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JP1 Version 12 JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド


23.1.1 組み込みDB稼働環境と運用方法の検討

ここでは,組み込みDB稼働環境と運用方法の検討項目について説明します。

〈この項の構成〉

(1) 稼働環境

組み込みDBが稼働する環境条件として,次の項目について検討および確認します。

(a) システム構成

非クラスタ構成(物理ホスト)とするか,またはクラスタ構成(論理ホスト)とするかを検討します。組み込みDBだけでなく,JP1/AJS3サービスの全体構成としての環境条件となります。また,複数のスケジューラーサービスを起動させる場合は,スケジューラーサービスとセットアップする組み込みDBの組み合わせを検討します。

なお,外部のクライアントソフトウェアから組み込みDBに接続することはできません。

(b) 環境構築規模

JP1/AJS3の運用規模に合わせて,組み込みDB環境を構築する規模を三つ(小規模,中規模,大規模)の中から選択します。選択の際のデータベース領域の見積もり方法については,「23.2 データベース領域の見積もり」を参照してください。

(c) システムファイル領域

組み込みDBで使用するシステムファイルの二重化実施の有無について検討します。システムファイルを二重化すると,必要なディスク容量は増加しますが,片方のシステムファイルを格納したディスクに障害が発生した場合,組み込みDBを障害時点まで復旧できます。

組み込みDBの稼働環境ごとに必要なディスク容量を次の表に示します。項番1〜12から一つを選択してください。

注意事項

バックアップ強化機能が有効な場合は,システムファイルを二重化できません。

表23‒2 組み込みDB稼働環境ごとの必要ディスク容量

項番

組み込みDB稼働環境

必要ディスク容量(単位:メガバイト)

バックアップ強化機能

システム構成

環境構築規模

システムファイルの二重化

システム領域※1

データ領域

システムファイル領域

作業領域

合計※2

1

無効

非クラスタ

小規模

なし

170※3

200

320

520

2

あり

640

840

3

中規模

なし

1,400

2,800

4,200

4

あり

5,600

7,000

5

大規模

なし

6,700

14,000

20,700

6

あり

28,000

34,700

7

クラスタ

小規模

なし

170※3,※4

200

320

40*2※5

600

8

あり

640

920

9

中規模

なし

1,400

2,800

4,280

10

あり

5,600

7,080

11

大規模

なし

6,700

14,000

20,780

12

あり

28,000

34,780

13

有効

非クラスタ

小規模

なし

170※3

700

320

1,020

14

中規模

なし

1,900

2,800

4,700

15

大規模

なし

7,200

14,000

21,200

16

クラスタ

小規模

なし

170※3,※4

700

320

40*2※5

1,100

17

中規模

なし

1,900

2,800

4,780

18

大規模

なし

7,200

14,000

21,280

(凡例)

−:作成先は指定できません。

注※1

システム領域は,JP1/AJS3のインストールされているディスクまたはajsembdbinstlコマンドの-iオプションに指定したディレクトリに作成されます。ajsembdbinstlコマンドについては,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド ajsembdbinstl」を参照してください。

注※2

この値にシステム領域は含まれていません。

注※3

この値は,OSによって変化します。

OS

容量(メガバイト)

Windows

170

HP-UX(IPF)

400

Solaris

260

AIX

200

Linux

210

注※4

クラスタ構築時は,組み込みDBを実行系および待機系それぞれにインストールする必要があります。

注※5

クラスタ構成時の作業領域は,共有ディスク上ではなくローカルディスク上に作成する必要があるため,実行系および待機系それぞれに必要です。

(d) 動作環境

次に示す組み込みDBの動作環境について検討します。

  • システム定義

次に示すシステム定義のオペランドについて説明します。

  • システム共通定義

  • シングルサーバ定義

■ システム共通定義

組み込みDBシステム管理者が設定値を変更できるシステム共通定義のオペランドについて説明します。

システム共通定義ファイルのパス名を次に示します。このファイル中に設定されているオペランドの値を変更してください。

  • Windowsの場合:組み込みDB運用ディレクトリ\conf\pdsys

  • UNIXの場合:組み込みDB運用ディレクトリ/conf/pdsys

なお,次の表で[ ](角括弧)で囲まれているオペランドは,組み込みDBのセットアップ時点では記載されていません。必要に応じて追記してください。

重要

ここで説明していないオペランドの値は変更しないでください。変更した場合,JP1/AJS3が誤動作することがあります。

番号

形式

1

set pd_max_users = 最大同時接続数

2

[set pd_service_port = クライアント接続用ポート番号]

