12.1.8 JP1/AJS3 - Viewで定義済みのユニットを編集して,編集前後の定義内容を比較したい
JP1/AJS3 - Viewで定義済みのユニットを編集したあとに,編集前後の定義内容を比較して,ユニット定義が正しく編集できたか確認したいことがあります。例えば,マスターとなるジョブネットをコピーして,別のジョブネットとして定義し直すような場合です。
JP1/AJS3 - Viewで,編集前後のユニット定義情報ファイルを出力し,適切な差分を採取する方法について説明します。
- 〈この項の構成〉
(1) 運用
JP1/AJS3 - Viewのユーザーがユニットの編集前後の差分を確認するには,ajsprintコマンドを実行して,ユニット定義情報ファイルを採取する必要があります。しかし,JP1/AJS3 - Viewのユーザーがマネージャーホストにログインしてコマンドを実行するとなると,マネージャーホストにログインする手間や権限が必要になります。権限がない場合,JP1/AJS3 - Managerの管理者にコマンドの実行を依頼する必要があります。
ajsprintコマンドを実行してユニット定義情報ファイルを採取できたとしても,出力される関連線情報には,差分が発生することがあります。これは,ajsprintコマンドの関連線情報の出力順が,ユニットIDの昇順で出力されるためです。
このような運用を,ある企業を例に説明します。
この企業には,営業部門および情報システム部門に,次のようなユーザーがいます。
ユーザーの所属部門 |
ユーザーの役割 |
---|---|
営業部門 |
ジョブ運用管理者 JP1/AJS3 - Viewを使って,営業部門で使用する業務を設計・構築・運用する。 |
情報システム部門 |
JP1/AJS3システム管理者 JP1/AJS3 - ManagerやJP1/AJS3 - Viewなど,JP1/AJS3システム全体を管理する。 |
営業部門では,ジョブネットのカスタマイズが必要となった場合に,次のような運用をしています。
-
営業部門の担当者は,業務のひな形として用意してあるマスター用ジョブネットJobnetMを,開発用ジョブグループの配下にコピーします。コピーしたジョブネットの名前は,JobnetCとします。
-
JobnetCの定義を編集します。
-
JobnetCのテスト完了後,営業部門の担当者は情報システム部門に,JobnetMとJobnetCのユニット定義情報ファイルの採取を依頼します。
-
情報システム部門の担当者は,マネージャーホストのOSにログインして,次のコマンドを実行します。
ajsprint -F AJSROOT1 /JobnetM > /tmp/ユニット定義情報_JobnetM.txt ajsprint -F AJSROOT1 /開発用/JobnetC > /tmp/ユニット定義情報_JobnetC.txt
採取したユニット定義情報ファイルは,営業部門に送付します。
-
営業部門の担当者は,差分採取ツールでユニット定義情報ファイルを比較し,変更個所に問題がないことを確認します。
このとき,関連線を編集していなくても,ユニット定義情報ファイルに出力される関連線情報に差分が発生することがあります。このような場合,問題がないか目視で確認します。
-
JobnetCを本番用ジョブグループにコピーして,実行登録します。
(2) 課題
「(1) 運用」で説明した方法には,次の二つの課題があります。
-
ユニット定義情報ファイルを採取する手間や労力を削減したい。
ユニット定義情報ファイルを採取するためには,営業部門が情報システム部門に作業を依頼する必要があり,大きな手間や労力が掛かります。
情報システム部門でも,依頼があるたびにマネージャーホストのOSにログインしたり,コマンドを実行したりする手間が発生します。
-
ajsprintコマンドの出力結果を比較したときに,編集前後の関連線情報の差分が適切に採取できるようにしたい。
ユニット定義情報ファイルに出力される関連線情報の出力順は,次のルールに従って決定されます。
-
後続ユニットのユニットIDの昇順
-
後続ユニットが同じ場合,先行ユニットのユニットIDの昇順
ユニットIDは,ユニット作成時の順番によって決定されます。ただし,ユニットをコピーして作成した場合は,配下のユニットは一括して作成されるため,ユニットIDはユニット名の昇順に振り直されます。そのため,JobnetMとJobnetCでは,関連線を編集していなくても,ユニット定義情報ファイルの関連線情報の出力順が異なります。
例えば,JobnetMにJobD,JobC,JobB,JobAの順にジョブを作成すると,ユニットIDは作成した順に割り振られます。
この場合,ユニット定義情報ファイルの関連線情報は,次のように出力されます。
ar=(f=JobD,t=JobC,seq); ar=(f=JobC,t=JobB,seq); ar=(f=JobA,t=JobB,seq); ar=(f=JobD,t=JobA,seq);
一方,JobnetMをコピーして作成したJobnetCでは,ユニットIDはユニット名の昇順に振り直されます。
したがって,JobnetCのユニット定義情報ファイルの関連線情報は,次のように出力されます。
ar=(f=JobD,t=JobA,seq); ar=(f=JobA,t=JobB,seq); ar=(f=JobC,t=JobB,seq); ar=(f=JobD,t=JobC,seq);
そのため,JobnetMとJobnetCのユニット定義情報ファイルを比較すると,関連線情報に意図しない差分が発生してしまいます。
-
