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JP1 Version 12 JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド


23.2 データベース領域の見積もり

データベース領域をカスタマイズしたい場合に必要な,データベース領域の見積もりについて説明します。

JP1/AJS3で使用するデータベースの規模には大・中・小があります。新規インストール時または組み込みDB構築時に,構築する組み込みDBの規模を選択できます。

また,jajs_setupコマンドやjajs_setup_clusterコマンドに-Mオプションを指定して実行したり,組み込みDBの高度なセットアップをしたりすることで,データベースの規模を設定できます。すでに構築した組み込みDBの規模を変更したい場合は,組み込みDBをアンセットアップしたあと,組み込みDBの高度なセットアップをする必要があります。

JP1/AJS3では複数の組み込みDB環境を構築して使用できますが,ここでは,一つの組み込みDB環境の見積もり方法について説明します。一つの組み込みDB環境に複数のスケジューラーサービスを構築する場合は,共存するすべてのスケジューラーサービス分を加算してください。

組み込みDB環境の構築時に指定できるデータベースモデルは次の表のとおりです。ファイルシステムによっては,より多くのディスク容量を必要とすることもあるため,空き容量に余裕があるディスクを使用してください。

なお,次の表に示す見積もりは,定期的にデータベースのメンテナンスを実施していることが前提です。自動増分機能を使用している場合,定期的にデータベースのメンテナンスを実施しないと,自動増分機能によって実際のサイズが見積もりより大きくなる場合があります。

表23‒6 組み込みDB環境の構築時に指定できるデータベースモデル

規模

用途

大規模

総ユニット数:48,000〜240,000程度

1日に実行されるユニット数:30,000〜120,000

ディスク容量の目安:約20,700メガバイト

保存世代数:5

(データ領域:約6,700メガバイト,システム領域:約14,000メガバイト)

自動増分機能を有効にしている場合:

想定されている総ユニット数を超えるとき,ディスク容量の目安は次の値になります。

20,700 + 0.1*(総ユニット数 - 240,000)メガバイト

中規模

総ユニット数:5,000〜48,000程度

1日に実行されるユニット数:5,000〜30,000

ディスク容量の目安:約4,200メガバイト

保存世代数:5

(データ領域:約1,400メガバイト,システム領域:約2,800メガバイト)

自動増分機能を有効にしている場合:

想定されている総ユニット数を超えるとき,ディスク容量の目安は次の値になります。

4,200 + 0.1*(総ユニット数 - 48,000)メガバイト

小規模

総ユニット数:〜5,000程度

1日に実行されるユニット数:〜5,000

ディスク容量の目安:約520メガバイト

保存世代数:5

(データ領域:約200メガバイト,システム領域:約320メガバイト)

自動増分機能を有効にしている場合:

想定されている総ユニット数を超えるとき,ディスク容量の目安は次の値になります。

520 + 0.1*(総ユニット数 - 5,000)メガバイト

注※

バックアップ強化機能を使用する場合,ディスク容量に500メガバイト加算して見積もってください。

総ユニット数は大規模に当てはまる(48,000〜240,000程度)が,1日に実行されるユニット数は中規模に当てはまる(5,000〜30,000程度)というように,上記の表に当てはまる規模がない場合は,次の計算をしてください。

(0.0045 * a) + (0.001 * b) + (c * 0.0065)(単位:メガバイト)
(凡例)
a:

総ユニット数を代入してください。

b:

すべての待ち合わせ条件付きユニットに定義される,待ち合わせの総数を代入してください。

c:

実行登録するすべてのルートジョブネットに対して,次の式で算出した値の合計値を代入してください。

ルートジョブネットとその配下のユニットの総数 * (保存世代数 + d)

環境設定パラメーターSAVEGENTYPEに「LEGACY」を設定している場合,起動条件を使用しているルートジョブネットについては,次の式で算出してください。

ルートジョブネットとその配下のユニットの総数 * (保存世代数 + d + 保存世代数保存世代数)
d:

実行登録方法によって次の値を代入してください。

即時実行登録:1

計画実行登録:1

確定実行登録:予定世代数

注※

コマンド文や実行ファイル名,スクリプトファイル名などのユニット定義で入力された値の合計を,1ユニット当たり2キロバイトとして計算しています。

ジョブネットリリース機能を使用する場合,リリース登録を行うリリース元ユニットのルートジョブネットとその配下のユニットについて,上記の式でサイズを算出し,加算してください。

