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JP1 Version 12 JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(システム構築編)


8.5.2 JP1/AJS2 - ManagerからJP1/AJS3 - Managerへのバージョンアップ後のセットアップ方法

移行作業を実施する際は,物理ホスト,論理ホストの順に実施してください。

〈この項の構成〉

(1) 移行時の見積もり

移行時には一時ファイルを作成するため,移行前のスケジューラーサービスと同等の容量が必要です。移行時に作成された一時ファイルは,移行後に問題がないことを確認し,削除する必要があります。ファイルの格納場所については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド jajs_migrate」を参照してください。

また,移行後の環境について事前に見積もっておく必要があります。見積もりの詳細については,「3.2 システム性能を見積もる」を参照してください。

(2) 標準的なデータ移行手順

標準的なデータ移行作業の流れは次のとおりです。

図8‒2 データ移行作業の流れ(標準)

[図データ]

標準的なデータ移行作業の手順を次に示します。

注意事項

論理ホスト環境は,この手順では移行できません。論理ホスト環境の移行手順については,「(3) 高度な設定をする場合のデータ移行手順」,およびマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 2.2.3 JP1/AJS3シリーズプログラムをインストールする」(Windowsの場合)またはマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 12.2.2 インストール時の注意事項」(UNIXの場合)を参照してください。

  1. JP1/AJS3サービスを停止する。

    UNIX環境の場合,サービス停止後にajsshmdelコマンドを実行してください。

    ajsshmdelコマンドのパスは,「/opt/jp1ajs2/bin/ajsshmdel」です。

    実行例を次に示します。

    shの場合

    /opt/jp1ajs2/bin/ajsshmdel >/dev/null 2>&1

    cshの場合

    /opt/jp1ajs2/bin/ajsshmdel >&/dev/null

    なお,UNIXの場合は,サービス停止後にajsshmdelコマンドを実行しないでjajs_migrateコマンドを実行すると,メッセージKAVS0549-Eが出力され,コマンドが異常終了します。

  2. jajs_migrateコマンドを実行する。

    移行前のスケジューラーデータベースに組み込みDBを使用している場合は,組み込みDBを稼働状態にしたあと,jajs_migrateコマンドを実行してください。

    実行例を次に示します。

    jajs_migrate -convert -u 5

    jajs_migrateコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド jajs_migrate」を参照してください。

    注意事項

    • UNIXで移行前のスケジューラーデータベースに組み込みDBを使用している場合は,環境変数の設定が必要です。詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド jajs_migrate」の注意事項を参照してください。

    • jajs_migrateコマンドの正常終了後,警告メッセージが出力されていないか確認してください。警告メッセージが出力されている場合は,出力メッセージの対処方法に従ってください。

  3. JP1/AJS3サービスを起動する。

(3) 高度な設定をする場合のデータ移行手順

高度な設定をする場合のデータ移行作業の流れは次のとおりです。

図8‒3 データ移行作業の流れ(高度な設定)

[図データ]

高度な設定をする場合のデータ移行作業の手順を次に示します。

  1. JP1/AJS3サービスを停止する。

    UNIX環境の場合,サービス停止後にajsshmdelコマンドを実行してください。ajsshmdelコマンドのパスは,「/opt/jp1ajs2/bin/ajsshmdel」です。

    実行例を次に示します。

    shの場合

    /opt/jp1ajs2/bin/ajsshmdel >/dev/null 2>&1

    cshの場合

    /opt/jp1ajs2/bin/ajsshmdel >&/dev/null

    なお,UNIXの場合は,サービス停止後にajsshmdelコマンドを実行しないでjajs_migrateコマンドを実行すると,メッセージKAVS0549-Eが出力され,コマンドが異常終了します。

  2. ajscnvdbexportコマンドを実行し,データベース情報を退避する。

    実行例を次に示します。

    ajscnvdbexport -F AJSROOT1 -b D:\workdir

    移行前の組み込みDBに対して操作するため,移行前のスケジューラーデータベースに組み込みDBを使用している場合は,組み込みDBを稼働状態にしたあと,次の環境変数に設定を追加してからコマンドを実行してください。

    HP-UXの場合

    SHLIB_PATH=移行前の組み込みDBのインストール先ディレクトリ/client/lib

    SolarisまたはLinuxの場合

    LD_LIBRARY_PATH=移行前の組み込みDBのインストール先ディレクトリ/client/lib

    AIXの場合

    LIBPATH=移行前の組み込みDBのインストール先ディレクトリ/client/lib

    ajscnvdbexportコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド ajscnvdbexport」を参照してください。

