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OpenTP1 Version 7 分散トランザクション処理機能 OpenTP1 解説


5.3.6 障害の原因解析

ここでは,OpenTP1システムで障害の原因を解析するための機能について説明します。

なお,次に示す機能は,TP1/Extension 1をインストールしていることが前提です。TP1/Extension 1をインストールしていない場合の動作は保証できません。

〈この項の構成〉

(1) MCFトレース

MCFのプロセスごとに,発生したイベントや送受信データの情報を取得しています。これをMCFトレースといいます。MCFトレース情報は,共用メモリ中のトレース領域(トレースバッファ)に取得されます。MCF通信構成定義でMCFトレースのディスク出力機能を使うことを指定しておくと,トレース領域に空きがなくなった場合に,ディスク上のMCFトレースファイルに出力されます。MCFトレースのディスク出力機能を使用しない場合で,一時的にMCFトレース情報が必要になったときは,MCFトレース取得開始コマンド(mcftstrtr),およびMCFトレース取得終了コマンド(mcftstptr)を使用すると,MCFトレース情報をMCFトレースファイルに出力できます。コマンドの詳細については,マニュアル「OpenTP1 運用と操作」を参照してください。

MCFトレースは,障害発生までのプロセス内での制御関数と各イベントの制御の流れを解析するために利用します。

(2) UAPトレース

OpenTP1のUAP(SUP,SPP,MHP)が異常終了すると,UAPから呼び出したAPIのトレース情報が出力されます。この機能をUAPトレースといい,取得した情報をUAPトレース情報といいます。OpenTP1では,UAPプロセス単位にUAPトレース情報を取得しています。

UAPトレース情報は,$DCDIR/spool/save/ディレクトリの下に,ファイル名"サーバ名n.uat"(nはUAPプロセスの退避コアファイルに付けられる通番を示します)で取得されます。このファイルを,UAPトレース編集出力ファイルといいます。

任意の退避コアファイルを基にUAPトレース情報を出力する場合は,UAPが異常終了したときに生成した退避コアファイルをuatdumpコマンドに指定して実行します。uatdumpコマンドの出力先をリダイレクトすると,任意のファイルにUAPトレース情報を取得できます。

UAPトレース情報を格納する件数の最大数は,ユーザサービス定義のuap_trace_maxオペランドに指定します。ここに指定した値を超えた場合は,ラップアラウンドして取得します。

UAPトレース情報は,異常終了したUAPのプロセス単位に取得されます。RPCでノードをわたるトランザクション処理が異常終了した場合は,UAPトレース情報はノードで実行したUAPプロセスごとに取得されます。

UAPトレースについては,マニュアル「OpenTP1 テスタ・UAPトレース使用の手引」のUAPトレースの説明を参照してください。

(3) RPCトレース

RPCのサービス要求情報をファイルにトレースとして取得できます。これをRPCトレースといいます。RPCトレースは,RPC管理コマンドでダンプ出力できます。RPCトレースは,次の目的に利用できます。

RPCトレースファイルを編集出力する場合は,rpcdumpコマンドを実行します。

RPCトレースファイルは,システムサービスごとに取得できます。該当するシステムサービスの定義に,RPCトレースファイルを取得する指定をします。これらのRPCトレースファイルは,マージして時系列に出力できます。この場合は,rpcmrgコマンドを実行します。

(4) 性能検証用トレース

OpenTP1で動作する各種サービスの主なイベントでOpenTP1識別子などのトレース情報を取得しています。これを性能検証用トレースといいます。

性能検証用トレースには次の特長があります。

性能検証用トレースに関係するシステム定義は,次の表に示すとおりです。

表5‒5 性能検証用トレースに関係するシステム定義

定義名

形式

オペランド

定義内容

システム共通定義

set

prf_trace

性能検証用トレース情報を取得するかどうかを指定

set

trn_prf_trace_level

トレースの取得レベル

性能検証用トレース定義

set

prf_file_size

トレースファイルのサイズ

それぞれの定義の詳細については,マニュアル「OpenTP1 システム定義」を参照してください。

なお,性能検証用トレースはprfgetコマンドによってバイナリ形式で取り出したあと,prfedコマンド,またはdcalzprfコマンドによってキャラクタ形式で出力できます。

