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JP1 Version 12 JP1/Automatic Job Management System 3 運用ガイド


11.2.1 リモートサイトに運用を切り替える

メインサイトで大規模災害などによる不意の拠点停止が起こると,リモートサイトで運用切り替えを実施し,業務を再開します。

ここでは,メインサイトからリモートサイトに運用を切り替える手順について説明します。

リモートサイトに運用を切り替える流れを次の図に示します。

図11‒15 リモートサイトに運用を切り替える流れ

[図データ]

なお,運用を切り替えたあと,再度共有ディスク間のコピーを開始するまでの期間も,不測の事態に備えてJP1/AJS3のデータのバックアップが必要です。メインサイトが再構築できるまでは,リモートサイトでバックアップを取得し,障害が発生した場合はバックアップ情報から回復してください。バックアップとリカバリーの詳細については,「2. バックアップとリカバリー」を参照してください。

〈この項の構成〉

(1) 運用切り替えの作業

運用切り替えを実施する前の作業と運用切り替えの手順を説明します。

注意事項
  • ここで説明する手順は,メインサイトとリモートサイトの論理ホスト名が同一名の場合も別名の場合も,共通です。

  • メインサイトとリモートサイトの論理ホスト名が同一名の場合,手順の中でコマンドの引数として指定する「リモートサイトの論理ホスト名」は,メインサイトの論理ホスト名と同一です。

(a) 運用切り替えを実施する前の作業

JP1/Baseの論理ホストをJP1/AJS3の論理ホストと同じ共有ディスクで使用する場合は,JP1/AJS3の運用切り替え手順を実施する前に,JP1/Baseの作業が必要です。メインサイトおよびリモートサイトで,論理ホスト名とIPアドレスが一致するかによって,必要となるJP1/Baseの作業手順が異なります。

それぞれの場合の作業について説明します。なお,JP1/Baseの論理ホストをJP1/AJS3の論理ホストと同じ共有ディスクで使用できるのは,JP1/BaseをJP1/AJS3だけの前提製品として使用する場合だけです。

■ メインサイトとリモートサイトの論理ホスト名およびIPアドレスが同一の場合

イベントDBを引き継ぐ場合は,JP1/Baseの作業は必要ありません。ただし,災害の影響でイベントDBが破損するおそれがあります。状況によっては,復旧作業が必要になります。統合トレースログに出力されるメッセージごとに対処方法が記載されているので,手順に従って復旧作業をしてください。イベントDBを引き継がない場合は,「KAJP1059-Eが出力された場合」の手順に従ってイベントDBを初期化してください。

KAJP1059-Eが出力されたとき

イベントDBが破損しているため,イベントサービスの起動ができません。次のコマンドを実行して,イベントDBを初期化してください。初期化することで,イベントDBの情報は失われます。

jevdbinit {-b | -n}

jevdbinitコマンドを実行すると,イベントDBが削除されたあとに再作成されます。イベントDB内の通し番号は,削除前のイベントDB内の通し番号を引き継ぎます。初期化前に破損しているイベントDBをバックアップしたい場合は,-bオプションを,バックアップしない場合は-nオプションを指定してください。バックアップしたデータベースの内容は,jevexportコマンドでcsvファイルに出力して確認できます。

jevdbinitコマンド,およびバックアップしたデータベースの詳細については,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」のjevdbinitコマンドの説明を参照してください。なお,jevdbinitコマンド実行時に,イベントDB内の通し番号が引き継げない場合は初期化に失敗します。メッセージKAJP1789-Eが出力された場合は,-sオプションで指定する開始番号に0を指定してイベントDBを再作成してください。

jevdbinit -s 0 {-b | -n}
KAJP1057-WおよびKAJP1058-Wが出力されたとき

イベントDBに不正なレコードがあり,検索性能が劣化するおそれがあります。再起動のタイミングで「KAJP1059-Eが出力されたとき」の手順に従ってイベントDBを初期化してください。

KAJP1075-Wが出力されたとき

重複防止テーブルが不整合な状態です。イベントサービスを停止してから,jevdbmkrepコマンドを実行して重複防止テーブルを再構築してください。jevdbmkrepコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」のjevdbmkrepコマンドの説明を参照してください。