3

set pd_mode_conf = 組み込みDBの開始方法

4

[set pd_utl_exec_time = 組み込みDBを操作するコマンドの実行監視時間]

1) pd_max_users = 最大同時接続数

〜〈符号なし整数〉((1〜2000))

組み込みDBに対する最大同時接続数を変更する場合に,このオペランドの設定値を変更します。このオペランドには,組み込みDBに対する最大同時接続数を指定します。組み込みDBへの接続要求数がこのオペランドの値を超えると,組み込みDBはそれ以上の接続要求を受け付けません(接続要求はエラーになります)。なお,JP1/AJS3では,バックアップ強化機能が無効な場合は128,バックアップ強化機能が有効な場合は256をデフォルトで設定しています。

注意事項
  • データベースを操作するコマンドを実行した場合,コマンドごとに組み込みDBの接続数を消費するため注意が必要です。

    組み込みDBへの接続数は,次のようにカウントされます。

    JP1/AJS3の動作

    接続数のカウント

    JP1/AJS3 - Managerの起動

    2

    スケジューラーサービスの起動

    4※1,※2,※3

    ユニットを操作するコマンドの実行※4

    1

    JP1/AJS3 - Viewからの接続

    参照したスケジューラーサービス数

    組み込みDBを操作するコマンドの実行

    2

    リモートジョブネットの実行(実行元ホスト)

    1

    リモートジョブネットの実行(実行先ホスト)

    1

    JP1/AJS3 - Web Consoleからの接続

    接続したスケジューラーサービス数

    注※1

    待ち合わせ条件を使用している場合は,1を加算してください。待ち合わせ条件を使用しているかどうかについては,「6.1.8 待ち合わせ条件を使用するための設定」の手順を実施しているかどうかで判断してください。

    注※2

    キューレスジョブのマネージャー機能をセットアップしている場合は,環境設定パラメーターQUEUELESSMULTIREQに指定した値を加算してください。環境設定パラメーターQUEUELESSMULTIREQの詳細については,「20.4.2(76) QUEUELESSMULTIREQ」を参照してください。

    注※3

    バックアップ強化機能を有効にしている場合は,1を加算してください。バックアップ強化機能の設定状況は,ajsembdbstatusコマンドで確認できます。ajsembdbstatusコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド ajsembdbstatus」を参照してください。

    注※4

    JP1/IM2と連携してユニットの情報を参照する場合も該当します。

    なお,JP1/AJS3 - ViewからJP1/AJS3のコマンドを実行する場合,JP1/AJS3 - Viewから組み込みDBへの接続で1,コマンドの実行で1をそれぞれ消費します。

  • pd_max_usersの設定値を500より大きくする場合は,シンクポイントダンプファイルを拡張する必要があります。ajsembdbaddlogコマンドに-s 7-r spdオプションを指定して3回実行し,シンクポイントダンプファイルを拡張してください。

    ajsembdbaddlogコマンドの指定例を次に示します。

    ajsembdbaddlog -s 7 -r spd -id _JF0 -d 任意のディレクトリ名称

    ajsembdbaddlogコマンドに指定するオプションについては,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド ajsembdbaddlog」を参照してください。

  • UNIXの場合で,このオペランドの指定値を大きい値に変更したときは,システムリソースを調整してください。調整が必要なシステムリソースについては,リリースノートを参照してください。

2) pd_service_port = クライアント接続用ポート番号

〜〈符号なし整数〉((5001〜65535))

