サービスの提供者は,サービスの提供品質を維持し,利用者に対して安定的にサービスを提供できなければなりません。
つまり,サービスの提供者には,「サービスレベルを維持するための評価指標(SLO:Service Level Objective)を定め,計画的にサービスを管理・運用する」ということが求められます。
計画的なサービスの管理・運用には,PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを適用することが有効です。JP1/ITSLMでは,PDCAサイクルのうちの「C(Check)」に該当する業務を支援します。
JP1/ITSLMを使用したPDCAサイクルでのサービスの管理・運用を次の図に示します。
図1-2 JP1/ITSLMを使用したPDCAサイクルでのサービスの管理・運用
JP1/ITSLMでは「Check」で実施する「サービスの監視と評価」を支援します。サービスの監視と評価では,次の作業をサイクルで実施します。
- 構成定義
監視対象サービスについて定義します。
JP1/ITSLMでは,監視対象サービスを顧客ごと(企業ごとなど)にグループ(サービスグループ)で区切り,グループごとに監視に必要なアクセス権限を設定することで,顧客の業務システムの独立性を確保します。そのため,監視を始める前に,サービスをJP1/ITSLMに登録した上で,それぞれのサービスがどのサービスグループに属すのかを定義する必要があります。
なお,サービスの登録では,監視対象サービスのWebページのURIをJP1/ITSLMで自動検出して登録できます。
- 監視設定
監視対象サービスの監視のしかたについて設定します。
JP1/ITSLMでは,監視対象サービスごとに,サービスレベルを維持するための評価指標(SLO)となるしきい値を設定します。しきい値は,平均応答時間,スループット,およびエラー率の各監視項目について設定します。設定したしきい値に基づき,しきい値の超過,しきい値の将来的な超過を監視できます。なお,平均応答時間,スループット,およびエラー率を監視した結果のデータをサービス性能といいます。
また,しきい値の設定以外に,ふだんと異なるサービスの状況から,サービス性能の異常の予兆を検知するための設定もできます。
- 監視
監視設定に従い,サービスに対する実アクセスを監視します。
JP1/ITSLMでは,サービスの利用者からの実アクセスを集計・分析し,監視設定で設定したしきい値を超過していないか,将来的に超過しないか,またサービスの状況にふだんと異なる様子(サービス性能の異常の予兆)が見られないかを監視します。
- 定期的評価
JP1/ITSLMでは,監視結果として蓄積した日々のサービスの状況をレポートとして出力できます。これによって,サービスレベルを維持するための評価指標(SLO)が守られているかどうかがわかり,定期的な評価がしやすくなります。
なお,3.の監視の作業では,監視結果に応じて実施する作業があります。監視の作業で必要に応じて実施する作業を次の図に示します。
図1-3 監視の作業で必要に応じて実施する作業
監視,原因調査,復旧確認はサイクルで実施します。JP1/ITSLMでは,監視の作業で必要に応じて実施する作業のうち,原因調査の支援,および復旧確認を実施できます。
- 原因調査
- 監視中に監視対象サービスのサービス性能の異常またはその予兆を検知した場合,その原因を素早く調査する必要があります。
- JP1/ITSLMでは,これまでのサービスの状況(監視結果)を画面上にグラフで表示できるため,トラブルまたはトラブルの予兆の原因である事象の発生時期を推測しやすくなります。
- 復旧確認
- JP1/ITSLMでは,サービスの状況を監視しているため,トラブルまたはトラブルの予兆に対策したあと,現在のサービスの状況をすぐに確認できます。これによって,サービスが正常に動くようになっているかを迅速に確認できます。
このように,JP1/ITSLMはPDCAサイクルでサービスを管理・運用する中で重要な役割を果たし,サービスの安定運用を支援します。
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