スケーラブルデータベースサーバ HiRDB Version 8 解説(UNIX(R)用)
系切り替え機能には,スタンバイ型系切り替え機能とスタンバイレス型系切り替え機能があります。
業務処理中のHiRDBのほかに待機用のHiRDBを準備して,業務処理中のサーバマシン又はHiRDBに障害が発生した場合,待機用のHiRDBに業務処理を自動的に切り替えます。これを系切り替え機能(スタンバイ型系切り替え機能)といいます。業務処理が中断するのは障害発生時から待機用のHiRDBに処理が切り替わるまでです。障害発生時のシステム停止時間をなるべく短くしたい場合に系切り替え機能を使用します。
系切り替え機能は複数のサーバマシンを使用したクラスタシステムの構成で実現します。HiRDB/シングルサーバの場合はシステム単位で系を切り替えます。ただし,ユティリティ専用ユニットは系切り替えできません。HiRDB/パラレルサーバの場合はユニット単位で系を切り替えます。
なお,業務処理中の系を実行系,待機中の系を待機系といい,系の切り替えが発生するたびに実行系と待機系が入れ替わります。また,システム構築時や環境設定時に二つの系を区別するため,最初に実行系として起動する系を現用系,待機系として起動する系を予備系といいます。系が切り替わると実行系と待機系は変わりますが,現用系と予備系は変わりません。系切り替え機能(スタンバイ型系切り替え機能)の概要を次の図に示します。
図8-1 系切り替え機能(スタンバイ型系切り替え機能)の概要
系切り替え機能には,前述したスタンバイ型系切り替え機能とスタンバイレス型系切り替え機能があります。スタンバイレス型系切り替え機能は,さらに次のように分類できます。
スタンバイレス型系切り替え機能はHiRDB/パラレルサーバのバックエンドサーバユニットに対して適用できます。ユニット内にバックエンドサーバ以外のサーバがある場合はそのユニットにスタンバイレス型系切り替え機能を適用できません。
スタンバイレス型系切り替え機能ではスタンバイ型系切り替え機能とは異なり,待機系ユニットを準備する必要がありません。障害が発生した場合は待機系ユニットに系を切り替えるのではなく,ほかのユニットに系を切り替えて稼働中のバックエンドサーバに処理を代行させます。これをスタンバイレス型系切り替え機能といいます。
1:1スタンバイレス型系切り替え機能では,障害が発生したユニットを1:1に切り替えて別のバックエンドサーバに処理を代行させることができます。
なお,障害発生時に処理を代行してもらうバックエンドサーバを正規BESといい,処理を代行するバックエンドサーバを代替BESといいます。また,正規BESのユニットを正規BESユニットといい,代替BESのユニットを代替BESユニットといいます。1:1スタンバイレス型系切り替え機能の概要を次の図に示します。
図8-2 1:1スタンバイレス型系切り替え機能の概要
障害発生時に障害ユニット内のバックエンドサーバへの処理要求を,複数の稼働中ユニットに分散して実行させる機能を影響分散スタンバイレス型系切り替え機能といいます。影響分散スタンバイレス型系切り替え機能では,待機用サーバマシン,又は待機ユニットを準備する必要はなく,システムリソースを効率的に利用できます。障害発生後,障害ノードのサーバ処理を代行するユニットでは処理負荷が増えるため,トランザクション処理性能に影響を及ぼすことがあります。ただし,複数のユニットが障害ユニット内サーバへの処理要求を分担して実行することで,ユニット当たりの負荷上昇を抑え,システムの性能劣化を軽減します。
また,影響分散スタンバイレス型系切り替え機能では,バックエンドサーバを分散して切り替えられます。切り替え先を複数のユニットに分散させることもできます。さらに,障害発生によって切り替えた先のユニットで更に障害が発生しても,別の稼働中ユニットに更に切り替わることで処理を継続できます(以降,多段系切り替えといいます)。なお,1:1スタンバイレス型系切り替えの場合は多段系切り替えができないため,切り替え先で障害が発生すると障害ユニットの代行処理は継続できなくなります。
影響分散スタンバイレス型系切り替え機能は,通常時からシステムリソースを有効に利用することを重視し,しかも,障害発生時の性能劣化を最小限に抑える必要があるシステムに対して適用してください。
なお,影響分散スタンバイレス型系切り替え機能では,障害発生時に処理を代行させるバックエンドサーバをホストBESといい,処理を代行するバックエンドサーバをゲストBESといいます。ホストBESのユニットを正規ユニットといい,ゲストBESのユニットを受け入れユニットといいます。受け入れユニットのすべては,HAグループとして定義しておく必要があります。また,ゲストBESに対応付けられるバックエンドサーバ用のリソースをゲスト用領域といいます。
影響分散スタンバイレス型系切り替え機能の概要(分散代行,多段系切り替え)を次の図に示します。
図8-3 影響分散スタンバイレス型系切り替え機能の概要(分散代行,多段系切り替え)
HiRDBがサポートしているクラスタソフトウェアを次の表に示します。
表8-1 HiRDBがサポートしているクラスタソフトウェア
HiRDBがサポートして いるクラスタソフトウェア |
OSの種類 | |||
---|---|---|---|---|
HP-UX | Solaris | AIX 5L | Linux | |
HAモニタ | ○ | × | ○ | ○ |
MC/ServiceGuard | ○ | × | × | × |
VERITAS Cluster Server | × | ○ | × | × |
Sun Cluster | × | ○ | × | × |
HACMP | × | × | ○ | × |
ClusterPerfect | × | × | × | ○ |
現用系と予備系とで共有する外付けハードディスク(キャラクタ型スペシャルファイル)が必要になります。このハードディスクを共有ディスク装置といいます。共有ディスク装置は系切り替えが発生したときに,実行系から待機系に情報を引き継ぐために使用されます。共有ディスク装置には次に示すHiRDBファイルシステム領域を作成します。
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