JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(業務設計編)

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2.2.5 待ち合わせ条件を使用したユニットの実行順序制御

異なるジョブネット間のユニットの実行順序を制御するには,待ち合わせ条件を使用します。待ち合わせ条件を設定したユニットは,待ち合わせ条件で指定したユニットの実行終了を待ち合わせてから実行を開始します。待ち合わせ条件を使用することで,異なるジョブネット間のユニットの実行順序を制御できます。

<この項の構成>
(1) 待ち合わせ条件を使用したユニットの実行順序制御の概要
(2) 待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットの待ち合わせルール
(3) 待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットの状態遷移
(4) 待ち合わせ条件付きユニットの動作の設定
(5) 待ち合わせ条件の一時変更
(6) 待ち合わせ対象ユニットの定義が不正な場合の待ち合わせ条件付きユニットの動作
(7) 待ち合わせ対象ユニットの確認方法
(8) 待ち合わせ条件を使用した実行順序制御とジョブネットコネクタを使用した実行順序制御の使い分け

(1) 待ち合わせ条件を使用したユニットの実行順序制御の概要

待ち合わせ条件を使用したユニットの実行順序制御の概要と,待ち合わせ条件を使用してユニットの実行順序を制御する流れについて説明します。

(a) 待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニット

待ち合わせ条件を設定するユニットの待ち合わせ条件には,実行終了を待ち合わせるユニット名を指定します。ここでいう「実行終了」とは,次の状態に遷移することをいいます。

待ち合わせ条件で指定したユニットが実行終了すると,待ち合わせ条件を設定したユニットが実行を開始します。

待ち合わせ条件を設定したユニットのことを待ち合わせ条件付きユニット,待ち合わせ条件で指定したユニットのことを待ち合わせ対象ユニットと呼びます。

待ち合わせ条件による実行順序制御を,次の図に示します。

図2-26 待ち合わせ条件による実行順序制御

[図データ]

この例では,ルートジョブネットB配下のジョブ3に待ち合わせ条件を設定しています。待ち合わせ条件には,待ち合わせ対象ユニットとしてルートジョブネットA配下のジョブ2を指定しています。ルートジョブネットAおよびルートジョブネットBを実行すると,ジョブ3はジョブ2の実行終了を待ち合わせます。ジョブ2が実行終了すると,ジョブ3が実行を開始します。

待ち合わせ条件を使うと,さまざまなユニット間の実行順序を制御できます。待ち合わせ条件を設定できるユニット,および待ち合わせ対象ユニットとして指定できるユニットを,次の表に示します。

表2-9 待ち合わせ条件を設定できるユニットおよび待ち合わせ対象ユニットとして指定できるユニット

項番 ユニット種別 待ち合わせ条件を設定できるユニット 待ち合わせ対象ユニットとして指定できるユニット
1 ジョブグループ × ×
2 ルートジョブネット 起動条件を使用していないルートジョブネット※1,※2,およびその配下のユニット
3 起動条件を使用するルートジョブネット※1,およびその配下のユニット × ×
4 ネストジョブネット
5 リモートジョブネット リモートジョブネット自体 × ×
6 リモートジョブネットの配下のユニット × ×
7 プランニンググループ プランニンググループ自体 ×
8 プランニンググループ直下のルートジョブネット ×
9 プランニンググループ直下のルートジョブネットの配下のユニット ※3
10 ホストリンクジョブネット × ×
11 標準ジョブ
12 ジョブネットコネクタ
13 ORジョブ × ×
14 判定ジョブ × ×
15 イベントジョブ ジョブネット配下のイベントジョブ
16 起動条件(.CONDITION)中のイベントジョブ × ×
17 アクションジョブ
18 カスタムジョブ
19 引き継ぎ情報設定ジョブ
20 オペレーションネット用スケジューラーサービスの配下のユニット(JP1/IM - Planning Operationで管理しているユニット) × ×
21 シナリオ管理グループ シナリオ管理グループ自体 × ×
22 シナリオ管理グループ配下のユニット × ×

(凡例)
○:待ち合わせ条件を設定できる,または待ち合わせ対象ユニットとして指定できる
×:待ち合わせ条件を設定できない,または待ち合わせ対象ユニットとして指定できない

注※1
起動条件を使用していないとは,次のどれかに該当することを指します。
  • 起動条件(.CONDITION)が定義されていない
  • 即時実行登録時に,[起動条件]に[使用しない]を選択して実行登録している
  • スケジュールルールの[起動条件]で[使用しない]を選択して,計画実行登録または確定実行登録している
  • ajsplanコマンドの-jオプションを指定して起動条件を無効にしている
起動条件を使用するルートジョブネットや,その配下のユニットを,待ち合わせ対象ユニットまたは待ち合わせ条件付きユニットとして指定した場合,待ち合わせ条件付きユニットが異常終了します。

注※2
起動条件(.CONDITION)に待ち合わせ条件を設定したり,起動条件を待ち合わせ対象として指定したりすることはできません。

注※3
プランニンググループ直下のルートジョブネット配下のユニットを待ち合わせ対象ユニットとして指定する場合,ルートジョブネット名を省略した形式で指定してください。例えば,プランニンググループ直下にあるルートジョブネット配下のジョブを待ち合わせ対象ユニットとして指定する場合は,「/プランニンググループ/ルートジョブネット/ジョブ」ではなく,「/プランニンググループ/ジョブ」と指定します。

なお,待ち合わせ条件は,同一スケジューラーサービス内のユニットの実行順序を制御します。そのため,待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットは,同一のスケジューラーサービス配下にある必要があります。

