10.5.3 非クラスタ環境の論理ホスト上での運用
JP1/AJS3の操作,バックアップ・リカバリーなど,フェールオーバーしない論理ホストの運用方法は,クラスタシステムで運用する論理ホストと同じです。ただし,クラスタソフトと連動してフェールオーバーすることはできません。
- 〈この項の構成〉
(1) 起動停止順序
論理ホスト上での起動は,次の順に起動してください。
-
JP1/Base
-
JP1/AJS3
また,論理ホスト上での停止は,次の順に停止してください。
-
JP1/AJS3
-
JP1/Base
(2) 論理ホスト上のJP1/AJS3に対する操作
論理ホスト上に作成したJP1/AJS3に対してコマンドを実行する場合,論理ホスト名を明示して操作してください。
(3) 自動起動および自動停止の設定例
システム開始時および停止時に,論理ホスト用のJP1/AJS3サービスを自動起動および自動停止する場合は,次の手順で設定する必要があります。設定方法は,JP1/AJS3がサポートするOSによって異なります。OSごとの設定方法を次に示します。
なお,論理ホストを削除する場合は,作成した論理ホスト用の自動起動スクリプト,自動停止スクリプト,およびリンクの設定は削除してください。
(a) Windowsの場合
JP1/Baseの起動管理機能のJP1/Baseのインストール先フォルダ\conf\boot\Jp1svprm.datファイルをテキストエディターで開き,次の記述を追加します。
: JP1/Baseの設定 : [Jp1AJS2_論理ホスト名] Name=JP1/AJS2_論理ホスト名 ServiceName=JP1_AJS2_論理ホスト名 StopCommand=jajs_spmd_stop.exe -h 論理ホスト名
StopCommandで指定しているコマンドは,JP1/Power Monitorからのシャットダウン時に実行されます。
(b) HP-UXの場合
-
論理ホスト用の自動起動・停止スクリプトを作成する。
自動起動・停止スクリプト例(/sbin/init.d/jp1_service_cluster)
#!/bin/sh case $1 in start_msg) echo "Start JP1 Service $JP1_HOSTNAME" ;; stop_msg) echo "Stop JP1 Service $JP1_HOSTNAME" ;; 'start') : JP1/Baseの起動処理 : if [ -x /etc/opt/jp1ajs2/jajs_start.cluster ] then /etc/opt/jp1ajs2/jajs_start.cluster 論理ホスト名 jajs_spmdコマンドのオプション fi ;; 'stop') if [ -x /etc/opt/jp1ajs2/jajs_stop.cluster ] then /etc/opt/jp1ajs2/jajs_stop.cluster 論理ホスト名 jajs_spmd_stopコマンドのオプション : JP1/Baseの停止処理 : ;; esac exit 0
-
手順1で作成したスクリプトに対してリンクを設定する。
開始スクリプト
次のコマンドを実行してリンクの設定を行います。
ln -s /sbin/init.d/jp1_service_cluster /sbin/rc2.d/SXXX_JP1_SERVICE
XXXが大きい数字ほどあとから開始スクリプトが実行されます。
OS起動時に,/sbin/rc2.d配下で組み込みDBの初期化処理が実施されるため,JP1/AJS3の起動は組み込みDBの初期化処理よりあとに設定してください。なお,組み込みDBを複数インストールしている場合,組み込みDBの数だけファイルが作成されます。組み込みDBセットアップ識別子が_JF0であり,インストールディレクトリが「/opt/jp1ajs2/embdb/_JF0」の場合,ファイル名称は「S899HiRDB_E.opt.jp1ajs2.embdb._JF0」となります。
停止スクリプト
次のコマンドを実行してリンクの設定を行います。
ln -s /sbin/init.d/jp1_service_cluster /sbin/rc1.d/KXXX_JP1_SERVICE
XXXが大きい数字ほどあとから停止スクリプトが実行されます。
一般的には,開始されるのが早いほど,停止はあとから実行されるようにします。
-
作成したファイルに権限を設定する。
次のコマンドを実行して権限を設定します。
chmod u=rx,go=r /sbin/init.d/jp1_service_cluster chown root:sys /sbin/init.d/jp1_service_cluster chmod u=rx,go=r /sbin/rc2.d/SXXX_JP1_SERVICE chown -h root:sys /sbin/rc2.d/SXXX_JP1_SERVICE chmod u=rx,go=r /sbin/rc1.d/KXXX_JP1_SERVICE chown -h root:sys /sbin/rc1.d/KXXX_JP1_SERVICE
(c) Solarisの場合
-
論理ホスト用の自動起動・停止スクリプトを作成する。