(3) 解決方法
「(2) 課題」の各項目に対しての解決方法を説明します。
-
JP1/AJS3 - Viewからのコマンド実行機能を利用する。
JP1/AJS3 - Viewにajsprintコマンドを登録して,マネージャーホストに対して実行できます。コマンド実行結果は,JP1/AJS3 - Viewホストに出力できます。これによって,営業部門が情報システム部門に作業を依頼する手間や,情報システム部門がコマンドを実行する手間を削減できます。
-
ajsprintコマンドの,関連線情報の出力順序固定オプション(-sオプション)を利用する。
ajsprintコマンド実行時に-sオプションを指定すると,関連線情報がユニットIDの昇順ではなく,次のルールに従って出力されるようになります。
-
先行ユニットのユニット名の昇順
-
先行ユニット名が同一の場合は,後続ユニットのユニット名の昇順
そのため,JobnetMおよびJobnetCのユニット定義情報ファイルの関連線情報は,どちらも次のように出力されます。
ar=(f=JobA,t=JobB,seq); ar=(f=JobC,t=JobB,seq); ar=(f=JobD,t=JobA,seq); ar=(f=JobD,t=JobC,seq);
つまり,-sオプションを指定することで,JobnetMとJobnetCのユニット定義情報ファイルの関連線情報に,意図しない差分が発生しなくなります。
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(4) 設定例
JP1/AJS3 - Viewからajsprint -sコマンドを実行する手順について説明します。
基本的な流れは,次のとおりです。
- 情報システム部門の作業
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JP1/AJS3 - Managerに,JP1/AJS3 - Viewでのajsprintコマンドの実行許可を設定する。
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- 営業部門の作業
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JP1/AJS3 - Viewにajsprintコマンドを登録する。
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JP1/AJS3 - Viewからajsprintコマンドを実行する。
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次に,それぞれの部門での手順について説明します。
(a) 情報システム部門(JP1/AJS3 - Manager)の設定
情報システム部門(JP1/AJS3 - Manager)の設定手順を次に示します。この手順は初回だけ実施します。
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JP1/AJS3 - Viewから実行を許可するコマンドと,コマンドの実行を許可するJP1ユーザーを検討する。
次の2点を検討します。
-
実行を許可するコマンド
JP1/AJS3 - Viewから,どのコマンドを実行できるようにするかを検討します。ここでは,ajsprintコマンドの実行だけを許可します。
-
コマンドの実行を許可するJP1ユーザー
JP1/AJS3 - Viewからのコマンドの実行を,どのJP1ユーザーに許可するのかを検討します。コマンドの実行許可は,JP1ユーザー単位または全JP1ユーザー共通で設定します。
ここでは,営業部門用に用意されているJP1ユーザーeigyoにだけ,コマンドの実行を許可します。
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-
実行許可コマンド設定ファイルjajsExecutableCommandを作成し,編集する。
実行許可コマンド設定ファイルjajsExecutableCommandを作成し,JP1/AJS3 - Viewからの実行を許可するコマンドを記載します。
ここではajsprintコマンドだけを許可するので,実行許可コマンド設定ファイルは次のとおり記載します。
ajsprint
-
実行許可コマンド設定ファイルを適切な場所に格納する。
実行許可コマンド設定ファイルの格納先は,コマンドの実行をJP1ユーザー単位で許可するか,全JP1ユーザー共通で許可するかによって異なります。
マネージャーホストのOSがWindows Server 2016またはWindows Server 2012(物理ホスト)で,JP1/AJS3 - Managerのインストール先フォルダがデフォルトの場合,JP1ユーザーeigyoの実行許可コマンド設定ファイルは次の場所に格納します。
%ALLUSERSPROFILE%\Hitachi\JP1\JP1_DEFAULT\JP1AJS2\conf\profiles\(jajsExecutableCommand)\eigyo\
(b) 営業部門(JP1/AJS3 - View)の設定
営業部門(JP1/AJS3 - View)の設定手順を次に示します。
■ コマンドの登録
JP1/AJS3 - Viewにajsprint -sコマンドを登録します。この手順は初回だけ実施します。
コマンドの登録方法を次に示します。
