Dynamic Link Manager EX Software ユーザーズガイド(AIX®用)

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2.7.1 自動パス切り替え

自動的にパスを切り替える機能である,自動フェイルオーバと自動フェイルバックについて説明します。

この項の構成
(1) 自動フェイルオーバ
(2) 切り替え先のパスの優先順位
(3) 自動フェイルバック

(1) 自動フェイルオーバ

使用中のパスで障害を検知した場合,そのパスを閉塞状態にして,ほかの稼働状態のパスを使用してシステムの運用を続けることができます。これを,自動フェイルオーバと呼びます。自動フェイルオーバの対象となる障害は,パスに発生した次のレベルの障害です。

Critical
致命的で,システム停止の危険がある障害

Error
危険度は高いが,フェイルオーバなどで回避できる障害

障害レベルについては,「2.11.2 障害情報のフィルタリング」を参照してください。

SANRISE9500Vシリーズ,またはHitachi AMS/TMS/WMSシリーズを使用している場合,切り替え先のパスは,同じLUにアクセスするオーナパス,ノンオーナパスの順で選択されます。

例えば,「図2-8 パスの切り替え」でLUのオーナコントローラがCHA0であるとします。(A)のパスだけでLUにアクセスしている場合,使用中のパスが閉塞状態になったあとは,(B)のパスが第1候補,(C)または(D)のパスが第2候補の切り替え先になります。

SANRISE9900Vシリーズ,Hitachi USPシリーズ,Universal Storage Platform V/VMシリーズ,Virtual Storage Platformシリーズ,Hitachi AMS2000シリーズ,Hitachi SMSシリーズ,HUS100シリーズ,またはHUS VMを使用している場合,すべてのパスがオーナパスです。したがって,同じLUにアクセスするすべてのパスが同時に切り替え先の候補になります。例えば,「図2-8 パスの切り替え」で(A)のパスだけでLUにアクセスしている場合,使用中のパスが閉塞状態になったあとは,(B),(C),(D)のパスのどれかが切り替え先になります。

注※
ダイナミックI/Oパスコントロール機能を無効にしているときに対象になります。

同じLUにアクセスするパスの間での,切り替え先のパスの優先順位については,「(2) 切り替え先のパスの優先順位」を参照してください。

図2-8 パスの切り替え

[図]

(2) 切り替え先のパスの優先順位

パスの優先順位は,ホストのマシンのアーキテクチャによって異なります。

マシンのアーキテクチャがCHRPの場合は,同じLUにアクセスするパスの間では,パスごとの優先順位を第1キー,スロット番号を第2キー,CHAポートを第3キー,パス管理PATH_IDを第4キーにして,値が小さい順に切り替え先のパスが選択されます。

マシンのアーキテクチャがCHRP以外の場合は,パスごとの優先順位を第1キー,第2キーをCHAポート番号,第3キーをパス管理PATH_IDにして,値が小さい順に切り替え先のパスが選択されます。

キーとなる各項目について説明します。

パスごとの優先順位
パスごとに設定されている優先順位です。設定できる優先順位は1~255です。値が小さい方が優先度は高くなります。デフォルト値は1です。優先順位はOSのコマンドで設定します。優先順位を設定する手順を次に示します。
  1. 次のコマンドを実行して,LU内のパス情報を表示します。
    # lspath -l hdisk4 -F"name parent path_id connection path_status status"
    hdisk4 fscsi0  0 50060e8005271720,31000000000000 使用可能 使用可能
    hdisk4 fscsi1  1 50060e8005271730,31000000000000 使用可能 使用可能
    hdisk4 fscsi2  2 50060e8005271740,31000000000000 使用可能 使用可能
    hdisk4 fscsi3  3 50060e8005271750,31000000000000 使用可能 使用可能
  2. 次のコマンドを実行して,変更するパス情報を表示します。
    # lspath -l hdisk4 -p fscsi0 -w 50060e8005271720,31000000000000 -E
    scsi_id   0x651400           SCSI ID      偽
    node_name 0x50060e8005271720 FC Node Name 偽
    state     Enabled            N/A          真
    priority  1                  N/A          真
    