■ メインサイトとリモートサイトの論理ホスト名が同一で,IPアドレスが異なる場合

次に示す作業を実施してください。

  • 論理ホストのIPアドレスの変更に伴うJP1/Baseの設定変更作業

  • JP1/BaseのイベントDBの初期化

JP1/Baseの設定変更作業については,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」のIPアドレス変更時の作業を参照してください。JP1/BaseのイベントDBの初期化については,上記「メインサイトとリモートサイトの論理ホスト名とIPアドレスが同一の場合」の「KAJP1059-Eが出力されたとき」の手順を参照してください。

■ メインサイトとリモートサイトの論理ホスト名およびIPアドレスが異なる場合

次に示す作業を実施してください。

  • 論理ホストのホスト名とIPアドレスの変更に伴うJP1/Baseの設定変更作業

  • JP1/BaseのイベントDBの初期化

JP1/Baseの設定変更作業については,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」のホスト名変更時の作業やIPアドレス変更時の作業を参照してください。JP1/BaseのイベントDBの初期化については,「メインサイトとリモートサイトの論理ホスト名およびIPアドレスが同一の場合」の「KAJP1059-Eが出力されたとき」の手順を参照してください。

(b) 運用切り替え手順

運用を切り替える際には,ハードウェアの操作で共有ディスク間のコピーを停止し,リモートサイトでリモートボリュームが書き込みできる状態に変更します。運用を切り替える手順を次に示します。

  1. リモートサイトの実行系で,メインサイトとして運用する論理ホストを設定する。

    Windowsの場合はAdministrators権限,UNIXの場合はスーパーユーザー権限を持ったユーザーでリモートサイトのホストにログインし,次のコマンドを実行します。

    jajs_rpsite -m CHANGE -h リモートサイトの論理ホスト名
  2. メインサイトとリモートサイトの論理ホストが別名の場合,イベント・アクション制御エージェントが記憶するメインサイトの論理ホスト名を削除する。

    この手順は,メインサイトとリモートサイトの論理ホストが別名の場合にだけ実施します。

    メインサイトの論理ホスト自身に対してイベントジョブを実行していた場合,論理ホスト上のイベント・アクション制御エージェントに,メインサイトの論理ホスト名が記憶されます。

    また,メインサイトとリモートサイトでエージェントを共有している環境で,エージェントに対してイベントジョブを実行していた場合,エージェントホスト上のイベント・アクション制御エージェントにメインサイトの論理ホスト名が記憶されます。

    そのため,メインサイトとリモートサイトの論理ホスト名が別名の場合は,運用切り替え時に,イベントジョブの実行先ホスト上のイベント・アクション制御エージェントからメインサイトの論理ホスト名を削除する必要があります。

    共有しているエージェントまたはリモートサイトの論理ホスト上で,次の操作を実行してください。

    (1) イベント・アクション制御エージェントが記憶するマネージャーホスト名の一覧を表示する。

    イベント・アクション制御エージェントにメインサイトの論理ホスト名が記憶されているかどうかを確認するため,次のコマンドを実行します。

    リモートサイトの論理ホスト上で実行する場合:

    jpoagoec -p -h リモートサイトの論理ホスト名

    共有しているエージェント(物理ホスト)上で実行する場合:

    jpoagoec -p

    共有しているエージェント(論理ホスト)上で実行する場合:

    jpoagoec -p -h 論理ホスト名

    (2) (1)で表示した一覧にメインサイトの論理ホスト名がある場合,次のコマンドを実行する。

    リモートサイトの論理ホスト上で実行する場合:

    jpoagoec -d メインサイトの論理ホスト名 -h リモートサイトの論理ホスト名

    共有しているエージェント(物理ホスト)上で実行する場合:

    jpoagoec -d メインサイトの論理ホスト名

    共有しているエージェント(論理ホスト)上で実行する場合:

    jpoagoec -d メインサイトの論理ホスト名 -h 論理ホスト名

    jpoagoecコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド jpoagoec」を参照してください。

  3. QUEUEジョブ,サブミットジョブ実行環境データベースのISAMファイルの状態を確認し,必要に応じて再作成する。

    標準構成で運用している場合,リモートサイトにコピーされたISAMファイルが正常な状態かどうかを確認する必要があります。ISAMファイルの状態を確認する方法については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 トラブルシューティング 2.11.1 ISAMファイルの状態確認手順」を参照してください。

