Hitachi

高信頼化システム監視機能 HAモニタ kit for Oracle


3.2.8 HAモニタ kitの設定

Oracleが使用する共有リソースの設定が完了したら,HAモニタ kitの設定をします。HAモニタ kitの設定には,サーバの起動・停止・監視コマンドの設定,および制御用定義ファイルの設定があります。

〈この項の構成〉

(1) サーバの起動・停止・監視コマンドの設定

HAモニタ kitでは,サーバの起動・停止・監視コマンドのサンプルファイルを提供しています。サーバの数だけ,これらのファイルを任意のディレクトリにコピーし,環境に合わせて設定します。HAモニタの環境設定用ディレクトリ(/opt/hitachi/HAmon/etc)下にコピーすることを推奨します。

HAモニタ kitが提供するサーバの起動・停止コマンドのサンプルファイルの格納ディレクトリを,次の表に示します。

表3‒1 サーバの起動・停止コマンドのサンプルファイルの格納ディレクトリ

コマンド

格納ディレクトリ

サーバの起動コマンド

/opt/hitachi/HAmonOra/lib/actcommand

サーバの停止コマンド

/opt/hitachi/HAmonOra/lib/termcommand

HAモニタ kitが提供するサーバの監視コマンドのサンプルファイルの格納ディレクトリを,次の表に示します。格納ディレクトリはOracleのデータベース構成によって異なります。

表3‒2 サーバの監視コマンドのサンプルファイルの格納ディレクトリ

Oracleのデータベース構成

コマンド

格納ディレクトリ

CDB(シングルテナント)構成

HAモニタのサーバ対応の環境設定のptrlcmd_exオペランドでサーバの監視コマンドを指定する場合

サーバの監視コマンド

/opt/hitachi/HAmonOra/lib/ptrlcmd_ex

シングル構成

HAモニタのサーバ対応の環境設定のptrlcmd_exオペランドでサーバの監視コマンドを指定する場合(推奨)

サーバの監視コマンド

/opt/hitachi/HAmonOra/lib/ptrlcmd_ex

HAモニタのサーバ対応の環境設定のpatrolcommandオペランドでサーバの監視コマンド実行シェルを指定する場合

サーバの監視コマンド

/opt/hitachi/HAmonOra/lib/patrolcommand

サーバの監視コマンド実行シェル

/opt/hitachi/HAmonOra/lib/patrol.sh

注※

ORACLE_USER環境変数に指定するOracleユーザのユーザシェル環境がbash以外の場合は,必ず01-05以降で提供するpatrol.shを使用してください。

コピーしたファイルの名称は,コピー元のファイルと同一にする必要はありません。構築するサーバが複数存在し,単純にコピーするとファイル名が重複する場合は,コピー先のディレクトリを変更するか,重複しないようにファイル名を変更してください。

サーバの起動・停止・監視コマンド,およびサーバの監視コマンド実行シェルは,次の表に示すユーザで読み込みと実行を行います。アクセス権をサンプルファイルから変更する場合は,読み込みと実行を行うユーザにアクセス権を付与してください。アクセス権がない場合,各コマンドの実行に失敗します。

表3‒3 サーバの起動・停止・監視コマンド,およびサーバの監視コマンド実行シェルの読み込みと実行を行うユーザ

ファイル名

読み込みと実行を行うユーザ

サーバの起動コマンド

スーパユーザ

サーバの停止コマンド

スーパユーザ

HAモニタのサーバ対応の環境設定のptrlcmd_exオペランドでサーバの監視コマンドを指定する場合(推奨)

サーバの監視コマンド

スーパユーザ

HAモニタのサーバ対応の環境設定のpatrolcommandオペランドでサーバの監視コマンド実行シェルを指定する場合

サーバの監視コマンド

サーバの監視コマンド実行シェルのORACLE_USER環境変数に指定するOracleユーザ

サーバの監視コマンド実行シェル

スーパユーザ

それぞれのコマンドの詳細な設定方法については,「4. サーバの起動・停止・監視コマンドの設定」を参照してください。

(2) 制御用定義ファイルの設定

HAモニタ kitが制御するOracleインスタンスまたはOracleリスナーごとに,制御用定義ファイルを設定する必要があります。HAモニタ kitが提供する制御用定義ファイルのサンプルファイルを,Oracleのデータベース構成に合わせてコピーしてリネームし,必要に応じて,ファイル内のパラメタの値の変更や,任意の環境変数の設定などを行ってください。また,監視するOracleインスタンスまたはOracleリスナーが複数存在する場合は,OracleインスタンスまたはOracleリスナーの数だけ制御用定義ファイルを設定してください。