注意事項
  • 待ち合わせ条件を使用すると,ジョブフローが確認しにくくなり,業務の流れやジョブネットの階層が把握しづらくなります。ジョブフローを作成する際は,ジョブネットを入れ子にしたり,複数のジョブを一つにまとめたりするなど,できるだけ待ち合わせ条件を使用しないで,関連線を使用することを先に検討してください。
  • 待ち合わせ条件を使用する場合は,複数の待ち合わせが同一時間帯に集中して開始しないように,ジョブネットの開始予定時刻をずらすなど,待ち合わせが開始する時間帯を分散させてください。
    同一時間帯に複数の待ち合わせ条件付きユニットが待ち合わせを開始する場合は,待ち合わせ対象ユニットが終了してから待ち合わせ条件付きユニットが実行開始するまでの所要時間について,次の点を考慮してジョブフローを設計してください。
    ・待ち合わせ条件付きユニットは,待ち合わせ対象ユニットの状態確認を行います。そのため,一つの待ち合わせ対象ユニットが終了してから待ち合わせ条件付きユニットが実行を開始するまで,時間が掛かります。その時間は,同一スケジューラーサービス内のほかの待ち合わせ条件付きユニットも含めた,同一時間帯に待ち合わせをしている待ち合わせ条件付きユニット数に比例します。
    ・一つのスケジューラーサービス内で1秒間に処理できる待ち合わせ条件付きユニットの数は,4件から20件程度です。例えば,待ち合わせ条件付きユニット100個が同時に一つの待ち合わせ対象ユニットとの待ち合わせを開始した場合,待ち合わせ対象ユニットの実行が終了してから100個目の待ち合わせ条件付きユニットが実行を開始するまで,5秒から25秒程度掛かります。
    ・待ち合わせ条件付きユニットが実行を開始するまでの所要時間は,マシン性能や,待ち合わせ対象ユニットと待ち合わせ条件付きユニットのジョブネット構成などによって変動します。
  • 待ち合わせ条件は,JP1/AJS3 - ViewおよびJP1/AJS3 - Managerのバージョンが09-50以降の場合に使用できます。ただし,09-50以降のJP1/AJS3 - Managerを使用していても,データベースが互換用ISAM構成の場合は,待ち合わせ条件は使用できません。
  • 待ち合わせ条件を使用する場合,環境設定パラメーターPREWAITUSEで待ち合わせ条件を使用できるように設定する必要があります。

(b) 待ち合わせ状態

待ち合わせ対象ユニットの実行終了を待ち合わせ条件付きユニットが把握できているかどうかを,待ち合わせ状態として表示します。待ち合わせ状態には次の状態があります。

表2-10 待ち合わせ状態一覧

項番 待ち合わせ状態 意味
1 未完了 待ち合わせ対象ユニットの実行終了の待ち合わせがまだ完了していません。
2 完了 待ち合わせ対象ユニットの実行終了の待ち合わせが完了しました。
3 未完了(手動) 待ち合わせ対象ユニットの実行終了の待ち合わせがまだ完了していません(待ち合わせ条件の有効化によって待ち合わせ状態が未完了に変更されています)。
4 完了(手動) 待ち合わせ対象ユニットの実行終了の待ち合わせが完了しました(待ち合わせ条件の無効化によって待ち合わせ状態が完了に変更されています)。

待ち合わせ状態が「完了」または「完了(手動)」になることで,待ち合わせ条件が成立し,待ち合わせ条件付きユニットが実行を開始します。

待ち合わせ条件付きユニットの動作を設定することができます。詳細については,「2.2.5(4) 待ち合わせ条件付きユニットの動作の設定」を参照してください。

(c) 実行順序制御の流れ

待ち合わせ条件を使ったユニット間の実行順序制御は,次の流れで行います。

  1. 待ち合わせ対象ユニットおよび待ち合わせ条件を設定するユニットを,それぞれ定義する。
    ユニットの詳細定義およびスケジュールを定義します。
  2. 待ち合わせ条件を設定するユニットに待ち合わせ条件を設定する。
    待ち合わせ条件には,次の項目を設定します。
    • 待ち合わせ対象ユニット名
    • 待ち合わせ方法
    • 待ち合わせ対象ユニットに待ち合わせる世代がないときの動作
    「待ち合わせ方法」および「待ち合わせ対象ユニットに待ち合わせる世代がないときの動作」の詳細については,「2.2.5(4) 待ち合わせ条件付きユニットの動作の設定」を参照してください。
    待ち合わせ条件の設定方法については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 操作ガイド 5.2.6 待ち合わせ条件を設定する」を参照してください。
  3. 待ち合わせ条件付きユニットおよび待ち合わせ対象ユニットを管理するルートジョブネットを,それぞれ実行登録する。
    待ち合わせ条件付きユニットが,待ち合わせ対象ユニットの実行終了を待ち合わせます。
    ルートジョブネットの実行登録方法については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 操作ガイド 7. ジョブネットの実行」を参照してください。

(2) 待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットの待ち合わせルール

待ち合わせ条件付きユニットを実行登録すると,待ち合わせ条件付きユニットは,待ち合わせルールに従って待ち合わせ対象ユニットの実行終了を待ち合わせます。

待ち合わせルールは,次に示す三つの場合で異なります。

それぞれの場合について説明します。

(a) 待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットが同一のルートジョブネット配下にある場合

待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットが同一のルートジョブネット配下にある場合,各ユニットは同一の世代で実行されます。そのため,待ち合わせ条件付きユニットは,同じ世代で実行される待ち合わせ対象ユニットの実行終了を待ち合わせます。

待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットが同一ルートジョブネット配下にある場合の例を,次の図に示します。

図2-27 待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットが同一ルートジョブネット配下にある場合の例

[図データ]

この例では,待ち合わせ条件付きユニットのジョブ3と待ち合わせ対象ユニットのネストジョブネット1が,どちらもルートジョブネットAの配下に定義されています。ルートジョブネットAを1日に1回実行するようにスケジュールして実行登録すると,7/1と7/2にルートジョブネットAの実行予定世代が一つずつ生成されます。この場合,ジョブ3は,同一世代で実行するネストジョブネット1の実行終了を待ち合わせます。

(b) 待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットが異なるルートジョブネット配下にある場合

待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットが異なるルートジョブネット配下にある場合,各ルートジョブネットを実行登録すると,それぞれのルートジョブネットに実行予定世代が生成されます。このとき,待ち合わせ条件付きユニットの実行予定世代は,次の条件を満たす待ち合わせ対象ユニットの実行予定世代の実行終了を待ち合わせます。

待ち合わせ対象ユニットが待ち合わせ条件付きユニットと異なるルートジョブネット配下にある場合の例を,次の図に示します。

図2-28 待ち合わせ対象ユニットが待ち合わせ条件付きユニットと異なるルートジョブネット配下にある場合の例

[図データ]

