Hitachi

ノンストップデータベース HiRDB Version 10 システム運用ガイド(UNIX(R)用)


26.3.9 パブリッククラウド環境でHAモニタを使用する場合に関する準備

ここでは,次のパブリッククラウド環境を使用している場合にこの項をお読みください。

〈この項の構成〉

(1) 動作環境

(a) Amazon Web Services環境上にクラスタ構成を適用する場合

次の製品を用意する必要があります。

レプリケーションソフトウェアを使用する場合
  • HAモニタ

  • DRBD(Distributed Replicated Block Device)

また,各Amazon EC2インスタンスごとに次のストレージを配置する必要があります。

  • Amazon EBS(Amazon Elastic Block Store)

共有ディスクを使用する場合
  • HAモニタ

また,各インスタンスから次のストレージを共有する必要があります。

  • EBSマルチアタッチを使用したAmazon EBS(Amazon Elastic Block Store)

(b) Microsoft Azure環境上にクラスタ構成を適用する場合

次の製品を用意する必要があります。

レプリケーションソフトウェアを使用する場合
  • HAモニタ

  • DRBD(Distributed Replicated Block Device)

また,各Azure VMごとに次のストレージを配置する必要があります。

  • Azure Storage

共有ディスクを使用する場合
  • HAモニタ

また,次のストレージを配置する必要があります。

  • Azure共有ディスクを使用したAzure Storage

注※

各インスタンスからAzure共有ディスクを共有してください。Azureマネージドディスクのローカル冗長ストレージ(LRS)だけ使用できます。

(c) OCI環境上にクラスタ構成を適用する場合

次の製品を用意する必要があります。

  • HAモニタ

また,各インスタンスから次のストレージを共有する必要があります。

  • ブロック・ボリューム

(2) クラスタ構成概要

Amazon Web Services環境上及びMicrosoft Azure環境上にレプリケーションソフトウェアを使用してクラスタ構成を適用する場合の概要を次の図に示します。

図26‒72 Amazon Web Services環境上のレプリケーションソフトウェアを使用したクラスタ構成概要図

[図データ]

図26‒73 Microsoft Azure環境上のレプリケーションソフトウェアを使用したクラスタ構成概要図

[図データ]

〔説明〕

業務処理中の実行系に障害が発生すると,待機系に障害の発生が通知されて系が切り替わり,待機系が実行系になって業務処理を続行します。

実行系のストレージ(Amazon EBS又はAzure Storage)に対して更新すると,DRBDは更新内容を待機系に送信し,待機系のストレージにレプリケーションします。そのため,実行系の障害によって系が切り替わった場合,障害発生直前の状態から業務を続行できます。障害が発生して系が切り替わった場合は,レプリケーションするノード間で同期が取れているかどうかを確認して待機系を起動してください。もし,同期が取れていない場合は再同期処理を実施し,同期がとれたことを確認した上で待機系を起動してください。同期状況の確認,及び同期処理の手順については,DRBDのマニュアルを参照してください。

注※

同期がとれていない状態で,既に待機系を起動している場合は待機系をいったん停止した上で,再同期処理を実施してください。その後,同期がとれたことを確認した上で待機系を起動してください。

Amazon Web Services環境上に共有ディスクを使用してクラスタ構成を適用する場合の概要を次の図に示します。

図26‒74 Amazon Web Services環境上の共有ディスクを使用したクラスタ構成概要図

[図データ]

〔説明〕

業務処理中の実行系に障害が発生すると,待機系に障害の発生が通知されて系が切り替わり,待機系が実行系になって業務処理を続行します。

OCI環境上にクラスタ構成を適用する場合の概要を次の図に示します。

図26‒75 OCI環境上のクラスタ構成概要図

[図データ]

〔説明〕

業務処理中の実行系に障害が発生すると,待機系に障害の発生が通知されて系が切り替わり,待機系が実行系になって業務処理を続行します。

(3) パブリッククラウド環境上のIPアドレスの構成について

パブリッククラウド環境でクラスタ構成を構築する場合,IPアドレスは次の構成をサポートします。

表26‒63 パブリッククラウドの系切り替えでサポートするIPアドレスの構成

パブリッククラウド

IPアドレスを引き継ぐ構成

IPアドレスを引き継がない構成

IPアドレスを引き継がない(クライアント接続用のIPアドレスだけを引き継ぐ)構成

Amazon Web Services

Microsoft Azure

Oracle Cloud Infrastructure

(凡例)

