JP1/Automatic Job Management System 2 セットアップガイド
- <この項の構成>
- (1) 稼働環境
- (2) 運用方法
(1) 稼働環境
組み込みDBが稼働する環境条件として,次の項目について検討および確認します。
- システム構成
- 環境構築規模
- システムファイル領域
(a) システム構成
非クラスタ構成(物理ホスト)とするか,またはクラスタ構成(論理ホスト)とするかを検討します。組み込みDBだけでなく,JP1/AJS2サービスの全体構成としての環境条件となります。
(b) 環境構築規模
JP1/AJS2の運用規模に合わせて,組み込みDB環境を構築する規模を三つ(小規模,中規模,大規模)の中から選択します。それぞれの規模の目安について,次の表に示します。
表15-1 組み込みDB環境構築規模の目安
規模 ユニット数 1日に実行される
ジョブ・ジョブネット数小規模 10,000以下 10,000以下 中規模 10,000〜40,000 10,000〜25,000 大規模 40,000〜100,000 25,000〜50,000 運用規模が大規模を超える場合は,組み込みDB環境を大規模で構築し,そのあと環境の拡張を実施してください。
組み込みDB環境の拡張については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 1. コマンド ajsembdbaddarea」を参照してください。
(c) システムファイル領域
組み込みDBで使用するシステムファイルの二重化実施の有無について検討します。システムファイルを二重化すると,必要なディスク容量は増加しますが,ディスク障害などによって組み込みDBシステムが停止する可能性を低くすることができます。
組み込みDBの稼働環境ごとに必要なディスク容量を次の表に示します。項番1〜24から一つを選択してください。
表15-2 組み込みDB稼働環境ごとの必要ディスク容量
項番 組み込みDB稼働環境 必要ディスク容量(単位:メガバイト) システム構成 環境構築規模 RAWファイルの使用 システムファイルの二重化 データ領域 システムファイル領域 作業領域 合計 1 非クラスタ 小規模 なし なし 300 702 − 1,002 2 あり 1,404 1,704 3 あり なし 702 40 1,042 4 あり 1,404 1,744 5 中規模 なし なし 800 1,200 − 2,000 6 あり 2,400 3,200 7 あり なし 1,200 40 2,040 8 あり 2,400 3,240 9 大規模 なし なし 1,600 3,402 − 5,002 10 あり 6,804 8,404 11 あり なし 3,402 40 5,042 12 あり 6,804 8,444 13 クラスタ 小規模 なし なし 300 702 40*2※ 1,082 14 あり 1,404 1,784 15 あり なし 702 1,082 16 あり 1,404 1,784 17 中規模 なし なし 800 1,200 2,080 18 あり 2,400 3,280 19 あり なし 1,200 2,080 20 あり 2,400 3,280 21 大規模 なし なし 1,600 3,402 5,082 22 あり 6,804 8,484 23 あり なし 3,402 5,082 24 あり 6,804 8,484
- (凡例)
- −:作成先は指定できません。
- 注
- 組み込みDB運用ディレクトリのディスク容量については,「JP1/AJS2 - Database option ソフトウェア添付資料」のディスク占有量を参照してください。
- 注※
- クラスタ構成時の作業領域は,共有ディスク上ではなくローカルディスク上に作成する必要があるため,実行系および待機系それぞれに必要です。
(2) 運用方法
組み込みDBの具体的な運用方法として,次の項目について検討します。
- システムログの運用
- バックアップの取得タイミング
- バックアップからの回復点
- バックアップからの回復方法
(a) システムログの運用
システムログを使用して回復する場合は,次に示す二とおりの運用方法のどちらかを選択する必要があります。システムログを使用して回復しない場合,考慮する必要はありません。
- システムログ運用(アンロードレス運用)
組み込みDB環境構築時に作成されるシステムファイル(システムログファイル)上にデータを保持する運用方法です。システムログファイルをすべて使い切ると組み込みDBシステムが停止してしまうため,システムログファイルの状態を定期的に監視する必要があります。
- アンロードログ運用
システムログファイルに出力されたデータを別ファイルに退避(アンロード)する運用方法です。アンロードは組み込みDBによって自動的に実行され,同時にシステムログファイルも再利用できる状態になります。しかし,アンロードログファイルを保存するためのディスク容量が必要となり,ディスクの空き容量については監視する必要があるほか,回復時には使用するアンロードログファイルを正しい順序で指定する必要があります。
(b) バックアップの取得タイミング
組み込みDBのバックアップを取得するタイミングには,次の二つがあります。
- JP1/AJS2サービス停止中(ジョブ,ジョブネットを運用していないとき)
組み込みDBのバックアップを取得する際に,JP1/AJS2の運用を停止する必要があります。取得したバックアップデータだけでバックアップ時点へ回復できる,基本的なバックアップ方法です。
- JP1/AJS2サービス稼働中(ジョブ,ジョブネットを運用しているとき)
組み込みDBのバックアップを取得する際に,JP1/AJS2の運用を停止する必要はありません。しかし,回復する際には取得したバックアップデータと共に,組み込みDBが出力しているシステムログまたはアンロードログが必要です。
(c) バックアップからの回復点
組み込みDBのバックアップからの回復点は,次の二つです。
- バックアップ取得時点
バックアップを取得した時点の状態へ回復します。バックアップ取得時点以降の運用内容は反映されません。
- バックアップ取得後の最新の同期点
バックアップを取得した時点の状態に加えて,バックアップ時点以降の運用によるデータベースの更新内容も反映されるため,最新の状態まで回復できます。
(d) バックアップからの回復方法
バックアップからの回復方法を次に説明します。
- バックアップデータだけ