    ISAMファイルの状態が不正だと,ジョブの起動に失敗するなどの問題が発生し,リモートサイトでの運用が継続できないおそれがあります。その場合は,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 トラブルシューティング 2.11.2 QUEUEジョブ,サブミットジョブの実行環境データベースの再作成手順」を参照して,ISAMファイルを再作成してください。ただし,JP1/AJS3サービスの再起動方法については,次の手順に従ってください。

  4. リモートサイトの実行系で,JP1/AJS3 - Managerを起動する。

    (i) JP1/AJS3 - Managerをディザスターリカバリースタートする場合

    ディザスターリカバリースタートとは,ジョブの実行を抑止した状態でJP1/AJS3 - Managerを起動することです。

    ジョブの実行状態には,一部メインサイトからリモートサイトへ引き継がれないものがあります。この影響で,リモートサイトでJP1/AJS3 - Managerを起動しても,メインサイト側のジョブの実行状態は反映されていません。このため,いったんジョブの実行を抑止した状態でJP1/AJS3 - Managerを起動し,必要に応じてジョブやジョブネットの状態を変更したり再実行したりします。

    JP1/AJS3 - Managerをディザスターリカバリースタートするには,次の操作を実行します。

    • Windowsの場合

      JP1/AJS3のスタートアップパラメーターに「-disaster」を指定して実行します。JP1/AJS3の起動時の動作を一時的に変更する方法については,「6.2.1 JP1/AJS3起動時の動作を一時的に変更する」を参照してください。

    • UNIXの場合

      次のコマンドを実行します。

      jajs_spmd -h リモートサイトの論理ホスト名 -disaster

      jajs_spmdコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド jajs_spmd」を参照してください。

    なお,拠点を切り替えたあとの初回サービス起動時は,ホットスタートまたはウォームスタートで起動した場合でも,自動的にディザスターリカバリースタートに変更して起動します。このとき,jajs_spmd_statusコマンドを実行して,すべてのプロセスが正常に起動しているか確認してください。

    JP1/AJS3 - Manager起動時に異常が発生した場合,異常のタイミングによっては,JP1/AJS3サービスが起動完了した直後にJP1/AJS3サービスが停止,またはスケジューラーサービスが停止し,ディザスターリカバリースタートが解除されるおそれがあります。この場合,まず異常の発生要因を取り除き,次のどちらかの方法でサービスを明示的にディザスターリカバリースタートで起動し直してください。

    JP1/AJS3サービスを起動し直す場合:

    Windowsの場合は,JP1/AJS3のスタートアップパラメーターに-disasterオプションを指定して開始してください。UNIXの場合は,jajs_spmdコマンドに-disasterオプションを指定して実行してください。

    スケジューラーサービスを個別に起動し直す場合:

    jajs_spmd -n jajs_schdコマンドに-disasterオプションを指定して実行してください。または,ajsstartコマンドに-Dオプションを指定して実行してください。

    (ii) JP1/AJS3 - Managerをコールドスタートする場合

    JP1/AJS3 - Managerをコールドスタートする場合,システム構成によって手順が異なります。ディザスター・リカバリー運用でのシステム構成については,「11.1.3 JP1/AJS3が対応するディザスター・リカバリーのシステム構成」を参照してください。

    • 同じエージェントホストを使用する場合(エージェント共有型の場合)

      Windowsの場合

      JP1/AJS3のスタートアップパラメーターに「-cold」を指定して実行します。JP1/AJS3の起動時の動作を一時的に変更する方法については,「6.2.1 JP1/AJS3起動時の動作を一時的に変更する」を参照してください。

      UNIXの場合

      次のコマンドを実行します。

      jajs_spmd -h リモートサイトの論理ホスト名 -cold

      jajs_spmdコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド jajs_spmd」を参照してください。

    • エージェントホストを分ける場合(エージェント非共有型の場合)

      次の操作を実行します。

      (1) JP1/AJS3 - Manager起動時にスケジューラーサービスを自動起動しないようにする。

      リモートサイトの論理ホストで運用するスケジューラーサービスの環境設定パラメーターAUTOSTARTに「no」を設定します。

      論理ホスト上のスケジューラーサービスを多重起動する設定にしている場合は,すべてのスケジューラーサービスの環境設定パラメーターAUTOSTARTに「no」を設定する必要があります。

      すでに「no」が設定されているスケジューラーサービスに対しては,この操作は不要です。

      環境設定パラメーターAUTOSTARTの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 20.4 スケジューラーサービス環境設定」を参照してください。