組み込みDBサーバ側にファイアウォールが設置されている場合に,クライアント接続用ポート番号を指定します。指定するポート番号の規則を次に示します。

  • ホスト内でユニークなポート番号

運用方法
  • JP1/AJS3連携製品を使用する場合,必要に応じて設定してください。JP1/AJS3 - Managerではこのオペランドは使用しないので,設定する必要はありません。

  • 同一マシン上で複数のサーバ,または複数のユニットを開始する場合は,それぞれの組み込みDBで異なったポート番号を指定してください。

注意事項

OSが自動的に割り当てるポート番号の範囲とは異なる番号を指定してください。OSが自動的に割り当てるポート番号の範囲はOSによって異なります。OSが自動的に割り当てるポート番号の範囲内の番号を指定した場合,その番号はほかのプログラムに使用されているおそれがあります。使用されていた場合,組み込みDBを開始できません。

3) pd_mode_conf = 組み込みDBの開始方法

組み込みDBの開始方法を指定します。設定値を次に示します。デフォルトは「MANUAL2」です。通常,変更する必要はありません。

  • AUTO

    OSを起動したときに自動で組み込みDBを開始します。組み込みDBが異常終了した場合も,自動で再開始します。

  • MANUAL1

    OSを起動したときに自動で組み込みDBを開始しません。ただし,組み込みDBが異常終了した場合にかぎり,自動で再開始します。

  • MANUAL2

    OSを起動したときに自動で組み込みDBを開始しません。MANUAL1とは異なり,組み込みDBが異常終了した場合でも自動で再開始しません。

4) pd_utl_exec_time = 組み込みDBを操作するコマンドの実行監視時間

〜〈符号なし整数〉((0〜35791394))《0》(単位:分)

次の組み込みDBを操作するコマンドの実行時間を監視する場合に,その監視時間を分単位で指定します。

  • ajsembdbreclaimコマンド

  • ajsembdbrorgコマンド

このオペランドで指定した監視時間を超えてもコマンドが終了しない場合は,標準エラー出力にメッセージKAVS2117-Eが出力され,実行中のコマンドが異常終了します。

利点

夜間バッチジョブなどで,コマンドの実行中に何らかの障害(通信障害,ディスク障害など)によってコマンドが無応答状態になった場合に,指定した時間でコマンドを異常終了させることができます。

指定値の目安

このオペランドは無応答障害に対処することが目的であり,データベースのメンテナンス処理時間の監視を目的としていません。したがって,このオペランドの指定値には,コマンド実行時間の実績値の最大値に余裕を持たせた値を指定してください。例えば,ajsembdbreclaimコマンドの最大実行時間が60分程度で,ajsembdbrorgコマンドの最大実行時間が90分程度の場合,pd_utl_exec_timeには余裕を持って120を指定してください。これは,通常90分で終了する処理が30分を過ぎても応答が返ってこないときは無応答障害のおそれがあると判断しています。なお,コマンドの最大実行時間に加算する30分という時間は,1スケジューラーデータベースとエージェント管理用データベースを対象にメンテナンスすることを想定した値です。メンテナンス処理では,ほかのデータベースアクセス(ジョブ実行やユニットを操作するコマンドなどの処理)があった場合,それらの処理の完了に1分間の待ち合わせを行います。そのため,加算する時間は「処理対象のテーブル数*2*1」分で見積もった値に余裕を持たせた時間を目安として指定してください。

組み込みDBに作成するテーブルについては,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(システム構築編) 2.6.3 JP1/AJS3のデータベーステーブル」を参照してください。

■ シングルサーバ定義

組み込みDBシステム管理者が設定値を変更できるシングルサーバ定義のオペランドについて説明します。シングルサーバ定義ファイルのパス名を次に示します。このファイル中に設定されているオペランドの値を変更してください。

  • Windowsの場合:組み込みDB運用ディレクトリ\conf\ajs2

  • UNIXの場合:組み込みDB運用ディレクトリ/conf/ajs2

重要

ここで説明していないオペランドの値は変更しないでください。変更した場合,JP1/AJS3が誤動作することがあります。

番号

形式

1

set pd_lck_pool_size = 排他制御用プールサイズ

1) pd_lck_pool_size = 排他制御用プールサイズ

〜〈符号なし整数〉(単位:キロバイト)((1〜2000000))

