4.3.1 Windows版でのSAP NetWeaver7.0以降の場合
(1) インストールを始める前に
インストールおよびセットアップを開始する前に前提条件,必要な情報,および注意事項について説明します。
(a) 前提条件
PFM - Agent for Enterprise Applicationsをクラスタシステムで使用する場合,次に示す前提条件があります。
■ クラスタシステム
次の条件が整っていることを確認してください。
-
クラスタシステムがクラスタソフトによって制御されていること。
また,次に示すエラー通知の抑止を設定してください。
- Microsoftへのエラー報告を抑止する(実行系・待機系)
-
Windowsでは,アプリケーションエラーが発生すると,Microsoftへエラーを報告するダイアログボックスが表示されます。このダイアログボックスが表示されるとフェールオーバーできないおそれがあるため,エラー報告を抑止する必要があります。
- Windows Server 2008,Windows Server 2012の場合
-
-
[コントロールパネル]−[システムとセキュリティ]−[アクションセンター]−[メンテナンス]を選択する。
-
[問題のレポートの解決策を確認]で[設定]をクリックする。
-
[報告された問題の解決策をいつ確認するかを選択します]ダイアログボックスで,[解決策を確認しない]を選択する。
-
[OK]ボタンをクリックする。
-
(b) 物理ホスト名
次の条件が整っていることを確認してください。
-
物理ホスト名は,システムの中でユニークであること。
(2) インストールから運用開始までの流れ
PFM - Agent for Enterprise Applicationsをインストールおよびセットアップする流れを説明します。
PFM - ManagerおよびPFM - Web Consoleのインストールおよびセットアップの手順は,マニュアル「JP1/Performance Management 設計・構築ガイド」の,インストールとセットアップについて説明している章を参照してください。
(3) インストール
実行系ノードおよび待機系ノードにPFM - Agent for Enterprise Applicationsをインストールします。
インストール先はローカルディスクです。共有ディスクにはインストールしないでください。
インストール手順は非クラスタシステムの場合と同じです。インストール手順については,「3.1.3 Windows版のインストール手順」を参照してください。
(4) セットアップ
ここでは,PFM - Agent for Enterprise ApplicationsをSAP NetWeaver7.0以降で運用するための,セットアップについて説明します。
は使用する環境によって必要になるセットアップ項目,またはデフォルトの設定を変更する場合のオプションのセットアップ項目を示します。
(a) PFM - Agent for Enterprise Applicationsの登録
PFM - ManagerおよびPFM - Web Consoleを使ってPFM - Agentを一元管理するために,PFM - ManagerおよびPFM - nsoleにPFM - Agent for Enterprise Applicationsを登録する必要があります。
PFM - Managerのバージョンが08-50以降の場合,PFM - Agentの登録は自動で行われるため,ここで説明する手順は不要です。ただし,PFM - Managerのリリースノートに記載されていないデータモデルバージョンのPFM - Agentは手動で登録する必要があります。なお,PFM - Agent for Enterprise Applicationsのデータモデルのバージョンについては,「付録I バージョン互換」を参照してください。
PFM - Agentの登録の流れを次に示します。
- 注意
-
-
PFM - Agentの登録は,インスタンス環境を設定する前に実施してください。
-
すでにPFM - Agent for Enterprise Applicationsの情報が登録されているPerformance Managementシステムに,新たに同じバージョンのPFM - Agent for Enterprise Applicationsを追加した場合,PFM - Agentの登録は必要ありません。
-
バージョンが異なるPFM - Agent for Enterprise Applicationsを,異なるホストにインストールする場合,古いバージョン,新しいバージョンの順でセットアップしてください。
-
PFM - Managerと同じホストにPFM - Agentをインストールした場合,jpcconf agent setupコマンドが自動的に実行されます。共通メッセージログに「KAVE05908-I エージェント追加セットアップは正常に終了しました」と出力されるので,結果を確認してください。コマンドが正しく実行されていない場合は,コマンドを実行し直してください。コマンドの実行方法については,マニュアル「JP1/Performance Management リファレンス」のコマンドの章を参照してください。
-
■ PFM - Agent for Enterprise Applicationsのセットアップファイルをコピーする
PFM - Agent for Enterprise ApplicationsをインストールしたホストにあるセットアップファイルをPFM - ManagerおよびPFM - Web Consoleをインストールしたホストにコピーします。手順を次に示します。
-
PFM - Web Consoleが起動されている場合は,停止する。
-
PFM - Agentのセットアップファイルをバイナリーモードでコピーする。