自動起動・停止スクリプト例(/etc/init.d/jp1_service_cluster)
#!/bin/sh case $1 in start_msg) echo "Start JP1 Service $JP1_HOSTNAME" ;; stop_msg) echo "Stop JP1 Service $JP1_HOSTNAME" ;; 'start') : JP1/Baseの起動処理 : if [ -x /etc/opt/jp1ajs2/jajs_start.cluster ] then /etc/opt/jp1ajs2/jajs_start.cluster 論理ホスト名 jajs_spmdコマンドのオプション fi ;; 'stop') if [ -x /etc/opt/jp1ajs2/jajs_stop.cluster ] then /etc/opt/jp1ajs2/jajs_stop.cluster 論理ホスト名 jajs_spmd_stopコマンドのオプション fi : JP1/Baseの停止処理 : ;; esac exit 0
-
手順1で作成したスクリプトに対してリンクを設定する。
開始スクリプト
次のコマンドを実行してリンクの設定を行います。
ln -s /etc/init.d/jp1_service_cluster /etc/rc2.d/SXX_JP1_SERVICE
XXが大きい数字ほどあとから開始スクリプトが実行されます。
OS起動時に,/etc/rc2.d配下で組み込みDBの初期化処理が実施されるため,JP1/AJS3の起動は組み込みDBの初期化処理よりあとに設定してください。なお,組み込みDBを複数インストールしている場合,組み込みDBの数だけファイルが作成されます。組み込みDBセットアップ識別子が_JF0であり,インストールディレクトリが「/opt/jp1ajs2/embdb/_JF0」の場合,ファイル名称は「S91HiRDB_E.opt.jp1ajs2.embdb._JF0」となります。
停止スクリプト
次のコマンドを実行してリンクの設定を行います。
ln -s /etc/init.d/jp1_service_cluster /etc/rc0.d/KXX_JP1_SERVICE
XXが大きい数字ほどあとから停止スクリプトが実行されます。
一般的には,開始されるのが早いほど,停止はあとから実行されるようにします。
-
作成したファイルに権限を設定する。
次のコマンドを実行して権限を設定します。
chmod u=rx,go=r /etc/rc2.d/SXX_JP1_SERVICE chown -h root:sys /etc/rc2.d/SXX_JP1_SERVICE chmod u=rx,go=r /etc/rc0.d/KXX_JP1_SERVICE chown -h root:sys /etc/rc0.d/KXX_JP1_SERVICE
(d) AIXの場合
-
起動処理
mkitabコマンドで/etc/inittabファイルに追加します。
# mkitab -i JP1/Baseのレコード "jp1ajs2:2:wait:/etc/opt/jp1ajs2/jajs_start.cluster 論理ホスト名 jajs_spmdコマンドのオプション"
OS起動時に,/etc/rc.d/rc2.d配下で組み込みDBの初期化処理が実施されるため,JP1/AJS3の起動は組み込みDBの初期化処理よりあとに設定してください。なお,組み込みDBを複数インストールしている場合,組み込みDBの数だけファイルが作成されます。組み込みDBセットアップ識別子が_JF0であり,インストールディレクトリが「/opt/jp1ajs2/embdb/_JF0」の場合,ファイル名称は「S910HiRDB_E.opt.jp1ajs2.embdb._JF0」となります。
-
停止処理
/etc/rc.shutdownファイルに,JP1/AJS3を前提とする製品の記述のあとに,次の記述を追加します。
test -x /etc/opt/jp1ajs2/jajs_stop.cluster && /etc/opt/jp1ajs2/jajs_stop.cluster 論理ホスト名 jajs_spmd_stopコマンドのオプション : JP1/Baseの停止処理 : exit 0
このスクリプトが異常終了すると,OSのシャットダウン処理が中断されます。スクリプトが正常終了するように,最終行に「exit 0」と記述してください。
(e) Linuxの場合
-
論理ホスト用の自動起動・停止スクリプトを作成する。
自動起動・停止スクリプト例(/etc/rc.d/init.d/jp1_service_cluster)
#!/bin/sh case $1 in start_msg) echo "Start JP1 Service $JP1_HOSTNAME" ;; stop_msg) echo "Stop JP1 Service $JP1_HOSTNAME" ;; 'start') : JP1/Baseの起動処理 : if [ -x /etc/opt/jp1ajs2/jajs_start.cluster ] then /etc/opt/jp1ajs2/jajs_start.cluster 論理ホスト名 jajs_spmdコマンドのオプション touch /var/lock/subsys/_JP1_SERVICE fi ;; 'stop') if [ -x /etc/opt/jp1ajs2/jajs_stop.cluster ] then /etc/opt/jp1ajs2/jajs_stop.cluster 論理ホスト名 jajs_spmd_stopコマンドのオプション rm -f /var/lock/subsys/_JP1_SERVICE fi : JP1/Baseの停止処理 : ;; esac exit 0