      (2) JP1/AJS3 - Managerを起動する。

      Windowsの場合

      JP1/AJS3のスタートアップパラメーターに「-cold」を指定して実行します。JP1/AJS3の起動時の動作を一時的に変更する方法については,「6.2.1 JP1/AJS3起動時の動作を一時的に変更する」を参照してください。

      UNIXの場合

      次のコマンドを実行します。

      jajs_spmd -h リモートサイトの論理ホスト名 -cold

      jajs_spmdコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド jajs_spmd」を参照してください。

      (3) イベント・アクション制御マネージャーが保持する情報を削除する。

      次のコマンドを実行します。

      jpomanevreset -h リモートサイトの論理ホスト名 -F スケジューラーサービス名 -all -s

      論理ホスト上のスケジューラーサービスを多重起動する設定にしている場合は,すべてのスケジューラーサービスに対してコマンドを実行する必要があります。

      jpomanevresetコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド jpomanevreset」を参照してください。

      (4) 次のコマンドを実行してスケジューラーサービスを起動する。

      jajs_spmd -h リモートサイトの論理ホスト名 -n jajs_schd -F スケジューラーサービス名 -cold

      論理ホスト上のスケジューラーサービスを多重起動する設定にしている場合は,すべてのスケジューラーサービスに対してコマンドを実行する必要があります。

      jajs_spmdコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド jajs_spmd」を参照してください。

      (5) スケジューラーサービスの自動起動の設定を元に戻す。

      手順(1)で設定した,リモートサイトの論理ホストで運用するスケジューラーサービスの環境設定パラメーターAUTOSTARTを「yes」(自動起動する)に戻します。

      なお,手順(1)で設定を変更していないスケジューラーサービスに対しては,この操作は不要です。

  5. リモートサイトの実行系で,JP1/AJS3 - Managerを起動したあとに必要な作業を実施する。

    リモートサイトで運用するために,実行エージェントの定義をリモートサイト環境に合わせたり,ジョブの状態を確認したりする必要があります。

    JP1/AJS3 - Managerを起動したあとに必要な作業については,「11.2.1(2) JP1/AJS3 - Manager起動後の作業」を参照してください。

  6. リモートサイトの実行系で,ジョブの実行抑止を解除する。

    次のコマンドを実行して,ジョブの実行抑止を解除します。

    ajsalter -s none -F スケジューラーサービス名

    ジョブの実行抑止を解除したら,リモートサイトで業務を再開してください。

    なお,JP1/AJS3 - Managerをコールドスタートした場合は,この操作は必要ありません。

(2) JP1/AJS3 - Manager起動後の作業

メインサイトからリモートサイトへ運用を切り替える場合の,リモートサイトのJP1/AJS3 - Managerを起動したあとに必要な作業について説明します。

JP1/AJS3 - Manager起動後の作業は,メインサイトとリモートサイトの論理ホスト名が同一名か別名かによって,必要可否が異なります。

次の表で説明する項目について,環境に応じて実施してください。

表11‒2 JP1/AJS3 - Manager起動後の作業一覧

項番

作業項目

作業内容

論理ホスト名が別名

論理ホスト名が同一名

参照先

1

接続する論理ホストの変更

JP1/AJS3 - Viewなどから接続する論理ホストを,リモートサイトの論理ホストに変更する

※1

(a) 接続する論理ホストを変更する

2

実行エージェントの実行ホスト名変更

リモートサイトのエージェントホスト構成に合わせて,実行エージェントの実行ホスト名の定義を変更する

(b) 実行エージェントを定義する

3

ユニットの状態確認・設定変更

拠点停止時のジョブの状態を確認し,リモートサイトに反映されていないジョブの状態を変更したり,再実行したりする

(c) ジョブの実行状態を確認する

4

次のリモートジョブネットがある場合,状態を確認し,必要に応じて運用を再開する

  • メインサイトで定義しているリモートジョブネット

  • 実行マネージャーにメインサイトの論理ホストを指定しているリモートジョブネット

(d) リモートジョブネットの状態を確認する

5

異なるスケジューラーサービス間のルートジョブネットの実行順序を制御している場合,ジョブネットコネクタ,接続先のジョブネット,および接続先のプランニンググループの状態を確認し,必要に応じて運用を再開する