ファイルが格納されている場所およびファイルをコピーする場所を次の表に示します。
表4‒2 コピーするセットアップファイル PFM - Agentの
セットアップファイル
コピー先
PFM
プログラム名
OS
コピー先フォルダ
またはディレクトリ
インストール先フォルダ\setup\jpcagtmw.EXE
PFM - Manager
Windows
PFM - Managerのインストール先フォルダ\setup
インストール先フォルダ\setup\jpcagtmu.Z
UNIX
/opt/jp1pc/setup/
インストール先フォルダ\setup\jpcagtmw.EXE
PFM - Web Console
Windows
PFM - Web Consoleのインストール先フォルダ\setup
インストール先フォルダ\setup\jpcagtmu.Z
UNIX
/opt/jp1pcwebcon/setup/
■ PFM - Managerホストでセットアップコマンドを実行する
PFM - ManagerでPFM - Agent for Enterprise Applicationsをセットアップするための次のコマンドを実行します。
jpcconf agent setup -key EAP
- 注意
-
コマンドを実行するローカルホストのPerformance Managementのプログラムおよびサービスが完全に停止していない状態でjpcconf agent setupコマンドを実行した場合,エラーが発生することがあります。その場合は,Performance Managementのプログラムおよびサービスが完全に停止したことを確認したあと,再度jpcconf agent setupコマンドを実行してください。
PFM - ManagerホストにあるPFM - Agentのセットアップファイルは,この作業が終了したあと,削除してもかまいません。
(b) PFM - Agent for Enterprise Applicationsで使用するSAPユーザーの作成
PFM - Agent for Enterprise Applicationsはパフォーマンス情報を収集するために,SAP社の通信プロトコルであるRFCを使用して,SAPシステム側に定義されている外部管理インターフェースを実行します。そのため,PFM - Agent for Enterprise Applicationsが使用するユーザーをあらかじめSAPシステム側に用意しておく必要があります。
ここでは,SAPシステム側に作成するSAPユーザーのユーザータイプ,パスワード,権限について説明します。
■ ユーザータイプ
PFM - Agent for Enterprise Applicationsで使用するSAPユーザーには,次のタイプのユーザーが使用できます。
-
ダイアログ(Dialog)
-
システム(System)
-
通信(Communication)
-
サービス(Service)
■ パスワードに指定できる文字
SAPユーザーのパスワードは,半角数字(0〜9),半角英字(a〜z, A〜Z),および次の半角記号で定義してください。
! @ $ % & / ( ) = ? ' ` * + ~ # - _ . : { [ ] } < > |
■ 必要な権限
ユーザーには次の権限(権限オブジェクト)を設定する必要があります。
-
ユーザーが汎用モジュールにRFC接続するための権限(S_RFC)
-
外部管理インターフェースを使用するための権限(S_XMI_PROD)
各権限の値として,次の表に示す値またはすべての項目に「*」を指定したビルトイン権限値(S_RFC_ALLやS_XMI_ADMIN)を割り当ててください。
権限項目 |
説明 |
値 |
---|---|---|
RFC_TYPE |
保護されるRFCオブジェクトのタイプ |
FUGR(汎用グループ) |
RFC_NAME |
保護されるRFC名 |
* |
ACTVT |
アクティビティ |
16(実行) |
権限項目 |
説明 |
値 |
---|---|---|
EXTCOMPANY |
外部管理ツールの会社名 |
HITACHI |
EXTPRODUCT |
外部管理ツールのプログラム名 |
JP1 |
INTERFACE |
インターフェースID |
* |
(c) インスタンス環境の設定
PFM - Agent for Enterprise Applicationsで監視するSAPシステムのインスタンス情報を設定します。インスタンス情報の設定は,PFM - Agentホストで実施します。
設定するインスタンス情報を次の表に示します。セットアップの操作を始める前に,次の情報をあらかじめ確認してください。SAPシステムのインスタンス情報の詳細については,SAPシステムのマニュアルを参照してください。
項目 |
説明 |
設定できる値 |
デフォルト値 |
---|---|---|---|
SID |
監視対象となるSAPシステムID |
8バイト以内の半角文字列 |
− |
SERVER |
監視対象となるSAPインスタンス名(トランザクションコードSM51で確認できる,ダイアログサービスを持つSAPインスタンス名) |
20バイト以内の半角文字列 |
jpcconf inst setupコマンドの-instで指定したインスタンス名 |
ASHOST |
接続先アプリケーションサーバのホスト名(トランザクションコードSM51で確認できるSAPローカルホスト名) |
100バイト以内の半角文字列 |
ローカルホスト名 |
SYSNR |
SAPシステムのシステム番号を指定する。 |
2バイト以内の半角数字 |
「00」 |
CLIENT |
SAPユーザーが属するクライアント名(接続先ダイアログインスタンスに割り当てられているシステム番号) |
3バイト以内の半角数字 |
「000」 |
USER |
SAPユーザー名 |