  3. ajsembdbinstlコマンドを実行し,JP1/AJS3のデータベースをインストールする。

    実行例を次に示します。

    ajsembdbinstl -s "C:\Program Files\HITACHI\JP1AJS2\tools\AJS3DB" -id _JF0

    ajsembdbinstlコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド ajsembdbinstl」を参照してください。

    注意事項

    論理ホストに組み込みDBをインストールする場合,ajsembdbinstlコマンドの-idオプションには「_JF1」以降の値を指定してください。

  4. ajsembdbbuildコマンドを実行し,データベース環境を構築する。

    実行例を次に示します。

    ajsembdbbuild -s -d "D:\database\RDArea_JF0,D:\database\SYSArea_JF0" -p 22220 -i "C:\Program Files\HITACHI\JP1AJS2\embdb\_JF0" -id _JF0

    ajsembdbbuildコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド ajsembdbbuild」を参照してください。

    注意事項

    UNIX版の場合,該当ホスト上に初めて構築するデータベース環境(ajsembdbbuildコマンドの-iオプション指定値)は,/opt/jp1ajs2/embdb/_JF0に構築してください。

  5. ajsembdbsetupコマンドを実行し,データベース環境をセットアップする。

    実行例を次に示します。

    ajsembdbsetup -F AJSROOT1 -p 22220 -id _JF0 -ru s -convert

    ajsembdbsetupコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド ajsembdbsetup」を参照してください。

  6. ajscnvdbimportコマンドを実行し,データベース情報を移行する。

    実行例を次に示します。

    ajscnvdbimport -F AJSROOT1 -b D:\workdir

    ajscnvdbimportコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド ajscnvdbimport」を参照してください。

  7. jajs_migrateコマンドを実行する。

    実行例を次に示します。

    jajs_migrate -convert -S

    jajs_migrateコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド jajs_migrate」を参照してください。

    注意事項

    JP1/AJS3 - Managerをクラスタ構成で使用している場合は,すべての論理ホストに対してjajs_migrateコマンドを実行してください。

  8. JP1/AJS3サービスを起動する。

(4) jajs_migrateコマンドの再実行時の注意事項

jajs_migrateコマンドを再実行する場合,次について注意が必要です。

(5) 移行前の環境を削除する手順

移行前に組み込みDBまたはHiRDBをスケジューラーサービスのデータベースとして使用していた場合,移行完了後に必要に応じて削除する必要があります。各バージョンのマニュアルの手順に従ってデータベースをアンインストールしてください。

なお,UNIXの場合はajsembdbunsetコマンド実行したあとに次のコマンドを実行してください。

/opt/HiRDB_J/bin/pdesetup -u 組み込みDB運用ディレクトリ

(6) 移行前と移行後のデータベース

JP1/AJS3 - Managerが標準構成の場合,スケジューラーサービスのデータベースは組み込みDBに格納されます。

移行前にJP1/AJS2 - ManagerのスケジューラーサービスのデータベースとしてISAM,HiRDB,またはバージョン7のJP1/AJS2 - Managerで構築された組み込みDBを使用している場合,JP1/AJS3 - Managerのスケジューラーサービスのデータベースに移行すると,jajs_migrateコマンドが自動的に一つの組み込みDBに対して四つのスケジューラーサービスのデータを格納します。

移行前にバージョン8のJP1/AJS2 - Managerで構築された組み込みDBを使用している場合,JP1/AJS3 - Managerのスケジューラーサービスのデータベースに移行すると,一つの組み込みDBに対して複数のスケジューラーサービスのデータベースとして格納されている状態を引き継ぎます。

移行後のスケジューラーサービスのデータベースが格納される組み込みDBを変更したい場合は,「(3) 高度な設定をする場合のデータ移行手順」の手順を実行するか,またはjajs_migrateコマンドに-uオプションを指定して移行してください。