この例では,待ち合わせ条件付きユニットのジョブ1が,待ち合わせ対象ユニットのネストジョブネット1と,異なるルートジョブネットの配下に定義されています。ルートジョブネットAおよびルートジョブネットBが7/1に2回実行するようにスケジュールして実行登録すると,7/1のルートジョブネットAの実行予定として,実行IDが@A101の世代と@A102の世代が生成されます。一方,7/1のルートジョブネットBの実行予定として,実行IDが@A103の世代と@A104の世代が生成されます。ジョブ1の世代@A103および@A104は,実行日が同じで,かつ開始予定時刻の順番が等しいネストジョブネット1の実行予定世代を待ち合わせます。そのため,ジョブ1で1番目に実行される@A103は,ネストジョブネット1で1番目に実行される@A101を待ち合わせます。同様に,ジョブ1で2番目に実行される@A104は,ネストジョブネット1で2番目に実行される@A102を待ち合わせます。7/2に実行されるジョブ1の世代も,7/2の開始予定時刻の順番が等しいネストジョブネット1の実行予定世代を待ち合わせます。

次に,JP1/AJS3の機能と待ち合わせ条件を組み合わせて使用したときの例について説明します。

ジョブネットリリース機能を使用して待ち合わせ対象ユニットのジョブネット定義を切り替えるとき
ジョブネットリリース機能を使用して,待ち合わせ対象ユニットのジョブネット定義を運用中に切り替えるとき,待ち合わせ条件付きユニットが待ち合わせるジョブネット定義も,自動で切り替わります。
待ち合わせ対象ユニットをジョブネットリリースする例を,次の図に示します。

図2-29 待ち合わせ対象ユニットをジョブネットリリースする例

[図データ]
この例では,ルートジョブネットAがリリース登録されており,リリース日時になると,リリースID「001」のジョブネット定義がリリースされます。リリース日時は7/2の00:00です。ルートジョブネットAを実行登録すると,7/1の実行予定世代@A101はリリースID「AJS_AUTO」のジョブネット定義で,7/2の実行予定世代@A103はリリースID「001」のジョブネット定義で生成されます。この場合,ジョブ1は,7/1まではリリースID「AJS_AUTO」のネストジョブネット1の世代@A101と待ち合わせ,7/2以降はリリースID「001」のネストジョブネット1の世代@A103と待ち合わせます。

実行登録後に実行予定世代の開始予定の順番を変更するとき
実行登録後に計画一時変更などで実行予定世代の開始予定の順番を変更するとき,待ち合わせ条件付きユニットが待ち合わせる待ち合わせ対象ユニットの実行予定世代も,変更後の開始予定の順番に合わせて自動で変更されます。
計画一時変更で実行予定世代の開始予定の順番を変更する例を,次の図に示します。

図2-30 計画一時変更で実行予定世代の開始予定の順番を変更する例

[図データ]
この例では,待ち合わせ対象ユニットのネストジョブネット1を管理するルートジョブネットA,および待ち合わせ条件付きユニットのジョブ1を管理するルートジョブネットBが,7/1に2回実行するようにスケジュールされています。7/1の1番目に実行されるルートジョブネットBの実行予定世代@A103を計画一時変更で実行中止すると,@A103が削除され,7/1の1番目に実行される世代は@A104になります。そのため,ジョブ1の@A104は,ネストジョブネット1の@A101を待ち合わせます。

48時間制スケジュールを採用しているとき
48時間制スケジュールを採用しているときは,48時間制スケジュールでの実行日に従って待ち合わせる世代が決定します。
48時間制スケジュールを採用している例を,次の図に示します。

図2-31 48時間制スケジュールを採用している例

[図データ]
この例では,ルートジョブネットAおよびルートジョブネットBのスケジューラーサービスに対して,48時間制スケジュールを採用しています。待ち合わせ対象ユニットのネストジョブネット1を管理するルートジョブネットAのスケジュールルールは,毎日10:00に実行するように定義しています。また,待ち合わせ条件付きユニットのジョブ1を管理するルートジョブネットBのスケジュールルールは,7/1の38:00に実行するように定義しています。この場合,7/1の38:00(暦日で7/2の14:00)に実行されるジョブ1の実行予定世代@A103は,7/1の1番目に実行される世代になります。そのため,ジョブ1の@A103の世代は,ネストジョブネット1の7/1の1番目に実行される世代である@A101を待ち合わせます。

注意事項
  • 基準時刻は,待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットで別々に設定できます。しかし,それぞれのユニットで別々の設定をしていると,待ち合わせる世代の対応が複雑になり運用が困難になります。基準時刻の設定は,待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットで合わせることを推奨します。
  • UNIXの場合,タイムゾーンは,待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットで別々に設定できます。しかし,それぞれのユニットで別々の設定をしていると,待ち合わせる世代の対応が複雑になり運用が困難になります。タイムゾーンの設定は,待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットで合わせることを推奨します。
  • 待ち合わせ対象ユニットの実行終了を安全に待ち合わせるために,待ち合わせ対象ユニットと待ち合わせ条件付きユニットの保存世代数は,少なくとも1日分の世代を保存できるよう設定してください。待ち合わせ対象ユニットの1日分の世代が保存できない場合,待ち合わせ条件付きユニットが実行を開始しないおそれがあります。また,待ち合わせ条件付きユニットの1日分の世代が保存できない場合,待ち合わせ条件付きユニットが意図しない待ち合わせ対象ユニットの世代を待ち合わせるおそれがあります。

(c) 待ち合わせ対象ユニットにプランニンググループを指定した場合

待ち合わせ対象ユニットにプランニンググループを指定した場合,待ち合わせ条件付きユニットが待ち合わせるユニットは,プランニンググループ配下で実行しているルートジョブネットになります。プランニンググループ配下で実行しているルートジョブネットが切り替わると,待ち合わせ条件付きユニットが待ち合わせるユニットも自動で切り替わります。

待ち合わせ対象ユニットにプランニンググループを指定した場合の例を,次の図に示します。

図2-32 待ち合わせ対象ユニットにプランニンググループを指定した場合の例

[図データ]

この例では,待ち合わせ対象ユニットのプランニンググループPに,6/1〜6/30で実行するルートジョブネットP1と,7/1〜7/31で実行するルートジョブネットP2を定義しています。6/1〜6/30では,ジョブ1はルートジョブネットP1を待ち合わせます。7/1になってプランニンググループ配下で実行するルートジョブネットがルートジョブネットP2に切り替わると,ジョブ1はルートジョブネットP2を待ち合わせます。