○:サポートします。

−:サポートしません。

注※

HiRDBサーバのIPアドレスを引き継ぐ系切り替え構成を前提とするマルチスタンバイ構成を含みます。

Amazon Web Services環境ではVIP制御又はEIP制御によってIPアドレスを引き継ぐ構成をサポートします。VIP制御又はEIP制御によってIPアドレスを引き継ぐ構成の設定は,マニュアル「高信頼化システム監視機能 HAモニタ パブリッククラウド編」を参照してください。

Microsoft Azure環境では次のどちらかの機能とHAモニタのLANの状態設定ファイルを使用することで,IPアドレスを引き継がない(クライアント接続用のIPアドレスだけを引き継ぐ)構成をサポートします。Azureロードバランサー制御を使用する場合の固有の設定は「Microsoft Azure環境でAzureロードバランサー制御を使用する場合の設定」を参照してください。DNS名制御を使用する場合の固有の設定は「Microsoft Azure環境でDNS名制御を使用する場合の設定」を参照してください。

OCI環境ではHAモニタのLANの状態設定ファイルを使用することで,IPアドレスを引き継ぐ構成もIPアドレスを引き継がない(クライアント接続用のIPアドレスだけを引き継ぐ)構成もサポートします。LANの状態設定ファイルはHAモニタが提供しているOCI用シェルスクリプトのOCI用のLANの状態設定ファイルを使用してください。設定の詳細はマニュアル「高信頼化システム監視機能 HAモニタ パブリッククラウド編」を参照してください。

(4) DRBDに関する設定項目

DRBDを使用する場合にお読みください。

DRBDを設定するにあたり,HiRDBに関連するオペランドの指定値について説明します。なお,詳細については,DRBDのマニュアルを参照してください。設定したDRBDのリソース名はHAモニタの設定項目に指定します。

DRBDコマンドでDRBDリソースを有効化した後,deviceオプションに指定したデバイス(/dev/drbd1など)にHiRDBファイルシステム領域を作成してください。

すべてのHiRDBファイルシステム領域を作成した後,DRBDの初期同期を実施し,レプリケーションするノード間でデータを一致させてください。

(a) DRBD設定ファイルの指定例

DRBD設定ファイルの指定例を次に示します。

●/etc/drbd.d/global_common.conf

global {
  usage-count no;
}
common {
  disk {
    on-io-error detach;
  }
  options {
    on-no-data-accessible io-error;
  }
net {
    protocol C;
  }
}

●/etc/drbd.d/drbd01.res(リソース名::drbd01,2ノード構成の場合)

resource drbd01 {
  volume 0 {
    device    /dev/drbd1;
    disk      /dev/xvdf1;
    meta-disk internal;
  }
  on HiRDB-host1 {
    address   10.1.1.31:7789;
  }
  on HiRDB-host2 {
    address   10.1.2.32:7789;
  }
}

●/etc/drbd.d/drbd01.res(リソース名::drbd01,3ノード構成の場合)

resource drbd01 {
  volume 0 {
    device    /dev/drbd1;
    disk      /dev/xvdf1;
    meta-disk internal;
  }
  on HiRDB-host1 {
    address   10.1.1.31:7789;
    node-id   0;
  }
  on HiRDB-host2 {
    address   10.1.2.32:7790;
    node-id   1;
  }
  on HiRDB-host3 {
    address   10.1.2.33:7791;
    node-id   2;
  }
  connection-mesh {
    hosts HiRDB-host1 HiRDB-host2 HiRDB-host3
  }
}

(b) disk-barrier,disk-flushes,disk-drainオプション

DRBDのデフォルト値を推奨します。

なお,すべてのオプションを無効にすると,書き込み順序が保証されないため,すべてのオプションを無効にしないでください。

(c) on-io-errorオプション

detachを指定します。

(d) on-no-data-accessibleオプション

io-errorを指定します。

(e) protocolオプション

B,又はCを指定します。

(f) allow-two-primariesオプション

このオプションは指定しないでください。

(g) deviceオプション

DRBDでレプリケーションするブロックデバイス(指定例では/dev/drbd1)を指定します。

(h) diskオプション

DRBDのデバイスを構成するブロックデバイス(指定例では/dev/xvdf1)を指定します。複数のブロックデバイスを使用する場合は,UUIDなどOS再起動後に同じパス名となる値を指定してください。

(i) host-nameオプション

レプリケーション対象のホスト名(指定例ではHiRDB-host1,HiRDB-host2など)を指定します。

(j) addressオプション

レプリケーション対象のIPアドレス,及び任意のポート番号を指定します。

(5) HAモニタに関する設定項目(sysdef定義ファイル)

HAモニタを設定するにあたり,HiRDBに関連するオペランドの指定値について説明します。

なお,そのほかのオペランドや詳細については,次のマニュアル,又は該当する箇所を参照してください。

(a) public_cloudオペランド

useを指定してください。

(6) HAモニタに関する設定項目(servers定義ファイル)