算出した値が,200メガバイトを超える場合は中規模モデル,1,400メガバイトを超える場合は大規模モデルでの構築を推奨します。

算出した値が6,700メガバイトを超える場合は,組み込みDB環境を大規模モデルで構築し,そのあとデータ領域AJS2DATA,AJS2INDXを拡張することを推奨します。データ領域の拡張については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド ajsembdbaddarea」を参照してください。なお,ajsembdbaddareaコマンドでデータ領域を拡張する場合は,テーブル領域AJS2DATAとインデクス領域AJS2INDXが,5:2の比率になるようにそれぞれ拡張してください。

システム領域(システムログファイル)の見積もりについては,データ領域の見積もりで算出した規模のシステム領域の容量が必要です。大規模モデルを超える場合,次の式で算出し,不足しているときは,システムログファイルを拡張してください。

(凡例)

a:総ユニット数

注※

コマンド文,実行ファイル名,スクリプトファイル名などのユニット定義で入力された値の合計を,1ユニット当たり2キロバイトとして計算しています。

システムログファイルの拡張については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド ajsembdbaddlog」を参照してください。

組み込みDB環境のデータベースモデルの見積もり例について,次に説明します。

(例)

次のような場合を想定します。

環境設定パラメーターSAVEGENTYPEの設定値:「TOTAL

総ユニット数:200,000

すべての待ち合わせ条件付きユニットに定義される,待ち合わせの総数:1,000

1日に実行されるユニット数:10,000

保存世代数:5

確定実行登録した予定世代数:10

(0.0045 * 200,000) + (0.001 * 1,000) + (10,000 * (5 + 10) * 0.0065)
= 900 + 1 + 975
= 1,876(単位:メガバイト)

この場合は,大規模モデルでの構築を推奨します。

ajsembdbsetupコマンドに-e sjisオプションを指定してスケジューラーサービスのデータベースをセットアップした場合は,次のとおりです。

表23‒7 組み込みDB環境の構築時に指定できるデータベースモデル(ajsembdbsetupコマンドに-e sjisオプションを指定した場合)

規模

用途

大規模

総ユニット数:38,400〜192,000程度

1日に実行されるユニット数:24,000〜96,000

ディスク容量の目安:約20,700メガバイト

保存世代数:4

(データ領域:約6,700メガバイト,システム領域:約14,000メガバイト)

自動増分機能を有効にしている場合:

想定されている総ユニット数を超えるとき,ディスク容量の目安は次の値になります。

20,700 + 0.125*(総ユニット数 - 192,000)メガバイト

中規模

総ユニット数:4,000〜38,400程度

1日に実行されるユニット数:4,000〜24,000

ディスク容量の目安:約4,200メガバイト

保存世代数:4

(データ領域:約1,400メガバイト,システム領域:約2,800メガバイト)

自動増分機能を有効にしている場合:

想定されている総ユニット数を超えるとき,ディスク容量の目安は次の値になります。

4,200 + 0.125*(総ユニット数 - 38,400)メガバイト

小規模

総ユニット数:〜4,000程度

1日に実行されるユニット数:〜4,000

ディスク容量の目安:約520メガバイト

保存世代数:4

(データ領域:約200メガバイト,システム領域:約320メガバイト)

自動増分機能を有効にしている場合:

想定されている総ユニット数を超えるとき,ディスク容量の目安は次の値になります。

520 + 0.125*(総ユニット数 - 4,000)メガバイト

注※

バックアップ強化機能を使用する場合,ディスク容量に500メガバイト加算して見積もってください。

総ユニット数は大規模に当てはまる(38,400〜192,000程度)が,1日に実行されるユニット数は中規模に当てはまる(4,000〜24,000程度)というように,上記の表に当てはまる規模がない場合は,次の計算をしてください。

((0.0045 * a) + (0.001 * b) + (c * 0.0065)) * 1.25(単位:メガバイト)
(凡例)
a:

総ユニット数を代入してください。

b:

すべての待ち合わせ条件付きユニットに定義される,待ち合わせの総数を代入してください。

c:

