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JP1 Version 10 JP1/IT Service Level Management


3.3.2 監視対象サービスの処理ごとのサービス性能の異常の予兆検知と対処の支援の設定例

ここでは,「1.1.2 サービスの状況を監視します」の監視対象サービスの処理ごとのサービス性能の異常の予兆検知と対処の支援の例について説明します。

監視対象サービスの処理ごとのサービス性能の異常の予兆検知と対処の支援について,ある条件に基づいて具体的にどのように検討・設定するとよいかを,例を用いて説明します。

〈この項の構成〉

(1) 前提条件

この設定例の条件は,次のとおりです。

(2) パス,クエリ,Cookieの情報からのWebアクセス条件の定義とシステム要件からのしきい値の定義

JP1/ITSLMでのWebトランザクションの設定に向けた作業

すべてのサービスの監視者は,サービスの委託元の担当者を経て,監視する処理のパス,クエリ,およびCookieの情報をサービスの保守SEから入手しました。また,監視する処理のシステム要件を基に,監視項目のしきい値を検討しました。入手したパス,クエリ,およびCookieの情報とシステム要件から定義した,Webアクセス条件,セッション条件および監視項目のしきい値を次に示します。

  • Webアクセス条件

    Webアクセス条件

    パス

    クエリ

    Cookie

    Webアクセス条件1

    /top.html

    q=.*

    time=.*

    session=.*

    exp=10

    Webアクセス条件2

    /middle.html

    q=.*

    session=.*

    exp=10

    Webアクセス条件3

    /bottom.html

    q=.*

    session=.*

    exp=10

    Webアクセス条件4

    example/index.html

    q=.*

    qqq=1

    session=.*

  • セッション条件

    クエリ条件:q

    Cookie条件:session

  • 監視項目のしきい値

    平均応答時間:3,000ミリ秒

    スループット:800件/秒

    エラー率:1.0%

また,監視項目については,しきい値での監視だけでなく監視対象サービスの処理ごとのサービス性能の異常を予兆段階で検知・対処する必要があったため,外れ値検知もすることにしました。

作業の結果

Webトランザクション名を「Transaction1」と決めて,定義したWebアクセス条件を設定することにしました。また,Transaction1にWebアクセス条件を設定したあと,監視項目を設定することにしました。

(3) Webトランザクションの設定

JP1/ITSLMでの作業

すべてのサービスの監視者は,サービスの保守SEから入手した情報を基に,Webトランザクションを設定することにしました。WebトランザクションのWebアクセス条件は,自動検出したURIから取り込む方法で設定します。設定は次の流れで実行しました。

  1. JP1/ITSLM - Managerにログインして[設定]画面の[Webトランザクション設定]エリアを表示します。

    [設定]画面の[Webトランザクション設定]エリアを次に示します。

    図3‒33 [設定]画面の[Webトランザクション設定]エリア(設定例)

    [図データ]

    この図では,サービスグループ「Group01」のサービス「Service01」に対してWebトランザクションを設定しようとしています。

  2. [サービス一覧]でGroup01のService01を選択後,Webトランザクションの各項目を設定するために,[新規登録]ボタンをクリックして[Webトランザクション登録]画面を表示します。

    [Webトランザクション登録]画面を次に示します。

    図3‒34 [Webトランザクション登録]画面(設定例)

    [図データ]

    ここでは,Webトランザクション名として「Transaction1」と入力しています。

  3. Webトランザクション「Transaction1」のWebアクセス条件を設定するために,[条件追加]ボタンをクリックして[Webアクセス条件追加]画面を表示します。

  4. 自動検出したURIからWebアクセス条件を取り込むため,「検出開始」ボタンをクリックします。検出結果の例を次に示します。

    図3‒35 検出されたURIの例

    [図データ]

    図の3行目のURIを編集して,Webアクセス条件を取り込むことにします。パスが「top.html」,クエリが「q=1」,「time=2」となっているため,パスはそのままでクエリを「q=.*」,「time=.*」に変更して,Webアクセス条件1と同じにします。

  5. CookieもWebアクセス条件1と同じにするため,3行目のURIを選択した状態で,[Cookie編集]ボタンをクリックします。

    [Cookie編集]画面を次に示します。

    図3‒36 [Cookie編集]画面(設定例)

    [図データ]