また,ユーザ固有のトレース情報をdc_prf_utrace_put関数によってトレースファイルに取得したり,直前に取得したトレースのプロセス内取得通番をdc_prf_get_trace_num関数によって取得したりできます。

注意事項
  • 通常のOpenTP1再開始,およびホットスタンバイでは,トレース情報は引き継ぎません。

  • 性能検証用トレース取得機能では,オンラインの性能に影響がないように,トレース取得での排他を行いません。そのため,マルチプロセッサ環境でトレース取得の競合が発生した場合,トレース情報が抜けたり,不正なトレース情報が取得されたりすることがあります。不正なトレース情報は,prfedコマンドでトレース情報を編集すると,エラーレコードとして表示されます。

(5) XAR性能検証用トレース

XAリソースサービスを使用したトランザクション連携の各種イベント(アプリケーションサーバからのトランザクション要求,OpenTP1のトランザクション処理)のトレース情報を取得しています。これをXAR性能検証用トレースといいます。

XAR性能検証用トレースは,$DCDIR/spool/dcxarinfディレクトリの下に,"_xr_001","_xr_002","_xr_003"…というファイル名で取得されます。これらのファイルをXAR性能検証用トレース情報ファイルといいます。XAR性能検証用トレース情報ファイルの出力先およびファイル名は変更できませんが,取得サイズおよび取得ファイル数は変更できます。詳細については,マニュアル「OpenTP1 システム定義」のXAR性能検証用トレース定義の説明を参照してください。

XAR性能検証用トレースを取得するには,次の手順で定義を設定します。

  1. システム共通定義のprf_traceオペランドにYを指定します。

  2. XAリソースサービス定義のxar_prf_trace_levelオペランドでXAR性能検証用トレースの取得レベルを指定します。

次の表にxar_prf_trace_levelオペランドの指定値とXAR性能検証用トレースの取得情報の関係を示します。

表5‒6 xar_prf_trace_levelオペランドの指定値とXAR性能検証用トレースの取得情報の関係

xar_prf_trace_levelオペランドの指定値

XAR性能検証用トレースの取得情報

イベントID

トレースデータ長(単位:バイト)

取得タイミング

00000001

アプリケーションサーバからのトランザクション要求

0x4a00

128

トランザクションブランチの開始要求

呼び出し直後

0x4a01

128

リターン直前

0x4a02

128

トランザクションブランチ内からのRPC実行要求

呼び出し直後

0x4a03

128

リターン直前

0x4a04

128

トランザクションブランチの終了要求

呼び出し直後

0x4a05

128

リターン直前

0x4a06

128

トランザクションブランチのコミット準備要求

呼び出し直後

0x4a07

128

リターン直前

0x4a08

128

トランザクションブランチのコミット要求

呼び出し直後

0x4a09

128

リターン直前

0x4a0a

128

トランザクションブランチのロールバック要求

呼び出し直後

0x4a0b

128

リターン直前

0x4a0c

64

Prepared状態,Heuristically Completed状態のトランザクションブランチ通知要求

呼び出し直後

0x4a0d

64

リターン直前

0x4a0e

128

Heuristically Completed状態のトランザクションブランチ破棄要求

呼び出し直後

0x4a0f

128

リターン直前

00000002

OpenTP1のトランザクション処理

0x4b00

64

トランザクションブランチ開始

直前

0x4b01

64

直後

0x4b02

64

トランザクションブランチ内からのRPC実行

直前

0x4b03

64

直後

0x4b04

64

トランザクションブランチの終了

直前

0x4b05

64

直後

0x4b06

64

トランザクションブランチのコミット準備

直前

0x4b07

64

直後

0x4b08

64

トランザクションブランチのコミット

直前

0x4b09

64

直後

0x4b0a

64

トランザクションブランチのロールバック

直前

0x4b0b

64

直後

0x4b0c

64

Prepared,Heuristically Completed状態のトランザクションブランチの通知

直前

0x4b0d

64

直後

0x4b0e

64

Heuristically Completed状態のトランザクションブランチの破棄

直前

0x4b0f

64

直後

xar_prf_trace_levelオペランドの詳細については,マニュアル「OpenTP1 システム定義」のXAリソースサービス定義の説明を参照してください。

XAR性能検証用トレース情報ファイルの取得,編集出力には,prfgetコマンド,prfedコマンド,またはdcalzprfコマンドを使用します。取得方法,および編集出力方法を次に示します。

