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JP1 Version 12 JP1/Automatic Job Management System 3 導入ガイド


10.2 リモートジョブネット

リモートジョブネットとは,自マネージャーホストで定義したジョブネットを転送して別のマネージャーホストで実行させるジョブネットです。リモートジョブネットを使うと,リモートジョブネットの下位にあるジョブネットおよびジョブの実行時のJP1/AJS3 - Managerの負荷を分散できます。

リモートジョブネットは,転送先のマネージャーホストで即時実行登録され,リモートジョブネット配下のユニットに設定されているスケジュール情報は無視されます。

なお,リモートジョブネットの転送先ホスト側では,定義内容の追加や変更はできません。また,転送元ホストでジョブネットの保存世代数を超えた場合は,自動的に削除されます。

リモートジョブネットの定義例を次に示します。

図10‒22 リモートジョブネットの定義例

[図データ]

この例のジョブネットを実行した場合の流れを次に示します。

  1. 標準ジョブAを実行する。

  2. 標準ジョブAが正常終了したら,リモートジョブネットAをJP1/AJS3 - Manager(2)のJP1/AJS3 - Managerサービスへ転送する。

    リモートジョブネットAは,転送先のJP1/AJS3 - Managerサービスでルートジョブネットとして即時実行登録されます。

  3. リモートジョブネットの標準ジョブX,標準ジョブY,および標準ジョブZを順に実行する。

  4. 標準ジョブZが終了し,リモートジョブネットAが正常終了したら,標準ジョブBを実行する。

なお,リモートジョブネットを使用しないでジョブネットを構築する場合,ジョブネット内の各ジョブが,実行先エージェントで実行されるようにジョブを作成します。この場合,ジョブネットの[詳細定義]ダイアログボックスで「実行ホスト」に実行先エージェントのホスト名を追加します。「実行ホスト」の指定が省略されている配下のジョブは,上位のジョブネットに指定された実行ホストで実行されます。

また,判定ジョブでファイルの有無を判断している場合は,ファイルの有無をリターンコードで判別できるようなスクリプトまたはバッチファイルを先行ジョブとしてエージェントで実行し,判定ジョブは終了コードで判断するように置き換えてください。

リモートジョブネットを運用する場合,次の注意点があります。これらの点を考慮した上でリモートジョブネットを使用してください。

注意事項
  • リモートジョブネットは転送先ホストで即時実行登録されて動作するため,リモートジョブネットの下にあるジョブネットにスケジュール情報を定義しても有効になりません。

  • リモートジョブネットの転送先ホストには,リモートジョブネット実行用のスケジューラーサービスを設定しておいてください。リモートジョブネットサービスはデフォルトスケジューラーサービスでも運用できますが,リモートジョブネット実行用のスケジューラーサービスと通常の業務で使用するサービスは別々のサービスにすることを推奨します。スケジューラーサービスの追加の詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 6.1.1 スケジューラーサービスの多重起動の設定」(Windowsの場合)またはマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 15.1.1 スケジューラーサービスの多重起動の設定」(UNIXの場合)を参照してください。

  • 転送先ホストには,転送元ホストのホスト名とジョブネットを実行登録したJP1ユーザーをユーザーマッピング定義に設定してください。同様に,転送元ホストには,転送先ホストのホスト名とジョブネットを実行登録したJP1ユーザーをユーザーマッピング定義に設定してください。

  • リモートジョブネットは,転送先ホストで即時実行登録されて動作します。即時実行登録処理が日をまたぐ場合,転送先ホストでジョブネットが「繰り越し未実行」状態になることがあります。リモートジョブネットの運用が日をまたぐおそれがある場合は,転送先ホストでリモートジョブネットを実行するスケジューラーサービスの環境設定パラメーターEXECDEFERに「twoday」(2日)または「unlimit」(無制限)を設定してください。

    環境設定パラメーターの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 20.4 スケジューラーサービス環境設定」を参照してください。

  • リモートジョブネットは,転送先ホスト上に,一意な名称のジョブグループを作成し,その配下にリモートジョブネットと同一名称のジョブネットを作成して実行されます。したがって,転送先ホストのジョブネットと転送元ホスト側のリモートジョブネットの対応付けを容易にするため,リモートジョブネットの名称はシステム内で一意な名称にすることを推奨します。