組み込みDB内の排他制御で使う共有メモリー領域の大きさをキロバイト単位で指定します。

なお,JP1/AJS3では,ajsembdbbuildコマンド,jajs_setupコマンド,またはjajs_setup_clusterコマンドで指定した規模によって,次の表に示す値を設定しています。

規模

コマンドのオプション

排他制御用プールサイズ

大規模

-l

60,000

中規模

-m

37,500

小規模

-s

15,000

運用方法

コマンドやJP1/AJS3 - Viewによってユニットを操作する場合,ユニット数に応じて,排他制御用のメモリー領域が使用されます。そのため,操作対象のユニット数などに応じて,排他制御用のメモリー領域を事前に見積もり,設定する必要があります。

一度に大量のユニットを操作することで排他制御用のメモリー領域が不足した場合,次のような現象が発生します。

  • 統合ログ,syslog,またはWindowsイベントログにメッセージKAVS0902-Eおよびその保守情報にメッセージKFPA11912-Eが出力され,操作が異常終了する。

また,排他制御用のメモリー領域が不足したことで,スケジューラーサービスのデータベースアクセスが正常にできない場合,次のような現象が発生することがあります。

  • メッセージKAVS0902-Eが出力され,ジョブやジョブネットが正常に実行できない。

  • 統合ログ,syslog,またはWindowsイベントログにメッセージKAVS0230-Eが出力され,スケジューラーサービスが異常終了する。

排他制御用のメモリー領域を使用するユニット操作※1は次のとおりです。

  1. ajsdefineコマンドで定義するユニットとその配下のユニット総数

  2. ajsdeleteコマンドまたはJP1/AJS3 - Viewで削除するユニットとその配下のユニット総数※2

  3. ajscopyコマンドまたはJP1/AJS3 - Viewでのユニットのコピー操作で,コピー元として指定するユニットとその配下のユニット総数

  4. ajsrestoreコマンドまたはJP1/AJS3 - Viewでの回復操作で,回復対象のユニットとその配下のユニット総数

  5. ajsreleaseコマンドまたはJP1/AJS3 - Viewでのリリース操作で,リリース元として指定するルートジョブネットとその配下のユニット総数※3

  6. ajsentryコマンドまたはJP1/AJS3 - Viewでの実行登録操作で,実行登録するルートジョブネットとその配下のユニット総数

  7. ajsrerunコマンドまたはJP1/AJS3 - Viewでの再実行操作で,再実行するルートジョブネットとその配下のユニット総数

  8. ajssuspendコマンドまたはJP1/AJS3 - Viewでのサスペンド解除操作で,サスペンド解除するルートジョブネットに追加および削除したユニット総数

  9. ajsimportコマンドまたはJP1/AJS3 - Viewでのインポートで,インポートするユニットとその配下のユニット総数

  10. ajsplanコマンドまたはJP1/AJS3 - Viewでの一時変更操作で,変更対象のユニット総数

  11. ajsrgimportコマンドでの登録予定情報のインポートで,登録予定情報をインポートするルートジョブネットとその配下のユニット総数

  12. ajschkdefコマンドでの定義内容の事前チェックで,チェック対象のユニット総数

  13. ajsleaveコマンドまたはJP1/AJS3 - Viewでの登録解除操作※4

排他制御用のメモリー領域不足の発生を防止するために,pd_lck_pool_sizeの設定値と,次に示す式によって求めた値※5を比較してください。pd_lck_pool_sizeの設定値が小さい場合は,式で求めた値に変更してください。