(3) 待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットの状態遷移

待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットの,運用中の状態遷移について説明します。

待ち合わせ条件付きユニットを実行登録すると,待ち合わせ条件付きユニットは,待ち合わせ対象ユニットの実行が終了するまで実行を開始しないで待ち合わせます。待ち合わせ対象ユニットが実行終了すると,待ち合わせ条件が成立して,待ち合わせ条件付きユニットは実行を開始します。

待ち合わせ条件が成立するときの待ち合わせ条件付きユニットの状態遷移を,次の図に示します。

図2-33 待ち合わせ条件付きユニットの状態遷移

[図データ]

待ち合わせ条件付きユニットは,待ち合わせ対象ユニットが「実行中」状態の間,「開始時刻待ち」または「先行終了待ち」状態で待ち合わせ条件の成立を待ちます。どちらの状態になるかは,待ち合わせ条件付きユニットのユニット種別によって異なります。

待ち合わせ条件付きユニットのユニット種別と待ち合わせ条件成立前の状態を,次の表に示します。待ち合わせ条件を設定できるユニット種別については,「(1)(a) 待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニット」を参照してください。

表2-11 待ち合わせ条件付きユニットのユニット種別と待ち合わせ条件成立前の状態

項番 待ち合わせ条件付きユニットのユニット種別 待ち合わせ条件成立前の状態
1 ルートジョブネット 開始時刻待ち
2 ネストジョブネット 先行終了待ち
3
  • 標準ジョブ
  • ジョブネットコネクタ
  • イベントジョブ
  • アクションジョブ
  • カスタムジョブ
  • 引き継ぎ情報設定ジョブ
先行終了待ち

待ち合わせ条件付きユニットが「開始時刻待ち」または「先行終了待ち」状態のときに,待ち合わせ対象ユニットが次の状態に遷移すると,待ち合わせ条件が成立します。

待ち合わせ条件が成立すると,待ち合わせ条件付きユニットが「実行中」状態に遷移し,実行を開始します。

なお,待ち合わせ対象ユニットが異常終了すると,待ち合わせ条件付きユニットは「開始時刻待ち」または「先行終了待ち」状態のまま,待ち合わせ条件の成立を待ち続けます。この場合,待ち合わせ対象ユニットの異常の原因を取り除いたあと,待ち合わせ対象ユニットを再実行してください。

また,待ち合わせ条件付きユニットや待ち合わせ対象ユニットを次のように定義していたり操作したりする場合,待ち合わせ条件が成立しても待ち合わせ条件付きユニットが実行されないことがあります。

このような場合での状態遷移の例について説明します。

(a) 待ち合わせ条件付きユニットに関連線で接続された先行ユニットがある場合

待ち合わせ条件付きユニットに関連線で接続された先行ユニットがある場合,待ち合わせ条件付きユニットは,先行ユニットが実行終了してから待ち合わせ条件が成立しているかどうかをチェックします。先行ユニットが実行終了しないうちに待ち合わせ条件が成立しても,待ち合わせ条件の成立チェックはされないため,待ち合わせ条件付きユニットは実行を開始しません。

関連線で接続された先行ユニットがある場合の例を,次の図に示します。

図2-34 関連線で接続された先行ユニットがある場合の例

[図データ]

[図データ]

この例では,待ち合わせ条件付きユニットのジョブ2に,待ち合わせ対象ユニットとしてネストジョブネット1が定義されています。また,先行ユニットとしてジョブ1が定義されています。

例1では,ジョブ1が実行終了してからネストジョブネット1が実行終了しています。この場合,ジョブ1が実行終了した時点でジョブ2は待ち合わせ条件の成立チェックを開始します。そのため,ネストジョブネット1が実行終了して待ち合わせ条件が成立すると,ジョブ2は実行を開始します。

例2では,ネストジョブネット1が実行終了してからジョブ1が実行終了しています。この場合,ネストジョブネット1が正常終了しても,ジョブ2は待ち合わせ条件の成立チェックを開始していないため,ジョブ2は実行されません。ジョブ1が正常終了すると,ジョブ2は待ち合わせ条件の成立チェックを開始します。待ち合わせ条件の成立チェック開始時点でネストジョブネット1が正常終了していれば,待ち合わせ条件は成立し,ジョブ2はすぐに実行を開始します。

(b) 待ち合わせ条件付きユニットに保留属性を設定している場合

待ち合わせ条件付きユニットに保留属性を設定している場合,待ち合わせ条件が成立しても,待ち合わせ条件付きユニットの実行は開始されないで保留されます。

保留属性を設定する場合の例を,次の図に示します。

図2-35 保留属性を設定する場合の例

[図データ]

この例では,待ち合わせ条件付きユニットのジョブ1が「先行終了待ち」状態の間に,ジョブ1に保留属性を設定しています。この場合,待ち合わせ条件が成立しても,ジョブ1は実行を開始しないで「保留中」状態に遷移します。保留設定が解除されると,ジョブ1は実行を開始します。

(c) 待ち合わせ条件付きユニットを重複して複数回実行する場合

待ち合わせ条件付きユニットを重複して複数回実行する場合,ルートジョブネットの多重起動やスケジューリング方式の設定に従って,待ち合わせ条件が成立しても実行中の世代の終了を待ってから実行されたり,ルートジョブネットの次回実行予定が「繰り越し未実行」となって実行されなかったりすることがあります。

多重起動およびスケジューリング方式の違いによる状態遷移の例を,次の図に示します。

図2-36 多重起動およびスケジューリング方式の違いの例

[図データ]

[図データ]

例1では,待ち合わせ条件付きユニットのルートジョブネットBの詳細定義に,多重起動として「不可能」を,スケジューリング方式として「多重スケジュール」を設定しています。ルートジョブネットBの世代1が「実行中」状態のときにルートジョブネットBを即時実行すると,世代2が生成されて,「開始時刻待ち」状態でルートジョブネットA/ジョブ1の世代2の実行終了を待ち合わせます。ジョブ1の世代2が実行終了して待ち合わせ条件が成立すると,多重起動できないため,ルートジョブネットBの世代2は「開始時刻待ち」状態のままルートジョブネットBの世代1の実行終了を待ちます。そのあと,ルートジョブネットBの世代1が実行終了すると,ルートジョブネットBの世代2は実行を開始します。