(e) 異なるスケジューラーサービス間のルートジョブネットの実行順序を制御している場合の運用拠点を変更する

6

エージェントホストに残っているメインサイトの情報削除

メインサイトとリモートサイトでエージェントホストを共有している場合,jpomanevresetコマンドを実行して,エージェントホストに残っているメインサイトの情報を削除する

※2

(f) エージェントホストに残っているメインサイトの情報を削除する

7

キューレスエージェントサービスに論理ホストをアタッチ

キューレスジョブを使用する場合,ajsqlattachコマンドを実行して,キューレスエージェントサービスにリモートサイトの論理ホストをアタッチ(接続)する

(g) キューレスエージェントサービスに論理ホストをアタッチする

8

キューレスジョブの実行先ホスト名を変更

キューレスジョブを使用する場合,リモートサイトのエージェントホスト構成に合わせて,キューレスジョブの実行先ホスト名を変更する

(h) キューレスジョブの実行先ホスト名の変更

(凡例)

○:作業が必要

△:条件によっては作業が必要

※1

接続する論理ホストのIPアドレスが異なる場合に,作業が必要です。

※2

拠点停止時にイベントジョブが実行中だった場合だけ,作業が必要です。

次のどちらかの条件を満たす場合に,作業を実施してください。

  • 項番3の作業でジョブの状態を確認したときに,「終了状態不明」状態のイベントジョブがある。

  • エージェントホストでjpoagtjobshowコマンドを実行したときに,リモートサイトで運用する論理ホストのイベントジョブが「実行中」状態になっている。

(a) 接続する論理ホストを変更する

運用切り替え時に,JP1/AJS3 - Viewなどが接続する論理ホストを,リモートサイトの論理ホストに変更します。変更の必要可否は,メインサイトとリモートサイトの論理ホスト名が同一名か別名かによって異なります。

メインサイトとリモートサイトの論理ホスト名が別名の場合

運用を切り替えると,論理ホスト名が変わります。そのため,JP1/AJS3 - Viewなどの接続先を,メインサイトの論理ホストからリモートサイトの論理ホストへ変更します。

変更が必要な接続を次に示します。

  • JP1/AJS3 - Viewからの接続

  • JP1/AJS3 - Definition Assistantからの接続

  • リモートコマンドの実行

  • ログやJP1イベントを監視しているジョブの接続先

メインサイトとリモートサイトの論理ホスト名が同一名の場合

運用する論理ホストのIPアドレスが同じ場合は,作業は不要です。

運用する論理ホストのIPアドレスが異なる場合は,共有エージェントなど,メインサイトとリモートサイトで共有しているホストからの接続を,リモートサイトの論理ホストへの接続に変更します。

接続を変更するには,DNSによる名前解決やhostsファイルなど,共有しているホストの通信設定を変更します。通信設定によってはシステムの再起動が必要な場合があるため,注意してください。

変更が必要な接続を次に示します。

  • JP1/AJS3 - Managerからの接続(リモートコマンドの実行)

  • JP1/AJS3 - Agentからの接続

  • JP1/AJS3 - Viewからの接続

  • JP1/AJS3 - Definition Assistantからの接続

(b) 実行エージェントを定義する

リモートサイトのエージェントホスト構成に合わせて,実行エージェントの実行ホスト名の定義を変更します。実行エージェントの定義を確認するには,ajsagtprintコマンドまたはajsagtshowコマンドを使用します。

実行エージェントの定義を変更する場合は,ajsagtaltコマンドを実行します。また,実行エージェントを追加する場合は,ajsagtaddコマンドを実行します。

コマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス」を参照してください。

(c) ジョブの実行状態を確認する

この作業は,JP1/AJS3 - Managerをディザスターリカバリースタートした場合に必要です。

JP1/AJS3 - Viewまたはコマンドで拠点停止時のジョブの状態を確認し,リモートサイトに反映されていないジョブの状態を変更したり,再実行したりしてください。

拠点停止時に実行中だったジョブの状態は,メインサイトのシステムが停止しているためリモートサイトに引き継がれていないので,特に注意が必要です。

リモートサイトに反映されたジョブ状態については,「6.2.1(3)(a) マネージャーホストのJP1/AJS3サービスを再起動する場合」の,ディザスターリカバリースタートした場合のジョブネットおよびジョブの状態についての説明を参照してください。

ジョブの実行状態を確認する方法,および状態変更や再実行の方法については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 操作ガイド」を参照してください。