実行登録するすべてのルートジョブネットに対して,次の式で算出した値の合計値

ルートジョブネットとその配下のユニットの総数 * (保存世代数 + d)

環境設定パラメーターSAVEGENTYPEに「LEGACY」を設定している場合,起動条件を使用しているルートジョブネットについては,次の式で算出してください。

ルートジョブネットとその配下のユニットの総数 * (保存世代数 + d + 保存世代数保存世代数)
d:

実行登録方法によって次の値を代入してください。

即時実行登録:1

計画実行登録:1

確定実行登録:予定世代数

注※

コマンド文や実行ファイル名,スクリプトファイル名などのユニット定義で入力された値の合計を,1ユニット当たり2キロバイトとして計算しています。

ジョブネットリリース機能を使用する場合,リリース登録を行うリリース元ユニットのルートジョブネットとその配下のユニットについて,上記の式でサイズを算出し,加算してください。

算出した値が,200メガバイトを超える場合は中規模モデル,1,400メガバイトを超える場合は大規模モデルでの構築を推奨します。

算出した値が6,700メガバイトを超える場合は,組み込みDB環境を大規模モデルで構築し,そのあとデータ領域AJS2DATA,AJS2INDXを拡張することを推奨します。データ領域の拡張については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド ajsembdbaddarea」を参照してください。なお,ajsembdbaddareaコマンドでデータ領域を拡張する場合は,テーブル領域AJS2DATAとインデクス領域AJS2INDXが,5:2の比率になるようにそれぞれ拡張してください。

システム領域(システムログファイル)の見積もりについては,データ領域の見積もりで算出した規模のシステム領域の容量が必要です。大規模モデルを超える場合,次の式で算出し,不足しているときは,システムログファイルを拡張してください。

(凡例)

a:総ユニット数

注※

コマンド文,実行ファイル名,スクリプトファイル名などのユニット定義で入力された値の合計を,1ユニット当たり2キロバイトとして計算しています。

システムログファイルの拡張については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド ajsembdbaddlog」を参照してください。

組み込みDB環境のデータベースモデルの見積もり例について,次に説明します。

(例)

次のような場合を想定します。

環境設定パラメーターSAVEGENTYPEの設定値:「TOTAL

総ユニット数:100,000

すべての待ち合わせ条件付きユニットに定義される,待ち合わせの総数:1,000

1日に実行されるユニット数:10,000

保存世代数:5

確定実行登録した予定世代数:10

((0.0045 * 100,000) + (0.001 * 1,000) + (10,000 * (5 + 10) * 0.0065)) * 1.25
= (450 + 1 + 975) * 1.25
= 1782.5(単位:メガバイト)

この場合は,大規模モデルでの構築を推奨します。

組み込みDB環境の構築時に組み込みDBのシステム領域を二重化する場合は,さらにディスク容量が増加します。増加するディスク容量を次の表に示します。

表23‒8 組み込みDBのシステム領域を二重化する場合の増加ディスク容量

規模

増加するディスク容量

大規模

約14,000メガバイト

中規模

約2,800メガバイト

小規模

約320メガバイト

バックアップ強化機能を有効にする場合に必要な見積もり

バックアップ強化機能を有効にする場合,上記のデータ領域AJS2DATA,AJS2INDXの見積もりに加えて,データ領域AJS2DATA2,AJS2INDX2の見積もりが必要です。次に示す式でデータ領域のサイズを算出してください。算出した値が300メガバイトを超える場合は,データ領域AJS2DATA2,AJS2INDX2を拡張することを推奨します。データ領域の拡張については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド ajsembdbaddarea」を参照してください。なお,ajsembdbaddareaコマンドでデータ領域を拡張する場合は,テーブル領域AJS2DATA2とインデクス領域AJS2INDX2が,5:2の比率になるようにそれぞれ拡張してください。

(0.0008 * X) + (0.008 * (Y + Z)) (単位:メガバイト)

(凡例)

X:

実行登録するすべてのルートジョブネットに対して,次の式で算出した値の合計値を代入してください。

a + (b * ( c + d)) + (ルートジョブネット配下のネストジョブネット,イベントジョブの引き継ぎ情報が設定されているイベントジョブ,判定ジョブ,ORジョブの総数) * c
Y:

