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OpenTP1 Version 7 分散トランザクション処理機能 OpenTP1 解説


6.1.3 系切り替えの手順

〈この項の構成〉

(1) 系切り替えをするための準備

(a) 共有ディスク装置の割り当て

OpenTP1ファイルシステムを作成するキャラクタ型スペシャルファイルを共有指定します。共有するファイルは,互いのOpenTP1システムから同じパス名で参照できるように設定します。

共有できるのは,キャラクタ型スペシャルファイルに作成したファイルだけです。通常ファイルの内容(例 $DCDIR/spool/ 下のファイル,$DCDIR/tmp/ 下のファイルなど)は引き継げません。

(b) IPアドレスの設定

共有するIPアドレスを,システム共通定義のmy_hostオペランドに設定します。互いのOpenTP1システムには,同じIPアドレスを設定します。

(c) HAモニタの環境設定

HAモニタの定義を設定します。HAモニタの環境設定については,マニュアル「高信頼化システム監視機能 HAモニタ」を参照してください。

(2) HAモニタに定義する内容

HAモニタのサーバに関する定義(server定義文)で,OpenTP1の動作環境を指定します。server定義文のnameオペランドには,OpenTP1ホームディレクトリの完全パス名を指定します。そのほかの環境設定については,マニュアル「高信頼化システム監視機能 HAモニタ」を参照してください。

(3) OpenTP1に定義する内容

現用系と予備系では,次の内容をすべて一致させてください。

注※

trnlnkrmコマンドを実行してOpenTP1に登録するリソースマネジャの登録順序も一致させる必要があります。

現用系と予備系の定義で一致していない項目があっても,チェックはしていません。一致させていない場合の動作は保証しません。

(a) システム定義の指定

系切り替え機能を使用する場合は,次に示すシステム定義を指定してください。

  • システム構成定義には,系切り替え機能を使用する指定(ha_conf = Y)をしてください。指定しないと系切り替えはしません。

  • 系切り替え時に,実行系の代替として待機系を起動する場合と,実行系の後処理だけ行わせるために待機系を起動する場合とで,システム環境定義のシステム開始方法(mode_confの指定)は次のとおり指定内容が異なります。

    実行系の代替として待機系を起動する場合

    AUTO,またはMANUAL1を指定してください。AUTOとMANUAL1では,OS起動後の開始方法が異なるので,運用形態を基に選択してください。

    MANUAL2を指定すると,実行系/待機系のどちらかが異常終了したあとに,自動開始しません。再び系切り替えするためには,異常終了したOpenTP1を運用コマンドで開始させておく必要があります。

    実行系の後処理だけ行わせるために待機系を起動する場合

    未決着トランザクションの決着やDBの整合性の確保などの,実行系の後処理だけを行わせるために待機系を起動する場合は,MANUAL2を指定してください。この場合,待機系に縮退運転ができれば問題ないと判断できることが前提となります。系切り替え後に,待機系に実行系の後処理だけを行わせる方法については,「6.1.4(1) OpenTP1の開始と終了」を参照してください。

  • 系が切り替わったあとの待機系の再開始(リラン)時間を短縮するため,OpenTP1が起動する前に,ユーザサーバを起動することを指定できます。この場合,システム環境定義のuser_server_haオペランドにYを指定してください。

(4) 系切り替え機能を使用するときの注意

(a) 使用するLAN

系切り替え機能を使用する場合,OpenTP1を運用しているLAN,および回線は,実行系ではオンライン状態にして,待機系ではオフライン状態にしておく必要があります。また,実行系で障害を検知して系切り替えをした場合には,障害が起こった系のLAN,および回線は自動的にオフライン状態となります。したがって,系切り替えに使用するLANは,障害が起こって待機系になった系の保守や運用には使用できません。

障害が起こって待機系になった系の保守や運用には,コンソールを使用するか,系切り替えに使用しないLAN(保守用LAN)を別に準備してください。

(b) 使用するファイルシステム

系切り替え機能を使う場合は,OpenTP1ファイルシステムを使ってください。通常のUNIXファイルシステムを使った場合,OpenTP1を起動できない場合があります。

(c) ミラーディスク機能を使用する場合

共有ディスク装置にミラーディスク機能を使用できるかどうかは,OSおよびハードウェアによって決まります。OSおよびハードウェアのミラーディスク機能,クラスタ機能などの仕様に基づいて使用してください。

ミラーディスク機能で二つのディスク装置に書き込んでいる最中に系切り替えが発生した場合,二つのディスク装置の間に書き込みの遅れなどによる状態の不一致が発生することがあります。系切り替え先のディスク装置に正しく書き込まれていないと,系切り替えをしてもOpenTP1は正しく動作できません。

次のOpenTP1ファイルは,OpenTP1を動作させるために重要なファイルです。

  • ステータスファイル

  • システムジャーナルファイル

  • チェックポイントダンプファイル

これらのOpenTP1ファイルをミラーディスク機能で使用する場合は,OSおよびハードウェアで,共有ディスク装置にミラーディスク機能を利用できること,また,系切り替え機能を使用した場合でもディスク装置の内容が正しいことを確認した上で使用してください。

ミラーディスク装置を使えないOpenTP1ファイルは,次に示す方法でファイルの信頼性を上げてください。

  • ステータスファイル

    二重化してください。

  • システムジャーナルファイル

    二重化してください。

  • チェックポイントダンプファイル

    二重化するか,複数世代保証機能を使用してください。

(d) OpenTP1のトレースファイルやログファイルの出力先

OpenTP1のトレースファイルやログファイルの出力先を,共有ディスク装置上に指定しないでください。系切り替え発生時にアクセス不可となり,情報が欠けたり,エラーメッセージが出力されたりすることがあります。