2.3.7 LANの通信可否による系切り替え制御機能
LANの通信可否による系切り替え制御機能とは,系障害時にLANの通信が可能な唯一の系で実行サーバが稼働するように制御することです。
この機能を使用するかどうかは「1.4 系切り替えの方式」および「3.1 HAモニタで使用できる機能一覧」を参照して判断してください。
なお,この機能を使う場合,通信可否の判断に用いる業務用LANは,監視パスとしても使用するように構成する必要があります。
環境設定例については,「(11) LANの通信可否による系切り替え制御機能を使用する場合の環境設定例」を参照してください。
- 〈この項の構成〉
(1) 系障害検出時の系切り替え
LANの通信可否による系切り替え制御機能を使用した場合の系切り替えについて説明します。
- マルチスタンバイ機能を使用しない場合
-
現用系または予備系で系障害を検出した場合,HAモニタは,LANの通信可否をチェックします。そして,LANで通信ができる系で実行サーバとして稼働し,LANで通信ができない系のサーバを停止させます。
監視パス障害によって系障害を検出した場合,現用系の業務用LANで通信不可,予備系の業務用LANで通信可だったときの,動作の流れを次の図に示します。
図2‒17 現用系の業務用LANで通信不可,予備系の業務用LANで通信可だったときの系切り替え 監視パス障害によって系障害を検出した場合,現用系の業務用LANで通信可,予備系の業務用LANで通信不可だったときの,動作の流れを次の図に示します。
図2‒18 現用系の業務用LANで通信可,予備系の業務用LANで通信不可だったときの系切り替え - マルチスタンバイ機能を使用する場合
-
「(3) LANの通信可否による系切り替え制御機能」を参照してください。
(2) 現用系がスローダウンから回復した際の動作
現用系がスローダウンとなり,予備系が系障害を検出してサーバを系切り替えした場合,現用系がスローダウンから回復すると,現用系のHAモニタは,予備系で実行サーバが稼働していることを検知し,現用系の実行サーバを計画停止します。
なお,IPアドレス引き継ぎありの構成の場合,スローダウンしてから,回復して実行サーバを計画停止するまでの間,現用系と予備系で,一時的にIPアドレスが重複する可能性があります。
(3) HAモニタのプロセス障害時のOSパニック
HAモニタのプロセス障害を検知した場合,共有リソースの競合を防止するため,メッセージKAMN066-Eを出力してOSパニックを発生させます。
(4) 実行サーバ障害による系切り替え時,または計画系切り替え時の動作
LANの通信可否による系切り替え制御機能を使わない場合と同様に,業務用LANの状態に関わらず,系切り替えします。
なお,切り替え元の系で共有リソース(IPアドレス)の切り離しに失敗した場合は,切り替え元の系をOSパニックさせて,系切り替えを継続します。これによって,共有リソースの競合を防止します。
(5) 使用条件
次の条件をすべて満たす場合に,LANの通信可否による系切り替え制御機能を使用できます。
-
共有ディスクがない構成である。
-
通信可否の判断に用いるための業務用LANがあり,次の条件をすべて満たしている。
-
LANの状態を確認するために指定する他ノードに,監視対象となるLANと同一ネットワークで通信するためのIPアドレスがあり,ICMPエコーパケットに対する応答ができる。
-
LANの状態を確認するために指定する他ノードが,HAモニタを起動する前に起動されている。
-
業務用LANは,HAモニタの監視パスと共用させる。
-
(6) 必要な環境設定
通信可否の判断に用いる業務用LANの種類に応じ,次の表のように設定します。
必要な環境設定 |
業務用LANの種類※2 |
||||
---|---|---|---|---|---|
hbonding※1 |
bonding |
ethernet |
|||
active-backup モード |
802.3ad モード |
||||
HAモニタの環境設定 |
fence_lan |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
lanfailswitch |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
|
lancheck_patrol |
○ |
○ |
○ |
○ |
|
hbond_lacp |
× |
○ |
× |
× |
|
lancheck_mode |
○ |
○ |
○ |
○ |
|
サーバ対応の環境設定 |
switch_judge |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
switchbyfail |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
|
LANを監視するためのファイル |
LAN監視定義ファイル |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
LAN監視スクリプト |
○ |
◎ |
◎ |
◎ |
- (凡例)
-
◎:使用するための指定を行います。
○:必要に応じて指定します。
×:指定できません。
- 注※1
-
hbondingで監視するスレーブインタフェースの監視を実行する頻度は,系障害監視時間(HAモニタの環境設定のpatrolオペランド)より短くしてください。
- 注※2
-
デバイス名に"."(ピリオド)を含めないインタフェース名称を指定することで,タグVLANも使用できます。
LANの監視に関する設定の詳細として,「3.4.1 LANの監視および障害時の自動系切り替え」,「(1) LAN監視定義ファイルの設定」,および「(2) LAN監視スクリプトの設定」を参照してください。
なお,LAN監視スクリプト(lanpatrol.sh)を使用する場合,系障害時の系切り替えの所要時間には,LAN監視スクリプトの実行時間が含まれます。系切り替え時間の要件に合わせ,LAN監視スクリプトの実行時間を調整してください。
また,受信パケット数の監視をする場合は,系障害監視時間(HAモニタの環境設定のpatrolオペランド)を次のとおり指定してください。
系障害監視時間 ≧ lancheck_patrol×2
(7) サーバの構成と業務用LANの対応づけについて
グループ化しないサーバごと,またはグループごとに,通信可否の判断に用いる業務用LANを一つ決めて設定する必要があります。
実際には業務用LANを使用しないサーバがある場合は,通信可否の判断に用いる業務用LANを一つ設定するか,業務用LANを使うほかのサーバとグループ化してください。
(8) LANの構成に関する注意点
LANの構成について,次の点に注意してください。
-
系切り替え時の通信可否の判断に使える業務用LANは,最大5個(ネットワーク)までです。
-
監視パス障害時,サーバプログラムまたはグループ単位に,どちらかの系が業務用LANと通信できる唯一の系となる必要があります。