HAモニタを設定するにあたり,HiRDBに関連するオペランドの指定値について説明します。

なお,そのほかのオペランドや詳細については,次のマニュアル,又は該当する箇所を参照してください。

(a) rep_deviceオペランド

DRBDを使用する場合,「DRBDに関する設定項目」でHiRDBファイルシステム領域を作成したレプリケーションディスクを指定しているDRBDリソース名(「DRBDに関する設定項目」の指定例ではdrbd01)を指定してください。

(b) diskオペランド

HAモニタによるディスクのアクセス制御をする場合に指定してください。

HAモニタによるディスクのアクセス制御を行わない(diskオペランドを指定しない)場合は,「共有ディスクのアクセス制御」を参照して必要なオペランドを設定してください。

(7) Microsoft Azure環境でAzureロードバランサー制御を使用する場合の設定

Microsoft Azure環境でAzureロードバランサー制御を使用してクラスタ構成を構築する場合に固有な設定について説明します。

なお,ここに明記されていないHiRDB以外の設定や各設定項目の詳細は次のマニュアルを参照してください。

(a) Azureロードバランサーに関する設定項目

Azureロードバランサーの設定項目に指定するHiRDBのIPアドレス及びポートなどは次のとおりです。各項目の詳細については,Microsoft Azureのマニュアルを参照してください。

表26‒64 Azureロードバランサーに指定する項目の値

項目

指定値

フロントエンドIP構成のIPアドレス

HiRDBクライアントからロードバランサーに接続するための任意のIPアドレス

バックエンドプールの仮想マシン及びIPアドレス

HiRDBサーバを配置する仮想マシンと,そのIPアドレス

負荷分散規則のポート

通常接続又はFESホストダイレクト接続の場合

pd_name_portオペランドの指定値,又はpdunitオペランドの-pオプションの指定値

高速接続の場合

pd_service_portオペランドの指定値,又はpd_scd_portオペランドの指定値,又はpdunitオペランドの-sオプションの指定値

負荷分散規則のバックエンドポート

同上

負荷分散規則のフローティングIP

無効

(b) HAモニタに関する設定項目(LANの状態設定ファイル)

HAモニタの「LANの状態設定ファイル」のLB_IPADDRシェル変数を次のように設定してください(IPアドレスを設定しないようにしてください)。

 LB_IPADDR[n]=""
 (nは0以上の整数)

なお,マニュアル「高信頼化システム監視機能 HAモニタ パブリッククラウド編」ではIPアドレスを設定するように記載されていますが,HiRDBの系切り替えの場合は負荷分散規則のフローティングIPを無効に設定して使用しますので,上記のとおり設定してください。

(c) HiRDBクライアントに関する設定項目

HiRDBサーバへの接続方式ごとに指定するHiRDBクライアントの環境変数を次の表に示します。

表26‒65 HiRDB接続に関連する環境変数の値(HiRDBの接続方式が通常接続の場合)

環境変数

指定値

PDHOST

HiRDB/シングルサーバの場合

シングルサーバを配置したサーバマシンに対応するAzureロードバランサーのフロントエンドIP構成のIPアドレス又はホスト名

HiRDB/パラレルサーバの場合

システムマネジャユニットを配置したサーバマシンに対応するAzureロードバランサーのフロントエンドIP構成のIPアドレス又はホスト名

PDNAMEPORT

HiRDB/シングルサーバの場合

pd_name_portオペランドの指定値,又はシングルサーバのpdunitオペランドの-pオプションの指定値

HiRDB/パラレルサーバの場合

pd_name_portオペランドの指定値,又はシステムマネジャユニットのpdunitオペランドの-pオプションの指定値

表26‒66 HiRDB接続に関連する環境変数の値(HiRDBの接続方式がFESホストダイレクト接続の場合)

環境変数

指定値

PDHOST

システムマネジャユニットを配置したサーバマシンに対応するAzureロードバランサーのフロントエンドIP構成のIPアドレス又はホスト名,又はPDFESHOSTを設定している場合はPDFESHOSTと同じ値

PDFESHOST

フロントエンドサーバユニットを配置したサーバマシンに対応するAzureロードバランサーのフロントエンドIP構成のIPアドレス又はホスト名

PDNAMEPORT

pd_name_portオペランドの指定値,又はPDFESHOST(指定がない場合はPDHOST)で接続先としたユニットのpdunitオペランドの-pオプションの指定値

PDSERVICEGRP

フロントエンドサーバのサーバ名

表26‒67 HiRDB接続に関連する環境変数の値(HiRDBの接続方式が高速接続の場合)