例2では,ルートジョブネットBの詳細定義に,多重起動として「不可能」を,スケジューリング方式として「スケジュールスキップ」を設定しています。ルートジョブネットBの世代1が「実行中」状態のときにルートジョブネットBを即時実行すると,世代2が生成されます。しかし,世代1が実行中のため,世代2はスキップされて,「繰り越し未実行」状態に遷移します。そのあと,ルートジョブネットAのジョブ1の世代2が正常終了しても,ルートジョブネットBの世代2は終了しているので,実行を開始しません。

例3では,ルートジョブネットBの詳細定義に,多重起動として「可能」を,スケジューリング方式として「多重スケジュール」を設定しています。ルートジョブネットBの世代1が「実行中」状態のときにルートジョブネットBを即時実行すると,世代2が生成されて,「開始時刻待ち」状態でルートジョブネットA/ジョブ1の世代2の実行終了を待ち合わせます。ジョブ1の世代2が実行終了して待ち合わせ条件が成立すると,ルートジョブネットBの世代2は実行を開始します。

注意事項
ルートジョブネットに待ち合わせ条件を設定する場合は,次回実行予定の開始予定時刻になる前に,前回の実行予定の待ち合わせ条件が成立して,実行を開始するように運用してください。多重起動を設定して多重スケジュールを指定していても,前回の実行予定が実行を開始していない場合は,次回実行予定は待ち合わせ条件が成立しても実行を開始しません。

(d) 待ち合わせ条件付きユニットまたは待ち合わせ対象ユニットを再実行する場合

待ち合わせ条件付きユニットまたは待ち合わせ対象ユニットを再実行する場合の,ユニットの状態遷移について説明します。

待ち合わせ条件付きユニットを再実行する場合
一度待ち合わせ条件が成立した待ち合わせ条件付きユニットを再実行しても,待ち合わせ条件は未成立には戻りません。そのため,待ち合わせ条件が成立して実行終了した待ち合わせ条件付きユニットをそのまま再実行すると,待ち合わせ条件付きユニットは待ち合わせを開始しますが,待ち合わせ条件はすでに成立しているため,すぐに実行を開始します。
待ち合わせ条件付きユニットを再実行する場合の例を,次の図に示します。

図2-37 待ち合わせ条件付きユニットを再実行する場合の例

[図データ]
この例では,待ち合わせ対象ユニットのジョブ1が正常終了して待ち合わせ条件が成立したあと,ルートジョブネットBを再実行しています。ルートジョブネットBを再実行しても,待ち合わせ条件はすでに成立しているため,ルートジョブネットBはジョブ1の実行終了を待ち合わせないで実行を開始します。

待ち合わせ対象ユニットを再実行する場合
待ち合わせ対象ユニットを再実行すると,待ち合わせ対象ユニットだけが再実行され,待ち合わせ条件付きユニットは再実行されません。
待ち合わせ対象ユニットを再実行する場合の例を,次の図に示します。

図2-38 待ち合わせ対象ユニットを再実行する場合の例

[図データ]
この例では,待ち合わせ対象ユニットのジョブ1および待ち合わせ条件付きユニットのルートジョブネットBが正常終了している場合に,ジョブ1を再実行しています。ジョブ1は実行を開始しますが,ルートジョブネットBは正常終了したまま,再実行しません。

注意事項
待ち合わせ対象ユニットの後続ユニットを再実行する場合,再実行による待ち合わせ対象ユニットの状態の変化に注意してください。
待ち合わせ対象ユニットの後続ユニットを再実行する例を,次の図に示します。

図2-39 待ち合わせ対象ユニットの後続ユニットを再実行する例

[図データ]
この例では,待ち合わせ対象ユニットであるジョブ2,およびその後続ユニットのジョブ3が「未実行終了」状態の場合に,ジョブ3を再実行しています。ジョブ3を再実行すると,ジョブ2は「未実行終了」状態から「計画未実行」状態に遷移します。そのため,待ち合わせ条件が成立し,待ち合わせ条件付きユニットのルートジョブネットAが実行を開始します。
待ち合わせ対象ユニットの後続ユニットを再実行する場合は,状態が変化するユニットの中に待ち合わせ対象ユニットがないか検索するなどして,影響範囲を明確にしてから再実行してください。再実行の詳細は,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 導入ガイド 4.5.11 実行が終了したジョブネットやジョブを再実行する」を参照してください。待ち合わせ条件の検索方法については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 操作ガイド 10.2 ユニットを検索して表示する」を参照してください。

(4) 待ち合わせ条件付きユニットの動作の設定

待ち合わせ条件には,待ち合わせ対象ユニット名以外に,次の項目を設定できます。

待ち合わせ条件付きユニットの待ち合わせ方法,および待ち合わせる世代がない場合の待ち合わせ条件付きユニットの動作について,次に説明します。

(a) 待ち合わせ対象ユニットが複数ある場合の待ち合わせ方法

一つの待ち合わせ条件付きユニットに対して,待ち合わせ対象ユニットを最大で32個指定できます。待ち合わせ対象ユニットを複数指定した場合,待ち合わせ方法として,すべての待ち合わせ対象ユニットの実行終了を待ち合わせるのか,どれか一つの待ち合わせ対象ユニットの実行終了を待ち合わせるのかを設定できます。

待ち合わせ方法は次の二つから選択します。

ANDとORの動作の違いを,次の図に示します。

図2-40 ANDとORの動作の違い

[図データ]

この例では,待ち合わせ条件付きユニットのジョブ1に,待ち合わせ対象ユニットとしてネストジョブネット1およびネストジョブネット2を指定しています。

例1の待ち合わせ方法が「AND」の場合,ネストジョブネット1とネストジョブネット2の両方が実行終了すると,待ち合わせ条件が成立し,ジョブ1が実行を開始します。

例2の待ち合わせ方法が「OR」の場合,ネストジョブネット1が実行終了した時点で待ち合わせ条件が成立し,ジョブ1が実行を開始します。

注意事項
一つの待ち合わせ条件付きユニットに対する待ち合わせ対象ユニットの数が多いと,JP1/AJS3の処理速度に影響するおそれがあります。一つの待ち合わせ条件付きユニットに対する待ち合わせ対象ユニット数は,できるだけ少なくなるように設計してください。
待ち合わせ対象ユニットの数を少なくする例を,次の図に示します。

