行ホスト名一覧に対して判定が行われます。

注※2

設定ファイルでIPアドレスを関連付ける設定の場合だけ,関連付けの判定対象となります。

注※3

設定ファイルで正規表現を関連付ける設定の場合,正規表現を使用して関連付けされます。使用できる正規表現については,「付録G.1 正規表現の種類」を参照してください。

注※4

設定ファイルでマクロ変数が使用された場合,関連付けをしない設定の場合,マクロ変数名が指定されていた場合は,関連付けはされません。マクロ変数名とみなす文字列の形式については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス」の「マクロ変数指定」の説明を参照してください。

(b) 待ち合わせ

JP1/AJS - Managerが12-50以降の場合,ルートジョブネットおよびルートジョブネット内の「待ち合わせ条件付きユニット」と,「待ち合わせ条件付きユニット」に定義されている「待ち合わせ対象ユニット」を,ルートジョブネット単位で関連付けします。

待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットの関連付けは,JP1/AJS - Managerの環境設定パラメーターPREWAITUSEおよびPREWAITEXTENDの設定値,待ち合わせ対象ユニットの存在には関係なく,関連付けされます。

待ち合わせ対象ユニット名にプランニンググループ,またはプランニンググループ配下のユニットを定義した場合は,次の表に示す関連ユニットに関連付けされます。

表3‒9 待ち合わせ条件付きユニットと関連付けるユニット一覧

項番

指定先ユニット

関連付け対象のユニット

1

プランニンググループ

構成情報を取得した際に実行登録されているプランニンググループ配下のルートジョブネット

2

プランニンググループ配下のユニット

構成情報を取得した際に実行登録されているプランニンググループ配下のルートジョブネット配下のユニット

(c) ジョブネットコネクタ

JP1/AJS - Managerが12-50以降の場合,ルートジョブネット内の「ジョブネットコネクタ」と条件が一致する「接続先ルートジョブネット」を,ルートジョブネット単位で関連付けします。

ジョブネットコネクタと接続先のルートジョブネットの関連付け条件を,次の表に示します。なお,接続先ルートジョブネット名にプランニンググループが指定されていた場合は,関連付けされません。

表3‒10 ジョブネットコネクタと接続先ルートジョブネットの関連付け条件一覧

項番

接続先のルートジョブネット

ジョブネットコネクタ

関連付けの判定条件

比較情報(定義パラメーター)

比較情報(定義パラメーター)

1

ユニット完全名

接続先のルートジョブネット名(ncr

完全一致した場合関連付け

2

スケジューラーサービス間連携するかどうか(ncex

スケジューラーサービス間連携するかどうか(ncex

完全一致した場合関連付け

3

マネージャーホスト名

接続ホスト名(nchn※1

完全一致した場合関連付け

マネージャーホスト名※2

4

接続ホスト名(nchn

マネージャーホスト名

完全一致した場合関連付け※3

5

スケジューラーサービス名

接続先サービス名(ncsv※1

完全一致した場合関連付け

スケジューラーサービス名※2

6

接続先サービス名(ncsv

スケジューラーサービス名

完全一致した場合関連付け※3

7

ジョブネットコネクタ名(ncn

ユニット完全名

完全一致した場合関連付け

注※1

項番2の値が「y」の場合の比較項目です。

注※2

項番2の値が「n」の場合の比較項目

注※3

項番2の値が「y」の場合にだけ判定されます。

接続先のルートジョブネット,ジョブネットコネクタのうち,どちらかのJP1/AJS - Managerのバージョンが12-50未満の場合,unknownと検出されます。