  3. 次のコマンドを実行して,優先順位を変更します。
    # chpath -l hdisk4 -p fscsi0 -w 50060e8005271720,31000000000000 -a priority=5
    パスは変更済みです
  4. 次のコマンドを実行して,変更した優先順位を確認します。
    # lspath -l hdisk4 -p fscsi0 -w 50060e8005271720,31000000000000 -E
    scsi_id   0x651400           SCSI ID      偽
    node_name 0x50060e8005271720 FC Node Name 偽
    state     Enabled            N/A          真
    priority  5                  N/A          真

スロット番号
HBAが搭載されているスロットの位置を示す値です。
スロット番号の大小は,物理ロケーション・コードで比較できます。
物理ロケーション・コードを取得する方法を次に示します。
  1. 次のコマンドを実行して,パス管理PATH_IDからhdiskを求めます。
    # /usr/DynamicLinkManager/bin/dlnkmgr view -drv
    PathID HDevName OSPathID LDEV
    000000 hdisk0   00000    SANRISE9500V.0051.0005
    000001 hdisk1   00000    SANRISE9500V.0051.0015
    000002 hdisk2   00000    SANRISE9500V.0051.0020
    000003 hdisk0   00001    SANRISE9500V.0051.0005
    000004 hdisk1   00001    SANRISE9500V.0051.0015
    000005 hdisk2   00001    SANRISE9500V.0051.0020
  2. 次のコマンドを実行して,hdiskの親デバイス(HBAデバイスインスタンス)を求めます。
    # lsdev -C -l hdisk2 -F 'parent'
    fscsi0
  3. 次のコマンドを実行して,HBAデバイスインスタンスから物理ロケーション・コードを求めます。
    # lscfg -vp -l fscsi0
    [図]
    物理ロケーション・コードが「Uaa.bb-Pcc-Idd」の形式で取得されます。先頭のUaa.bbは使用しているホストの機種に依存します。aabbccddの小さい順でパスが選択されます。物理ロケーション・コードがほかのフォーマットの場合にはパスの優先順位は「不定」となります。ただし,同一環境では再起動などで最優先のパスが変わることはありません。

注意事項
ご使用のHBAによっては,手順b,手順cを繰り返す必要があります。
スロットの具体的な位置については,ホストのマニュアルを参照してください。

CHAポート番号
CHAポート番号です。
HDLMコマンドのviewオペレーションで確認できます。viewオペレーションについては「6.7 view 情報を表示する」を参照してください。

パス管理PATH_ID
パスに付けられたIDです。ホスト,またはHDLMマネージャが起動するたびに割り当て直されます。
HDLMコマンドのviewオペレーションで確認できます。viewオペレーションについては「6.7 view 情報を表示する」を参照してください。

(3) 自動フェイルバック

使用中のパスが障害で閉塞状態になった場合,障害回復後に自動的に稼働状態にできます。これを,自動フェイルバックと呼びます。この機能を使用した場合,HDLMは定期的に障害回復を監視します。

SANRISE9500Vシリーズ,またはHitachi AMS/TMS/WMSシリーズを使用している場合,使用するパスは,稼働状態のオーナパス,ノンオーナパスの順で選択されます。したがって,ノンオーナパスを使用しているときに,オーナパスの障害が回復して,自動的に稼働状態になると,使用するパスがオーナパスに切り替わります。

SANRISE9900Vシリーズ,Hitachi USPシリーズ,Universal Storage Platform V/VMシリーズ,Virtual Storage Platformシリーズ,Hitachi AMS2000シリーズ※1,Hitachi SMSシリーズ※1,HUS100シリーズ※1,またはHUS VMを使用している場合,すべてのパスがオーナパスです。したがって,ほかのパスの障害が回復して,自動的に稼働状態になっても,使用するパスは切り替わりません。

なお,パスに間欠障害※2が発生している場合,自動フェイルバックの設定をしていると,閉塞状態と稼働状態を繰り返すため,I/Oの性能が低下することがあります。その場合は,間欠障害監視を設定して,間欠障害と見なされたパスを自動フェイルバックの対象外にすることをお勧めします。

自動フェイルバック機能,および間欠障害監視は,HDLMコマンドのsetオペレーションで指定します。setオペレーションについては,「6.6 set 動作環境を設定する」を参照してください。

注※1
ダイナミックI/Oパスコントロール機能を無効にしているときに対象になります。

注※2
間欠障害とは,ケーブルの接触不良などが原因で,断続的に発生する障害です。

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