-
手順1で作成したスクリプトに対してリンクを設定する。
開始スクリプト
次のコマンドを実行してリンクの設定を行います。
ln -s /etc/rc.d/init.d/jp1_service_cluster /etc/rc.d/rc3.d/SXX_JP1_SERVICE ln -s /etc/rc.d/init.d/jp1_service_cluster /etc/rc.d/rc5.d/SXX_JP1_SERVICE
XXが大きい数字ほどあとから開始スクリプトが実行されます。
OS起動時に,/etc/rc3.dおよび/etc/rc5.d配下で組み込みDBの初期化処理が実施されるため,JP1/AJS3の起動は組み込みDBの初期化処理よりあとに設定してください。なお,組み込みDBを複数インストールしている場合,組み込みDBの数だけファイルが作成されます。組み込みDBセットアップ識別子が_JF0であり,インストールディレクトリが「/opt/jp1ajs2/embdb/_JF0」の場合,ファイル名称は「S91HiRDB_E.opt.jp1ajs2.embdb._JF0」となります。
停止スクリプト
次のコマンドを実行してリンクの設定を行います。
ln -s /etc/rc.d/init.d/jp1_service_cluster /etc/rc.d/rc0.d/KXX_JP1_SERVICE ln -s /etc/rc.d/init.d/jp1_service_cluster /etc/rc.d/rc6.d/KXX_JP1_SERVICE
XXが大きい数字ほどあとから停止スクリプトが実行されます。
一般的には,開始されるのが早いほど,停止はあとから実行されるようにします。
-
作成したファイルに権限を設定する。
次のコマンドを実行して権限を設定します。
chmod u=rwx,go=rx /etc/rc.d/init.d/jp1_service_cluster chown root:root /etc/rc.d/init.d/jp1_service_cluster chmod u=rwx,go=rx /etc/rc.d/rc3.d/SXX_JP1_SERVICE chown -h root:root /etc/rc.d/rc3.d/SXX_JP1_SERVICE chmod u=rwx,go=rx /etc/rc.d/rc5.d/SXX_JP1_SERVICE chown -h root:root /etc/rc.d/rc5.d/SXX_JP1_SERVICE chmod u=rwx,go=rx /etc/rc.d/rc0.d/KXX_JP1_SERVICE chown -h root:root /etc/rc.d/rc0.d/KXX_JP1_SERVICE chmod u=rwx,go=rx /etc/rc.d/rc6.d/KXX_JP1_SERVICE chown -h root:root /etc/rc.d/rc6.d/KXX_JP1_SERVICE
- 注意事項
-
JP1サービスを自動停止する場合は,必ず自動起動もするようにしてください。自動停止だけの場合には停止スクリプトが起動されません。
(4) 物理ホストおよび論理ホストの両方で自動起動および自動停止をする場合の設定
物理ホストおよび論理ホストの両方で自動起動および自動停止をしたい場合は,論理ホストの自動起動および自動停止の設定に加えて,次に示す設定をする必要があります。
なお,設定方法はOSごとに異なります。OSごとの設定方法を次に示します。
(a) Windows環境の場合
起動管理機能を使って,サービスの起動順序および終了順序を定義します。
物理ホストおよび論理ホストの起動順序および終了順序を変更したい場合は,起動管理機能の定義を変更してください。
起動管理機能の詳細については,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」を参照してください。
(b) HP-UX,Solaris,およびLinuxの環境の場合
自動起動および自動停止の順序は,自動起動および自動停止スクリプトの数字部分(SXXおよびKXXのXX部分)の値によって決定されます。数字部分の値が大きいほど,あとから実行されます。物理ホストの自動起動および自動停止スクリプトへのシンボリックリンクは,インストール時に自動で作成されます。物理ホストも含めた自動起動および自動停止をする場合は,論理ホスト用に作成するシンボリックリンクの名称を変更して,物理ホストおよび論理ホストの起動および停止順序を調節してください。
なお,物理ホスト用の自動起動および自動停止スクリプトは,あらかじめ用意されています。物理ホストの自動起動および自動停止スクリプトへのシンボリックリンク一覧を次の表に示します。