実行登録するルートジョブネットのうち,マクロ変数を使用するルートジョブネットに対して,次の式で算出した値の合計値を代入してください。

(ルートジョブネットとその配下のネストジョブネット,判定ジョブ,ORジョブの総数 + イベントジョブの引き継ぎ情報が設定されているイベントジョブの総数 + e) * c
Z:

実行登録するすべてのルートジョブネットに対して,次の式で算出した値の合計値を代入してください。

f * g
a:

環境設定パラメーターBACKGROUNDLEAVEの設定値によって次の値を代入してください。

yes:1

no:0

b:

環境設定パラメーターBACKGROUNDLEAVEの設定値によって次の値を代入してください。

yes:2

no:1

c:

環境設定パラメーターSAVEGENTYPEに「LEGACY」を設定している場合,起動条件を使用しているルートジョブネットは,次の式で算出してください。

(保存世代数 + 保存世代数保存世代数)

上記以外の場合は,保存世代数を代入してください。

d:

実行登録方法によって次の値を代入してください。

即時実行登録:1

計画実行登録:1

確定実行登録:予定世代数

e:

次の値を代入してください。

引き継ぎ情報設定ジョブを使用している場合:1

引き継ぎ情報設定ジョブを使用していない場合:0

f:

次の値を代入してください。

実行登録時にマクロ変数を指定している場合:1

実行登録時にマクロ変数を指定していない場合:0

g:

実行登録方法によって次の値を代入してください。

確定実行登録(未来世代数指定)または計画実行登録:1

上記以外の実行登録方法:0

バックアップ強化機能が有効である場合,データベース領域の見積もりだけでなく,データベースのテーブル領域(AJS2DATA2)の使用率の監視を日々行う運用を検討してください。データベースの監視についての詳細はマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(システム構築編) 5.2.5(5) バックアップ強化機能を使用する場合の検討事項」を参照してください。

データベース自動増分機能について

データベース自動増分機能を使用すると,データ領域が不足するたびに少しずつ自動的に拡張され,最大でデータ領域を構築したディスクを使い切るまで拡張されます。拡張されるファイルを次に示します。

  • データ領域格納ディレクトリ以下にあるajssys041ajssys042ajssys043ajssys044

  • ajsembdbaddareaコマンドの-dオプションに指定したディレクトリ以下に作成されたファイル

注※

バックアップ強化機能が有効な場合だけ存在する領域です。

また,システムログ自動増分機能を使用すると,システムログファイルが不足するたびに少しずつ自動的に拡張され,最大でシステムログファイル領域が初期構築サイズの3倍になるまで拡張されます。なお,システムログファイル1ファイル当たりの初期構築サイズは,小規模で23メガバイト,中規模で224メガバイト,大規模で1,152メガバイトです。

拡張されるシステムログファイルを次に示します。

  • データ領域格納ディレクトリ以下にあるajssys01101ajssys01112

  • ajsembdbaddlogコマンドの-rオプションにsysを指定したときの,-dオプションに指定したディレクトリ以下に作成されたファイル

注※

組み込みDBの高度なセットアップでajsembdbbuildコマンドにシステムファイル領域作成ディレクトリ1,システムファイル領域作成ディレクトリ2を指定した場合には,次のファイルが拡張されます。

  • システムファイル領域作成ディレクトリ1以下にあるajssys01101ajssys01112

  • システムファイル領域作成ディレクトリ2以下にあるajssys01701ajssys01712

ajsembdbaddareaコマンドおよびajsembdbaddlogコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド」を参照してください。

補足事項
  • システムファイルを二重化している場合に必要なディスク容量については,「23.1.1 組み込みDB稼働環境と運用方法の検討」の「表23-2 組み込みDB稼働環境ごとの必要ディスク容量」も参照してください。

  • 組み込みDBの高度なセットアップで,アンロードログ運用を適用した組み込みDBを構築した場合,アンロードログファイルを格納するための容量を見積もる必要があります。アンロードログ運用の詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(システム構築編) 付録F.1(1) アンロードログ運用」を参照してください。

  • バージョン8の組み込みDBから移行した場合のディスク占有量の見積もりについては,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(システム構築編) 8.5.2(7) バージョン8の組み込みDBから移行した場合のディスク占有量の見積もり」を参照してください。