図2-41 待ち合わせ対象ユニットの数を少なくする例

[図データ]
待ち合わせ対象ユニットが多い場合の例では,ジョブ1,ジョブ2,およびジョブ3を,待ち合わせ条件付きユニットのジョブ4の待ち合わせ対象ユニットとして指定しています。この例で待ち合わせ対象ユニットを減らすためには,待ち合わせ対象ユニットが少ない場合の例のように,ジョブ1,ジョブ2,およびジョブ3の後続ユニットとして何もしないジョブのジョブ0を定義して,それぞれを関連線で接続します。ジョブ0をジョブ4の待ち合わせ対象ユニットとして指定することで,待ち合わせ対象ユニットを減らすことができます。ただし,この図のように何もしないジョブを定義すると,ジョブ管理がしづらくなります。本来存在しないユニットを定義して待ち合わせ条件を指定するのは,性能が確保できない場合だけにしてください。

補足事項
待ち合わせ方法が「AND」の場合に,待ち合わせ対象ユニットの一部が実行終了している状態でスケジューラーサービスをホットスタートで再起動すると,再起動後でも,再起動前の待ち合わせ条件の成立状態が維持されます。そのため,再起動後に実行終了していない待ち合わせ対象ユニットが実行終了すると,待ち合わせ条件は成立します。
例えば図2-40の例1の場合で,ネストジョブネット1が正常終了していてネストジョブネット2が実行中のときにスケジューラーサービスをホットスタートで再起動したとします。この場合,再起動後にネストジョブネット2が実行終了すれば,待ち合わせ条件が成立します。

(b) 待ち合わせ対象ユニットに待ち合わせる世代がない場合の待ち合わせ条件付きユニットの動作

待ち合わせ条件付きユニットは,「(2) 待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットの待ち合わせルール」の待ち合わせルールに従って,待ち合わせ対象ユニットの世代の実行終了を待ち合わせます。しかし,待ち合わせ対象ユニットに待ち合わせルールを満たす世代がない場合,待ち合わせ条件付きユニットは,次のどちらかのように動作します。

なお,この設定は,待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットが異なるルートジョブネット配下にある場合に有効です。待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットが同じルートジョブネット配下にある場合,両ユニットは同じ世代で実行されるため,待ち合わせ対象ユニットに待ち合わせルールを満たす世代は必ず存在します。

待ち合わせ対象ユニットに待ち合わせる世代がない場合の設定による動作の違いを,次の図に示します。

図2-42 待ち合わせ対象ユニットに待ち合わせる世代がない場合の設定による動作の違い

[図データ]

例1では,待ち合わせ対象ユニットに待ち合わせる世代がない場合の設定を,「実行を開始しない」にしています。待ち合わせ条件付きユニットのジョブ1の上位ユニットであるルートジョブネットBを即時実行すると,ジョブ1の世代が生成されます。このとき,待ち合わせ対象ユニットのネストジョブネット1に世代がないため,ジョブ1は「先行終了待ち」状態に遷移して待ち合わせ条件の成立を待ち続けます。ネストジョブネット1の上位ユニットであるルートジョブネットAを即時実行してネストジョブネット1が正常終了すると,待ち合わせ条件が成立して,ジョブ1が実行を開始します。

例2では,待ち合わせ対象ユニットに待ち合わせる世代がない場合の設定を,「実行を開始する」にしています。ルートジョブネットBを即時実行すると,ジョブ1の世代が生成されます。このとき,待ち合わせ対象ユニットのネストジョブネット1に世代がないため,ジョブ1はすぐに実行を開始します。ジョブ1の実行開始後にネストジョブネット1の上位ユニットであるルートジョブネットAを即時実行して,ネストジョブネット1が実行終了しても,ジョブ1は実行を開始しません。

補足事項
  • 待ち合わせ対象ユニットが「未計画」状態でも,待ち合わせ対象ユニットのルートジョブネットに実行予定がある場合,待ち合わせる世代がない場合の設定は有効になりません。この場合,ルートジョブネットを実行すると,待ち合わせ対象ユニットは「計画未実行」状態に遷移します。そのため,待ち合わせ対象ユニットは実行終了したと見なされ,待ち合わせ条件が成立します。
  • 「実行を開始する」を指定していても,待ち合わせ対象ユニットのルートジョブネットが「未登録」状態の場合,待ち合わせ条件付きユニットは実行を開始しません。

(5) 待ち合わせ条件の一時変更

待ち合わせ条件で指定した待ち合わせ対象ユニットとの待ち合わせを,一時的に有効/無効に変更できます。

実行終了した待ち合わせ条件付きユニットの待ち合わせを有効にすると,待ち合わせ状態が「未完了(手動)」になります。このユニットを再実行すると,待ち合わせを再開します。また,待ち合わせ対象ユニットの実行終了を待ち合わせている待ち合わせ条件付きユニットの待ち合わせを無効にすると,待ち合わせ状態が「完了(手動)」になります。待ち合わせ方法が「AND」の場合,すべての待ち合わせ状態を「完了(手動)」にすると,待ち合わせ条件付きユニットは実行を開始します。待ち合わせ方法が「OR」の場合,待ち合わせ対象ユニットのどれか一つの待ち合わせ状態を「完了(手動)」に変更すると,待ち合わせ条件付きユニットは実行を開始します。

待ち合わせ条件の有効化/無効化と待ち合わせ状態の関係を,次の図に示します。

図2-43 待ち合わせ条件の有効化/無効化と待ち合わせ状態の関係

[図データ]

待ち合わせ対象ユニットが実行中で,待ち合わせ条件付きユニットが「開始時刻待ち」または「先行終了待ち」状態にあるとき,待ち合わせ状態は「未完了」です。この状態で待ち合わせを無効にすると,待ち合わせ状態は「完了(手動)」になり,待ち合わせ条件付きユニットが実行を開始します。待ち合わせ条件付きユニットの実行終了後,待ち合わせを有効にすると,待ち合わせ状態は「未完了(手動)」に遷移します。この状態で待ち合わせ条件付きユニットを再実行すると,待ち合わせ条件付きユニットは待ち合わせを再開します。そのため,待ち合わせ対象ユニットが正常終了すると,待ち合わせ状態は「完了」に遷移して待ち合わせ条件付きユニットは実行を開始します。