環境変数

指定値

PDHOST

HiRDB/シングルサーバの場合

シングルサーバを配置したサーバマシンに対応するAzureロードバランサーのフロントエンドIP構成のIPアドレス又はホスト名

HiRDB/パラレルサーバの場合

システムマネジャユニットを配置したサーバマシンに対応するAzureロードバランサーのフロントエンドIP構成のIPアドレス又はホスト名,又はPDFESHOSTを設定している場合はPDFESHOSTと同じ値

PDFESHOST

フロントエンドサーバユニットを配置したサーバマシンに対応するAzureロードバランサーのフロントエンドIP構成のIPアドレス又はホスト名

PDNAMEPORT

HiRDB/シングルサーバの場合

pd_name_portオペランドの指定値,又はシングルサーバのpdunitオペランドの-pオプションの指定値

HiRDB/パラレルサーバの場合

pd_name_portオペランドの指定値,又はPDFESHOST(指定がない場合はPDHOST)で接続先としたユニットのpdunitオペランドの-pオプションの指定値

PDSERVICEPORT

pd_service_portオペランドの指定値,又はpd_scd_portオペランドの指定値,又はpdunitオペランドの-sオプションの指定値

PDSERVICEGRP

HiRDB/シングルサーバの場合

シングルサーバのサーバ名

HiRDB/パラレルサーバの場合

フロントエンドサーバのサーバ名

PDSRVTYPE

"PC"

(8) Microsoft Azure環境でDNS名制御を使用する場合の設定

Microsoft Azure環境でDNS名制御を使用してクラスタ構成を構築する場合の,HiRDBクライアントに関する設定項目について説明します。

なお,ここに明記されていないHiRDB以外の設定や各設定項目の詳細は次のマニュアルを参照してください。

(a) HiRDBクライアントに関する設定項目

HiRDBサーバへの接続方式ごとに指定するHiRDBクライアントの環境変数を次の表に示します。

表26‒68 HiRDB接続に関連する環境変数の値(HiRDBの接続方式が通常接続の場合)

環境変数

指定値

PDHOST

HiRDB/シングルサーバの場合

Azure DNSに登録されている,シングルサーバのFQDN

HiRDB/パラレルサーバの場合

Azure DNSに登録されている,システムマネジャユニットのFQDN

PDNAMEPORT

HiRDB/シングルサーバの場合

pd_name_portオペランドの指定値,又はシングルサーバのpdunitオペランドの-pオプションの指定値

HiRDB/パラレルサーバの場合

pd_name_portオペランドの指定値,又はシステムマネジャユニットのpdunitオペランドの-pオプションの指定値

表26‒69 HiRDB接続に関連する環境変数の値(HiRDBの接続方式がFESホストダイレクト接続の場合)

環境変数

指定値

PDHOST

Azure DNSに登録されている,システムマネジャのFQDN,又はPDFESHOSTを設定している場合はPDFESHOSTと同じ値

PDFESHOST

Azure DNSに登録されている,フロントエンドサーバのFQDN

PDNAMEPORT

pd_name_portオペランドの指定値,又はPDFESHOST(指定がない場合はPDHOST)で接続先としたユニットのpdunitオペランドの-pオプションの指定値

PDSERVICEGRP

フロントエンドサーバのサーバ名

表26‒70 HiRDB接続に関連する環境変数の値(HiRDBの接続方式が高速接続の場合)

環境変数

指定値

PDHOST

HiRDB/シングルサーバの場合

Azure DNSに登録されている,シングルサーバのFQDN

HiRDB/パラレルサーバの場合

Azure DNSに登録されている,システムマネジャのFQDN,又はPDFESHOSTを設定している場合はPDFESHOSTと同じ値

PDFESHOST

Azure DNSに登録されている,フロントエンドサーバのFQDN

PDNAMEPORT

HiRDB/シングルサーバの場合

pd_name_portオペランドの指定値,又はシングルサーバのpdunitオペランドの-pオプションの指定値

HiRDB/パラレルサーバの場合

pd_name_portオペランドの指定値,又はPDFESHOST(指定がない場合はPDHOST)で接続先としたユニットのpdunitオペランドの-pオプションの指定値

PDSERVICEPORT

pd_service_portオペランドの指定値,又はpd_scd_portオペランドの指定値,又はpdunitオペランドの-sオプションの指定値

PDSERVICEGRP

HiRDB/シングルサーバの場合

シングルサーバのサーバ名

HiRDB/パラレルサーバの場合

フロントエンドサーバのサーバ名

PDSRVTYPE

"PC"

(9) OCI環境でブロック・ボリュームを使用する場合の設定

マニュアル「高信頼化システム監視機能 HAモニタ パブリッククラウド編」を参照して,共有ディスクとして使用するブロック・ボリュームを設定してください。