4.5.1 OpenTP1ファイルシステム
OpenTP1ファイルシステムは,OSが提供するファイルシステムとは独立した,OpenTP1専用のファイルシステムです。Windows版OpenTP1では,通常のWindowsのファイル上,またはWindowsのダイレクトディスクアクセス(raw I/O)の機能(raw I/O機能)を適用した領域にOpenTP1ファイルシステムを構築します。
ここでは,OpenTP1ファイルシステムの特性,およびOpenTP1ファイルシステム選択時の留意点について説明します。また,Windows版OpenTP1のOpenTP1ファイルシステムの注意事項についても説明します。OpenTP1ファイルシステムの特性を考慮した上で,通常のWindowsのファイルとraw I/O機能を適用した領域のどちらにOpenTP1ファイルシステムを構築するかを選択してください。
通常のWindowsのファイルでのOpenTP1ファイルシステムの構築については,マニュアル「OpenTP1 解説」,およびマニュアル「OpenTP1 運用と操作」を参照してください。raw I/O機能を適用したOpenTP1ファイルシステムの構築については,「4.5.2 raw I/O機能を適用したOpenTP1ファイルシステムの構築」を参照してください。
(1) OpenTP1ファイルシステムの特性
OpenTP1のオンライン時のOpenTP1ファイルシステムに対する書き込み処理,および読み込み処理の性能について説明します。
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OpenTP1ファイルシステムへの書き込み処理の性能※
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通常のWindowsのファイルの場合
Windowsの制御上での遅延書き込みによるデータ紛失防止のため,書き込みごとにディスクに対してデータをフラッシュしています。ディスクに対するフラッシュ処理は,書き込みだけを行う場合に比べ,性能コストが掛かります。
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raw I/O機能を適用した場合
書き込みごとのフラッシュ処理が不要となるため,通常のWindowsのファイルへの書き込みに比べ,フラッシュ処理分の性能コストを削減できます。
- 注※
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OpenTP1ファイルシステム以外のファイル(dclogファイルなど)への書き込み処理では,ディスクに対するフラッシュ処理は行っていません。
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OpenTP1ファイルシステムからの読み込み処理の性能
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通常のWindowsのファイルの場合
Windowsのシステムキャッシュを介して,読み込み処理が行われます。
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raw I/O機能を適用した場合
読み込みごとに,ディスクからの読み込み処理が行われます。
読み込み処理では,通常のWindowsのファイルからの読み込みの方が,raw I/O機能を適用した領域からの読み込みよりも性能が優れています。
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(2) OpenTP1ファイルシステム選択時の留意点
OpenTP1ファイルシステムを選択する際は,次のことに留意してください。
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アンロードやバックアップの処理
ジャーナルファイルのアンロードやOpenTP1ファイルのバックアップでは,読み込み処理が多く発生します。また,ジャーナルファイルやバックアップ対象ファイルに対する処理では,raw I/O機能を適用した場合と比べて,通常のWindowsのファイルの場合の方がコマンド実行時間を短縮できます。
アンロードやバックアップの処理性能を重視する場合は,通常のWindowsのファイル上にOpenTP1ファイルシステムを構築することをお勧めします。
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OpenTP1がオンラインの場合のI/O処理
OpenTP1がオンラインの場合,次に示すファイルシステムへのI/O処理は,読み込み処理よりも書き込み処理の方が多く発生します。
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システムジャーナルファイル
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チェックポイントダンプファイル
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ステータスファイル
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サーバリカバリジャーナルファイル
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XARファイル
オンライン性能を重視する場合は,これらのOpenTP1ファイルシステムをraw I/O機能を適用した領域上に構築することをお勧めします。
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OpenTP1の再開始処理
OpenTP1の再開始処理では,ジャーナルなどのデータ読み込み処理が発生するため,通常のWindowsのファイルの場合の方が再開始処理時間を短縮できることがあります。
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キャッシュブロックでの処理
次の処理では,通常のWindowsのファイルの場合の方が,raw I/O機能を適用した場合よりも性能が優れています。
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キャッシュブロックに確保されていないブロックの読み込み
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キャッシュブロックの再利用と解放の頻度が高い処理
次の処理では,通常のWindowsのファイルの場合とraw I/O機能を適用した場合で,性能に差はありません。
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キャッシュブロックに確保されているブロックの読み込み
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DAMサービスでのI/O処理
dc_dam_rewrite関数の発行が多く発生する処理では,raw I/O機能を適用した場合の方が,通常のWindowsのファイルの場合よりも性能が優れています。
DAMサービス定義のdam_update_block_overオペランドにflushを指定した場合,dc_dam_write関数では読み込み処理が発生します。dc_dam_write関数で指定されたブロックがキャッシュブロックに確保されている場合は,ディスクからの読み込みは発生しません。
キャッシュブロックの再利用と解放の頻度が高い処理では,raw I/O機能を適用した場合の書き込み性能が優れています。このため,raw I/O機能を適用した場合の方が,通常のWindowsのファイルの場合よりもdc_dam_write関数の性能が優れています。ただし,dam_update_block_overオペランドにflushを指定しない場合と比べると,通常のWindowsのファイルに対する性能は劣ります。
dc_dam_write関数とdc_dam_rewrite関数の性能を重視する場合は,DAMファイルをraw I/O機能を適用した領域上に構築し,dc_dam_read関数の性能を重視する場合は,DAMファイルを通常のWindowsのファイル上に構築することをお勧めします。
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TAMサービスでのI/O処理
TAMサービスでのI/O処理は,主に共用メモリ上のTAMテーブルで行われます。TAMファイルへの実I/O処理が行われる場合を次に示します。
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TAMテーブルのローディング時
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TAMテーブルのアンロード時
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定間隔での実更新
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チェックポイントダンプ取得タイミングでの実更新
どの場合でも,I/O処理は,ユーザサーバの処理とは非同期に行われ,ユーザサーバのTAMアクセスがI/O処理を待ち合わせることはありません。したがって,dc_tam_read関数,dc_tam_rewrite関数,およびdc_tam_write関数の処理については,通常のWindowsのファイルの場合とraw I/O機能を適用した場合で,性能に差はありません。
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- 注意事項
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通常のWindowsのファイルの場合とraw I/O機能を適用した場合の性能差は,使用するディスク装置によって異なります。ディスク装置によっては,性能差がほとんどない場合もありますので,注意してください。
(3) OpenTP1ファイルシステムの注意事項
Windows版OpenTP1のOpenTP1ファイルシステムについての注意事項を次に示します。
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OpenTP1ファイルシステムの構築場所
OpenTP1ファイルシステムは,ネットワークドライブ上に構築しないでください。ディスクへの書き込みを保証するため,ローカルディスク,または共有ディスク上に構築してください。
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OpenTP1ファイルの保護
Windows版OpenTP1では,OpenTP1ファイルの保護はサポートしていません。