JP1/Base 運用ガイド
JP1/Baseは,JP1/IMやJP1/AJS2などのJP1製品の基盤となる機能を提供しています。JP1/Baseの機能を利用すると,JP1/IMやJP1/AJS2は,他ホストへコマンドを実行したり,ジョブを実行したりできます。JP1/Baseが提供する機能を次に示します。
- ユーザー管理機能
ユーザー管理機能とは,ユーザーがJP1/IM - ManagerやJP1/AJS2 - Managerなど,JP1のマネージャー製品がインストールされた各ホストにアクセスする権限,および各ホスト上にあるJP1資源(ジョブ,ジョブネット,イベントなど)に対して操作する権限を管理する機能です。この機能は,JP1/IM,JP1/AJS2などJP1/Baseを前提とするJP1製品を利用する場合に必要となります。この機能を使って,ユーザーにさまざまな権限を与えます。なお,ユーザー管理機能には,ユーザー認証機能,ユーザーマッピング機能の二つの機能があります。それぞれについて以下で説明します。
- ユーザー認証機能
- JP1/IM - ViewやJP1/AJS2 - Viewなどのビューアーからマネージャーへのログイン認証,およびログインしたユーザーの操作権限を制御する機能です。なお,Windowsの場合,ディレクトリサーバと連携したログイン認証もできます。
- ユーザーマッピング機能
- JP1/IM,JP1/AJS2などを利用するユーザー(JP1ユーザー)に,各ホストに登録されたユーザー(OSユーザー)の権限を与える機能です。
- サービスの起動管理機能(Windows限定)
起動管理機能とは,サービスの起動順序や終了順序を制御する機能です。サービスの起動順序や終了順序を起動順序定義ファイルに指定して,サービスの起動順序や終了順序を制御します。起動管理機能には,次に示す二つの機能があります。
- サービスの起動順序の制御
- 起動順序定義ファイルに記述された順序に従って,サービスを起動できます。
- サービスの終了順序の制御
- 起動順序定義ファイルに記述された逆の順序に従って,サービスを終了できます。なお,この機能を利用する場合,JP1/Power Monitorが必要となります。
- イベントサービス機能
イベントサービス機能とは,システムで何らかの事象が発生したときにJP1/Baseに通知される事象(JP1イベント)を管理したり,ほかのホストとJP1イベントを送受信したりする機能です。JP1/Base独自のデータベース(イベントデータベース)にJP1イベントを格納し,フィルターを使うと他ホストとのJP1イベントの送受信を制御できます。また,JP1/Baseが提供するイベントサービス機能は,バージョン5以前の製品であるJP1/IM,JP1/SESおよびJP1/AJSが提供していたイベント環境と互換性を持ちます。
- イベント変換機能
イベント変換機能とは,ログメッセージやSNMPトラップをJP1イベントに変換する機能です。この機能を使って,ログメッセージやSNMPトラップをJP1/Baseの管理形式であるJP1イベントに変換します。JP1イベントに変換された情報は,イベントサービス機能で提供しているイベントデータベースに格納され,JP1シリーズのプログラムが発行するJP1イベントと同様に管理できます。イベント変換機能には,次に示す三つの機能があります。
- ログファイルトラップ機能
- アプリケーションプログラムのログをJP1イベントに変換する機能です。
- イベントログトラップ機能(Windows限定)
- WindowsのイベントログをJP1イベントに変換する機能です。
- SNMPトラップ変換機能
- HP OpenView NNMまたはJP1/Cm2/NNMが管理するSNMPトラップをJP1イベントに変換する機能です。なお,この機能は,NNMが対応していないOS(Windows Server 2008やLinuxなど)では使用できません。
- 定義収集・配布機能(JP1/IM用)
定義収集・配布機能とは,JP1/BaseやJP1製品で定義した情報を収集および配布する機能です。なお,この機能はJP1/IMのシステム環境下でなければ使用できません。この機能を利用すると次のことが行えます。
- イベントサービスの定義情報の収集と配布
- 転送設定ファイルおよびイベント変換機能で使用する定義ファイルの定義情報を収集・配布できます。
- JP1製品の定義情報の収集
- JP1/AJS2のジョブネット定義やJP1/Cm2/SSO定義など,JP1製品が管理する定義情報を収集できます。収集された定義情報はJP1/IMの監視対象としてJP1/IMで管理されます。詳細については,マニュアル「JP1/Integrated Management - Manager システム構築・運用ガイド」を参照してください。
- プロセス管理機能
プロセス管理機能とは,JP1/Baseの起動,停止などの動作を制御する機能です。以下の機能を制御します。
構成管理機能は,JP1/IMの構成を管理する機能です。コマンド実行機能は,JP1/IMから要求されたコマンドを実行する機能です。
- ユーザー管理機能
- 構成管理機能
- コマンド実行機能
- 定義情報収集・配布機能
- ヘルスチェック機能
- ヘルスチェック機能
ヘルスチェック機能とは,JP1/Baseの各プロセスを監視し,プロセスにハングアップなどの異常が生じた場合にメッセージやJP1イベントで通知する機能です。この機能を使用すると,プロセスの異常を早期に検知できます。また,異常が発生したプロセスを容易に特定できるため,異常時の影響を最小限に抑えた対処ができます。
- ISAMファイル関連のユーティリティコマンド
JP1/Baseでは,ISAMを利用する場合に役立つユーティリティコマンドを提供しています。このコマンドの詳細については,「13. コマンド」を参照してください。
- 統合トレース機能(HNTRLib2)
統合トレース機能とは,JP1/Baseを前提とする製品(JP1/IMやJP1/AJS2)を含めた動作処理の流れをトレースする機能です。トレースした結果は,ログ情報として保管され,障害が発生した場合などの原因究明に役立ちます。