制御用定義ファイルのコピー元ファイルとコピー先ディレクトリを,次の表に示します。

表3‒4 制御用定義ファイルのコピー元ファイルとコピー先ディレクトリ

制御用定義ファイル

コピー元ファイル

コピー先ディレクトリ

Oracleインスタンス制御用定義ファイル

  • シングル構成の場合

    /opt/hitachi/HAmonOra/lib/orcl1.env

  • CDB(シングルテナント)構成の場合

    /opt/hitachi/HAmonOra/lib/orcl1_cdb.env

/opt/hitachi/HAmon/etc/HAmonOra_etc/instance

Oracleリスナー制御用定義ファイル

/opt/hitachi/HAmonOra/lib/LISTENER.env

/opt/hitachi/HAmon/etc/HAmonOra_etc/listener

それぞれのファイルは,次のようにリネームしてください。ファイル名の太字の部分は,それぞれ該当する値に置き換えてください。

コピーする際は,コピー先の設定済みのファイルを誤って上書きして消去しないように注意してください。また,コピーしたファイルのアクセス権は,コピー元ファイルのアクセス権と同じにして,そのあとはアクセス権を変更しないでください。

以降,ファイルの詳細について説明します。

記述形式

パラメタを「パラメタ名=値」の形式で1行に一つずつ記述します。パラメタ,イコール(=),および値の前後に空白を記述しないでください。なお,パラメタの記述は順不同です。

任意の環境変数を設定したい場合は,「環境変数名=値」の形式で1行に一つずつ記述します。

パラメタの詳細

指定できるパラメタの詳細について,次に示します。

表3‒5 制御用定義ファイルに指定できるパラメタの詳細

パラメタ名

説明

ORACLE_SID

Oracleインスタンス制御用定義ファイルに指定します。制御対象のOracleインスタンスの,ORACLE_SID環境変数の値(インスタンス識別子)を指定します。

ORACLE_SID環境変数の詳細については,Oracleのマニュアルを参照してください。

LISTENER_NAME

Oracleリスナー制御用定義ファイルに指定します。制御対象のOracleリスナーのリスナー名を指定します。リスナー名の詳細については,Oracleのマニュアルを参照してください。

ORACLE_BASE

制御対象のOracleインスタンスまたはOracleリスナーのORACLE_BASE環境変数の値(Oracleベースディレクトリ)を指定します。

ORACLE_BASE環境変数の詳細については,Oracleのマニュアルを参照してください。

ORACLE_HOME

制御対象のOracleインスタンスまたはOracleリスナーのORACLE_HOME環境変数の値(Oracleホームディレクトリ)を指定します。

ORACLE_HOME環境変数の詳細については,Oracleのマニュアルを参照してください。

ORACLE_USER

Oracleユーザのアカウント名を指定します。Oracleユーザの詳細については,Oracleのマニュアルを参照してください。

DB_NOACCESS

Oracleインスタンス制御用定義ファイルに指定します。SQLを使用して,Oracleインスタンスにアクセスするかどうかを指定します。指定できる値は次のとおりです。