なお,起動条件の監視が終了し,その起動条件によって生成された「起動条件待ち」の世代は,起動条件待ち世代の状態によって,次のように処理されます。

  • 起動条件は成立していても,多重起動が未設定で,実行中のジョブネットの終了を待っている起動条件待ち世代のジョブネットがある場合

    運用切り替え後の状態は「起動条件待ち」のままで,実行中のジョブネットの状態が「中断」になります。実行中のジョブネットの状態が「中断」になったあと,起動条件待ちのジョブネットから再び実行されます。

  • 起動条件が部分的にだけ成立(部分成立)している場合,または起動条件がまったく成立していない場合

    運用切り替え後には,このジョブネットの世代は消滅します。

(d) リモートジョブネットの状態を確認する

メインサイトでリモートジョブネットを定義している場合,または転送先ホストにメインサイトの論理ホストを指定しているリモートジョブネットがある場合,次の手順で運用状態を確認し,必要に応じて運用を再開します。

■ メインサイトでリモートジョブネットを定義している場合

  1. JP1/AJS3 - Viewで,転送先のJP1/AJS3 - Managerにログインする。

    リモートジョブネットの[実行マネージャー]に定義しているホストにログインします。

  2. リモートジョブネットのユニット名を指定して検索し,実行中のリモートジョブネットに対応するジョブネットの状態を調べる。

    同じ名前のリモートジョブネットが同時に実行登録されている場合は,複数のジョブネットが検索されます。この場合は,実行開始時刻や定義内容から対応するジョブネットを判断してください。

  3. リモートジョブネットに対応するジョブネットの実行状況を確認する。

    確認した状態と運用に応じて,リモートジョブネットの再実行など必要な操作を実行してください。

    メインサイトとリモートサイトの論理ホストが別名の場合に,リモートジョブネットを再実行するときは,転送元ホストでリモートジョブネットの[実行マネージャー]にリモートサイトのマネージャーホスト名を指定してください。

■ 転送先ホストにメインサイトの論理ホストを指定しているリモートジョブネットがある場合

JP1/AJS3 - Managerをディザスターリカバリースタートする場合

  1. JP1/AJS3 - Viewで,リモートサイトのJP1/AJS3 - Managerにログインする。

  2. リモートジョブネットのユニット名を指定して検索し,実行中のリモートジョブネットに対応するジョブネットの状態を調べる。

    同じ名前のリモートジョブネットが同時に実行登録されている場合は,複数のジョブネットが検索されます。この場合は,実行開始時刻や定義内容から対応するジョブネットを判断してください。

  3. リモートジョブネットに対応するジョブネットの実行状況を確認する。

    確認した状態と運用に応じて,リモートジョブネットの再実行など必要な操作を実行してください。

    メインサイトとリモートサイトの論理ホストが別名の場合に,リモートジョブネットを再実行するときは,転送元ホストで,リモートジョブネットの[実行マネージャー]にリモートサイトのマネージャーホスト名を指定してください。

JP1/AJS3 - Managerをコールドスタートする場合

  1. JP1/AJS3 - Viewで,リモートジョブネットを定義しているJP1/AJS3 - Managerにログインする。

  2. [実行マネージャー]にメインサイトの論理ホストを指定しているリモートジョブネットを強制終了する。

    リモートジョブネットはコールドスタートによる転送先のジョブネットの終了を検知できないため,手動で終了させてください。

  3. 必要に応じてリモートジョブネットを再実行する。

    メインサイトとリモートサイトの論理ホストが別名の場合に,リモートジョブネットを再実行するときは,転送元ホストで,リモートジョブネットの[実行マネージャー]にリモートサイトのマネージャーホスト名を指定してください。

(e) 異なるスケジューラーサービス間のルートジョブネットの実行順序を制御している場合の運用拠点を変更する

異なるスケジューラーサービス間のルートジョブネットの実行順序を制御している場合,ジョブネットコネクタ,接続先のルートジョブネット,または接続先のプランニンググループの状態を確認して,必要に応じて運用を再開します。

