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JP1 Version 12 JP1/Automatic Job Management System 3 運用ガイド


2.5.2 バックアップ

バックアップ強化機能を使用して,JP1/AJS3 - Managerをバックアップする方法を説明します。

〈この項の構成〉

(1) 組み込みDBのデータ以外をバックアップする

バックアップ強化機能を使用したバックアップデータは,バックアップを取得した環境と同一の組み込みDB環境にだけリカバリーできます。そのため,システム全体のバックアップを取得するなど,バックアップ環境と同一の組み込みDB環境を構築できるようにバックアップを取得してください。バックアップはシステム構成や環境設定情報に変更があった時点で取得することを推奨します。バックアップの取得方法については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(システム構築編) 5.2 バックアップとリカバリーについて検討する」,および「2.2 JP1/AJS3を使用するシステムの設定情報のバックアップ」を参照してください。

(2) 組み込みDBのデータをバックアップする

組み込みDBのデータをバックアップすることで,ジョブネットの定義や登録状態などの,日々更新される情報を復旧できるようになります。一日の業務の終了時などに定期的にバックアップを実行することで,障害発生時に近い状態で復旧できます。

組み込みDBのバックアップの手順を次に示します。

  1. ローカルディスク上に,バックアップデータ格納ディレクトリを作成する。

    バックアップデータ格納ディレクトリは,バックアップを取得する組み込みDBと同等の空き容量が必要です。必要な空き容量の目安を,次の表に示します。

    表2‒21 組み込みDBのデータベースモデルと必要な空き容量

    データベースモデル

    必要な空き容量

    大規模

    約7,200メガバイト

    中規模

    約1,900メガバイト

    小規模

    約700メガバイト

    ajsembdbaddareaコマンドでデータベース領域を拡張している場合は,拡張した容量を合計した容量が必要になります。また,データベース領域の自動増分機能を有効にしている場合は,自動増分による拡張後の容量が必要になります。

    自動増分機能については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 23.2 データベース領域の見積もり」を参照してください。

  2. 組み込みDBが稼働状態になっていることを確認する。

    ajsembdbstatusコマンドを実行し,バックアップを取得する組み込みDBが稼働状態になっていること(UNIT-STATがONLINEになっていること)を確認します。

    ajsembdbstatusコマンドの実行例を次に示します。

    ajsembdbstatus -s ust -id 組み込みDBセットアップ識別子

    稼働状態になっていない場合は,ajsembdbstartコマンドに-id 組み込みDBセットアップ識別子を指定して実行してください。

    ajsembdbstatusコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド ajsembdbstatus」を参照してください。ajsembdbstartコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド ajsembdbstart」を参照してください。

  3. jajs_dbbackupコマンドを実行する。

    バックアップを取得したい組み込みDBのセットアップ識別子と,バックアップデータを格納するバックアップデータ格納ディレクトリを指定して,コマンドを実行します。実行例を次に示します。

    jajs_dbbackup -id 組み込みDBセットアップ識別子 -o バックアップデータ格納ディレクトリ

    指定したバックアップデータ格納ディレクトリ配下に,組み込みDBのバックアップデータが格納されます。

    jajs_dbbackupコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド jajs_dbbackup」を参照してください。

注意事項
  • バックアップデータ格納ディレクトリは,ネットワークドライブ上に作成しないでください。バックアップデータ格納ディレクトリにネットワークドライブを指定した場合の動作は保証できません。

  • jajs_dbbackupコマンドでバックアップを取得している間は,ジョブの実行や操作が停止します。jajs_dbbackupコマンドは,ジョブの実行や操作をする時間帯を避けて実行してください。

  • 実行中のjajs_dbbackupコマンドをキャンセルする場合の手順の詳細については「(4) 実行中の組み込みDBバックアップ処理をキャンセルする」を参照してください。

(3) バックアップ環境の情報を取得する

バックアップデータからリカバリーを実施するとき,リカバリーの前提条件を確認するために次に示す情報が必要です。jajs_dbbackupコマンドの実行時にあわせて取得することを推奨します。