    図のCookieは「index=0」「area=000」となっているため,テキストボックスを編集し,Webアクセス条件1と同じ「session=.*」「exp=10」となるように変更して,[OK]ボタンをクリックします。

  6. [URI候補]3行目がWebアクセス条件1と一致するURIとなったことを確認して,3行目のURIを選択した状態で[∨ URI候補取り込み]ボタンをクリックします。

    [Webアクセス条件定義]に,3行目のURIと同じパス,クエリ,Cookieの情報が表示されます。

    パス,クエリ,Cookieの情報が表示された[Webアクセス条件追加]画面の例を次の図に示します。

    図3‒37 パス,クエリ,Cookieの情報が表示された[Webアクセス条件追加]画面の例

    [図データ]

    なお,この状態で[∧ Webアクセス条件適用]ボタンをクリックすると,入力した[Webアクセス条件定義]が目的のWebアクセスと一致するかどうかを確認できます。

  7. Webアクセス条件定義が入力されたら,[条件追加]ボタンをクリックします。

    Webアクセス条件1がTransaction1に追加されます。

  8. Webアクセス条件1の追加の完了後,残りのWebアクセス条件についても同様に追加します。4つのWebアクセス条件の追加が完了したら,[閉じる]ボタンをクリックして[Webトランザクション登録]画面に戻ります。

    Webアクセス条件の追加が完了した[Webトランザクション登録]画面を次に示します。

    図3‒38 Webアクセス条件の追加が完了した[Webトランザクション登録]画面(設定例)

    [図データ]

  9. Webアクセス条件を追加したあと,Webアクセスが同一ユーザーだと識別するために,セッション条件を指定します。[クエリ条件候補]から「q」を選択して[クエリ条件]に移動し,[Cookie条件候補]から「session」を選択して[Cookie条件]に移動します。

    セッション条件を指定したら,[登録]ボタンをクリックしてTransaction1を登録します。

作業の結果

Transaction1が登録できたため,すべてのサービスの監視者はTransaction1について監視項目を設定することにしました。

(4) 監視項目の設定

JP1/ITSLMでの作業

すべてのサービスの監視者は,[設定]画面の[監視設定]エリアを表示し,Webトランザクションの監視項目を設定することにしました。

Webトランザクションの監視項目の設定例を次の図に示します。

図3‒39 Webトランザクションの監視項目の設定例

[図データ]

この図では,サービスグループ「Group01」のサービス「Service01」の「Transaction1」に対して監視項目を設定しています。監視項目の設定内容は,次のとおりです。

[SLO監視設定]
表3‒13 [SLO監視設定]での設定内容例

チェックボックス

項目名

しきい値

チェックボックス

傾向監視

チェックする

平均応答時間

3000

チェックする

5

チェックする

スループット

800

チェックする

5

チェックする

エラー率

1.0

(凡例)

−:設定できません。

 

[SLO監視設定]では,SLOの定義内容をしきい値として設定した上で,平均応答時間とスループットについて監視対象サービスのサービス性能の異常をいち早く察知するために,傾向監視を設定しました。

また,サービス性能の異常発生時には,別の担当者にも連絡を取って対処しなければならないため,少なくとも5時間前までにサービス性能の異常を察知する必要がありました。そのため,傾向監視の設定時間は5時間としました。

[予兆検知設定]
表3‒14 [予兆検知設定]での設定内容例

ベースライン算出日数

開始日数

チェックボックス

項目名

感度

相関項目

20

5

チェックする

平均応答時間

スループット

チェックする

スループット

チェックする

エラー率

(凡例)

−:設定できません。

 

[予兆検知設定]では,できるだけふだんのサービス性能に基づいた監視をするために,20日分のサービス性能でベースラインを算出することにしました。ただし,監視は5日後から開始したいと要望があったため,開始日数は5日としました。

また,すべての監視項目について外れ値検知をすることにした上で,ベースラインから離れたサービス性能が得られた場合に,敏感に検知できるよう感度を高く設定することにしました。さらに,複数の監視項目を組み合わせた外れ値検知も実施して,外れ値検知の精度を上げるよう設定しました。

作業の結果

「Service01」に対して,Webトランザクション「Transaction1」の設定と監視項目の設定が完了したため,「Service01」の監視と合わせて「Transaction1」の監視を実行することにしました。監視の実行例については,「4.6.2 監視対象サービスの処理ごとのサービス性能の異常の予兆検知と対処の支援の実行例」を参照してください。