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JP1 Version 10 JP1/Base 運用ガイド


2.5.3 JP1イベントが大量発生しているエージェントからのイベント転送をマネージャーから抑止する

JP1イベントが大量発生しているエージェントからのイベント転送をマネージャーから抑止できます。エージェントのイベント転送をマネージャーから抑止するには,マネージャー上のJP1/Baseのイベント転送抑止コマンド(jevagtfwコマンド)を使用します。なお,jevagtfwコマンドの詳細については,「15. コマンド」の「jevagtfw」を参照してください。

イベント転送抑止コマンド(jevagtfwコマンド)の主な機能を次に示します。

これらの機能によって,エージェントからのイベント転送をマネージャーから制御できるため,大量発生イベントに対して迅速に対処できるようになります。

この機能を使用するには,マネージャーホスト(JP1/IM - Managerインストールホスト)のJP1/Baseのバージョンが,10-50以降である必要があります。また,抑止対象となるエージェントホストのJP1/Baseのバージョンは,08-00以降である必要があります。

この機能でイベント転送を抑止できるエージェントの上限数は,10,000台です。なお,構成定義の管理対象でないエージェントのイベント転送も抑止できます。

〈この項の構成〉

(1) 抑止対象となるJP1イベントについて(jevagtfwコマンドによるイベント転送抑止の場合)

jevagtfwコマンドによるイベント転送抑止で,抑止対象となるJP1イベントは,転送設定ファイル(forward)の設定に従って転送されるJP1イベントです。

次に示すJP1イベントは,抑止対象になりません。

(2) イベント転送抑止を設定する

jevagtfwコマンドの-sオプションを使用して,抑止対象のエージェントのイベント転送設定を,転送を抑止する設定にします。また,抑止対象のエージェントから転送されてくるJP1イベントを,マネージャーのイベントDBに格納しないで破棄する設定にします。

jevagtfwコマンドによるイベント転送抑止の設定の流れを次の図に示します。

図2‒23 jevagtfwコマンドによるイベント転送抑止の設定の流れ

[図データ]

  1. jevagtfwコマンドを-sオプションを指定して実行する。

  2. 抑止対象となるエージェントからの受信イベントを破棄する。

  3. エージェントの転送設定ファイル(forward)の情報をバックアップする。

  4. イベント転送抑止用の転送設定ファイル(forward_suppressファイルまたは任意の転送抑止定義ファイル)をエージェントへ送信して,転送設定ファイル(forward)を更新する。※1

  5. 更新された転送設定ファイル(forward)をリロードして適用する。※2

  6. 転送設定ファイル(forward)に従って,イベント転送を抑止する。

注※1 通信エラーによってイベント転送抑止用の転送設定ファイル(forward_suppressファイルまたは任意の転送抑止定義ファイル)の送信に失敗した場合,イベント転送抑止の処理を中止します。エージェントの転送設定ファイル(forward)は,コマンド実行前の状態と変わりません。

注※2 更新された転送設定ファイル(forward)の適用に失敗した場合,バックアップした転送設定ファイル(forward_backup)をエージェントへ送信して適用(リストア)します。なお,そのリストアに失敗した際は,次のメッセージを出力します。

KAJP1434-E ホスト名へのforwardファイルのリストアに失敗しました (file=ファイル名)

(3) イベント転送抑止を解除する

jevagtfwコマンドの-rオプションを使用して,エージェントのイベント転送抑止を解除します。jevagtfwコマンドによるイベント転送抑止の解除の流れを次の図に示します。

図2‒24 jevagtfwコマンドによるイベント転送抑止の解除の流れ

[図データ]

  1. jevagtfwコマンドを-rオプションを指定して実行する。

  2. 受信イベントの破棄を解除する。

  3. エージェントの転送設定ファイル(forward)と抑止時に送信したイベント転送抑止用の転送設定ファイル(forward_suppressまたは任意の転送抑止定義ファイル)の内容を比較する。

    比較した結果,差分が生じた場合はイベント転送抑止の解除処理を中止します。

  4. 抑止時にバックアップした転送設定ファイル(forward_backup)をエージェントへ送信して,転送設定ファイル(forward)を更新する。

  5. 更新された転送設定ファイル(forward)をリロードして適用する。

  6. 転送設定ファイル(forward)に従って,イベント転送を再開する。

イベント転送抑止中に転送設定ファイル(forward)の設定を変更した場合

イベント転送抑止を解除する際に,転送設定ファイル(forward)の設定が変更されているかどうかチェックします。転送設定ファイル(forward)の設定が変更されていた場合,次に示すエラーメッセージを出力して,イベント転送抑止の解除処理を中止します。

KAJP1415-E ホスト名の転送抑止用のforwardファイルの内容が抑止時と異なります
KAJP1432-E ホスト名のイベント転送抑止の解除に失敗しました

この場合,次に示すどちらかの対処が必要になります。

  • イベント転送抑止を強制的に解除する(jevagtfwコマンドに-rおよび-fオプションを指定して実行する)。

    転送設定ファイル(forward)の設定をイベント転送抑止前の設定に戻しても問題ない場合,強制的に解除してください。

  • マネージャーだけイベント転送抑止を解除する(jevagtfwコマンドに-rおよび-mオプションを指定して実行する)。

    イベント転送抑止中に変更した転送設定ファイル(forward)の設定を継続したい場合は,マネージャーだけイベント転送抑止を解除します。エージェントの転送設定ファイル(forward)は,イベント転送抑止前の設定に戻りません。この場合は,マネージャーが保持している抑止時にバックアップした転送設定ファイル(forward_backup)の設定内容と比較して,必要な定義が漏れていないかどうか確認してください。