12バイト以内の半角文字列 |
− |
EXTPWD |
SAPシステムへの接続に,拡張パスワードを使用するかどうかを指定する。 |
YまたはNで指定する。
|
「Y」 |
PASSWD |
SAPユーザーのパスワード |
|
− |
DELAYCONNECT |
SAPシステムにいつ接続するかを指定する。 |
YまたはNで指定する。
|
「N」 |
Store Version※ |
使用するStore バージョンを指定する。Storeバージョンについては「3.6.2 Store バージョン2.0への移行」を参照してください。 |
{1.0 | 2.0} |
2.0 |
- (凡例)
-
−:なし
- 注※
-
PFM - Agent for Enterprise Applications,および同一ホスト上のPFM - BaseまたはPFM - Managerが08-10以降で,初めてインスタンス環境の設定を行う場合に必要となる設定です。
- 注意
-
-
インスタンス環境を設定していない場合,PFM - Agent for Enterprise Applicationsのサービスを起動できません。
-
インスタンス環境を構築するには,jpcconf inst setupコマンドを使用します。インスタンス環境の構築手順を次に示します。
-
サービスキーおよびインスタンス名を指定して,jpcconf inst setupコマンドを実行する。
例えば,PFM - Agent for Enterprise Applicationsのインスタンス名o246bciSD500のインスタンス環境を構築する場合,次のように指定してコマンドを実行します。
jpcconf inst setup -key EAP -inst o246bciSD500
PFM - Agent for Enterprise Applicationsの場合,インスタンス名は任意ですが,管理のしやすさを考慮し,監視対象とするSAPシステムのインスタンス名と紐づくようにしてください。SAPシステムのインスタンスには,通常,「ホスト名_SAPシステムID_システム番号」という形式の名称が付けられています。
ただし,jpcconf inst setupコマンドでは"_"は指定できません。例えば,SAPシステムのインスタンス名が"o246bci_SD5_00"の場合,PFM - Agent for Enterprise Applicationsのインスタンス名を"o246bciSD500"としてください。
-
SAPシステムのインスタンス情報を設定する。
表4-5に示した項目を,コマンドの指示に従って入力してください。各項目とも省略はできません。デフォルトで表示されている値を,項目の入力とする場合はリターンキーだけを押してください。
すべての入力が終了すると,インスタンス環境が構築されます。構築されるインスタンス環境を次に示します。
-
インスタンス環境のフォルダ構成
次のフォルダ下にインスタンス環境が構築されます。
-
物理ホスト運用の場合:インストール先フォルダ\agtm
構築されるインスタンス環境のフォルダ構成を次に示します。
表4‒6 インスタンス環境のフォルダ構成 フォルダ名・ファイル名
説明
agent
インスタンス名
jpcagt.ini
Agent Collectorサービス起動情報ファイル
jpcagt.ini.model※
Agent Collectorサービス起動情報ファイルのモデルファイル
jpcMcollect.ini
SAP通信プロセスの環境パラメーター設定ファイル
jr3alget.ini
CCMS Alert Monitor Command(PD_ALMX)レコード用の環境パラメーター設定ファイル
jr3slget.ini
System Log Monitor Command(PD_SLMX)レコード用の環境パラメーター設定ファイル
log
ログファイル格納フォルダ
store
インスタンス名
jpcsto.ini
Agent Storeサービス起動情報ファイル
jpcsto.ini.model※
Agent Storeサービス起動情報ファイルのモデルファイル
*.DAT
データモデル定義ファイル
dump
エクスポート先フォルダ
backup
バックアップ先フォルダ
import
インポート先フォルダ(Storeバージョン2.0の場合)
log
ログファイル格納フォルダ
partial
部分バックアップ先フォルダ(Storeバージョン2.0の場合)
STPD
PDレコードタイプのパフォーマンスデータ格納フォルダ(Storeバージョン2.0の場合)
STPI
PIレコードタイプのパフォーマンスデータ格納フォルダ(Storeバージョン2.0の場合)
STPL
PLレコードタイプのパフォーマンスデータ格納フォルダ(Storeバージョン2.0の場合)
-
- 注※
-
インスタンス環境を構築した時点の設定値に戻したいときに使用します。
-
インスタンス環境のサービスID
インスタンス環境のサービスIDは,プロダクトID,機能ID,インスタンス番号,インスタンス名,ホスト名をつないだ文字列になります。例えばサービスID「MA1o246bciSD500[host01]」は,次のインスタンス環境を表します。
-
プロダクトID:M
-
機能ID:A
-
インスタンス番号:1
-
インスタンス名:o246bciSD500
-
ホスト名:host01
サービスIDについては,マニュアル「JP1/Performance Management 設計・構築ガイド」の,付録を参照してください。
-
-
インスタンス環境のWindowsのサービス名
インスタンス環境のWindowsのサービス名は次のようになります。
-
Agent Collectorサービス:PFM - Agent for R/3 インスタンス名
-
Agent Storeサービス:PFM - Agent Store for R/3 インスタンス名