XAR性能検証用トレース情報ファイルの取得方法
最新のランIDで取得されていないトレース情報だけ取得する場合
$DCDIR/bin/prfget -f _xr | $DCDIR/bin/prfed -d

または

$DCDIR/bin/prfget -f _xr | $DCDIR/bin/dcalzprf
すべてのトレース情報を取得する場合
$DCDIR/bin/prfget -a -f _xr | $DCDIR/bin/prfed -d

または

$DCDIR/bin/prfget -a -f _xr | $DCDIR/bin/dcalzprf
XAR性能検証用トレース情報ファイルの編集出力方法

XAR性能検証用トレース情報ファイルからトレース情報を編集出力する場合,prfedコマンド,またはdcalzprfコマンドを実行してください。オプションは必要に応じて指定してください。

XAR性能検証用トレース情報の出力形式は,性能検証用トレースと同じです。出力形式の詳細については,マニュアル「OpenTP1 運用と操作」のprfedコマンド,またはdcalzprfコマンドを参照してください。

(6) JNL性能検証用トレース

ジャーナルサービスで実行されるジャーナルバッファリング,およびジャーナル出力の各種イベントトレース情報を取得しています。これをJNL性能検証用トレースといいます。

JNL性能検証用トレースは,$DCDIR/spool/dcjnlinf/prfinfディレクトリの下に,"_jl_001","_jl_002","_jl_003"…というファイル名で取得されます。これらのファイルをJNL性能検証用トレース情報ファイルといいます。JNL性能検証用トレース情報ファイルの出力先およびファイル名は,変更できません。

JNL性能検証用トレースを取得するには,次の手順で定義を設定します。

  1. システム共通定義のprf_traceオペランドにYを指定します。

  2. システム共通定義のjnl_prf_event_trace_levelオペランドでJNL性能検証用トレースの取得レベルを指定します。

次の表にjnl_prf_event_trace_levelオペランドの指定値と取得するトレース情報の関係を示します。各イベントの取得タイミングについては,マニュアル「OpenTP1 運用と操作」の性能検証用トレース情報の取得の説明を参照してください。

表5‒7 jnl_prf_event_trace_levelオペランドの指定値と取得するトレース情報の関係

jnl_prf_event_trace_levelオペランドの指定値

トレース情報のイベントID

0xc202,0xc203,0xc401,0xc402

0xc001〜0xc201,0xc204〜0xc400

00000000

×

×

00000001

×

00000002

その他

(凡例)

○:トレース情報を取得します。

×:トレース情報を取得しません。

JNL性能検証用トレース情報ファイルの取得,編集出力には,prfgetコマンド,prfedコマンド,またはdcalzprfコマンドを使用します。取得方法を次に示します。

JNL性能検証用トレース情報ファイルの取得方法
最新のランIDで取得されていないトレース情報だけ取得する場合
$DCDIR/bin/prfget -f _jl | $DCDIR/bin/prfed -d

または

$DCDIR/bin/prfget -f _jl | $DCDIR/bin/dcalzprf
すべてのトレース情報を取得する場合
$DCDIR/bin/prfget -a -f _jl | $DCDIR/bin/prfed -d

または

$DCDIR/bin/prfget -a -f _jl | $DCDIR/bin/dcalzprf

(7) LCK性能検証用トレース

トランザクション処理に伴う各種排他制御のトレース情報を取得しています。これをLCK性能検証用トレースといいます。

LCK性能検証用トレースは,$DCDIR/spool/dclckinf/prfディレクトリの下に,"_lk_001","_lk_002","_lk_003"…というファイル名で取得されます。これらのファイルをLCK性能検証用トレース情報ファイルといいます。LCK性能検証用トレース情報ファイルの出力先およびファイル名は変更できませんが,取得サイズおよび取得ファイル数は変更できます。詳細については,マニュアル「OpenTP1 システム定義」のLCK性能検証用トレース定義の説明を参照してください。