待ち合わせ条件の設定の一時変更は,[待ち合わせ条件の状態一覧]ウィンドウの[操作]−[待ち合わせ]−[待ち合わせ有効化]または[待ち合わせ無効化]を選択することで実行できます。

待ち合わせ条件の設定の一時的な変更については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 導入ガイド 4.5.15 ジョブネットやジョブの待ち合わせ条件の設定を一時変更する」を参照してください。

(6) 待ち合わせ対象ユニットの定義が不正な場合の待ち合わせ条件付きユニットの動作

待ち合わせ条件を使用してユニット間の実行順序を制御する場合に,待ち合わせ対象ユニットに対して次のような操作をすると,待ち合わせ条件で実行順序を制御できなくなります。

このことを,待ち合わせ対象ユニットの定義不正といいます。待ち合わせ対象ユニットの定義不正が発生した場合の待ち合わせ条件付きユニットの動作は,待ち合わせ対象ユニットを実行登録しているかどうかと,待ち合わせ対象ユニットがサスペンド中かどうかで異なります。

待ち合わせ対象ユニットが未登録またはサスペンド中の場合
メッセージKAVS4957-EまたはKAVS4971-Eが出力され,待ち合わせ条件付きユニットの実行は開始されません。
待ち合わせ対象ユニットがサスペンド中である場合,そのユニットが実行終了しても待ち合わせは完了しません。また,異常終了したり,削除されたりしても,待ち合わせ条件付きユニットは異常終了したり,メッセージを出力したりしません。このような場合の待ち合わせ条件付きユニットの動作は,待ち合わせ対象ユニットのサスペンドが解除された時点の,待ち合わせ対象ユニットの状態に依存します。

待ち合わせ対象ユニットが実行登録済みでサスペンド中ではない場合
メッセージKAVS4954-Eが出力され,待ち合わせ条件付きユニットが異常終了します。

待ち合わせ対象ユニットの定義不正の例を,次の図に示します。

図2-44 待ち合わせ対象ユニットの定義不正の例

[図データ]

この例では,待ち合わせ対象ユニットにリモートジョブネットを指定しているため,定義不正になっています。リモートジョブネットAを未登録のままルートジョブネットBを実行登録すると,待ち合わせ条件付きユニットのジョブ1は「先行終了待ち」状態で待ち合わせ対象ユニットの実行終了を待ち合わせます。このとき,待ち合わせ対象ユニットが未登録であることを知らせるエラーメッセージが出力されます。そのあと,リモートジョブネットAを実行登録すると,リモートジョブネットAには実行予定世代が生成されますが,ジョブ1は待ち合わせ対象ユニットの定義不正のため異常終了します。

なお,待ち合わせ条件の設定後,待ち合わせ対象ユニットのルートジョブネットやプランニンググループを削除・移動したり名称を変更したりした場合も,待ち合わせ対象ユニットの定義不正です。この場合,待ち合わせ条件付きユニットは実行開始後,すぐに異常終了します。

待ち合わせ方法に「OR」を指定している場合,待ち合わせ対象ユニットの定義不正を検知する前にほかの待ち合わせ対象ユニットが実行終了して待ち合わせ条件が成立すると,待ち合わせ条件付きユニットの実行が開始されます。しかし,待ち合わせ対象ユニットの定義不正を先に検知すると,待ち合わせ条件付きユニットは異常終了します。

待ち合わせ対象ユニットの定義不正の防止方法
待ち合わせ対象ユニットの定義不正を防止するために,待ち合わせ対象ユニットのユニット名を変更したり,待ち合わせ対象ユニットを削除したりした場合,待ち合わせ条件付きユニットに設定してある待ち合わせ条件もあわせて変更してください。
また,待ち合わせ対象ユニットの定義不正を事前にチェックすることもできます。チェック方法には,次の二つがあります。
  • 定義内容の事前チェック
    定義内容の事前チェック機能を使用すると,待ち合わせ条件が正しいかチェックできます。定義内容の事前チェックについては,「8. 定義内容の事前チェック」を参照してください。
    なお,次の点はチェックできないため,待ち合わせ条件設定後に動作を確認する必要があります。
    ・待ち合わせ条件による実行順序のループ
    ・プランニンググループ配下のネストジョブネットやジョブを待ち合わせ対象ユニットとした場合の定義不正
  • [待ち合わせ条件の設定一覧]ウィンドウでのチェック
    JP1/AJS3 - Viewの[待ち合わせ条件の設定一覧]ウィンドウで,待ち合わせ対象ユニットの定義不正をチェックできます。[待ち合わせ条件の設定一覧]ウィンドウでの待ち合わせ対象ユニットの確認方法については,「(7) 待ち合わせ対象ユニットの確認方法」を参照してください。

(7) 待ち合わせ対象ユニットの確認方法

JP1/AJS3 - Viewまたはajsshowコマンドを使って待ち合わせ条件付きユニットを定義・監視する場合,次の方法を使うと,待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットを一覧で確認できます。

待ち合わせ条件の設定内容を確認する
JP1/AJS3 - Viewの[待ち合わせ条件の設定一覧]ウィンドウは,待ち合わせ条件の設定内容を確認するときに使用します。
[待ち合わせ条件の設定一覧]ウィンドウを,次の図に示します。

図2-45 [待ち合わせ条件の設定一覧]ウィンドウ

[図データ]
任意のユニットの配下にあるすべての待ち合わせ条件付きユニットを一覧で表示して,それぞれの待ち合わせ条件付きユニットに対して設定してある待ち合わせ対象ユニットを表示します。それぞれの待ち合わせ対象ユニットに対して,定義不正がないかを確認したり,待ち合わせ方法および待ち合わせる世代がない場合の動作の設定を確認したりできます。

待ち合わせ条件の状態を確認する
JP1/AJS3 - Viewの[待ち合わせ条件の状態一覧]ウィンドウおよびajsshowコマンドの-xwオプションは,運用中の待ち合わせ条件付きユニットに対して設定されている待ち合わせ対象ユニットの状態を確認するときに使用します。
[待ち合わせ条件の状態一覧]ウィンドウを,次の図に示します。

