1.1 Hitachi HA Booster Pack for AIXとは
インターネットを利用した業務の本格化によって,情報システムの重要度はますます高まっています。インターネットを介した電子商取り引きなど,例え数分のシステムダウンでも,企業にとって大きな損失となります。EP8000で,このシステムダウン回復に高速に対応するプログラムが,Hitachi HA Booster Pack for AIX(以降, HA Boosterと略す)と HAモニタです。HAモニタとのインタフェースを持つHiRDBやOpenTP1などのミドルウェアを利用する場合,特に効果的です。
HAモニタと連動するHA Boosterの特長を次に示します。
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ホットスタンバイ構成で高速の切り替え実現
従来システム切り替えのあとに待機系が業務を開始するには,共用ディスクが100ボリュームグループ(VG)以上の大規模なDBサーバの場合,ある程度の時間が必要でした。しかし,HAモニタと連動したHA Boosterを使用すれば,障害を起こした実行系から,より少ない時間で待機系への切り替えができます。共用ディスクの数が増えても,切り替えの処理時間は一定のため,システム規模に依存しない安定した系切り替えを実現します。ホットスタンバイのシステム構成例を図1-1に示します。
図1‒1 ホットスタンバイのシステム構成例 HA Boosterは,EP8000に接続された日立ディスクアレイシステム上に構成されたVG(ボリュームグループ)単位に,ディスクアクセスを制御します。HA Boosterによるディスクアクセスの制御は,論理ボリュームのRAWデバイスに対してだけ適用できます。また,ミラーリングされた論理ボリュームやファイルシステムには適用できません。HA Boosterを使用すると実行系と待機系から共有されるディスクへの排他アクセスができ,従来必要だったフェイルオーバ時のVG有効化処理(varyonvg)に必要な時間を削減できます。これによってミッションクリティカルな大規模システムの業務を,ほとんど停止することなく,高速な系切り替えができます。
HA Boosterによって,HAモニタの共有ディスクの管理方式が,HAモニタ定義ファイルでのVG単位の管理から,制御グループ単位での管理となります。HA Booster導入後の共有ディスクは,起動時にHA Boosterのコマンドを使用して,制御グループを指定することで管理対象とします。
なお,従来のHAモニタによる共有ディスク(Rawデバイス,ファイルシステム)の管理と,HA Boosterによる共有ディスク(Rawデバイス)の管理は共存できます。
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OS障害通知機能
従来のHAの環境では,ハートビートのタイムアウトが発生するまで障害を検知することができず,その検知時間分待機系への切り替えに時間が掛っていました。しかしHA Boosterを適用すれば,実行系と待機系に接続されたHRA(Health- check and Reset Adapter)経由またはLANアダプタ経由で,障害をダイレクトに通知できます。実行系OSの障害発生と同時に待機系への切り替え開始を可能にすることで,系切り替え時間を短縮します。また,ユーザコマンドによって,OS障害通知機能の一時停止および再開ができます。
OS障害通知機能のシステム構成例(シリアルポート経由の場合)を図1-2,OS障害通知機能のシステム構成例(LAN(Ethernet)経由の場合)を図1-3に示します。
図1‒2 OS障害通知機能のシステム構成例(シリアルポート経由の場合) 図1‒3 OS障害通知機能のシステム構成例(LAN(Ethernet)経由の場合)