JP1/Automatic Job Management System 2 セットアップガイド
JP1/AJS2では,ジョブ※実行時に結果ファイル(標準出力ファイル,および標準エラー出力ファイル)や転送ファイルをマネージャーホストとエージェントホスト間,またはクライアントホストとマネージャーホスト間で送受信します。これらのファイルのサイズが非常に大きい場合,ファイルのデータ解析処理に負荷が掛かり,CPU使用率の増加や,メモリー使用量の増加など,ジョブの実行が遅延するだけでなく,システム全体の処理に影響を与えるおそれがあります。
- 注※
- ジョブは,QUEUEジョブ,イベントジョブを除きます。また,キューレスジョブは対象外です。
ファイル受信制限をするための設定を行うと,ジョブ実行時にマネージャーホスト側で受信する結果ファイルのサイズ(標準出力ファイルと標準エラー出力ファイルを合わせた合計のサイズ),または,エージェントホストが受信する転送ファイルのサイズ(転送ファイルを複数指定した場合はその合計サイズ)の上限値を設定できます。
また,上限値を超えた場合の動作(ジョブの終了状態)や出力するメッセージを指定できます。
ファイル受信サイズの上限値を超えた場合の動作と上限値を超えたファイルデータの扱いについて次に示します。
表16-11 ファイル受信サイズの上限値を超えた場合の動作と上限値を超えたファイルデータの扱い
上限値を超えたファイルの種類
動作内容
ReceiveFileSizeStatus環境設定パラメーターの指定 0 1 2 3 結果ファイル ジョブの状態 実際の終了状態を引き継ぐ 異常検出終了 警告検出終了※ 実際の終了状態を引き継ぐ 出力するメッセージの種別 情報 異常 警告 情報 ファイルデータの扱い すべてのファイルデータを受信する 上限値を超えたデータを破棄する 上限値を超えたデータを破棄する 上限値を超えたデータを破棄する 転送ファイル ジョブの状態 実際の終了状態を引き継ぐ 起動失敗 起動失敗 実際の終了状態を引き継ぐ 出力するメッセージの種別 情報 異常 異常 情報 ファイルデータの扱い すべてのファイルデータを受信する すべてのファイルデータを受信しない すべてのファイルデータを受信しない すべてのファイルデータを受信しない
- 注※
- エージェントホストでジョブの状態が「異常検出終了」だった場合はその状態を引き継ぎます。
- <この節の構成>
- (1) 定義手順
- (2) 定義パラメーター一覧
- (3) 定義内容
- (4) ファイル受信サイズが上限値を超えた場合の動作
- (5) 注意事項
(1) 定義手順
- viなどのテキストエディターで,「(2) 定義パラメーター一覧」の定義パラメーターを指定した設定ファイルを作成する。
設定ファイルのファイル名は任意です。
- ファイルを保存し,次のコマンドを実行する。
jbssetcnfコマンドのパスは,「/opt/jp1base/bin/jbssetcnf」です。
jbssetcnf 設定ファイル名
jbssetcnfコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」を参照してください。
- JP1/AJS2を再起動する。
変更した構成定義の内容が反映されます。
(2) 定義パラメーター一覧
表16-12 ファイル受信制限をする設定の定義パラメーター一覧
定義キー 環境設定パラメーター 定義内容 [{JP1_DEFAULT|論理ホスト名}\JP1NBQMANAGER\Job]※ "ReceiveFileSizeStatus"= ファイルサイズが上限値に達したときの動作 "LimitReceiveFileSize"= ファイルサイズの上限値
- 注※
- {JP1_DEFAULT|論理ホスト名}の部分は,物理ホストの場合は「JP1_DEFAULT」を,論理ホストの場合は「論理ホスト名」を指定します。
(3) 定義内容
- "ReceiveFileSizeStatus"=dword:ファイルサイズが上限値に達したときの動作
- ファイル受信サイズが上限値に達したときの動作を指定します。
- デフォルトは「0」です。
- 0
- ファイル受信サイズの上限値をチェックし,上限値に達した場合は次のメッセージを出力しますが,すべてのファイルデータを受信します。ファイル受信サイズが上限値を超えてもジョブの状態は変更しないで,エージェントホストでのジョブの終了状態を引き継ぎます。
- 結果ファイルの場合