  • yes:SQLでOracleインスタンスにアクセスしません。Oracleインスタンスの状態やスローダウンの監視はしないで,プロセスの生存監視だけをします。

  • no:SQLでOracleインスタンスにアクセスして,Oracleインスタンスの状態やスローダウンの監視,およびプロセスの生存監視をします。

パラメタを省略した場合は,noが仮定されます。次のような運用をする場合は,yesを指定してください。

  • HAモニタ kitがデータベースにアクセスするのを禁止する運用にしたい場合

  • SQLのALTER SYSTEM SUSPEND文で,データベースへのアクセスを禁止する運用にしたい場合

  • Oracleインスタンスの状態を,"OPEN"以外の状態にする運用にしたい場合

    注※ ただし,次の条件をすべて満たす場合は,パラメタにno(または省略)を指定できます。

    ・HAモニタのバージョンが01-69以降

    ・HAモニタのサーバ対応の環境設定のptrlcmd_exオペランドでサーバの監視コマンドを指定している

    ・HAモニタ・サーバ稼働中の設定変更コマンド(monchangeコマンド)で監視を一時停止したあとに,SQLのALTER SYSTEM SUSPEND文でデータベースへのアクセスを禁止する,またはOracleインスタンスの状態を"OPEN"以外の状態にするなどの運用である

LISTENER_NOACCESS

Oracleリスナー制御用定義ファイルの場合に指定します。リスナー制御ユティリティを使用して,Oracleリスナーにアクセスするかどうかを指定します。指定できる値は次のとおりです。

  • yes:リスナー制御ユティリティを使用しません。Oracleリスナーのスローダウンの監視はしないで,プロセスの生存監視だけをします。

  • no:リスナー制御ユティリティを使用して,Oracleリスナーのスローダウンの監視,およびプロセスの生存監視をします。

パラメタを省略した場合は,noが仮定されます。

PATROL

OracleインスタンスまたはOracleリスナーにアクセスしてから,スローダウンと見なすまでの時間(秒)を指定します。指定できる値は,60〜3600です。

DB_NOACCESSまたはLISTENER_NOACCESSにyesを指定した場合は,このパラメタに指定した値は無視されます。

ABORT_LIMIT

通常停止ができない場合に,強制停止に移行するまでの待ち時間(秒)を,10〜3600の範囲で指定します。

PATROL_TABLE

監視する表領域を指定します。通常は,指定する必要はありません。このパラメタを省略した場合は,dualが仮定されます。

CDBにyes,または,DB_NOACCESSにyesを指定した場合,このパラメタに指定した値は無視されます。

  • dual:dual表を監視します。

  • dba:HAモニタ kitの01-02以前のバージョンと同じ表領域(ディクショナリ表(dba_data_files))を監視します。

CDB

Oracleのデータベース構成が,CDB(シングルテナント)構成かどうかを指定します。指定できる値は次のとおりです。

  • yes:CDB(シングルテナント)構成の場合に指定します。

  • no:シングル構成の場合に指定します。

パラメタを省略した場合は,noが仮定されます。

PDB_NAME

Oracleのデータベース構成が,CDB(シングルテナント)構成の場合,このパラメタに起動・監視するPDB名を指定します。CDB(シングルテナント)構成の場合,必ず指定してください。指定できるPDB名は一つです。

CDBにnoを指定した場合は,このパラメタは無視されます。

記述例

制御用定義ファイルの記述例を示します。この記述例は,サンプルファイルの内容と同様です。各パラメタは,実際の環境に合わせて設定してください。

Oracleインスタンス制御用定義ファイル(/opt/hitachi/HAmon/etc/HAmonOra_etc/instance/orcl1.env)の場合
  • シングル構成

    ORACLE_SID=orcl1
    ORACLE_BASE=/home/oracle
    ORACLE_HOME=/home/oracle/product/18.0.0/dbhome_1
    ORACLE_USER=oracle
    PATROL=120
    ABORT_LIMIT=180
  • CDB(シングルテナント)構成

    ORACLE_SID=orcl1
    ORACLE_BASE=/home/oracle
    ORACLE_HOME=/home/oracle/product/18.0.0/dbhome_1
    ORACLE_USER=oracle
    PATROL=120
    ABORT_LIMIT=180
    CDB=yes
    PDB_NAME=orcl_pdb
Oracleリスナー制御用定義ファイル(/opt/hitachi/HAmon/etc/HAmonOra_etc/listener/LISTENER.env)の場合
LISTENER_NAME=LISTENER
ORACLE_BASE=/home/oracle
ORACLE_HOME=/home/oracle/product/18.0.0/dbhome_1
ORACLE_USER=oracle
PATROL=120
ABORT_LIMIT=180

注意事項