  • リモートジョブネットの転送先ホストを転送元ホストと同じホストにすると,通常転送先ホスト側で行う処理を転送元ホストで行うため,ジョブネットの実行に比べて性能が低下します。

  • リモートジョブネットは実行開始時にジョブネットの定義を転送するため,起動時のオーバーヘッドが大きく,リモートジョブネットの下位にあるジョブの数が数個程度の場合は,ジョブの定義で「実行ホスト」を指定した場合に比べると負荷が高くなります。

  • リモートジョブネットの下位にあるジョブに異常があっても,転送元ホスト側に異常が伝わるのは,リモートジョブネット全体が終了したときです。また,転送元ホスト側ではリモートジョブネットの下位にある個々の状態は監視できません。

  • 異常終了したジョブから再実行しても,リモートジョブネットは一つのジョブと同じように扱われるため,リモートジョブネットの途中からは再実行されません。

  • リモートジョブネットの状態は,リモートジョブネットを起動してから終了するまでの間だけで管理されます。そのため,リモートジョブネットの終了後に,リモートジョブネットの転送先ホスト上で,実行されたリモートジョブネット内のユニットを再実行や状態変更しても,転送元ホスト側には反映されません。

    リモートジョブネットの転送先ホスト上で,再実行などによってジョブネットを正常終了にしたあとに,リモートジョブネットの後続ユニットを続行させる場合は,転送元ホスト上で,リモートジョブネットの後続ユニットから再実行してください。

  • リモートジョブネット配下のユニットで,転送先ホストのJP1/AJS3 - ManagerまたはJP1/AJS2 - Managerでサポートしていない機能を使用していた場合,リモートジョブネットは異常検出終了となり,実行結果詳細に「KAVS0650-E ユニット定義パラメタファイル(ファイル名)の内容に誤りがあります(文番号:文番号)」が出力されます。この場合,リモートジョブネットの転送先ホストのJP1/AJS3 - ManagerまたはJP1/AJS2 - Managerのバージョンを,機能をサポートしているバージョンにして,再実行してください。

  • リモートジョブネットの転送先ホストで,リモートジョブネットによって作成されたジョブネットについて登録解除やジョブネットが定義されているスケジューラーサービスをコールドスタートすると,転送元ホストのリモートジョブネットとの関連が失われます。この場合,リモートジョブネットによって作成されたジョブグループは自動的に削除されないため,手動で削除してください。また,転送元ホストでリモートジョブネットを定義しているスケジューラーサービスをコールドスタートすると,転送先ホストで実行登録されたジョブネットは登録解除されないため,手動で登録解除してください。

  • リモートジョブネットによって作成されたジョブグループにJP1/AJS3 - Viewでアクセスしている状態で,転送元ホストでリモートジョブネットを登録解除したり,保存世代数を超えたりした場合,JP1/AJS3 - Viewでアクセスしているジョブグループは自動的に削除されません。ジョブグループが自動的に削除されない場合は,手動で削除してください。

  • リモートジョブネットを実行登録および登録解除すると,転送元ホストと転送先ホストで専用のプロセスが起動します。転送元ホストで同時に複数のリモートジョブネットを実行したり,保存世代数が多いリモートジョブネットの登録解除をしたり,同一の転送先ホストに対して複数のリモートジョブネットを実行したりすると,リソースが大量に消費されて負荷が高くなり,処理性能の低下やプロセス生成の失敗などの問題が発生しやすくなります。そのため,複数のリモートジョブネットを同時に実行しないように運用することを推奨します。

  • リモートジョブネットを実行登録および登録解除すると,転送元ホストと転送先ホストでユニットを操作するコマンドが内部的に実行されます。登録解除時には,保存世代数分のユニットを操作するコマンドが転送先ホストで同時に実行されます。JP1/AJS3の見積もりを行う場合は,これらを考慮してください。

  • リモートジョブネットを実行するスケジューラーサービスは,転送先ホストのJP1/AJS3 - Managerの環境設定パラメーターREMNETSERVICENAMEの設定に従います。