当日実行予定か,または翌日以降の実行予定かによって手順が異なります。それぞれの手順について説明します。

■ 当日実行予定の場合

[接続ホスト名]にメインサイトの論理ホストを指定している次のユニットの,状態を確認します。

  • ジョブネットコネクタ

  • 接続先のジョブネット

  • 接続先のプランニンググループ

ジョブネットコネクタが定義されたジョブネットおよび接続先のジョブネットの状態を確認し,必要に応じて手動で実行順序を制御してください。

■ 翌日以降に実行予定の場合

メインサイトとリモートサイトの論理ホストが別名の場合,[接続ホスト名]にメインサイトの論理ホストを指定している次のユニットの,[接続ホスト名]を変更します。

  • ジョブネットコネクタ

  • 接続先のジョブネット

  • 接続先のプランニンググループ

接続ホスト名を変更する手順を次に示します。

  1. 接続ホスト名の変更が必要なユニットを特定する。

    確認が必要なユニットは,次のとおりです。

    • 接続先のルートジョブネットまたはプランニンググループ配下のすべてのルートジョブネット

    • ジョブネットコネクタ

    実行登録されている接続先のジョブネットおよびジョブネットコネクタは,次のコマンドをリモートサイトのマネージャーホストでスケジューラーサービスごとに実行することで列挙できます。

    ajsshow -v 表示開始日 -w 表示終了日 -i "%JJ %CH:%CF:%CN" -ER /
    各フォーマット指示子の意味:

    %JJ:ユニット完全名

    %CH:接続先のホスト名

    %CF:接続先のスケジューラーサービス名

    %CN:接続先のユニット完全名

    このコマンドで出力されたユニットの,「接続先のユニット完全名」に表示されている他スケジューラーサービスのユニットが変更の対象です。このコマンドで列挙されないユニットについては,手動で特定してください。

  2. ユニットの定義を変更する。

    実行順序の制御対象のJP1/AJS3 - Managerのバージョンおよび接続先のユニットによって,変更方法が異なります。実行順序の制御対象のJP1/AJS3 - Managerは,接続先のユニットが登録されているJP1/AJS3 - Managerです。次の図の例ではHostBです。

    図11‒16 実行順序の制御対象のJP1/AJS3 - Manager

    [図データ]

    実行順序の制御対象のJP1/AJS3 - Managerが09-00以降で,ジョブネットコネクタまたはルートジョブネットを接続先にしている場合

    ジョブネットリリース機能を使用することで,登録解除しなくても翌日以降の定義を変更できます。

    接続先のジョブネットおよびジョブネットコネクタを含むルートジョブネットをコピーして,コピーしたジョブネットおよびジョブネットコネクタの[接続ホスト名]をリモートサイトのホスト名に変更します。

    [接続ホスト名]を変更したジョブネットをコピー元のジョブネットにリリース登録してジョブネット定義を切り替えます。

    リリース登録の方法については,「7.3 実行登録中にジョブネットの定義を切り替える」を参照してください。

    実行順序制御対象のJP1/AJS2 - Managerが08-50以前である,プランニンググループを接続先にしている,またはコールドスタートなどによってユニットがすでに登録解除されている場合

    変更対象のユニット(プランニンググループの場合は,配下のすべてのジョブネット)を登録解除して[接続ホスト名]をリモートサイトのホスト名に変更し,[接続ホスト名]を変更したユニットを再度実行登録します。

(f) エージェントホストに残っているメインサイトの情報を削除する

メインサイトとリモートサイトでエージェントホストを共有している場合,メインサイトからの要求でジョブを監視していたエージェントホストには,運用を切り替えたあともメインサイトの情報が残っています。

次のコマンドをリモートサイトのマネージャーホストで実行して,エージェントホストに残っているメインサイトの情報を削除します。

jpomanevreset -h リモートサイトの論理ホスト名 -F スケジューラーサービス名 -dh メインサイトの論理ホスト名 -a エージェントホスト名

-aオプションに指定するエージェントホストが起動していることを確認してください。存在しないエージェントホスト,起動していないエージェント,またはマネージャーホストと通信できない状態のエージェントホストを指定すると,コマンドの実行に時間が掛かるおそれがあります。

jpomanevresetコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド jpomanevreset」を参照してください。

(g) キューレスエージェントサービスに論理ホストをアタッチする

キューレスジョブを使用する場合,次のコマンドを実行して,キューレスエージェントサービスにリモートサイトの論理ホストをアタッチ(接続)します。

ajsqlattach -h リモートサイトの論理ホスト名

(h) キューレスジョブの実行先ホスト名の変更

ジョブ・ジョブネットの実行先エージェント名に指定したキューレスジョブの実行先ホスト名を,リモートサイトのエージェントホスト構成に合わせて変更します。