図2-46 [待ち合わせ条件の状態一覧]ウィンドウ

[図データ]
任意の待ち合わせ条件付きユニットを一覧で表示して,それぞれの待ち合わせ条件付きユニットに対して設定してある待ち合わせ対象ユニットを表示します。待ち合わせ対象ユニットの[ジョブネットモニタ]ウィンドウを表示しなくても,待ち合わせ対象ユニットが正常に実行しているかどうかを確認できます。待ち合わせ状態を確認することもできます。
また,待ち合わせ条件付きユニットの待ち合わせを,待ち合わせ対象ユニットごとに有効/無効にしたり,待ち合わせ対象ユニットの状態を表示する[ジョブネットモニタ]ウィンドウを開いたりすることもできます。
ajsshowコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス1 2. コマンド ajsshow」を参照してください。

注意事項
  • 待ち合わせ条件付きユニットに対して設定してある待ち合わせ対象ユニットの数が多い場合,[待ち合わせ条件の状態一覧]ウィンドウの表示に時間が掛かります。「(4)(a) 待ち合わせ対象ユニットが複数ある場合の待ち合わせ方法」の注意事項を参考に,待ち合わせ対象ユニットの数はできるだけ減らしてください。
  • [待ち合わせ条件の状態一覧]ウィンドウから待ち合わせ対象ユニットの[ジョブネットモニタ]ウィンドウを開くには,待ち合わせ対象ユニット,およびその上位ジョブネットに対してJP1_AJS_Guest権限が必要です。
  • [待ち合わせ条件の状態一覧]ウィンドウおよびajsshowコマンドで確認できる待ち合わせ対象ユニットの情報は,常に待ち合わせルールに基づいて求めた情報を表示します。そのため,待ち合わせの有効化と再実行によって,再度待ち合わせを開始する際に,待ち合わせ条件付きユニットがどのように動作するか(待ち合わせ対象ユニットの実行終了を待つか,待ち合わせがすぐ完了して実行を開始するか,など)を予測することができます。
    一方,待ち合わせ対象ユニットや待ち合わせ条件付きユニットに世代の追加・削除などの操作を行うと,待ち合わせルールによって求まる待ち合わせ対象ユニットの世代が変更されるため,待ち合わせ状態が「完了」になったときの待ち合わせ対象ユニットの情報とは異なる世代の情報が表示される場合があります。常に待ち合わせ状態が「完了」になったときの待ち合わせ対象ユニットの情報を表示するには,待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットの世代を,どちらも1日分の世代数を保存するようにして,求まる待ち合わせ対象ユニットの世代が一定になるようにしてください。待ち合わせルールについては,「2.2.5(2) 待ち合わせ条件付きユニットと待ち合わせ対象ユニットの待ち合わせルール」を参照してください。

[待ち合わせ条件の設定一覧]ウィンドウおよび[待ち合わせ条件の状態一覧]ダイアログボックスの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 操作ガイド 15. ウィンドウとダイアログボックス」を参照してください。

(8) 待ち合わせ条件を使用した実行順序制御とジョブネットコネクタを使用した実行順序制御の使い分け

異なるルートジョブネット同士の実行順序を制御したい場合,待ち合わせ条件を設定したり,ジョブネットコネクタを使用したりして,ユニット同士を連携できます。しかし,JP1/AJS3を運用していく上では,ユニットの監視のしやすさを考慮すると,ジョブネットコネクタの使用を推奨します。待ち合わせ条件は,次に示すように限定された状況だけで使用するようにしてください。

待ち合わせ条件を使用した場合と,ジョブネットコネクタを使用した場合の長所と短所を,次の表に示します。

表2-12 待ち合わせ条件を使用した場合とジョブネットコネクタを使用した場合の長所と短所

観点 待ち合わせ条件 ジョブネットコネクタ
ユニット構成に関する長所と短所

長所
後続側のユニット(待ち合わせ条件付きユニット)に待ち合わせ条件を設定するだけで定義できるため,ジョブネットの構造を変更する必要がない。

短所
特になし。

長所
特になし。

短所
  • ジョブネットコネクタを新しく定義する必要がある。
  • ネストジョブネットを接続先のジョブネットとして定義したい場合,ネストジョブネットを新しくルートジョブネットとして分割する必要がある。
ユニットの詳細定義に関する長所と短所

長所
先行側のユニット(待ち合わせ対象ユニット)の詳細定義を編集する必要がない。

短所
特になし。

長所
特になし。

短所
接続先のジョブネットの詳細定義に,接続範囲やジョブネットコネクタ名を定義する必要がある。
連携方法の設定に関する長所と短所

長所
  • ルートジョブネット,ネストジョブネット,および各種ジョブ同士を連携できる。
  • 一つの待ち合わせ条件付きユニットに対して,複数の待ち合わせ対象ユニットを設定できる。

短所
異なるスケジューラーサービスのユニット同士を連携できない。連携させたい場合は,ジョブネットコネクタなどを利用してジョブネットを定義し直す必要がある。そのため,待ち合わせ条件とそれ以外の方法を併用する必要がある。

長所
異なるスケジューラーサービスにあるルートジョブネット同士でも連携できる。そのため,連携方法をジョブネットコネクタに統一できる。

短所
  • 連携できるユニットは,ルートジョブネットだけである。
  • 一つのジョブネットコネクタにつき,連携できるルートジョブネットは一つだけである。
ユニットの監視に関する長所と短所

長所
[待ち合わせ条件の状態一覧]ウィンドウを使用して,待ち合わせ対象ユニットと待ち合わせ条件付きユニットを一覧で確認できる。

短所
  • 待ち合わせ対象ユニットと待ち合わせ条件付きユニットは,関連線で関連づけられないため,実行順序が把握しづらい。
  • 待ち合わせ対象ユニットの状態が,待ち合わせ条件付きユニットの状態に反映されない。

長所
  • ジョブネットコネクタをほかのユニットと関連線で関連づけられるため,実行順序が把握しやすい。
  • 接続先のジョブネットの状態がジョブネットコネクタに反映されるため,ジョブネットコネクタを定義しているルートジョブネットを監視すれば,接続先のジョブネットの状態を一元監視できる。

短所
特になし。

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