KAVU4294-Iメッセージ
- 転送ファイルの場合
KAVU2243-Iメッセージ
- 1
- ファイル受信サイズの上限値をチェックし,上限値に達した場合はファイルの受信処理を中止して,ジョブの状態を変更します。
- 結果ファイルは,ファイルサイズの上限値(LimitReceiveFileSize)まで受信し,上限値を超えたデータを破棄して,終了状態を「異常検出終了」にします。転送ファイルはすべてのファイルデータを受信しないで,終了状態を「起動失敗」にします。終了コードと状態については,「(4) ファイル受信サイズが上限値を超えた場合の動作」を参照してください。
- 上限値に達した場合は次のメッセージを出力します。
- 結果ファイルの場合
KAVU4296-Eメッセージ
- 転送ファイルの場合
KAVU2244-Eメッセージ
- 2
- ファイル受信サイズの上限値をチェックし,上限値に達した場合はファイルの受信処理を中止して,ジョブの状態を変更します。
- 結果ファイルは,ファイルサイズの上限値(LimitReceiveFileSize)まで受信し,上限値を超えたデータを破棄して,終了状態を「警告検出終了」にします。ただし,エージェントホストでのジョブの状態が「異常検出終了」だった場合はその状態を引き継ぎます。転送ファイルはすべてのファイルデータを受信しないで,終了状態を「起動失敗」にします。終了コードと状態については,「(4) ファイル受信サイズが上限値を超えた場合の動作」を参照してください。
- 上限値に達した場合は次のメッセージを出力します。
- 結果ファイルの場合
KAVU4295-Wメッセージ
- 転送ファイルの場合
KAVU2244-Eメッセージ
- 3
- ファイル受信サイズの上限値をチェックし,上限値に達した場合はファイルの受信処理を中止します。
- 結果ファイルは,ファイルサイズの上限値(LimitReceiveFileSize)まで受信し,上限値を超えたデータを破棄します。転送ファイルはすべてのファイルデータを破棄します。ジョブの終了状態は,エージェントホストでの終了状態を引き継ぎます。終了コードと状態については,「(4) ファイル受信サイズが上限値を超えた場合の動作」を参照してください。
- 上限値に達した場合は次のメッセージを出力します。
- 結果ファイルの場合
KAVU4294-Iメッセージ
- 転送ファイルの場合
KAVU2243-Iメッセージ
- この指定をした場合,制限を超えてもジョブは正常に終了します。しかし,ファイルが完全に作成された状態ではないため,後続ジョブなどでファイルを参照する場合は,不完全なファイルでも問題ないことを確認して使用してください。
- "LimitReceiveFileSize"=dword:ファイルサイズの上限値
- ファイル受信サイズの上限値を16進数で指定します。
- 指定できる範囲は80000〜40000000(10進数で524,288〜1,073,741,824)(単位:バイト)です。
- デフォルトは「500000」(10進数で5,242,880)です。
- ジョブ実行時に使用する転送ファイルや結果ファイルのサイズが運用上の見積もり値を超えたときに,マネージャーホスト側で受信するファイルのサイズを制限します。運用に合わせて5メガバイト程度で上限値を設定することをお勧めします。
- この設定は,一回に送信する転送ファイルが複数ある場合,それらのファイルサイズを合計した値に対して上限値をチェックします。結果ファイルの場合は,標準出力ファイルと標準エラー出力ファイルのサイズを合計した値でチェックします。
- なお,上限値に対して±数百バイト程度の範囲で誤差が生じることがあります。
- ファイルサイズの見積もり方法を次に示します(単位:バイト)。
ファイル数 Σ(ファイル名長+ファイルサイズ+(12*ファイル行数)+100)
- 注
- この設定は8000単位(10進数で32,768)で切り上げて設定されます。例えば,80001(10進数で524,289)を指定した場合,有効になる値は88000(10進数で557,056)になります。
- アクションジョブについては,JP1/AJS2が出力する情報としては指定できる範囲の下限値(524,288バイト)を超えて出力されません。ただし,UNIX上で実行した場合に,システムやジョブ実行OSユーザーのログインスクリプトで標準エラー出力を出力した場合は,下限値を超えることがあります。
(4) ファイル受信サイズが上限値を超えた場合の動作