(4) イベント転送抑止状態を確認する

jevagtfwコマンドの-lオプションを使用して,イベント転送抑止中の各エージェントの抑止状態を確認できます。確認できる情報を次に示します。

(5) イベント転送抑止の継続を通知する

jevagtfwコマンドによるイベント転送抑止によって,イベント転送が抑止されていることを通知するJP1イベントを発行できます。イベント転送抑止の状態が一定期間継続すると次に示すメッセージとJP1イベント(00003D05)を発行します。

KAJP1087-W jevagtfwコマンドによるイベント転送抑止が累計抑止時間秒間継続しています (server=ホスト名)

通知の有無および通知間隔は,イベントサーバ設定ファイル(conf)で設定します。詳細については,「16. 定義ファイル」の「イベントサーバ設定ファイル」を参照してください。

システムの日時変更による影響

システムの日時を変更した場合,イベント転送抑止の継続通知の動作に次に示す影響があります。

  • システムの日時を進めた場合,本来の間隔よりも短い間隔でイベント転送抑止の継続通知が発生します。

  • システムの日時を戻した場合,イベント転送抑止の継続通知が遅延します。

(6) jevagtfwコマンドによるイベント転送抑止で使用するファイルおよびディレクトリ

jevagtfwコマンドによるイベント転送抑止では,イベント転送抑止用の転送設定ファイル(forward_suppres)やエージェントごとの抑止情報をマネージャーで管理します。jevagtfwコマンドによるイベント転送抑止で使用するファイルおよびディレクトリについて説明します。

格納場所

jevagtfwコマンドによるイベント転送抑止で使用するファイルおよびディレクトリは,イベントサーバ設定ファイル(conf)や転送設定ファイル(forward)と同様に,イベントサーバインデックスファイル(index)で指定したディレクトリの配下に格納されます。初期設定の格納場所を次に示します。

Windowsの場合
インストール先フォルダ\conf\event\servers\default
UNIXの場合
/etc/opt/jp1base/conf/event/servers/default
ファイルおよびディレクトリ構成

jevagtfwコマンドによるイベント転送抑止で使用するファイルおよびディレクトリの構成を,次の図に示します。

図2‒25 jevagtfwコマンドによるイベント転送抑止で使用するファイルおよびディレクトリの構成

[図データ]

ファイルおよびディレクトリの説明

jevagtfwコマンドによるイベント転送抑止で使用するファイルおよびディレクトリの一覧を次の表に示します。

表2‒2 jevagtfwコマンドによるイベント転送抑止で使用するファイルおよびディレクトリの一覧

ファイルまたはディレクトリ

説明

/suppress/forward_suppress

イベント転送抑止用の転送設定ファイルです。

イベント転送抑止時に,エージェントへ送信します。初期設定では,次の内容(コメント)が設定されています。

# The manager has suppressed forwarding of events by this agent.
# Check with the administrator of the manager before editing this file.

記述形式は,転送設定ファイル(forward)と同じです。転送設定ファイル(forward)の記述形式については,「16. 定義ファイル」の「転送設定ファイル」を参照してください。

/suppress/forward_suppress.model

イベント転送抑止用の転送設定ファイル(forward_suppress)のモデルファイルです。

/suppress/転送抑止定義ファイル名

ユーザーが任意に設定する転送抑止定義ファイルです。

エージェントごとに異なる転送抑止設定をしたい場合,任意のファイル名の転送抑止定義ファイルを用意して,jevagtfwコマンドの-sオプションでファイル名を指定します。

/suppress/statdb.bin

抑止状態を管理するバイナリファイルです。

/suppress/エージェントのホスト名

エージェントホストごとの抑止情報を格納するディレクトリです。

このディレクトリは,jevagtfwコマンドでイベント転送の抑止が成功したときに作成されます。ユーザーが削除しないかぎり保持されます。

/suppress/エージェントのホスト名/forward_suppress

イベント転送抑止時にエージェントに送信したイベント転送抑止用の転送設定ファイルの設定情報です。

イベント転送抑止の解除時に,このファイルの内容とエージェントの転送設定ファイルの内容を比較します。

/suppress/エージェントのホスト名/forward_backup

イベント転送抑止時にエージェントから取得した転送設定ファイルのバックアップ情報です。

イベント転送抑止の解除時に,このファイルの内容をエージェントの転送設定ファイルに再設定します。

/suppress/エージェントのホスト名/log

イベント転送の抑止および抑止解除を記録するログファイルです。logファイルが64KBを超えた場合,ファイル名をlog.oldに変更して,新規にlogファイルを作成します。

/suppress/エージェントのホスト名/log.old

注※ イベント転送抑止時に,エージェントの転送設定ファイルに1行当たり1,023バイトを超える定義(無効な定義)があった場合,1,024バイト以降の情報は削除されてバックアップされます。イベント転送抑止の解除時には,1行当たり1,024バイト以降の情報が削除された転送設定が再設定されます。そのため,1行当たり1,023バイトを超えて無効だった定義が,1,023バイト以内になることで有効な定義になるおそれがあります。

機種依存文字の使用について

次に示すファイルには機種依存文字を使用しないでください。コメント行も同様です。

  • suppress/forward_suppress

  • suppress/任意ファイル名

これらのファイルは,イベント転送抑止時にエージェントへ送信されます。その際に機種依存文字を使用していると,文字化けや文字の欠落が発生するおそれがあります。文字化けや文字の欠落が発生した場合,イベント転送抑止の解除時にエラー(KAJP1415-E)で,イベント転送抑止の解除に失敗します。

KAJP1415-E ホスト名の転送抑止用のforwardファイルの内容が抑止時と異なります