LCK性能検証用トレースを取得するには,次の手順で定義を設定します。

  1. システム共通定義のprf_traceオペランドにYを指定します。

  2. ロックサービス定義のlck_prf_trace_levelオペランドでLCK性能検証用トレースの取得レベルを指定します。

次の表にlck_prf_trace_levelオペランドの指定値とLCK性能検証用トレースの取得情報の関係を示します。

表5‒8 lck_prf_trace_levelオペランドの指定値とLCK性能検証用トレースの取得情報の関係

lck_prf_trace_levelオペランドの指定値

LCK性能検証用トレースの取得情報

イベントID

トレースデータ長(単位:バイト)

取得タイミング

00000000

排他制御についてのトレースを取得しない

00000001

排他制御についてのトレースを取得する

0x6400

128

資源の排他

呼び出し直後

0x6401

128

リターン直前

0x6410

128

排他待ち合せ

開始直前

0x6411

128

終了直後

0x6420

128

全資源の排他の解除

呼び出し直後

0x6421

128

リターン直前

0x6430

128

資源名称を指定した排他の解除

呼び出し直後

0x6431

128

リターン直前

(凡例)

−:該当しません。

lck_prf_trace_levelオペランドの詳細については,マニュアル「OpenTP1 システム定義」のロックサービス定義の説明を参照してください。

LCK性能検証用トレース情報ファイルの取得,編集出力には,prfgetコマンド,prfedコマンド,またはdcalzprfコマンドを使用します。取得方法,および編集出力方法を次に示します。

LCK性能検証用トレース情報ファイルの取得方法
最新のランIDで取得されていないトレース情報だけ取得する場合
$DCDIR/bin/prfget -f _lk | $DCDIR/bin/prfed -d

または

$DCDIR/bin/prfget -f _lk | $DCDIR/bin/dcalzprf
すべてのトレース情報を取得する場合
$DCDIR/bin/prfget -a -f _lk | $DCDIR/bin/prfed -d

または

$DCDIR/bin/prfget -a -f _lk | $DCDIR/bin/dcalzprf
LCK性能検証用トレース情報ファイルの編集出力方法

LCK性能検証用トレース情報ファイルからトレース情報を編集出力する場合,prfedコマンド,またはdcalzprfコマンドを実行してください。オプションは必要に応じて指定してください。

LCK性能検証用トレース情報の出力形式は,性能検証用トレースと同じです。出力形式の詳細については,マニュアル「OpenTP1 運用と操作」のprfedコマンド,またはdcalzprfコマンドを参照してください。

(8) MCF性能検証用トレース

TP1/Message Controlを使用したメッセージ送受信での主なイベントで,MCF識別子などのトレース情報を取得しています。これをMCF性能検証用トレースといいます。

MCF性能検証用トレースには次の特長があります。

MCF性能検証用トレースに関係するシステム定義は,次の表に示すとおりです。

表5‒9 MCF性能検証用トレースに関係するシステム定義

定義名

形式

オペランド

定義内容

ユーザサービス定義

set

mcf_prf_trace

ユーザサーバごとに,MCF性能検証用トレース情報を取得するかどうかを指定

MCF性能検証用トレース定義

set

prf_file_size

MCF性能検証用トレース情報のトレースファイルサイズ

set

prf_file_count

MCF性能検証用トレース情報のトレースファイル世代数

システムサービス情報定義

set

mcf_prf_trace

MCF通信サービスごとにMCF性能検証用トレース情報を取得するかどうかを指定

システムサービス共通情報定義

set

mcf_prf_trace_level

MCF性能検証用トレース情報の取得レベル

それぞれの定義の詳細については,マニュアル「OpenTP1 システム定義」を参照してください。

なお,MCF性能検証用トレースはprfgetコマンドによってバイナリ形式で取り出したあと,prfedコマンド,またはdcalzprfコマンドによってキャラクタ形式で出力できます。

注意事項
  • メッセージ送受信時(イベントID:0xa000,0xa001)にMCF性能検証用トレースを取得できるのは,次のどれかのプロトコル製品を使用した通信だけです。

