JP1/Automatic Job Management System 2 設計・運用ガイド
ここでは,システムログを使用しないでバックアップファイルだけで回復する運用について説明します。この運用では,アンロードログファイルおよびシステムログファイルを使用しないため,最も運用が簡単です。システムログを使用しない運用での障害発生時の回復方法を次の図に示します。
図3-39 障害発生時の回復方法(システムログを使用しない運用)
- <この項の構成>
- (1) システムログファイルの管理について
- (2) 組み込みDB環境の構築
- (3) 運用方法
- (4) 障害発生時の組み込みDBの回復手順
- (5) 注意事項
(1) システムログファイルの管理について
システムログファイルを監視しないで運用できます。
ただし,回復時にシステムログを使用しないため,バックアップファイル取得以降の更新内容については回復できません。
(2) 組み込みDB環境の構築
組み込みDBの環境構築方法については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 セットアップガイド 5. スケジューラーデータベースに組み込みDBを使用する場合のセットアップ」(Windowsの場合),またはマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 セットアップガイド 15. スケジューラーデータベースに組み込みDBを使用する場合のセットアップ」(UNIXの場合)を参照してください。
(3) 運用方法
障害発生時にバックアップファイルだけを使用して回復するための運用方法を次に示します。
(a) バックアップファイルの取得手順
バックアップファイルの取得手順を次に示します。
- 該当するスケジューラーデータベースを使用するスケジューラーサービス,JP1/AJS2 Monitorサービスを含む,スケジューラーデータベースにアクセスするサービスをすべて停止する。
- スケジューラーデータベースのバックアップファイルを取得する。
ajsembdbbackupコマンドに,-sオプションを指定しないで実行してください。
- 手順1で停止したサービスを起動し,通常の運用を再開する。
バックアップファイルを取得するときに,スケジューラーサービスが稼働中であったり,ジョブネットワーク要素を参照および更新していたりすると,ajsembdbbackupコマンドがエラーになる場合があります。
ajsembdbbackupコマンドにはバックアップファイルの取得方法に関係なく,上記で示すオプション以外にも必要なオプションがあります。ajsembdbbackupコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 1. コマンド ajsembdbbackup」を参照してください。
(b) バックアップファイルの取得タイミング
JP1/AJS2の環境に障害が発生した場合は,JP1/AJS2の環境とスケジューラーデータベースの環境を,同期を取って回復する必要があります。そのため,JP1/AJS2の運用を停止できるときは,JP1/AJS2のバックアップファイルを取得するとともに,ajsembdbbackupコマンドを実行して,スケジューラーデータベースのバックアップファイルを取得してください。バックアップファイルを取得した場合,以前取得したバックアップファイルは任意の方法で削除して問題ありません。
バックアップファイルの取得タイミングを次の図に示します。
図3-40 バックアップファイルの取得タイミング(システムログを使用しない運用)
(c) バックアップファイルの管理
回復時にバックアップファイルが必要になるため,保存しておく必要があります。バックアップファイルを取得することで,以前取得したバックアップファイルは不要になるので,必要に応じて削除してください。
(4) 障害発生時の組み込みDBの回復手順
障害ケースごとの回復手順を次に示します。
なお,回復手順で使用するajsembdbbackupコマンド,ajsembdbrstrコマンドについてはマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 1. コマンド」を,ajsembdbbuildコマンド,ajsembdbsetupコマンド,ajsembdbunsetコマンドについてはマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 セットアップガイド 20. セットアップ時に使用するコマンド」を参照してください。
(a) データ領域のディスクに障害が発生した場合
- 物理ホストおよびすべての論理ホストで,JP1/AJS2サービス,JP1/AJS2 MonitorサービスおよびJP1/AJS2 Console Agentサービスを含め,スケジューラーデータベースにアクセスするサービスをすべて停止する。
- 組み込みDB環境を削除する。
ajsembdbunsetコマンドに-eオプションを指定して実行してください。
- 障害を取り除く。
- スケジューラーサービスをISAMファイル環境に再構築する。
Windowsの場合
UNIXの場合
- 該当するスケジューラーサービスの構成定義パラメーターをISAMに変更する。
マネージャー環境設定で,データベース種別を「ISAM」に変更します。