  • 上記1.,2.,3.,4.,5.,8.,9.の場合

    a + b + c + d + e / 41.2

    a:(ジョブグループの総数*2) + ジョブグループに定義されているカレンダー定義年数の総数

    b:(ジョブネットの総数*2) + 全ジョブネットに対して定義されているスケジュールルールの総数

    c:ジョブの総数*2

    d:ジョブ・ジョブネットに定義された関連線接続数の総数

    e:待ち合わせ条件が定義されているジョブ・ジョブネットの総数 + 定義されている待ち合わせ対象ユニットの総数

    なお,環境設定パラメーターUNITDEFDIVIDEUPDATEを「yes」に設定している場合,上記の見積もり式で算出した値が4,000以上であれば,4,000としてください。

  • 上記6.,7.,10.,11.の場合

    f + g / 41.2

    f:ジョブ,ジョブネットの総数*3

    g:待ち合わせ条件が定義されているジョブ・ジョブネットの総数

  • 上記12.の場合

    h / 41.2

    h:ジョブ,ジョブネット,ジョブグループの総数

計算で使用するジョブネットがジョブネットリリース機能を使用している場合,計算には操作対象のジョブネット定義を使用してください。また,JP1/AJS3の関連製品および連携製品から上記に相当する操作をする場合も,同様に排他制御用のメモリー領域が使用されます。

なお,pd_lck_pool_sizeの設定値を変更した場合は,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(システム構築編) 3. 見積もり」およびリリースノートを確認し,メモリー所要量を見直してください。

注※1

JP1/AJS3の関連製品および連携製品から上記に相当する操作をする場合も,同様に排他制御用のメモリー領域が使用されます。

注※2

計算で使用するジョブネットがジョブネットリリース機能を使用している場合,「リリース待ち」および「適用終了」状態の定義も処理対象となります。この定義のユニット総数も加算してください。なお,「適用終了」の定義のユニット総数は,「ルートジョブネット配下のユニット数×世代の最大保存日数の間に実施するリリース登録数」で見積もってください。

ジョブネット定義の状態については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 運用ガイド 7.3.3 リリース登録後のジョブネット定義の状態」を参照してください。

注※3

計算で使用するジョブネットがジョブネットリリース機能を使用している場合,リリース先ユニットの「適用終了」状態の定義も処理対象となります。この定義のユニット総数も加算してください。なお,「適用終了」の定義のユニット総数は,「ルートジョブネット配下のユニット数×世代の最大保存日数の間に実施するリリース登録数」で見積もってください。

ジョブネット定義の状態については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 運用ガイド 7.3.3 リリース登録後のジョブネット定義の状態」を参照してください。

注※4

バックアップ強化機能を有効にしている場合だけ見積もる必要があります。

注※5

同時に複数の操作を実施する場合は,その合計値となります。

注意事項
  • このオペランドの指定値を大きい値に変更して,一度にデータベースの規模の目安以上のユニット数を操作すると,イベントログまたはsyslogにメッセージKFPS01220-Eを出力して組み込みDBが異常終了することがあります。そのため,一度に操作するユニット数を少なくするか,より大きい規模の組み込みDB環境の構築を検討してください。

    ユニット数の目安については,「23.2 データベース領域の見積もり」を参照してください。

  • このオペランドの指定値を大きい値に変更すると,変更した分だけ組み込みDBのメモリー使用量が増加します。そのため,値を変更する場合は事前にメモリーに余裕があることを確認してください。

    また,UNIXの場合で,このオペランドの指定値を大きい値に変更したときはシステムリソースを調整してください。調整が必要なシステムリソースについては,リリースノートを参照してください。

    このオペランドの指定値が小さ過ぎると,JP1/AJS3のアクセスがエラーリターンすることがあります。

  • パラメーターの設定値としては,2,000,000まで指定できますが,OSのメモリー管理によって連続した領域が確保できない場合は,組み込みDBの起動に失敗します。その場合は,連続した領域が確保できる値にチューニングしてください。

■ システム定義の変更方法

システム定義の変更方法を次に示します。

  1. JP1/AJS3サービスを停止する。

  2. 操作対象の組み込みDBの起動状態を確認する。

    ajsembdbstatus -s ust -id _JF0
  3. 操作対象の組み込みDBが起動している場合,組み込みDBの正常停止を行う。停止している場合,一度起動してから正常停止を行う。