ファイル受信サイズが上限値を超えたときの動作を次に示します。
- 結果ファイル
- 環境設定パラメーターReceiveFileSizeStatusの値を1,2,3のどれかで指定しているときに,受信サイズの上限値に達した場合,標準出力ファイル,標準エラー出力ファイルは上限値のサイズまでマネージャーホスト側に残ります。結果ファイルは完全に作成された状態ではないため,後続ジョブなどで結果ファイルを参照する場合は,不完全なファイルでも問題がないことを確認して使用してください。
- 結果ファイルのサイズが上限値を超えた場合のジョブの終了コードおよび終了状態を次の表に示します。
表16-13 結果ファイルサイズが上限値を超えた場合の終了状態と終了コードの関係
実際のジョブの状態 設定項目 ReceiveFileSizeStatus定義パラメーターの指定 1 2 0または3 正常終了
(常に正常を指定した場合も含む)状態 異常検出終了 警告検出終了 正常終了 終了コード ジョブの戻り値※ ジョブの戻り値※ ジョブの戻り値※ 警告検出終了 状態 異常検出終了 警告検出終了 警告検出終了 終了コード ジョブの戻り値※ ジョブの戻り値※ ジョブの戻り値※ 異常検出終了 状態 異常検出終了 異常検出終了 異常検出終了 終了コード ジョブの戻り値※ ジョブの戻り値※ ジョブの戻り値※ 強制終了 状態 強制終了 強制終了 強制終了 終了コード PCジョブ(-1),
UNIXジョブ(255)PCジョブ(-1),
UNIXジョブ(255)PCジョブ(-1),
UNIXジョブ(255)起動失敗 状態 起動失敗 起動失敗 起動失敗
- 注※
- ジョブとして実行したジョブプロセスの終了コードです。
- 転送ファイル
- 環境設定パラメーターReceiveFileSizeStatusの値を1,2,3のどれかで指定しているときに,受信サイズの上限値に達した場合,転送ファイルは受信しません。複数指定している場合はすべての転送ファイルのデータを破棄します。
- 転送ファイルのサイズが上限値を超えた場合のジョブの終了コードおよび終了状態を次の表に示します。
表16-14 転送ファイルサイズが上限値を超えた場合の終了状態と終了コードの関係
実際のジョブの状態 設定項目 ReceiveFileSizeStatus定義パラメーターの指定 1 2 0または3 なし※1 状態 起動失敗 起動失敗 実際のジョブの終了状態 終了コード PCジョブ(-1),
UNIXジョブ(-1)PCジョブ(-1),
UNIXジョブ(-1)ジョブの戻り値※2
- 注※1
- 転送ファイルの処理はジョブが登録される際に行うため,ジョブがキューイング状態になる前のジョブの状態で「なし」となっています。
- 注※2
- ジョブとして実行したジョブプロセスの終了コードです。
(5) 注意事項
ファイルを送受信するホストがシフトJIS以外の日本語環境の場合に,ファイル受信制限を使用すると,実際のファイルサイズと上限値として指定したサイズが異なる場合があります。
結果ファイルの受信時および転送ファイルの転送時の,ファイルサイズのチェックは,ファイルデータがシフトJISの状態で行われます。サイズチェック後に,結果ファイル受信ホストおよび転送ファイル転送先ホストで,各ホストに対応した文字コードに変換してファイルを作成します。
転送ファイルおよび結果ファイルは,対象ファイルの文字コードをシフトJISに変換してからサイズをチェックします。そのため,ファイル送信元ホストがシフトJIS以外の日本語環境の場合,シフトJISに文字コード変換を行った際に,変換後のファイルサイズが変換前のファイルサイズより小さくなる場合があります。この場合,ファイル送信元ホスト上ではファイルサイズが上限値より大きなファイルでも,ファイル受信制限が動作しません。
また,ファイルが作成されるホストがシフトJIS以外の日本語環境の場合,サイズチェック後にシフトJISからホスト上の文字コードに変換するため,チェック時のサイズより実際のファイルサイズが大きくなる場合があります。この場合,ファイル受信制限を使用し,上限値を超えるファイルを受信しないように設定しても,上限値より大きなサイズのファイルが作成されます。このように,上限値より大きなサイズのファイルが作成されることで,ディスク領域を予想以上に消費するおそれがありますので注意してください。
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