- ISAMファイルでセットアップする。
ajssetup -F スケジューラーサービス名 [-mh 論理ホスト名※]
注※ 物理ホストの場合,「-mh 論理ホスト名」は指定しないでください。
- 共用メモリー上の環境設定情報を削除します。
ajsshmdelコマンドを実行します。実行例を次に示します。
ajsshmdel >/dev/null 2>&1
- 該当するスケジューラーサービスの環境設定パラメーターをISAMに変更する。
実施手順を次に示します。
(1) jbsgetcnf [-h 論理ホスト名※] > 退避ファイル名
注※ 物理ホストの場合,「-h 論理ホスト名」は指定しないでください。
(2) 退避ファイル内の,該当するスケジューラーサービスの環境設定パラメーターAJSDBTYPEをISAMに変更する。
(3) jbssetcnf 退避ファイル名
- ISAMファイルでセットアップする。
ajssetup -F スケジューラーサービス名 [-mh 論理ホスト名※]
注※ 物理ホストの場合,「-mh 論理ホスト名」は指定しないでください。
- 組み込みDB環境を再構築する。
ajsembdbbuildコマンドを実行して,組み込みDB環境を構築してください。
ajsembdbbuildコマンドの実行時,ajsembdbbuildコマンドに指定する内容は,障害発生前の組み込みDB環境を構築した際に指定した内容と同一にしてください。指定内容が異なると,このあとのスケジューラーデータベースの回復時にエラーが発生して回復できません。
- スケジューラーデータベースを組み込みDBに移行する。
ajsembdbsetupコマンドを実行して,スケジューラーデータベースを組み込みDBに移行してください。
ajsembdbsetupコマンドの実行時,ajsembdbsetupコマンドに指定する内容は,障害発生前の組み込みDBへの移行の際に指定した内容と同一にしてください。
指定内容が異なると,このあとのスケジューラーデータベースの回復時にエラーが発生して回復できません。
- スケジューラーデータベースを回復する。
ajsembdbrstrコマンドに,-lオプションおよび-lrオプションを指定しないで実行してください。
- スケジューラーデータベースのバックアップファイルを取得する。
ajsembdbbackupコマンドを実行して,バックアップファイルを取得してください。
- 手順1で停止したサービスを起動する。
(b) 組み込みDBのシステムログファイルのディスクに障害が発生した場合
組み込みDBのシステムログファイルに障害が発生した場合,(a)と同様に組み込みDBを再構築する必要があります。回復方法については(a)を参照してください。
(c) JP1/AJS2と組み込みDBに同時に障害が発生した場合
- 障害を取り除く。
- JP1/AJS2をバックアップファイルからリカバリーする。
JP1/AJS2のリカバリーについては,「11. バックアップとリカバリー」を参照してください。
- 該当するスケジューラーデータベースを使用するスケジューラーサービス,JP1/AJS2 Monitorサービスを含む,スケジューラーデータベースにアクセスするサービスをすべて停止する。
- スケジューラーデータベースを回復する。
ajsembdbrstrコマンドに,-lオプションおよび-lrオプションを指定しないで実行してください。
- 手順3で停止したサービスを起動する。
必要に応じて,JP1/AJS2サービスをコールドスタートで起動してください。
以上の手順を実施することで,JP1/AJS2と組み込みDBで同期を取ってバックアップファイルを取得した時点の状態まで回復することができます。
(d) JP1/AJS2に障害が発生した場合
(c)の手順で回復してください。
(5) 注意事項
システムログを使用しない運用についての注意事項を次に示します。
(a) 環境構築時の注意事項
システムログを使用しない運用では,システムログを使用した回復はできませんが,組み込みDBでシステムログを使用するため,システムログを格納する領域を用意する必要があります。必要なディスク容量については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 セットアップガイド 5.1 組み込みDBを使用する場合の準備」(Windowsの場合),またはマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 セットアップガイド 15.1 組み込みDBを使用する場合の準備」(UNIXの場合)を参照してください。
(b) 運用時の注意事項
JP1/AJS2サービスの稼働中にスケジューラーデータベースのバックアップファイルは取得できません。JP1/AJS2サービスを停止できるタイミングで,バックアップファイルを取得してください。バックアップファイルの取得方法については,「(3) 運用方法」を参照してください。
(c) 回復時の注意事項
スケジューラーデータベースに障害が発生した場合,障害直前の状態に回復できません。システムログを使用しない運用では,バックアップファイルの取得時点にだけ回復できます。回復方法については,「(4) 障害発生時の組み込みDBの回復手順」を参照してください。
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