    ・TP1/NET/TCP/IP

    ・TP1/NET/XMAP3

    ・TP1/NET/OSAS-NIF

    メッセージ送受信(イベントID:0xa000,0xa001)以外のイベントについては,通信プロトコル種別に関係なく,MCF性能検証用トレースを取得できます。

(9) XARイベントトレース

XAリソースサービスを使用したアプリケーションサーバからのトランザクション要求種別を,イベントトレース情報として取得します。この機能をXARイベントトレースといい,取得した情報をXARイベントトレース情報といいます。

アプリケーションサーバからのトランザクション要求種別,要求コードおよび要求コードの意味を次の表に示します。

表5‒10 トランザクション要求種別と要求コードの一覧

要求種別

要求コード

要求コードの意味

Start()

xar_start

トランザクションブランチの開始処理

Call()

xar_call

トランザクションブランチ内からのRPCの実行

End()

xar_end

トランザクションブランチの終了処理

Prepare()

xar_prepare

トランザクションブランチのコミット準備処理(2相コミットの1相目)

Commit()

xar_commit

トランザクションブランチのコミット処理(2相コミットの2相目)

Rollback()

xar_rollback

トランザクションブランチのロールバック処理

Recover()

xar_recover

Prepared状態,Heuristically Completed状態のトランザクションブランチを通知

Forget()

xar_forget

Heuristically Completed状態のトランザクションブランチを破棄

注※

トランザクション要求種別は,OpenTP1の内部関数です。

XARイベントトレース情報は,$DCDIR/spool/dcxarinf/trace/ディレクトリの下に,ファイル名"xarevtr1"および"xarevtr2"で取得されます。これらのファイルを,XARイベントトレース情報ファイルといいます。XARイベントトレース情報ファイルの出力先およびファイル名は,変更できません。

XAリソースサービス開始時に,XARイベントトレース情報ファイルがすでに存在する場合は,バックアップファイルが作成され,新規に出力ファイルが作成されます。例えば,xarevtr1というXARイベントトレース情報ファイルが存在した場合,XAリソースサービス開始時に,xarevtr1をxarevtr1.bk1というファイルにリネームします。xarevtr1という名前のファイルは,リネームされて存在しなくなるため,新規にxarevtr1というXARイベントトレース情報ファイルが作成されます。

バックアップファイルは3世代まで保存されます。バックアップファイルが作成されるのは,XAリソースサービス開始時に,XARイベントトレース情報ファイルがすでに存在する場合だけです。オンライン中に,1ファイルへの書き込みレコード数が,XARイベントトレース情報ファイルの最大出力レコード数(XAリソースサービス定義のxar_eventtrace_recordオペランドで指定)を超えた場合には,バックアップファイルは作成されません。オンライン中に,1ファイルへの書き込みレコード数が,XARイベントトレース情報ファイルの最大出力レコード数を超えると,出力先ファイルを切り替え,XARイベントトレース情報ファイルを順次上書きしていきます。オンライン中はXARイベントトレース情報ファイルを削除しないでください。

XARイベントトレース情報の出力レベルは,XAリソースサービス定義のxar_eventtrace_levelオペランドで指定できます。デフォルトは,エラーが発生した場合だけXARイベントトレースを取得する出力レベルに指定されています。すべてのXARイベントトレース情報を取得することもできますが,その場合オンライン性能に影響を与えるため,デバッグ時以外は,デフォルトの出力レベルで運用することをお勧めします。

出力ファイルに取得されたXARイベントトレース情報は,xarevtrコマンドによって編集,表示できます。

XARイベントトレース情報の出力レベルおよび出力レコード数の指定方法についてはマニュアル「OpenTP1 システム定義」を,編集・表示方法についてはマニュアル「OpenTP1 運用と操作」を参照してください。

(10) TRNイベントトレース

トランザクションブランチで発行されるXA関数や,トランザクションサービス(トランザクション管理サービス,トランザクション回復サービス,リソースマネジャ監視サービス)の各種イベントのトレース情報を取得しています。これをTRNイベントトレースといいます。

TRNイベントトレースは,$DCDIR/spool/dctrninf/trace/prf/ディレクトリの下に,"_tr_001","_tr_002","_tr_003"…というファイル名で取得されます。これらのファイルを,TRNイベントトレース情報ファイルといいます。TRNイベントトレース情報ファイルの出力先およびファイル名は,変更できません。