バックアップ時に取得したバックアップデータだけで回復します。バックアップ取得時点の状態に回復できます。
- バックアップデータとシステムログ
バックアップ時に取得したバックアップデータと共に,バックアップ時点以降に出力されたシステムログの情報を使用して回復します。バックアップ時点以降の運用によるデータベースの更新内容も反映されます。JP1/AJS2運用中に取得したバックアップからの回復は,この方法で回復します。
組み込みDBの運用方法を次の表に示します。
表15-3 組み込みDBの運用方法
項番 運用方法 システムログの運用 バックアップ取得タイミング バックアップからの回復点 バックアップからの回復方法 A システムログ運用しない JP1/AJS2サービス停止中 バックアップ取得時点 バックアップデータのみ B B-1 システムログ運用
(アンロードレス運用)JP1/AJS2サービス停止中 バックアップ取得時点 バックアップデータのみ B-2 最新の同期点 バックアップデータとシステムログ B-3 JP1/AJS2サービス稼働中 C C-1 アンロードログ運用 JP1/AJS2サービス停止中 バックアップ取得時点 バックアップデータのみ C-2 最新の同期点 バックアップデータとアンロードログ C-3 JP1/AJS2サービス稼働中 運用方法の特徴を次の表に示します。この表に示す運用方法の特徴を考慮して表15-3から運用方法を選択してください。
表15-4 各運用方法の特徴
項番※ 特徴 長所 短所 A システムログファイルの状態を監視する必要がありません。
- バックアップからの回復点はバックアップ時点だけです。
- バックアップ取得時にはJP1/AJS2サービスを停止する必要があります。
B 共通 アンロードログ運用と比較した場合,回復するときの手順が容易です。
- システムログファイルの状態を監視する必要があります。
- バックアップの必要がなくても頻繁に取得する必要があります。
B-1 システムログファイルに障害が発生しても,バックアップデータだけで回復できます。
- バックアップからの回復点はバックアップ時点だけです。
- バックアップ取得時にはJP1/AJS2サービスを停止する必要があります。
B-2
- システムログファイルに障害が発生しても,バックアップデータだけで回復できます。
- バックアップ取得時点以降の運用を反映した最新の状態に回復できます。
バックアップ取得時にはJP1/AJS2サービスを停止する必要があります。 B-3
- バックアップ取得時にJP1/AJS2サービスを停止する必要がありません。
- バックアップ取得時点以降の運用を反映した最新の状態に回復できます。
システムログファイルに障害が発生すると,該当するバックアップデータからの回復は一切できません。 C 共通
- システムログファイルの状態を監視する必要がありません。
- システムログ運用と比較した場合,バックアップを必要以上に取得する必要がありません。
- 自動ログアンロード機能の動作状態を監視する必要があります。
- アンロードログファイル作成ディレクトリを準備する必要があります。
- システムログ運用と比較した場合,回復するときの手順が繁雑です。
C-1
- システムログファイルに障害が発生しても,バックアップデータだけで回復できます。
- バックアップからの回復点はバックアップ時点だけです。
- バックアップ取得時にはJP1/AJS2サービスを停止する必要があります。
C-2
- システムログファイルに障害が発生しても,バックアップデータだけで回復できます。
- バックアップ取得時点以降の運用を反映した最新の状態に回復できます。
バックアップ取得時にはJP1/AJS2サービスを停止する必要があります。 C-3
- バックアップ取得時にJP1/AJS2サービスを停止する必要がありません。
- バックアップ取得時点以降の運用を反映した最新の状態に回復できます。
アンロードログファイルを失うと,該当するバックアップデータからの回復は一切できません。
- 注※
- 表15-3の項番に対応します。
バックアップおよびバックアップからの回復方法の詳細については,次に示す個所を参照してください。
- マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 設計・運用ガイド 3.5.5 システムログを使用しない運用」
- マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 設計・運用ガイド 3.5.6 システムログ運用」
- マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 設計・運用ガイド 3.5.7 アンロードログ運用」
表15-3で選択した運用をする場合,組み込みDBの環境構築,組み込みDBのバックアップおよびバックアップからの回復で必要となるコマンドを次に示します。
- ajsembdbbuildコマンド(組み込みDBの環境を構築する)
- ajsembdbbackupコマンド(バックアップする)
- ajsembdbrstrコマンド(バックアップから回復する)
これらコマンドの実行時に必要となるオプションを次の表に示します。
表15-5 コマンドの指定オプション
項番※ システムファイルの二重化 システムログの運用方法および回復方法に関するオプション ajsembdbbuild
(-bs,-br,-bl)ajsembdbbackup
(-s,-z)ajsembdbrstr
(-lr,-l)A なし なし なし なし B B-1 -bs なし なし -z なし B-2 -lr B-3 -s -z -lr C C-1 -bs -bl なし なし C-2 -l C-3 -s -l A あり − − − B B-1 -br なし なし -z なし B-2 -lr B-3 -s -z -lr C C-1 -br -bl なし なし C-2 -l C-3 -s -l
- (凡例)
- −:該当しない。
- 注※
- 表15-3の項番に対応します。
ajsembdbbuildコマンドについては,「20. セットアップ時に使用するコマンド ajsembdbbuild」を参照してください。
ajsembdbbackupコマンドおよびajsembdbrstrコマンドについては,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 1. コマンド」を参照してください。
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