(a) JP1/AJS3 - Managerのバージョン情報

Windowsの場合

次のファイルの情報を確認してください。

JP1/AJS3 - Managerのインストール先フォルダ\Version.txt

UNIXの場合

/etc/hitachi_setupを実行し,「List Installed Software」を確認してください。

(b) 組み込みDBのバージョン情報

次のコマンドを実行し,表示される情報を取得してください。

ajsembdbidlist -v

(c) 組み込みDBの構成情報

次のコマンドを実行し,表示される情報を取得してください。

ajsembdbstatus -c

(d) スケジューラーサービス構成情報

次のコマンドを実行し,表示される情報を取得してください。

ajsembdbidlist

(e) データベース領域の拡張情報

組み込みDBのデータベース領域をajsembdbaddareaコマンドで拡張している場合は,次のフォルダまたはディレクトリを取得してください。

Windowsの場合

組み込みDB運用フォルダ\CONF\embrm

UNIXの場合

組み込みDB運用ディレクトリ/conf/embrm

(f) 組み込みDBのシステム定義

組み込みDBのシステム定義のオペランドを変更している場合は,設定値を取得してください。組み込みDBのシステム定義については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 23.1.1 組み込みDB稼働環境と運用方法の検討」を参照してください。

(4) 実行中の組み込みDBバックアップ処理をキャンセルする

jajs_dbbackupコマンドを使用した組み込みDBのバックアップ処理は,通常はキャンセルしないでください。一定時間で処理を中断したい場合は,jajs_dbbackupコマンドの-tオプションにタイムアウト時間を指定して実行してください。ただし,緊急時など,タイムアウト時間の満了を待たずにバックアップ処理をキャンセルしたい場合は,次に示すキャンセル手順を実施してください。

  1. 組み込みDBのコマンドを実行するために必要な環境変数を設定する。

    設定する環境変数を次の表に示します。

    表2‒22 設定が必要な環境変数

    設定する環境変数

    環境変数に指定する内容

    PATH

    組み込みDBのコマンドを格納するディレクトリを指定します。

    Windowsの場合

    組み込みDB運用ディレクトリ\bin

    UNIXの場合

    組み込みDB運用ディレクトリ/bin

    PDCONFPATH

    組み込みDBの定義ファイルを格納するディレクトリを指定します。

    Windowsの場合

    組み込みDB運用ディレクトリ\conf

    UNIXの場合

    組み込みDB運用ディレクトリ/conf

    PDDIR

    組み込みDB運用ディレクトリ名を指定します。

    PDLANG

    ANYを指定します。

    PDUSER

    組み込みDB管理者(スケジューラーデータベースのテーブルの所有者)のユーザーおよびパスワード(ユーザー/パスワード)を指定します。

    (例)

    PDUSER="root"/"root"

    PDUXPLDIR

    Windowsの場合だけ,組み込みDB作業ディレクトリ名を指定します。

    SHLIB_PATH

    UNIXの場合だけ,組み込みDB運用ディレクトリ/libを指定します。

    注※

    Solaris,Linuxの場合は,LD_LIBRARY_PATHに,AIXの場合は,LIBPATHになります。

    Windowsの場合の環境変数設定例

    x:\> set PDDIR=c:\Program Files\HITACHI\JP1AJS2\embdb\_JF0
    x:\> set PDCONFPATH=%PDDIR%\conf
    x:\> set PDUXPLDIR=%PDDIR%\uxpldir
     
    x:\> set PDUSER="root"/"root"
    x:\> set PDLANG=ANY
    x:\> set PATH=%PATH%;%PDDIR%\bin

    UNIX(HP-UX)の場合の環境変数設定例

    # PDDIR=/opt/jp1ajs2/embdb/_JF0
    # PDCONFPATH=$PDDIR/conf
    # PDUSER='"root"/"root"'
    # PDLANG=ANY
    # SHLIB_PATH=$PDDIR/lib
    # PATH=$PATH:$PDDIR/bin
     
    # export PDDIR PDCONFPATH PDUSER PDLANG SHLIB_PATH PATH
  2. バックアップ処理のサーバ名とプロセスIDを取得する。

    次のコマンドを実行し,0bcpyxxは0,1,2...と数値)となっているサーバ名(SVID)と,そのプロセスID(PID)を確認します。

    pdls -d prc -a
  3. バックアップ処理を中断させる。

    手順2で確認したサーバ名とプロセスIDを指定してajsembdbcancelコマンドを実行し,バックアップ処理を中断してください。

    コマンドの実行例を次に示します。

    ajsembdbcancel -u サーバ名 -p プロセスID -id 組み込みDBセットアップ識別子

    ajsembdbcancelコマンドの詳細は,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド ajsembdbcancel」を参照してください。

注意事項

バックアップ処理をキャンセルする場合は,バックアップ処理が開始してから数分(目安として約2分程度)経過してからにしてください。

バックアップ処理が開始してから数分以内はjajs_dbbackupコマンド内でバックアップ処理をリトライしているため,バックアップ処理をキャンセルしても再度バックアップ処理が実行されます。