TRNイベントトレース情報ファイルは,取得サイズおよび取得ファイル数を変更できます。詳細については,マニュアル「OpenTP1 システム定義」のTRNイベントトレース定義を参照してください。

TRNイベントトレースを取得するには,次の手順で定義を設定します。

  1. システム共通定義のprf_traceオペランドにYを指定します。

  2. トランザクションサービス定義のtrn_prf_event_trace_levelオペランドでTRNイベントトレースの取得レベルを指定します。

  3. トランザクションサービス定義のtrn_prf_event_trace_conditionオペランドで,TRNイベントトレースの取得種別を指定します。

次の表にtrn_prf_event_trace_conditionオペランドの指定値とTRNイベントトレースの取得情報の関係を示します。

表5‒11 trn_prf_event_trace_conditionオペランドの指定値とTRNイベントトレースの取得情報の関係

trn_prf_event_trace_conditionオペランドの指定値

TRNイベントトレースの取得情報

イベントID

トレースデータ長(単位:バイト)

取得タイミング

xafunc

XA関数に関するトレース

0x4500

320(xa_open関数,xa_close関数の場合は192)

トランザクション処理中

trnservice

トランザクションサービスの動作状況に関するトレース

0x4501

192

トランザクションサービスの起動,停止または回復処理時

注※

2相コミットのトランザクションの場合,1トランザクションブランチ当たりに取得するトレース量は「12×リソースマネジャ数」となります。ただし,トレース量は,ユーザサーバにリンケージされているXAインタフェースオブジェクトファイルや,トランザクションの最適化などの条件によって異なります。

このオペランドの詳細については,マニュアル「OpenTP1 システム定義」のシステムサービス定義を参照してください。

TRNイベントトレース情報ファイルの取得,編集出力には,prfget,prfed,またはdcalzprfコマンドを使用します。取得方法,および編集出力方法を次に示します。

TRNイベントトレース情報ファイルの取得方法
最新のランIDで取得されていないトレース情報だけ取得する場合
$DCDIR/bin/prfget -f _tr | $DCDIR/bin/prfed -d

または

$DCDIR/bin/prfget -f _tr | $DCDIR/bin/dcalzprf
すべてのトレース情報を取得する場合
$DCDIR/bin/prfget -a -f _tr | $DCDIR/bin/prfed -d

または

$DCDIR/bin/prfget -a -f _tr | $DCDIR/bin/dcalzprf
TRNイベントトレース情報ファイルの編集出力方法

TRNイベントトレース情報を出力する場合,prfedコマンドに-dオプションを指定してください。dcalzprfコマンドには-dオプションの指定は必要ありません。そのほかのオプションは,必要に応じて指定してください。

TRNイベントトレース情報の出力形式は,性能検証用トレースと同じです。出力形式の詳細については,マニュアル「OpenTP1 運用と操作」のprfedコマンドを参照してください。

trn_prf_event_trace_conditionオペランドにxafuncを指定した場合のprfedコマンドのTRNイベントトレース情報の出力例を次に示します。

PRF: Rec Node: trn1 Run-ID: 0x4046b806 Process: 26264      Trace: 10
Event: 0x4500 Time: 2004/01/01 12:34:56 678.123.000 Server-name: Sup
Rc:   0      Client: **** - ********** Server: **** Root: trn1 - ********
Svc-Grp: *************************** Svc: ****************************
Trn: 78d0trn100000001trn1trn100000001
    xa_commit                       (IN)  OpenTP1_TAM
    axid:010000000000000c00000010
         3738643074726e330000000174726e3374726e330000000100000000
  Internal code1:0x2007       Internal code2:   0
  Internal code3:0

(11) NAMイベントトレース

ネームサービスで実行される通信処理,キャッシュへのサービス情報の登録,削除などの各種イベントのトレース情報を取得しています。これをNAMイベントトレースといいます。

NAMイベントトレースは,$DCDIR/spool/dcnaminf/ディレクトリの下に,"_nm_001","_nm_002","_nm_003"…というファイル名で取得されます。これらのファイルを,NAMイベントトレース情報ファイルといいます。NAMイベントトレース情報ファイルの出力先およびファイル名は,変更できません。