移行前と移行後のデータベースの構成例を次に示します。

(例1)移行前に単一のスケジューラーサービスで運用している場合

移行前

移行後

サービス名

DB種別

サービス名

セットアップ識別子

AJSROOT1

ISAM

AJSROOT1

_JF0

(例2)移行前に複数のスケジューラーサービスで運用している場合

移行前

移行後

サービス名

DB種別

サービス名

セットアップ識別子

AJSROOT1

ISAM

AJSROOT1

_JF0

AJSROOT2

ISAM

AJSROOT2

AJSROOT3

ISAM

AJSROOT3

AJSROOT4

ISAM

AJSROOT4

AJSROOT5

ISAM

AJSROOT5

_JF1

AJSROOT6

ISAM

AJSROOT6

AJSROOT7

ISAM

AJSROOT7

(例3)移行前に複数のスケジューラーサービスで運用している場合(ISAM,HiRDB,組み込みDB(V7)混在環境)

移行前

移行後

サービス名

DB種別

サービス名

セットアップ識別子

AJSROOT1

ISAM

AJSROOT1

_JF0

AJSROOT2

HiRDB

AJSROOT2

AJSROOT3

HiRDB

AJSROOT3

AJSROOT4

組み込みDB(V7)

AJSROOT4

AJSROOT5

組み込みDB(V7)

AJSROOT5

_JF1

AJSROOT6

ISAM

AJSROOT6

AJSROOT7

ISAM

AJSROOT7

(例4)移行前に複数のスケジューラーサービスで運用している場合(ISAM,組み込みDB(V8)混在環境)

移行前

移行後

サービス名

DB種別

サービス名

セットアップ識別子

AJSROOT1

ISAM

AJSROOT1

_JF1

AJSROOT2

組み込みDB(V8) _JAA

AJSROOT2

_JF0

(例5)移行前に複数のスケジューラーサービスで運用している場合(ISAM,HiRDB,組み込みDB(V7),組み込みDB(V8)混在環境)

移行前

移行後

サービス名

DB種別

サービス名

セットアップ識別子

AJSROOT1

ISAM

AJSROOT1

_JF2

AJSROOT2

組み込みDB(V8) _JA0

AJSROOT2

_JF0

AJSROOT3

HiRDB

AJSROOT3

_JF2

AJSROOT4

組み込みDB(V8) _JA0

AJSROOT4

_JF0

AJSROOT5

組み込みDB(V7)

AJSROOT5

_JF2

AJSROOT6

組み込みDB(V8) _JA1

AJSROOT6

_JF1

AJSROOT7

ISAM

AJSROOT7

_JF2

AJSROOT8

組み込みDB(V7)

AJSROOT8

_JF3

AJSROOT9

組み込みDB(V8) _JA1

AJSROOT9

_JF1

AJSROOTA

ISAM

AJSROOTA

_JF3

(7) バージョン8の組み込みDBから移行した場合のディスク占有量の見積もり

バージョン8の組み込みDBから移行した場合,移行方法によって次のディスク占有量が必要となります。

(a) 標準的な移行

移行時には,次のディスク占有量が必要となります。

(50 + (490 + a))*↑b/c↑ + d(単位:メガバイト)

a:jajs_migrateコマンドの-sオプションに指定した規模による変数

データベースの規模によって,次のどれかの値を代入します。

l:20,700

m:4,200

s:520(デフォルト値)

b:スケジューラーサービス数

c:jajs_migrateコマンドの-uオプションに指定した値(デフォルトは4)

d:移行前のすべてのスケジューラーサービスのデータベースサイズ
  • ISAMの場合:ISAMファイルの総サイズ

  • 組み込みDBの場合:ajsembdbbuildコマンドに指定した規模による変数

    データベースの規模によって,次のどれかの値を代入します。

    -l:1,600(デフォルト値)

    -m:800

    -s:300

    データベース領域を拡張している場合にはそのサイズも加算してください。

  • HiRDBの場合:HiRDB簡易セットアップスクリプトで作成されるサイズ

    ajshirdbsetupl:288

    ajshirdbsetupm:72

    ajshirdbsetups:18

    ajshirdbsetupsfm1:288

    データベース領域を拡張している場合にはそのサイズも加算してください。

なお,dに代入する値の分だけ,jajs_migrateコマンドの-Tオプションで指定するディレクトリがあるディスクを占有します。移行完了後,運用時には不要な情報となりますので削除してください。

(b) 高度な設定を行った移行の場合

高度な設定を行った移行では,ajsembdbbuildコマンドを実行する際に,移行前のデータベース容量や運用によって規模を決定する必要があります。

一つの組み込みDB環境を構築する際に必要な容量については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 23.4 組み込みDBの高度なセットアップ」を参照してください。