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JP1ユーザーeigyoで,JP1/AJS3 - ViewからJP1/AJS3 - Managerにログインする。
-
[オプション]−[JP1/AJS3のコマンドの設定]を選択する。
[JP1/AJS3のコマンドの設定]ダイアログボックスが表示されます。
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[追加]をクリックする。
[JP1/AJS3のコマンドの登録]ダイアログボックスが表示されます。
-
[JP1/AJS3のコマンドの登録]ダイアログボックスの各項目を設定する。
- [JP1/AJS3のコマンドの登録]ダイアログボックスの入力例を次に示します。
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- [登録名]
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「ユニット定義情報ファイル出力」と入力し,[ポップアップメニューに追加]をチェックします。
- [コマンド]
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「ajsprint」を選択します。
- [コマンド引数]
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次のとおり入力します。
-F (SERVICE_NAME) -s yes (UNIT_FULL_NAME)
括弧付きの文字列は,変数を表します。[置換文字列]から挿入したい項目を選択し,[挿入]ボタンをクリックすると,変数が挿入されます。
- [出力ファイル名]
-
ajsprintコマンドを実行して出力される,ユニット定義情報ファイル名を入力します。ここでは,次のとおり入力します。
ユニット定義情報_(UNIT_NAME).txt
括弧付きの文字列は,変数を表します。[置換文字列]から挿入したい項目を選択し,[挿入]ボタンをクリックすると,変数が挿入されます。
-
[OK]ボタンをクリックする。
[JP1/AJS3のコマンドの登録]ダイアログボックスが閉じます。
[JP1/AJS3のコマンドの設定]ダイアログボックスに,登録した内容が表示されます。
-
[閉じる]ボタンをクリックする。
コマンドの設定を保存するかどうかを確認するメッセージが表示されます。
-
[はい]ボタンをクリックする。
設定が保存され,[JP1/AJS3のコマンドの設定]ダイアログボックスが閉じます。
■ コマンドの実行
登録したコマンドを実行して,JobnetMとJobnetCのユニット定義情報ファイルを採取します。なお,JobnetCは作成済みであるとします。
コマンドの実行方法を次に示します。
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JP1ユーザーeigyoで,JP1/AJS3 - ViewからJP1/AJS3 - Managerにログインする。
-
[JP1/AJS3 - View]ウィンドウ(メイン画面)のリストエリアでJobnetMを選択し,右クリックでポップアップメニューから[JP1/AJS3のコマンド]−[ユニット定義情報ファイル出力]を選択する。
JP1/AJS3 - Viewホストに,JobnetMのユニット定義情報ファイルが出力されます。
JobnetMのユニット定義情報ファイルの出力先および出力ファイル名を次に示します。
%ALLUSERSPROFILE%\Hitachi\JP1\JP1_DEFAULT\JP1AJS2V\command\eigyo\ユニット定義情報_JobnetM.txt
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JobnetCについて,手順2と同じ操作をする。
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差分採取ツールでJobnetMとJobnetCのユニット定義情報ファイルを比較し,差分に問題がないことを確認する。
(5) マニュアル記載個所
項目 |
詳細項目 |
参照個所 |
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概要 |
実行許可コマンド設定ファイルjajsExecutableCommand |
マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(システム構築編) 4.5.4 JP1/AJS3 - Viewから実行するJP1/AJS3のコマンドについて検討する」 |
設定手順 |
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操作方法 |
コマンドを登録する |
マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 操作ガイド 10.4.1 JP1/AJS3のコマンドを登録する」 |
コマンドを実行する |
マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 操作ガイド 10.4.2 JP1/AJS3のコマンドを実行する」 |
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画面 |
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