JP1/Baseが提供する各機能は,OSによってはサポートされていない機能もあります。OSによる各機能のサポート状況を次の表に示します。
表1-1 OSによるJP1/Baseの各機能サポート状況一覧(Windowsの場合)
機能一覧 OS Win Win(V) Win(IPF) Win(2008) ユーザー管理 ユーザー認証 ○ ○ ○ ○ ディレクトリサーバによるユーザー認証※1 △ − ○ − ユーザーマッピング ○ ○ ○ ○ 起動管理 起動順序の制御 ○ ○ ○ ○ 終了順序の制御※2 ○ ○ ○ ○ イベントサービス ○ △※3 △※3 △※3 イベント変換 ログファイルトラップ ○ ○ ○ ○ イベントログトラップ ○ △※4 ○ △※4 SNMPトラップ変換 △※5 − − − 定義収集・配布 イベントサービスの定義情報の収集と配布 ○ ○ ○ ○ JP1製品の定義情報の収集 ○ ○ ○ ○ プロセス管理機能 ○ ○ ○ ○ ヘルスチェック機能 ○ ○ ○ ○ ISAMファイル関連のユーティリティコマンド ○ ○ ○ ○ 統合トレース(HNTRLib2) ○ ○ ○ ○
- (凡例)
- Win:Windows XP Professional,Windows Server 2003およびWindows Server 2003(x64)
- Win(V):Windows Vista
- Win(IPF):Windows Server 2003(IPF)
- Win(2008):Windows Server 2008
- ○:サポートしている。
- △:一部サポートしていない。
- −:サポートしていない。
注※1 連携するディレクトリサーバはActive Directoryです。Windows Server 2003およびWindows Server 2003(IPF)で動作するJP1/Baseだけサポートしています。
注※2 終了順序制御をしたい場合,JP1/Power Monitorが必要となります。
注※3 IPF版JP1/Baseでは,バージョン5のJP1/SESから環境設定やコマンドを移行するためのツール(jevmkcompatコマンド,jevconfcopyコマンド)は提供していません。また,バージョン5互換用イベントの受信はサポートしていますが,送信はサポートしていません。
注※4 Windows VistaおよびWindows Server 2008で追加されたイベント種別には対応していません。
注※5 Windows XP ProfessionalおよびWindows Server 2003で動作するJP1/Baseだけサポートしています。
表1-2 OSによるJP1/Baseの各機能サポート状況一覧(UNIXの場合)
機能一覧 OS HP HP
(IPF)Sol(G) Sol(N) AIX Lin Lin
(IPF)ユーザー管理 ユーザー認証 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ディレクトリサーバによるユーザー認証※1 − − − − − − − ユーザーマッピング ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 起動管理※1 起動順序の制御 − − − − − − − 終了順序の制御 − − − − − − − イベントサービス ○ △※2 ○ △※3 ○ ○ △※2 イベント変換 ログファイルトラップ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ イベントログトラップ※1 − − − − − − − SNMPトラップ変換 ○ ○ ○ − − − − 定義収集・配布 イベントサービスの定義情報の収集と配布 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ JP1製品の定義情報の収集 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ プロセス管理機能 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ヘルスチェック機能 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ISAMファイル関連のユーティリティコマンド ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 統合トレース(HNTRLib2) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
- (凡例)
- HP:HP-UX(PA-RISC)
- HP(IPF):HP-UX(IPF)
- Sol(G):Solaris大域ゾーン
- Sol(N):Solaris非大域ゾーン
- AIX:AIX
- Lin:Linux AS 4(x86),Linux ES 4(x86),Linux AS 4(AMD64 & Intel EM64T),Linux ES 4(AMD64 & Intel EM64T),Linux 5(x86)およびLinux 5(AMD/Intel 64)
- Lin(IPF):Linux AS 4(IPF)およびLinux 5(IPF)
- ○:サポートしている。
- △:一部サポートしていない。
- −:サポートしていない。
注※1 UNIXではサポートしていません。
注※2 IPF版JP1/Baseでは,バージョン5のJP1/SESから環境設定やコマンドを移行するためのツール(jevmkcompatコマンド,jevconfcopyコマンド)は提供していません。
注※3 ユーザーアプリケーションの再コンパイルが必要です。バージョン5互換用イベントは使用できません。
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