OS名 |
起動スクリプト |
停止スクリプト |
---|---|---|
HP-UX |
/sbin/rc2.d/S907jp1ajs2 |
/sbin/rc1.d/K093jp1ajs2 |
Solaris |
/etc/rc2.d/S99_JP1_80_AJS2 |
/etc/rc0.d/K01_JP1_20_AJS2 |
Linux |
/etc/rc.d/rc3.d/S99_JP1_80_AJS2 /etc/rc.d/rc5.d/S99_JP1_80_AJS2 |
/etc/rc.d/rc0.d/K01_JP1_20_AJS2 /etc/rc.d/rc6.d/K01_JP1_20_AJS2 |
シンボリックリンク一覧のSXXおよびKXXのXX(数字)部分の値と,論理ホストの自動起動および自動停止スクリプトのシンボリックリンクのSXXおよびKXXのXX(数字)部分の値との大小関係によって,物理ホストおよび論理ホストの起動順序を調節してください。なお,自動起動および自動停止スクリプトへのシンボリックリンクについては値を変更しないでください。また,OS起動時に組み込みDBの初期化処理が実施されるため,組み込みDBの初期化処理よりあとにJP1/AJS3が起動するように設定してください。組み込みDBの初期化処理スクリプトの一覧を次の表に示します。
OS名 |
初期化処理スクリプト |
---|---|
HP-UX |
/sbin/rc2.d/S899HiRDB_E.組み込みDB運用ディレクトリ |
Solaris |
/etc/rc2.d/S91HiRDB_E.組み込みDB運用ディレクトリ |
Linux |
/etc/rc.d/rc3.d/S91HiRDB_E.組み込みDB運用ディレクトリ /etc/rc.d/rc5.d/S91HiRDB_E.組み込みDB運用ディレクトリ |
- 注
-
組み込みDBを複数インストールしている場合,組み込みDBの数だけ,ディレクトリ配下にファイルが作成されます。組み込みDBセットアップ識別子が_JF0であり,インストールディレクトリが「/opt/jp1ajs2/embdb/_JF0」の場合,ファイル名称は「SxxxHiRDB_E.opt.jp1ajs2.embdb._JF0」となります。
例えば,論理ホストを先に起動したい場合は,論理ホスト用に作成する自動起動スクリプトへのシンボリックリンク名SXXのXX(数字)部分を次の値にしてください。
-
HP-UXの場合
899より大きく,905より小さい値
-
SolarisおよびLinuxの場合
91より大きく,99より小さい値
なお,JP1/AJS3はJP1/Baseを前提としている製品のため,先にJP1/Baseが起動している必要があります。
OS停止時に組み込みDBの終了処理が実施されるため,組み込みDBの終了処理より先にJP1/AJS3が停止するように設定してください。組み込みDBの終了処理スクリプトの一覧を次の表に示します。
OS名 |
終了処理スクリプト |
---|---|
HP-UX |
/sbin/rc1.d/K094HiRDB_E.組み込みDB運用ディレクトリ |
Solaris |
/etc/rc0.d/K090HiRDB_E.組み込みDB運用ディレクトリ |
Linux |
/etc/rc.d/rc0.d/K09HiRDB_E.組み込みDB運用ディレクトリ /etc/rc.d/rc6.d/K09HiRDB_E.組み込みDB運用ディレクトリ |
- 注
-
組み込みDBを複数インストールしている場合,組み込みDBの数だけ,ディレクトリ配下にファイルが作成されます。組み込みDBセットアップ識別子が_JF0であり,インストールディレクトリが「/opt/jp1ajs2/embdb/_JF0」の場合,ファイル名称は「KxxxHiRDB_E.opt.jp1ajs2.embdb._JF0」となります。
例えば,論理ホストをあとに停止したい場合は,論理ホスト用に作成する自動停止スクリプトへのシンボリックリンク名KXXのXX(数字)部分を次の範囲の値にしてください。
-
HP-UXの場合
0941より大きく,0949より小さい値
-
SolarisおよびLinuxの場合
01より大きく,09より小さい値
なお,JP1/AJS3はJP1/Baseを前提としている製品のため,JP1/Baseより先に停止する必要があります。
(c) AIXの環境の場合
OS起動時に組み込みDBの初期化処理が実施されるため,組み込みDBの初期化処理よりあとにJP1/AJS3が起動するように設定してください。AIX環境の組み込みDBの初期化処理スクリプトを次の表に示します。
OS名 |
初期化処理スクリプト |
---|---|
AIX |
/etc/rc.d/rc2.d/S910HiRDB_E.組み込みDB運用ディレクトリ |
- 注
-
組み込みDBを複数インストールしている場合,組み込みDBの数だけ,ディレクトリ配下にファイルが作成されます。組み込みDBセットアップ識別子が_JF0であり,インストールディレクトリが「/opt/jp1ajs2/embdb/_JF0」の場合,ファイル名称は「S910HiRDB_E.opt.jp1ajs2.embdb._JF0」となります。