    組み込みDBを起動する場合

    ajsembdbstart -id _JF0

    組み込みDBを正常停止する場合

    ajsembdbstop -id _JF0
  4. システム共通定義,またはシングルサーバ定義ファイルをテキストエディターで開く。

    問題が発生した場合に備えて,更新対象となるファイルのバックアップを取得してください。

  5. オペランドの値を変更する。

  6. 手順5で編集した内容を保存してファイルを閉じる。

  7. クラスタ構成の場合は,変更したシステム共通定義,またはシングルサーバ定義ファイルを待機系ホストにコピーする。

  8. JP1/AJS3サービスを開始する。

    このとき,組み込みDBも起動されます。

注※

-idオプションには,操作対象となる組み込みDBのセットアップ識別子を指定してください。Windowsで組み込みDBを起動する場合は,事前にJP1/AJS3 Database _JFnnは0〜9またはA〜Zのどれか)サービスを開始してください。

重要

システム共通定義,またはシングルサーバ定義の編集時に,文字やスペースが全角になっていたり,不要な改行やスペースを挿入したりすると,JP1/AJS3サービスの起動に失敗します。

(e) 組み込みDBインストール前の環境

構築する組み込みDBの構成に合わせて必要な環境の確認方法について説明します。

■ ディスク占有量の確認

ディスク占有量については,リリースノートを参照してください。

なお,WindowsでNTFSに組み込みDBをインストールする場合,組み込みDB運用ディレクトリ下のファイルを圧縮しないでください。このディレクトリを圧縮すると,組み込みDBは正常に動作しません。

■ メモリー所要量

メモリー所要量については,リリースノートを参照してください。

Windowsの場合は,仮想メモリーも確認します。仮想メモリーの確認手順を次に示します。

  1. Windowsの[コントロールパネル]で,[システム]をクリックする。

    [システム]ダイアログボックスが表示されます。

  2. [システムの詳細設定]をクリックする。

    [システムのプロパティ]ダイアログボックスが表示されます。

  3. [詳細設定]タブをクリックする。

  4. [パフォーマンス]ボックスの[設定]をクリックする。

    [パフォーマンス オプション]ダイアログボックスが表示されます。

  5. [詳細設定]タブをクリックする。

  6. [仮想メモリ]ボックスの[変更]をクリックする。

組み込みDB一つあたりに必要な仮想メモリーを次に示します。

ページングファイルサイズ=130メガバイト

実際に指定する値には,Windowsやほかのプログラムが使う容量を加えてください。仮想メモリーを変更した場合は,必ずWindowsを再起動してください。

注意事項

JP1/AJS3 - Viewの接続数や設定されているスケジューラーサービスの数によって,値は増加することがあります。

初期サイズには,同じドライブに連続した領域で使用できる値を設定してください。仮想メモリーを連続で使えない場合,組み込みDBがメモリー不足で異常終了することがあります。

■ カーネルパラメーターの確認

UNIXの場合は,必要に応じてカーネルパラメーターを変更する必要があります。カーネルパラメーターの見積もりについては,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(システム構築編) 3.2.5 カーネルパラメーターを見積もる」を参照してください。

(2) 運用方法

組み込みDBの具体的な運用方法として,次の項目について検討します。

(a) システムログの運用

システムログを使用して回復する場合は,次に示す運用方法があります。システムログを使用して回復しない場合,考慮する必要はありません。

アンロードログ運用

システムログファイルに出力されたデータを別ファイルに退避(アンロード)する運用方法です。アンロードは組み込みDBによって自動的に実行され,同時にシステムログファイルも再利用できる状態になります。しかし,アンロードログファイルを保存するためのディスク容量が必要となり,ディスクの空き容量については監視する必要があるほか,回復時には使用するアンロードログファイルを正しい順序で指定する必要があります。

(b) バックアップの取得タイミング

組み込みDBのバックアップを取得するタイミングには,次の二つがあります。

JP1/AJS3サービス停止中(ジョブ,ジョブネットを運用していないとき)