Windowsのサービス名については,マニュアル「JP1/Performance Management 設計・構築ガイド」の,付録を参照してください。
-
(d) ネットワークの設定
Performance Managementを使用するネットワーク構成に応じて,変更する場合にだけ必要な設定です。
ネットワークの設定では次の2つの項目を設定できます。
-
IPアドレスを設定する
Performance Managementを複数のLANに接続されたネットワークで使用するときに設定します。複数のIPアドレスを設定するには,jpchostsファイルにホスト名とIPアドレスを定義します。設定したjpchostsファイルはPerformance Managementシステム全体で統一させてください。
詳細についてはマニュアル「JP1/Performance Management 設計・構築ガイド」の,インストールとセットアップについて説明している章を参照してください。
-
ポート番号を設定する
Performance Managementが使用するポート番号を設定できます。運用での混乱を避けるため,ポート番号とサービス名は,Performance Managementシステム全体で統一させてください。
ポート番号の設定の詳細についてはマニュアル「JP1/Performance Management 設計・構築ガイド」の,インストールとセットアップについて説明している章を参照してください。
(e) ログのファイルサイズ変更
Performance Managementの稼働状況を,Performance Management独自のログファイルに出力します。このログファイルを「共通メッセージログ」と呼びます。共通メッセージログは,デフォルトで2,048キロバイトのファイルが2ファイル使用されます。このファイルサイズを変更したい場合にだけ,必要な設定です。
詳細については,マニュアル「JP1/Performance Management 設計・構築ガイド」の,インストールとセットアップについて説明している章を参照してください。
(f) パフォーマンスデータの格納先の変更
PFM - Agent for Enterprise Applicationsで管理されるパフォーマンスデータを格納するデータベースの保存先,バックアップ先,エクスポート先,部分バックアップ先またはインポート先のフォルダを変更したい場合にだけ,必要な設定です。
パフォーマンスデータは,デフォルトで,次の場所に保存されます。
保存先 |
フォルダ名 |
---|---|
データベースの保存先 |
インストール先フォルダ\agtm\store\インスタンス名\ |
バックアップ先 |
インストール先フォルダ\agtm\store\インスタンス名\backup\ |
エクスポート先 |
インストール先フォルダ\agtm\store\インスタンス名\dump\ |
部分バックアップ先(Storeバージョン2.0の場合) |
インストール先フォルダ\agtm\store\インスタンス名\partial\ |
インポート先(Storeバージョン2.0の場合) |
インストール先フォルダ\agtm\store\インスタンス名\import\ |
詳細については,「3.6.1 パフォーマンスデータの格納先の変更」を参照してください。
(g) PFM - Agent for Enterprise Applicationsの接続先PFM - Managerの設定
PFM - Agentがインストールされているホストで,そのPFM - Agentを管理するPFM - Managerを設定します。接続先のPFM - Managerを設定するには,jpcconf mgrhost defineコマンドを使用します。
- 注意
-
-
同一ホスト上に,複数のPFM - Agentがインストールされている場合でも,接続先に指定できるPFM - Managerは,1つだけです。PFM - Agentごとに異なるPFM - Managerを接続先に設定することはできません。
-
PFM - AgentとPFM - Managerが同じホストにインストールされている場合,接続先PFM - ManagerはローカルホストのPFM - Managerとなります。この場合,接続先のPFM - ManagerをほかのPFM - Managerに変更できません。
-
手順を次に示します。
-
Performance Managementのプログラムおよびサービスを停止する。
セットアップを実施する前に,ローカルホストでPerformance Managementのプログラムおよびサービスが起動されている場合は,すべて停止してください。サービスの停止方法については,マニュアル「JP1/Performance Management 運用ガイド」の,サービスの起動と停止について説明している章を参照してください。
jpcconf mgrhost defineコマンド実行時に,Performance Managementのプログラムおよびサービスが起動されている場合は,停止を問い合わせるメッセージが表示されます。
-
接続先のPFM - Managerホストのホスト名を指定して,jpcconf mgrhost defineコマンドを実行する。
例えば,接続先のPFM - Managerがホストhost01上にある場合,次のように指定します。
jpcconf mgrhost -host host01
(h) 動作ログ出力の設定
PFMサービスの起動・停止時や,PFM - Managerとの接続状態の変更時に動作ログを出力したい場合に必要な設定です。動作ログとは,システム負荷などのしきい値オーバーに関するアラーム機能などと連動した動作情報の履歴を出力するログ情報です。
設定方法については,「付録J 動作ログの出力」を参照してください。