NAMイベントトレースを取得するには,次の手順で定義を設定します。

  1. システム共通定義のprf_traceオペランドにYを指定します。

  2. システム共通定義のnam_prf_trace_levelオペランドでNAMイベントトレースの取得レベルを指定します。

次の表にnam_prf_trace_levelオペランドの指定値と取得するトレース情報の関係を示します。各イベントの取得タイミングについては,マニュアル「OpenTP1 運用と操作」の性能検証用トレース情報の取得の説明を参照してください。

表5‒12 nam_prf_trace_levelオペランドの指定値と取得するトレース情報の関係

nam_prf_trace_levelオペランドの指定値

トレース情報のイベントID

0xf000〜0xf035

0xf100〜0xf114

0xf200〜0xf220

00000000

×

×

×

00000001

×

×

00000002

×

×

00000003

×

00000004

×

×

00000005

×

00000006

×

00000007

その他

×

(凡例)

○:トレース情報を取得します。

×:トレース情報を取得しません。

NAMイベントトレース情報ファイルの取得,編集出力には,prfget,prfedコマンド,またはdcalzprfコマンドを使用します。取得方法を次に示します。

NAMイベントトレース情報ファイルの取得方法
$DCDIR/bin/prfget -a -f _nm | $DCDIR/bin/prfed -d

または

$DCDIR/bin/prfget -a -f _nm | $DCDIR/bin/dcalzprf

(12) プロセスサービスのイベントトレース

プロセスの生成,消滅,起動,完了などのプロセスイベント情報を取得します。これをプロセスサービスのイベントトレースといいます。

プロセスサービスのイベントトレースは,$DCDIR/spool/dcprcinf/ディレクトリの下に,"_pr_001","_pr_002","_pr_003"…というファイル名で取得されます。これらのファイルを,プロセスサービスイベントトレース情報ファイルといいます。プロセスサービスイベントトレース情報ファイルの出力先およびファイル名は,変更できません。

プロセスサービスのイベントトレースを取得するには,プロセスサービス定義のprc_prf_traceオペランドにYを指定します。

各イベントの取得タイミングについては,マニュアル「OpenTP1 運用と操作」の性能検証用トレース情報の取得の説明を参照してください。

プロセスサービスイベントトレース情報ファイルの取得,編集出力には,prfget,prfed,またはdcalzprfコマンドを使用します。取得方法を次に示します。

プロセスサービスイベントトレース情報ファイルの取得方法
$DCDIR/bin/prfget -a -f _pr | $DCDIR/bin/prfed -d

または

$DCDIR/bin/prfget -a -f _pr | $DCDIR/bin/dcalzprf

(13) FILイベントトレース

OpenTP1制御下のプロセスから内部的に発行されるOpenTP1ファイルへのアクセス要求に対して,処理完了までに,システム共通定義のfil_prf_trace_delay_timeオペランドの指定値以上の処理時間が掛かった場合,イベント情報を取得します。これをFILイベントトレースといいます。

FILイベントトレースを分析することで,OpenTP1ファイルアクセスに関する処理の遅延状況を確認できます。

FILイベントトレースは,$DCDIR/spool/dcfilinf/ディレクトリの下に,"_fl_001","_fl_002","_fl_003"というファイル名で取得されます。これらのファイルをFILイベントトレース情報ファイルといいます。FILイベントトレース情報ファイルの出力先およびファイル名は,変更できません。

FILイベントトレース情報ファイルの取得,編集出力には,prfgetコマンド,prfedコマンド,またはdcalzprfコマンドを使用します。取得方法を次に示します。

FILイベントトレース情報ファイルの取得方法
$DCDIR/bin/prfget -a -f _fl | $DCDIR/bin/prfed -d

または

$DCDIR/bin/prfget -a -f _fl | $DCDIR/bin/dcalzprf

(14) コマンドログ

OpenTP1の運用コマンドを実行した場合に,コマンド実行時刻や終了時刻などの情報を$DCDIR/spool/cmdlogのcmdlog1,およびcmdlog2に出力します。

cmdlog1,およびcmdlog2は,viエディタなどで参照できます。コマンドログにはコマンドの開始,終了時刻が出力されるので,コマンドの実行に必要な時間(レスポンスタイム)の測定などができます。