組み込みDBのバックアップを取得する際に,JP1/AJS3の運用を停止する必要があります。取得したバックアップデータだけでバックアップ時点へ回復できる,基本的なバックアップ方法です。

JP1/AJS3サービス稼働中(ジョブ,ジョブネットを運用しているとき)

JP1/AJS3サービス稼働中にバックアップを取得する場合は,次の二つの方法があります。

  • バックアップ強化機能を使用する

  • アンロードログ運用する

これらの方法で組み込みDBのバックアップを取得する際に,JP1/AJS3の運用を停止する必要はありません。ただし,アンロードログ運用の場合は,回復する際には取得したバックアップデータとともに,組み込みDBが出力しているアンロードログファイルが必要です。

なお,バックアップ強化機能を使用した運用とアンロードログ運用は,併用できません。

(c) バックアップからの回復点

組み込みDBのバックアップからの回復点は,次の二つです。

バックアップ取得時点

バックアップを取得した時点の状態へ回復します。バックアップ取得時点以降の運用内容は反映されません。

バックアップ取得後の最新の同期点

バックアップを取得した時点の状態に加えて,バックアップ時点以降の運用によるデータベースの更新内容も反映されるため,最新の状態まで回復できます。

(d) バックアップからの回復方法

バックアップからの回復方法を次に説明します。

バックアップデータだけ

バックアップ時に取得したバックアップデータだけで回復します。バックアップ取得時点の状態に回復できます。

バックアップデータとシステムログ

バックアップ時に取得したバックアップデータとともに,バックアップ時点以降に出力されたシステムログの情報を使用して回復します。バックアップ時点以降の運用によるデータベースの更新内容も反映されます。JP1/AJS3運用中に取得したバックアップからの回復は,この方法で回復します。

組み込みDBの運用方法を次の表に示します。

表23‒3 組み込みDBの運用方法

項番

運用方法

システムログの運用

バックアップ取得タイミング

バックアップからの回復点

バックアップからの回復方法

A

A-1

システムログ運用しない

JP1/AJS3サービス停止中

バックアップ取得時点

バックアップデータのみ

A-2

システムログ運用しない(バックアップ強化機能を使用する)

JP1/AJS3サービス稼働中

バックアップ取得時点

バックアップデータのみ

B

B-1

アンロードログ運用

JP1/AJS3サービス停止中

バックアップ取得時点

バックアップデータのみ

B-2

最新の同期点

バックアップデータとアンロードログ

B-3

JP1/AJS3サービス稼働中

運用方法の特徴を次の表に示します。この表に示す運用方法の特徴を考慮して表23-3から運用方法を選択してください。

表23‒4 各運用方法の特徴

項番

特徴

長所

短所

A

共通

システムログファイルの状態を監視する必要がありません。

バックアップからの回復点はバックアップ時点だけです。

A-1

セットアップ不要で運用できます。

バックアップ取得時にはJP1/AJS3サービスを停止する必要があります。

A-2

JP1/AJS3サービスの稼働中にバックアップを取得できます。

組み込みDBのセットアップ時に設定が必要です。

B

共通

  • システムログファイルの状態を監視する必要がありません。

  • 自動ログアンロード機能の動作状態を監視する必要があります。

  • アンロードログファイル作成ディレクトリを準備する必要があります。

B-1

  • システムログファイルに障害が発生しても,バックアップデータだけで回復できます。

  • バックアップからの回復点はバックアップ時点だけです。

  • バックアップ取得時にはJP1/AJS3サービスを停止する必要があります。

B-2

  • システムログファイルに障害が発生しても,バックアップデータだけで回復できます。

  • バックアップ取得時点以降の運用を反映した最新の状態に回復できます。

バックアップ取得時にはJP1/AJS3サービスを停止する必要があります。

B-3

  • バックアップ取得時にJP1/AJS3サービスを停止する必要がありません。

  • バックアップ取得時点以降の運用を反映した最新の状態に回復できます。

アンロードログファイルを失うと,該当するバックアップデータからの回復は一切できません。

注※

表23-3の項番に対応します。

バックアップおよびバックアップからの回復方法の詳細については,次に示す個所を参照してください。

  • マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(システム構築編) 5.2.5 バックアップ強化機能による組み込みDBのバックアップとリカバリー」

  • マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(システム構築編) 付録F.1(1) アンロードログ運用」

  • マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(システム構築編) 付録F.1(2) システムログを使用しない運用」

表23-3で選択した運用をする場合,組み込みDBの環境構築,組み込みDBのバックアップおよびバックアップからの回復で必要となるコマンドを次に示します。

  • ajsembdbbuildコマンド(組み込みDBの環境を構築する)

  • ajsembdbsetupコマンド(組み込みDBをセットアップする)

  • jajs_dbbackupコマンド(バックアップ強化機能が有効な環境でバックアップする)

  • jajs_dbrestoreコマンド(バックアップ強化機能が有効な環境でバックアップから回復する)

  • ajsembdbbackupコマンド(バックアップする)

  • ajsembdbrstrコマンド(バックアップから回復する)

jajs_dbbackupコマンドおよびjajs_dbrestoreコマンドは,バックアップ強化機能が有効な場合だけ使用できます。ajsembdbbackupコマンドおよびajsembdbrstrコマンドは,バックアップ強化機能が無効の環境で使用します。

表23-3で選択した運用でコマンドを実行するかどうかと,実行時に必要となるオプションを次の表に示します。

表23‒5 コマンドの指定オプション

項番

システムファイルの二重化

実行するコマンドおよびバックアップとリカバリーに関するオプション

ajsembdbbuild

(-bs,-br,-bl,-b)

ajsembdbsetup

(-b)

ajsembdbbackup

(-s)

ajsembdbrstr

(-ld,-l)

jajs_dbbackup

jajs_dbrestore

A

A-1

なし

なし

なし

なし

なし

A-2

-b

-b

B

B-1

-bs -bl

なし

なし

なし

B-2

-ldまたは-l

B-3

-s

-ldまたは-l

A

A-1

あり

A-2

B

B-1

-br -bl

なし

なし

なし

B-2

-ldまたは-l

B-3

-s

-ldまたは-l

(凡例)

−:該当する運用方法では使用できない。

○:該当する運用方法で使用できる。

注※

表23-3の項番に対応します。

ajsembdbbuildコマンドについては,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド」を,ajsembdbbackupコマンドおよびajsembdbrstrコマンドについては,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド」を参照してください。

(3) データ領域の使用状況の監視方法

データベースのメンテナンスを実行していない場合や,ユニット数および保存世代数がデータベースの規模の目安よりも多くなった場合には,データ領域の空き容量が少なくなります。データ領域の空きがなくなると,ジョブを実行できなくなるおそれがあります。空き容量がなくなる前に検知できるように,データ領域の使用状況を確認してください。

データ領域の使用状況の確認方法については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 運用ガイド 5.2.1 データベース使用状況の確認方法」を参照してください。

(4) 組み込みDBのセットアップ方法

組み込みDBは,JP1/AJS3のインストールやjajs_setup_clusterコマンドなどのセットアップコマンドの実行の延長で構築できます。この組み込みDBを使用する場合は,組み込みDBの高度なセットアップを実施する必要はありません。

JP1/AJS3でセットアップする組み込みDBの設定内容については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(システム構築編) 2.6.5 JP1/AJS3でセットアップされるデータベース設定」を参照してください。

JP1/AJS3でセットアップするデータベース設定とは異なる設定の組み込みDBを構築したい場合は,組み込みDBの高度なセットアップを実施します。

また,JP1/AJS3のインストール時に構築するセットアップ識別子_JF0など,すでに構築済みの組み込みDBの設定内容を変更したい場合は,組み込みDBの再セットアップを実施してください。組み込みDBの再セットアップについては,「23.4.1(6) 組み込みDBの再セットアップ」,「23.5.1(6) 組み込みDBの再セットアップ」(クラスタ構成(実行系)の場合)または「23.5.2(6) 組み込みDBの再セットアップ」(クラスタ構成(待機系)の場合)を参照してください。